帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「さらばウルトラマン」

「さらばウルトラマン ー宇宙恐竜ゼットン登場ー
ウルトラマン』制作第39話
1967年4月9日放送(第39話)
脚本 金城哲夫
監督 円谷一
特殊技術 高野宏一

 

変身怪人ゼットン星人
身長 2m
体重 60kg
果てしなき大宇宙の彼方から空飛ぶ円盤で地球に飛来。1930年代から40年に亘って地球を偵察していて遂に総攻撃を開始した。
岩本博士に変身して科特隊基地を内部から破壊した。
円盤は自衛隊と科特隊に全滅させられ、岩本博士に変身した個体もマルス133で撃たれると「ゼットン……」と言う断末魔を残して消滅した。
ケムール人の着ぐるみを使用している。

 

宇宙恐竜ゼットン
身長 60m
体重 3万t
ウルトラマン』最強の怪獣。
ゼットン星人の大型円盤に格納されていて、青い玉が爆発すると姿を現した。
ウルトラマンのキャッチリング、八つ裂き光輪、スペシウム光線を破る。テレポーテーションで翻弄し、赤い光弾や光波バリアーで技を破り、波状光線でウルトラマンを倒した。
火球で科特隊基地を破壊するが、岩本博士が開発した新兵器で倒された。
名前はアルファベットの最後の文字である「Z」に五十音の最後の文字である「ん」を合わせたもの。

ゾフィ
身長 45m
体重 4万5千t
光の国の使いでM78星雲の宇宙警備隊員。ウルトラマンの仲間で迎えに来た。
命を2つ持って来ていて、その1つをハヤタ隊員に与えると、ウルトラマンとハヤタ隊員を分離させて光の国に連れて帰った。
この時点での名前は「ゾフィ」で、現在の「ゾフィー」となるのは『ウルトラマンZOFFY』から。

 

物語
謎の円盤が地球に襲来し、科特隊基地にも宇宙人が侵入して破壊活動を行う。
からくも謎の宇宙人を撃退した科特隊だったが、そこに最強怪獣ゼットンが現れる。
科特隊の危機にウルトラマンが立ち向かうが……。

 

感想
最大のスケールで展開される『ウルトラマン』最終回。
やはり自分はちゃんとした最終回がある方が好き。『ウルトラQ』は終わった感じがしなかったので。

 

ゼットン星人は1930年代から40年に亘って地球を偵察していたと言う設定なので、今回の話は「怪獣殿下 前篇」「怪獣殿下 後篇」と同じく放送当時が舞台と言う事になる。その為か今回は防衛軍ではなくて自衛隊が出撃している。

 

自衛隊が何機か撃墜していたとは言え、少ない戦力でゼットン星人の円盤を全滅させた科特隊はやはり強い。
科特隊が最初は調査主体だったのが段々と攻撃主体に変わっていくのを見るとウルトラ警備隊以降の特別チームが防衛軍所属になったのは自然な流れだったのかなと思う。

 

またもや侵略者に侵入されてしまった科特隊基地。
大抵の侵略者は地球人より遥かに高い技術を持っているので仕方が無いと言えば仕方が無いのだが……。
ゼットン星人とゼットンによって科特隊基地は半壊状態に。以降のウルトラシリーズでも最終決戦になると特別チームの基地が破壊されるようになった。

 

ゼットン星人の頭部はケムール人のものを使用している。
ウルトラQ』の「2020年の挑戦」でケムール人は未来の影の部分を含んでいたので、それを人間が倒すと言うのは人間は光溢れる未来、つまりウルトラマンの光の国のような世界を手に入れる事を示しているのかもしれない。

 

最終回に登場したゼットンは青い玉が膨らんで爆発した中から姿を現している。これは放送第1話の「ウルトラ作戦第一号」に登場したベムラーが青い玉に変身していたのを思い出す。

 

最終回だからか、かなり久し振りにカラータイマーの説明ナレーションがある。

 

ゼットンに敗れて過去の戦いを回想するウルトラマン
謎の恐竜基地」のジラース戦と「電光石火作戦」のガボラ戦が選ばれているが、どうしてこれらが選ばれたのだろう? 円谷監督の担当回でもないし。

 

途中で顔や胸部が真っ黒なゼットンが出てくるが、あれは何だったんだろう?

 

岩本博士によると、ゼットン星人は40年に亘る偵察を終えて地球総攻撃を開始したらしい。40年間の中でウルトラマンがいる今がもっとも侵略に向いていないような気がするが……。
仮にゼットンを対ウルトラマン用の生物兵器だったと考えると、ゼットン星人はウルトラマンのデータを全て手に入れていて確実に勝てると判断していたのかもしれない。それならゼットンウルトラマンのあらゆる技を破り、的確にカラータイマーを破壊出来たのも納得出来る。
ただし、岩本博士が昨日完成させたばかりの新兵器に関するデータは無かったらしく、ゼットンは何の抵抗もせずに無重力弾を受けて倒されてしまった。

 

