「怪獣墓場 ー亡霊怪獣シーボーズ登場ー」
『ウルトラマン』制作第35話
1967年3月12日放送(第35話)
脚本 佐々木守
監督 実相寺昭雄
特殊技術 高野宏一
亡霊怪獣シーボーズ
身長 40m
体重 3万t
怪獣墓場から月ロケットに乗って地球に落ちてきた怪獣の亡霊。よその星から怪獣墓場に追放されたらしい。
怪獣墓場に帰ろうと悪戦苦闘するが途中で諦めていじけてしまう。最後はウルトラマンの説得?を受けて、ウルトラマンロケットにしがみついて怪獣墓場に帰っていった。
名前の由来は「海坊主」から。
物語
宇宙のウルトラゾーンの中で怪獣墓場を発見した科特隊は今まで倒してきた怪獣達の霊を弔おうと怪獣供養を行う。
その時、またまた怪獣が……!
感想
今まで何度か語られてきた「怪獣は倒すべき敵か?」と言うテーマに決着を付けた話。
怪獣とは悪ではなく、姿形が人間と違い、人間に比べて力がありすぎると言うだけで宇宙に追放されてしまう可哀相な存在。これが『ウルトラQ』から問い続け、『ウルトラマン』が出した答えであった。
自分が倒した怪獣達が永久に宇宙の孤児となっている事を聞かされたウルトラマンは「許してくれ。地球(人間)の平和の為、やむなくお前達と戦ったのだ」と心ならずも葬った怪獣達に詫びる。この瞬間、「善悪二元論」「勧善懲悪」と言ったヒーロー作品の図式は完全に崩れ去った。
「まぼろしの雪山」でも書いたが、これ以降の怪獣は侵略者の手先か外宇宙からの脅威が殆どとなった。しかし、『ウルトラマンT』では「人間は怪獣と共存出来るのか?」と言う新たなテーマを設定した事で今回の話で出した結論のさらに先を描く事となった。
夕焼けをバックにしたシーボーズのシルエットがゴジラに見えた。
ひょっとしたら、シーボーズは「骨になったゴジラ」なのかもしれない。当初はシーボーズは海坊主のように海から姿を現す予定だったらしいが、まさにゴジラの出現シーンとイメージが重なる。シーボーズはゴジラを始めとするあらゆる怪獣達の亡霊だったのではないだろうか。
宇宙のウルトラゾーンにある怪獣墓場。
ウルトラゾーンとは『ウルトラQ』のアンバランス・ゾーンみたいなものだろうか。
怪獣達はウルトラマンに力一杯放り出されて無重力地帯まですっ飛んでいったと説明されているが、爆発していないテレスドンはともかく、爆発したネロンガや元の不思議な石に戻ったギャンゴはどうやって宇宙に放り出されたのだろうか? 考えられるとしたら、今回の話で語られている「宇宙」とは地球(地上)以外の場所、つまり「あの世」を表していて、「宇宙に放り出された」と言うのは「あの世に送られた」と言う意味なのかな。
因みに怪獣墓場にはケムラー、アントラー、ネロンガ、ギャンゴ、テレスドン、ピグモン(ガラモン?)の存在が確認できる。
ハイドロジェネレートロケットエンジンを装備した為に科特隊のパトロール範囲は宇宙にまで広がった。過労が心配だが、今回の話を見る限り、そんなに毎日怪獣が現れているわけではなさそうなので、案外、良い退屈しのぎになっているのかもしれない。
今回の話で一番街を破壊したのは間違い無く科特隊だったと思う。
今回はウルトラマンが1話に3回も登場した『ウルトラマン』唯一の話。
3分しか時間がないからか、ウルトラマンの説得が物凄く無理矢理。でも、ウルトラマンコスモスだったら3分間しかなくてももっと優しく説得してくれそう。
無理矢理な説得の結果、シーボーズがウルトラマン相手にすっかり怯えてしまったので、せっかくのウルトラマンロケットもあまり効果が無かったように見えた。
「怪獣墓場。どこへ行っても嫌われる怪獣達にとって平和で静かな毎日は墓場にしかないのであろうか……」。
今回の話は佐々木さんと実相寺監督の『ウルトラマン』最終作となっている。
今回の話は2023年12月に『円谷映画祭2023』Part2で『『空想特撮シリーズ ウルトラマン 4Kディスカバリー』「生命のものがたり」』として劇場公開されている。