帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「あけてくれ!」

「あけてくれ!」
ウルトラQ』制作第4話
1967年12月14日放送(第28話)
脚本 小山内美江子
監督 円谷一
特技監督 川上景司

 

物語
万城目達は「あけてくれ!」と叫ぶサラリーマンの沢村を保護する。
催眠術で事情を聞き出すと、沢村は異次元に通じる列車に乗ったらしいが……。

 

感想
初回放送時はお蔵入りとなり再放送時に初めて放送された話。

 

当時の社会問題である「蒸発(失踪)」を取り上げている。
辛い現実から楽しい非現実の世界への逃避。正直言って、友野が羨ましい……。

 

沢村は人間関係で神経を磨り減らしていくのだが、妻や娘や上司は自分の言葉が沢村を追い詰めている事に気付いていない。周囲に対して強く言う事が出来ない沢村のような人間にとって非現実の世界へと逃がしてくれる異次元列車は「希望」と言える。

 

異次元列車に乗った沢村は自分の過去を見て現実に戻る事を決めるが、自分の現在はあまりにも生きづらいものであった。そこで沢村は自分の未来を異次元列車に求めるのだが「連れてってくれ!」と何度叫んでも再び異次元列車に乗る事は出来なかった。沢村は「絶望」してしまった現実でこの先ずっと生き続けなければいけなくなってしまったのだ。

 

「この息の詰まりそうな世の中よ、さよならー!」と言っていた万城目と由利子は異次元列車に乗る事が無かったので実際は非現実の世界に逃避するほど追い詰められてはいない事が分かる。その一方で一平は異次元列車を目撃している。今回の万城目と由利子は一平の事を放って二人だけで行動していたが、実はすぐ近くに異次元列車に乗り込んでしまいそうな追い詰められた人物がいたのだった。

 

異次元列車は宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』がモデルかな。

 

一の谷博士は「悪魔ッ子」で「催眠術の事はよく分からない」と言っていたが、今回の話では本多助手が催眠術を使用している。前回の事件で催眠術に興味を抱いたのだろうか。

 

今回の話は小山内美江子さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作であり、又、円谷英二監督の長男でTBSの円谷一さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。