「史上最大の侵略 後編」
『ウルトラセブン』制作第49話
1968年9月8日放送(第49話)
脚本 金城哲夫
監督 満田かずほ
特殊技術 高野宏一
幽霊怪人ゴース星人
身長 2m
体重 70kg
熊ヶ岳の地下に侵略基地を作り、地底ミサイルで世界各国の主要都市を攻撃。降伏しなければ30億全人類皆殺しと言う「史上最大の侵略」を展開する。
マグマライザーの自爆攻撃で全滅した。
双頭怪獣パンドン(改造)
身長 40m
体重 1万5千t
熊ヶ岳の地下にあるゴース星人の基地が全滅した後に地上に出てきた。
前回の戦いで切断された左腕と右足を機械化されている。
アイスラッガーを受け止めて逆に投げ返すが、ウルトラ念力で再び返され、首を切られて倒される。
セブン上司
「今度こそ本当に死んでしまうぞ」とダンに変身を思い止まるように説得したが無駄だった。
物語
検査で正体がバレる事を恐れたダンは地球防衛軍から逃げ出してしまう。
一方、ゴース星人は史上最大の侵略を展開。地球の危機にダンは……。
感想
「史上最大の侵略 前編」の続き。
まさに総決算と言った感じの第1期ウルトラシリーズ最終回。
ゴース星人の攻撃を受ける地球防衛軍基地。やはり最終決戦は基地が危機に陥らないと盛り上がらない。
ゴース星人の「人質を取って降伏勧告をする」「降伏拒否に対して武力を行使する」と言うのは放送第1話の「姿なき挑戦者」でクール星人が行ったのと同じ。ただし、クール星人の攻撃範囲が日本に限られていたのに対し、ゴース星人は全世界を攻撃すると言うまさに「史上最大の侵略」であった。
降伏するなら死んだ方がマシだと言って特攻をしかねなかったフルハシ隊員達をなだめ、偽の対策会議を開いて時間を稼ぐとヤマオカ長官、マナベ参謀、タケナカ参謀が要所要所を締めていた。『ウルトラセブン』はこういうところで特別チームの上層部を上手く使っていた。
アキオ少年の作戦本部にはTVまである。当時で子供が自分達用のTVを持っているとは凄い。
アキオ少年の場面では『ウルトラセブン』を取り上げた雑誌や玩具がたくさん映されているが、ひょっとしたらアキオ少年の場面は『ウルトラマン』の「怪獣殿下 前篇」「怪獣殿下 後篇」のように「『ウルトラセブン』の視聴者と同じ世界」と「『ウルトラセブン』の世界」が交わっている状態だったのかもしれない。(ゴース星人の攻撃で世界中が大混乱なのにアキオ少年の周辺では混乱が無く、アキオ少年はTVを通じてゴース星人との戦いを見ている)
「アンヌ……! 僕は……、僕はね……、人間じゃないんだよ! M78星雲から来たウルトラセブンなんだ!」。
あまりにも有名なダンの告白シーン。
『ウルトラマン』ではハヤタ隊員の正体がバレる事は無かった。(イデ隊員が気付いていた可能性はあるが劇中では明言されていない)
もっとも、ハヤタ隊員は最初から地球人なので、正体を明かしたとしても今回と同じ展開にはならなかったと思われる。
「人間であろうと、宇宙人であろうと、ダンはダンに変わりないじゃない。たとえウルトラセブンでも……」がダンの告白に対するアンヌ隊員の答え。
前回の「史上最大の侵略 前編」で「ダンは心は地球人でも体は宇宙人」と書いたが、今回はそれを「ダンの体が地球人であろうとなかろうと心は既に地球人だ」と逆転させた。そして最後の戦いで全てを知ったウルトラ警備隊の皆は宇宙人ウルトラセブンではなく地球人モロボシ・ダンと呼んで助けに向かった。
「ウルトラセブンの正体は私達のダンだったのよ! M78星雲から地球を守る為に遣わされた平和の使者で、自分を犠牲にしてまでこの地球の為に戦っているんだわ! でも、もう、これが最後の戦いよ! ダンは自分の星に帰らなければならないの!」。
アンヌ隊員からウルトラセブンの正体がダンだと知らされたウルトラ警備隊はダンと共に戦いに行く。
『ウルトラマン』の最終回「さらばウルトラマン」でウルトラマンは一人で戦ってゼットンに敗れた。(科特隊はウルトラマンが戦っているのを見ていただけ) 今回の話は『ウルトラマン』の最終回でしなかった事をしたと言える。パンドンとの最終決戦、ウルトラセブンは一人では勝てなかったが、ウルトラ警備隊の援護を得た事でウルトラ念力を溜める時間を作る事が出来、勝利を収める事が出来たのだった。
自分がM78星雲に帰ったら地球はどうなると言って戦い続けたダン。ダンが安心してM78星雲に帰る為には自分がいなくても地球は大丈夫と思えなければいけなかった。だからキリヤマ隊長は「行こう! 地球は我々人類自らの手で守り抜かなければならないんだ!」と決意を表明したのだ。
パンドンとの最終決戦は文句無く『ウルトラセブン』において最高のバトル!
ロベルト・シューマンの『ピアノ協奏曲 イ短調 op.54』が盛り上がる盛り上がる!!
今回倒されたパンドンの遺伝子は後に『平成セブン』の「ネバーランド」「イノセント」でネオパンドンを生み出す事となる。
「西の空に明けの明星が輝く頃、一つの光が宇宙へ飛んで行く……。それが僕なんだよ。さよなら、アンヌ!」。
「明けの明星は西の空ではなくて東の空に出る」と指摘される事が多い台詞。脚本では「一番星の出る頃、西の空を見てくれ、大きな光が宇宙に帰って行く。それが、私だ……」となっているらしい。一番星とは宵の明星の事で西の空に出るので、脚本の時点では最終決戦が夕方だったのを完成作品では明け方にしたので台詞がおかしくなった可能性がある。それとも「西の空に明けの明星が輝く頃」ではなくて「明けの明星が輝く頃、西の空に一つの光が宇宙へ飛んで行く」と言う意味だったのかもしれない。つまり、「西の空」は「明けの明星が輝く場所」ではなくて「一つの光が宇宙へ飛んで行く場所」だったと言うわけ。
「ダンは死んで帰って行くんだろうか……。もしそうなら、ダンを殺したのは俺達地球人だ……」とはダンを見送るソガ隊員の言葉。地球人が知らず知らずのうちにダン=ウルトラセブンに頼ってしまった事でダンを過労で死なせる事になってしまった。
ウルトラセブンはこの後も『平成セブン』や『ULTRASEVEN X』と言った続編が作られ、『ウルトラマンレオ』ではレギュラーで登場したり、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』からは息子のウルトラマンゼロが登場するなど物語が続いていっている。その一方でダンを演じた森次さんが「もうダンとは別れたい」と述べた時期もある。今も地球人はダン=ウルトラセブンに頼ってしまっているのかもしれない。
満田監督は今回の話の後はプロデュース業が中心になってウルトラシリーズの監督は殆ど担当していない。この後に監督として単独クレジットされた唯一の回である『ウルトラマン80』の最終回「あっ! キリンも象も氷になった!!」は過労で倒れかけたウルトラマン80に代わって地球人が戦うと言う今回の話と対になる展開だった。
今回の話は2022年10月に『ウルトラセブン』55周年記念として4K特別上映で劇場公開されている。