「まぼろしの雪山 ー伝説怪獣ウー登場ー」
『ウルトラマン』制作第31話
1967年2月5日放送(第30話)
脚本 金城哲夫
監督 樋口祐三
特殊技術 高野宏一
伝説怪獣ウー
身長 40m
体重 0
夏でも雪に覆われている飯田山に現れる伝説の怪獣。海坊主や雪女のような架空の存在と思われていた。ゆきの死んだ母親の魂かもしれないが全ては謎のままとなった。
ゆきの呼ぶ声に反応して現れるが最後は幻のように消えた。ゆきも山へ帰ったそうだが……。
名前の由来は幻の企画『WoO』から。
物語
飯田山のスキー場に怪獣ウーが現れた。
このままでは村の観光産業が打撃を受けると、ウーを倒す為に科特隊がやって来る。
感想
「故郷は地球」のジャミラと共に『ウルトラマン』における被害者の怪獣として有名なウー。ジャミラは復讐の為とは言え無関係な人々も襲ったが、ウーは人々に直接危害を与えてはいない。いや、与える力すら無かったのかもしれない。それでも人々はウーとゆきを「怪獣」として殺そうとする。
ウーは何者だったのか、様々な解釈があるだろう。ただ、一つだけはっきりしている事がある。それはウーは人間社会には入れない存在だと言う事。
「怪獣」とは何か?
劇中でゆきは「何でもかんでも怪獣呼ばわりして殺してしまう恐ろしい人達」と言っている。ここで大事なのは「怪獣呼ばわり」と言う言葉。つまり、「怪獣」とは他人が勝手に貼ったレッテルだと言う事。「怪獣」とは人間社会にとって不都合な存在に貼られたレッテルなのだ。
ゆきは何者だったのか、人間だったのか本当に雪女の子供だったのか。ただ、一つだけはっきりしている事がある。それはゆきも人間社会には入れない存在だと言う事。
劇中で「雪ん子」「怪獣っ子」と呼ばれたようにゆきもウーと同じ「怪獣」とされたのだ。
『ウルトラQ』と『ウルトラマン』には地球出身の怪獣が多く登場している。それらが同じ地球出身の人間に倒されるのは様々な蔑称を付けられて中央政権に倒されていった人々を連想させられる。特に『ウルトラマン』ではウルトラマンと言う絶対的な武力がある為にその構図がより鮮明に出てしまったところがある。
因みに『ウルトラセブン』以降は怪獣を侵略者の手先にしたり外宇宙からの脅威にしたりする事でこの構図をなるべく避けている。再びこの構図を取り上げたのは怪獣を自然の精霊(妖怪)と捉えた『ウルトラマンT』であった。
ゆきが迫害される決定的な理由となった西山の爺さんがはまって死んだ落とし穴だが、これは村の子供達がゆきをはめる為に掘ったものではないだろうか。もし、そうだとしたら、凄くやり切れない。
ゆきを迫害する飯田山の住民だが彼らを単純に悪と決めつける事は出来ない。住民が生きていく為には猟もスキー場も必要不可欠なので、それを妨害するウーやゆきを疎むのは当然であろう。
今回の話はムラマツキャップとフジ隊員がいない。
科特隊のメンバーが誰か一人でも全く出ないのは今回の話のみ。
ハヤタ隊員が落とし穴にはまって足を捻挫してしまうが、ウルトラマンはウーとの戦いで足を全く庇っていない。
ウーがスキー場に現れた時にリフトに乗って頂上に向かっていた人達はメチャクチャ恐かっただろうな。
今回の話は樋口監督の『ウルトラマン』監督最終作となっている。