「侵略者を撃て ーバルタン星人登場ー」
『ウルトラマン』制作第1話
1966年7月24日放送(第2話)
脚本 千束北男
監督 飯島敏宏
特技監督 的場徹
宇宙忍者バルタン星人
身長 ミクロ~50m
体重 0~1万5千t
宇宙旅行中に発狂した科学者の核実験で母星が爆発してしまったので帰る場所を失った。全員で20億3千万程いる。
故障した宇宙船の修理の為に地球に立ち寄ると、そのまま住み着こうとした。
両手のハサミから赤色の停止光線と白色の破壊光弾を放ち、分身、姿を消す、人間の脳髄を借りる、傷付いた体から脱皮すると多彩な能力を見せる。
科学センターを占拠した個体はスペシウム光線を受けて炎上し、隠されていた宇宙船もウルトラマンに発見されて破壊されたらしい。
名前の由来は「バルカン半島」から。
『ウルトラQ』の「ガラモンの逆襲」のセミ人間の着ぐるみを改造している。
物語
科学センターが謎の宇宙人に占拠されてしまった。
防衛軍が強攻策を採ろうとする中、ムラマツキャップはまず話し合ってみようと提案する。
感想
登場人物がしっかりと描き分けられている制作第1話。後のシリーズには1話見ただけでは全員を覚えられない特別チームもあるが科特隊のメンバーはすぐに覚える事が出来る。『ウルトラマン』の人気の理由はこの辺りにあるのかもしれない。
『ウルトラQ』のタイトルを突き破って『ウルトラマン』のタイトルが登場し、オープニング映像に『ウルトラQ』に登場した怪獣のシルエットが使われる等、『ウルトラQ』との繋がりが強く示されている。
制作第1話でありながら登場人物が視聴者に話しかけると言う驚きの演出が行われている。そして冒頭から引っ張ったイデ隊員の目のアザが事件と全く関係無かったと言うオチにも驚かされる。
イデ隊員役は当初は石川進さんの予定だったがトラブルで降板してしまい、二瓶正也さんが代役となった。
まだバルタン星人と話し合っていないのに何故か防衛会議にバルタン星人の名前が出ている。
『ウルトラマンT』の「ウルトラの国大爆発5秒前!」でテンペラー星人が「宇宙研究家達に予測はされていたが実際に存在するかは疑われていた宇宙人」となっていたので、それと同じでバルタン星人も名前だけは知られていたのかもしれない。
イデ隊員は宇宙語は分かるが本当の宇宙人と喋った経験は無いとの事。日本人が実際に外国人と英語で会話をした経験は少ないみたいなものかな。
どうしてイデ隊員が宇宙語を知っていたかだが、『ウルトラQ』の「宇宙指令M774」に登場したルパーツ星人のような善意の宇宙人が地球人に教えてくれたのかもしれない。
バルタン星人が全員で20億3千万程いると聞いたイデ隊員は「世界中の人口を合わせたって22億だって言うのに」と言うが、実際には1966年の世界人口は約34億人であった。(世界人口が22億人だったのは1945年辺りかな。因みに2016年の世界人口は約73億人)
防衛軍はまず話し合ってみようと言うムラマツキャップの提案を非難したり、核ミサイルはげたかを撃ったりとやや攻撃的な組織に描かれている。そして、そんな防衛軍と対比させる事で科特隊から軍隊色を薄めている。
ハヤタ隊員はアラシ隊員と違ってバルタン星人の分身能力に対応出来たり、イデ隊員と違って冷静沈着に交渉に当たったり、ウルトラマンに変身して防衛軍の核ミサイルでは倒せなかったバルタン星人をスペシウム光線で倒したりと地球人を上回る能力を持つヒーローとして描かれている。
ウルトラマンとバルタン星人の戦いはこの時代では珍しい空中戦を中心としたもので「ウルトラマンは空を飛べる」と言うのを見せている。
フジ隊員によって「スペシウム光線」と名付けられたが、ウルトラマン本人はあの光線を何と呼んでいたのだろうか?
因みに「スペシウム」の名前の由来は「スペース(宇宙)+イウム」となっている。
成田亨さんは怪獣をカオス(混沌)の典型とし、対するウルトラマンをコスモス(秩序)の典型と考え、ウルトラマンに人間の徹底的な単純化を求めた。(成田さんのデザインではカラータイマーは付いていない)
ウルトラマンのデザインはまさに「シンプル・イズ・ベスト」!
それにしてもハヤタ隊員、あんな変身をしたら正体がバレちゃいますよ。
『ウルトラマンパワード』の「銀色の追跡者」と『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』は今回の話のリメイクとなっている。