帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「小さな英雄」

「小さな英雄 ー怪獣酋長ジェロニモン登場ー
ウルトラマン』制作第37話
1967年3月26日放送(第37話)
脚本 金城哲夫
監督 満田かずほ
特殊技術 有川貞昌

 

酋長怪獣ジェロニモン
身長 40m
体重 3万t
超能力で死んだ怪獣を蘇らせる怪獣の酋長で、世界各地から60匹以上の怪獣を集めて怪獣総攻撃を仕掛けようとした。
尻尾の羽根を念力で飛ばしたり、口から無重力ガスを吐く等、多彩な能力を持つ。
イデ隊員のスパーク8で倒された。
名前の由来はアパッチ族の戦士「ジェロニモ」から。

 

彗星怪獣ドラコ(再生)
身長 45m
体重 2万t
ジェロニモンによって復活した。
手の鎌が指に変わり、羽が無くなり、頭部の形も変わった。再生が不完全だったのだろうか?
ピグモンを殺した後、イデ隊員のスパーク8で倒された。

 

地底怪獣テレスドン(再生)
身長 60m
体重 12万t
ジェロニモンによって復活した。
こちらは再生が完璧だったようだ、と思ったら科特隊のトリプルショットであっさりと倒された。
科特隊が強くなったのか、再生が不完全だったのか……?

 

友好珍獣ピグモン(再生)
身長 1m
体重 10kg
人類の味方でジェロニモンによって復活するも怪獣総攻撃の計画を科特隊に知らせた。
イデ隊員を助けようとしてドラコに殺されてしまう。
戦いが終わった後、人類の平和に尽くした功績を認められて科特隊特別隊員の称号を与えられた。

 

物語
デパートに突然現れたピグモンが怪獣総攻撃の計画を科特隊に知らせる。
一方、イデ隊員はある事で悩んでいた。「ウルトラマンさえいれば科特隊は必要無いのではないか?」と……。

 

感想
ウルトラシリーズの最高視聴率を出した回で、その数字はなんと42.8%!
現在では考えられない数字で驚かされる。

 

最終回に向けて『ウルトラマン』と言う作品世界そのものを問い直す話が続くようになり、今回はウルトラマンと科特隊(人間)の関係について語られた。

 

あまりにも人間からかけ離れた存在で「バラージの青い石」では神として祭られていたウルトラマン
最後に神様が助けてくれるのなら人間の努力は意味が無いのではとイデ隊員が考えるのも無理は無い。ハヤタ隊員は「持ちつ持たれつ」と言ったがそれはハヤタ隊員がウルトラマンと一心同体である為、ウルトラマンは神と言った人間からかけ離れた存在ではなくて同じ宇宙に生きる仲間なのだと認識出来ているからだ。
因みに『ウルトラセブン』ではこの問題を回避する為、ウルトラセブンを人間からかけ離れた存在ではなく、ウルトラ警備隊7番目の隊員、つまり同じ宇宙に生きる仲間なのだとしている。

 

ウルトラマン』では序盤の話でイデ隊員がウルトラマンとハヤタ隊員の関係を怪しむ場面があった。結局のところ、その疑惑はどうなったのか答えは描かれなかったが、自分はイデ隊員はその疑いをまだ持ち続けていると考えている。何故なら、イデ隊員はウルトラマンと科特隊の関係についての悩みをハヤタ隊員にしか打ち明けていないのだ。ひょっとしたら、イデ隊員はウルトラマン本人に向かって悩みを打ち明けていたのかもしれない。

 

ピグモンがデパートに現れた時、その場にいた子供はピグモンの事を知っていた。おそらく科特隊はこれまで遭遇してきた怪獣を公表しているのだろう。
それにしても、こんなに怪獣が現れて街が滅茶苦茶になっているのに怪獣のオモチャはあるのね。

 

ピグモンの協力もあって解読された怪獣語。
ピグモン以外にも使えるかは分からないが、コミュニケーションの問題が解決できたら人間と怪獣の共存の可能性はかなり高くなると考えられる。

 

世界各地から60匹以上の怪獣が集結する怪獣総攻撃。
世界各地となっているので日本支部以外の科特隊が倒した怪獣も含まれるのだろう。ウルトラシリーズでは日本以外に現れた怪獣の詳細が語られる事が殆ど無いので、どのようなものなのか大変興味がある。

 

脚本ではドラコとテレスドンではなくレッドキングゴモラが登場する予定だったらしい。
レッドキングゴモラの戦いは是非とも見たかった。
ピグモンは再びレッドキングに殺されていたんだろうなぁ……。

 

自分の仕事に自信を失ったイデ隊員はドラコと対峙しても「ウルトラマンが今に来るさ…」と言って積極的に戦おうとしない。そんなイデ隊員に向かってハヤタ隊員は「ウルトラマンは我々人間が力一杯戦った時にだけ力を貸してくれるんだ!」と叱咤する。このハヤタ隊員の言葉はウルトラシリーズ全体に影響を与える事となった。

 

戦いに気持ちが入らないイデ隊員を見てハヤタ隊員はウルトラマンへの変身を止める事に。しかし、イデ隊員はドラコに殺されそうになり、さらに、イデ隊員を助けようとしたピグモンがドラコに殺されてしまう。
ピグモンの死を目の当たりにしたハヤタ隊員は「イデ! ピグモンでさえ我々人類の平和の為に命を投げ出して戦ってくれたんだぞ! 科特隊の一員としてお前は恥ずかしいと思わんのか!」とイデ隊員に平手打ちをする。普段は冷静沈着なハヤタ隊員だけにこのシーンは印象に残った。
自分はハヤタ隊員の時はハヤタ隊員の人格が出ていると言う解釈なので、ハヤタ隊員は同じ科特隊員であるからこそイデ隊員を許せなかったと考えているのだが、もし、ハヤタ隊員の時もウルトラマンの人格が出ているとしたら、イデ隊員がこうなってしまった原因は自分にあるとして、ウルトラマンの気持ちはさらに複雑なものになっていたと考えられる。

 

ジェロニモンとの戦いだが、あのままウルトラマンが戦っても勝てそうだったので、「ウルトラマンがイデ隊員に勝ちを譲った」と言うふうにも見える。
イデ隊員が「科特隊が頑張っても、結局、敵を倒すのはいつもウルトラマン」と言っていたように、科特隊では敵を倒す事が出来ず、その後にウルトラマンが敵を倒す事が殆どである。しかし、ハヤタ隊員が「スーパーガンやスパイダーショット、それにマルス133も立派に敵を倒したじゃないか」と返したように科特隊が多くの敵を倒しているのも事実である。
ひょっとしたら、ウルトラマンも科特隊も敵を倒せるだけの力を持っていて、たまたま最初に戦った科特隊では敵を倒す事が出来ず、次に戦ったウルトラマンが敵を倒す事が出来ただけで、もし、ウルトラマンが最初に敵と戦った場合、3分間の時間切れで敵を倒す事が出来ず、次に戦った科特隊が敵の能力を分析して対抗策を立てて敵を倒す事が出来たのかもしれない。
今回はウルトラマンが絶体絶命のピンチに陥ったところをイデ隊員が助けた方が話が分かりやすくなったとは思うが、イデ隊員のスパーク8でジェロニモンを倒す事が出来たしウルトラマンがそのまま戦ってもジェロニモンを倒す事が出来たとした事で、実は今までのウルトラマンが敵を倒した話もタイミングや状況が違えば科特隊が敵を倒した話になっていたと言う事を示したのかなと自分は考えた。

 

今回の話は満田監督の『ウルトラマン』監督最終作となっている。