ウルトラマンを倒したゼットンを科特隊が倒した事で、ウルトラマンがいなくても科特隊がいれば地球は大丈夫と思える展開になった。最後にムラマツキャップが「地球の平和は我々科学特捜隊の手で守り抜いていこう」と言っていたが実際に最強怪獣のゼットンを倒しているので発言に説得力があった。

 

光の国の使いでM78星雲の宇宙警備隊員であるゾフィが登場。
ハヤタ隊員が新たな命を与えられた事でウルトラマンが地球に留まる理由は無くなった。
ゼットンに敗れた後もウルトラマンは地球に留まり続けるつもりだったがゾフィの説得を受けて地球を去る事を決意しているので、「最強怪獣のゼットンに敗れたのでウルトラマンは地球を去った」と言うより「仲間であるゾフィが迎えに来たのでウルトラマンは地球を去った」と言う方が正しい。
因みにゾフィが迎えに来なかった場合のその後は『蘇れ! ウルトラマン』で描かれている。

 

ゾフィの「私は命を二つ持って来た」と言う台詞は何度聞いても驚かされる。『ウルトラマン』はSFと言うよりファンタジーと言った方が合っているのかもしれない。

 

ウルトラ作戦第一号」でハヤタ隊員は赤い玉をウルトラマンの宇宙船と言っていたが、今回のゾフィを見ると赤い玉は宇宙船と言うより宇宙空間を移動する為の能力に思える。それともこれは「宇宙船を作り出す能力」と言う事なのかな?

 

ゾフィはウルトラマンとハヤタ隊員の体を分離する時にベーターカプセルを使っている。ベーターカプセルは単なる変身の道具ではなく、命の部分に深く関わる装置なのかもしれない。

 

命を2つ持って来ていたのならもったいぶらずに最初からハヤタ隊員に与えれば良いのにとゾフィに対してツッコミを入れたくなるが、2万年以上生きる存在が平均寿命80年前後の存在に命を与える気にはならなかったのかもしれない。しかし、ウルトラマンはそれをすると言ったので、驚いたゾフィはハヤタ隊員に命を与えてウルトラマンが死ぬのを止めたのだろう。
こう考えるとゾフィは冷たい奴に見えるかもしれないが、これは人間に命を与えようとしたウルトラマンの方が特殊なのだろう。後に明かされるが、ウルトラの父も母も10万歳を超えているので、2万歳のウルトラマンはまだまだ若い部類に入るのだが、ゾフィとの会話でウルトラマンは「私はもう2万年も生きた」と言っている。これはウルトラマン達の感覚ではなくて地球人の感覚だ。おそらくウルトラマンは地球人と触れ合っているうちに感じ方や考え方が地球人に近くなっていったのだろう。

 

ウルトラマンとゾフィの会話でゾフィが「地球の平和は人間の手で掴み取る事に価値がある。ウルトラマン、いつまでも地球にいてはいかん」と常に「地球人全体」について語っているのに対し、ウルトラマンは常に「ハヤタ隊員と言う個人」について語っているのが興味深い。(なのでこの二人の会話は微妙に噛み合っていないところがある)
おそらくだが、ゾフィが自分達が関わる事で地球がどうなるかを色々と考えていたのに対し、ウルトラマンはもっと単純に仲間(友達)を助けたいと言う気持ちが強かったのだろう。この時の話を頭に入れて『ウルトラマンメビウス』でのゾフィーとサコミズ隊長の話を見ると色々と感慨深いものがある。

 

ウルトラ作戦第一号」でウルトラマンがハヤタ隊員に自分の命を与えて一心同体になり、今回の話でゾフィが2つ持って来た命の1つをハヤタ隊員に与えた事で、姿形が全く違う存在でも命は同じである事が分かる。

 

ウルトラマンと分離したハヤタ隊員はウルトラマンと一心同体だった時の記憶を失っていた。これは『ウルトラマン』と言う夢が終わる事を意味していると思われる。しかし、この時に『ウルトラマン』を忘れる事が出来なかった人が大勢いた。
又、地球を去って行くウルトラマンを科特隊と子供達が「さようなら」と言って見送るが、この時に「さようなら」と言って見送る事が出来なかった人も大勢いた。
そして、そんな人達によって、この先もウルトラシリーズは次々と作られていくのであった。

 

ウルトラマン』のメインライターである金城さんがノベライズを担当した『怪獣絵物語 ウルトラマン』が1967年8月に刊行されている。
TVの話を基本にしながら、ハヤタ隊員の心情、ウルトラマンや科特隊に対する人々の考え、侵略者達の繋がりと言ったTVでは描かれなかった話や設定を組み込んだ内容となっている。

 

帰ってきたウルトラマン』の「ウルトラ5つの誓い」は今回の話の後日談となっていて、『ウルトラマンパワード』の「さらばウルトラマン」は今回の話のリメイクとなっている。

 

今回の話は2022年7月に『シン・ウルトラマン』の企画として劇場公開され、2023年12月に『円谷映画祭2023』Part2で『『空想特撮シリーズ ウルトラマン 4Kディスカバリー』「生命のものがたり」』として劇場公開されている。