「バルンガ」
『ウルトラQ』制作第16話
1966年3月13日放送(第11話)
脚本 虎見邦男
監督 野長瀬三摩地
特技監督 川上景司
風船怪獣バルンガ
身長 50cm~10万m
体重 不明
宇宙空間を彷徨い、恒星のエネルギーを喰う生命体。
土星ロケット・サタン1号に付着して地球にやって来た。周囲の動力を吸収して成長する。
国連の衛星から発射されたロケットが作った人工太陽に誘導されて宇宙空間へと帰り、そのまま本来の食べ物である太陽へと向かっていった。
今から20年前にも隕石に乗って地球にやって来た個体があり、そちらは成長途中で奈良丸博士によって殺されたらしい。
名前の由来は「バルーン(風船)」かな。
物語
あらゆるエネルギーを吸収して巨大化していくバルンガによって都市の機能は完全に麻痺してしまう。
万城目と由利子はバルンガの謎を握る奈良丸と言う人物を探すが……。
感想
「怪獣」と言う概念も通用しないバルンガはただ存在するだけで人類の文明が機能停止してしまう。地震、台風、洪水と地球の自然現象にも勝てない人類は宇宙の自然現象には為す術が無い。
20年前の個体は地球に落下した隕石に付着していたが今回の個体は人類が土星ロケットを宇宙に打ち上げなければ地球に来なかったので、人類が宇宙へと活動範囲を広げたから起きた事件だったと言える。
「怪物? バルンガは怪物ではない。神の警告だ。君は洪水に竹槍で向かうのかね? バルンガは自然現象だ。文明の天敵と言うべきか」と語る奈良丸博士だが、事件が解決した後に「私にとっては縁の深い怪物だった」と呟いている。このように見方によって色々な解釈が生まれるのが「怪獣」の面白さの一つ。
奈良丸博士の言葉に「この気違いじみた都会も休息を欲している。ぐっすりと眠って反省すべき事があろう」とあるように、電気が無くなった都会は静かであろう。しかし、今の人類は電気が無ければ生きていけない。我々の日々の生活は意外と脆い基盤の上に成り立っていた。
サタン1号の乗組員が大気圏突入の秒読み開始直前まで寝ていたが、おそらくこれはバルンガに燃料を吸収されてサタン1号の機器が正常に動かなくなって乗組員を目覚めさせる装置が作動しなかったのだと考えられる。
大きく膨らんだバルンガによって車が浮かぶシーンがある為、今回の万城目はいつものオープンカーではなくて屋根のある車を運転している。
由利子を庇って一平が車の破片に当たって瀕死の重傷を負ってしまう。
『ウルトラマンT』辺りだと、このくらいでも軽傷で済むのに……。
今回の話はロバート・シェクリィの『ひる』がモデルになっているらしい。
今回の話は川上監督のウルトラシリーズ監督最終作となっている。
川上監督は円谷プロを退社すると、東宝の美術監督であった渡辺明さん達と日本特撮プロダクションを設立し、『宇宙大怪獣ギララ』の特撮を担当した。