帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「怪獣少年の復讐」

「怪獣少年の復讐 ー吸電怪獣エレドータス登場ー
帰ってきたウルトラマン』制作第15話
1971年7月9日放送(第15話)
脚本 田口成光
監督 山際永三
特殊技術 高野宏一

 

吸電怪獣エレドータス
身長 70m
体重 3万4千t
普段は透明な怪獣。電気を吸収して全身を帯電させたり口や尻尾から放電光線を吐く。
頭が弱点らしく、MATにナパーム弾を撃たれて弱ったところをスペシウム光線で止めを刺された。
名前の由来は「電気の亀」かな。

 

物語
郷は史郎と言う足の不自由な少年と出会った。
史郎の一番好きな怪獣はエレドータス。そして、一番嫌いな怪獣はエレドータス……。

 

感想
今回登場したエレドータスはかなり難解な存在となっている。
素直に考えると、一年前の鉄道事故は透明な怪獣エレドータスによって引き起こされたものだったのだが、MATの調査ではエレドータスを発見する事が出来ず、結果、運転手の操作ミスが事故の原因だと言う「冤罪」が生まれたと言うもの。
ウルトラシリーズでは怪事件の裏には怪獣が潜んでいるものなのだが、その「事件の裏に潜む怪獣が発見されなかった場合」を描いた話だったと考えられる。

 

もう一つ考えられるのが「怪獣エレドータスは史郎の心と深く関わっている存在」と言うもの。
一年前の鉄道事故では怪獣の足跡が発見されなかったので、本当に史郎の父親の操作ミスが事故の原因だった可能性がある。しかし、それを信じられない史郎は事故の原因は操作ミスではなくて怪獣の仕業だと訴え、そんな史郎の心が怪獣エレドータスを生み出して実体化させた。つまり、エレドータスは『ウルトラマン80』のマイナスエネルギー怪獣のような存在と言うもの。(エレドータスが単に透明になるだけの怪獣だったら足跡は残っているはずなので、それが無いと言う事はエレドータスは心霊的な存在だった可能性が高い)
史郎の足が不自由な原因は不明らしいが、最後にエレドータスが倒された時に治っているので、史郎の心が自分の足を不自由にさせ、現実世界にエレドータスを生み出したと考えられる。

 

実際の史郎は「足が不自由」で「貧乏」で「両親がいない」のだが、史郎はそんな自分を隠して「流行の玩具を持っている」し「家はお金持ち」だし「頭も良い」し「叔父さんは偉い人」だしと皆に羨ましがられる存在を演じる。その為には他の人を車に閉じ込めたり騙したりしても構わない。さすがに本物の進少年を縛って車に閉じ込めたのは嘘とか悪戯とかを超えて犯罪なのだが、そうしなければいけない程に史郎が追い詰められていたとも言える。事実、史郎がここまでしたからこそ、周りの人々は史郎の言っている事を無視出来なくなり、一年前の事故が再び注目される事となった。

 

史郎の好きな怪獣はエレドータスで嫌いな怪獣もエレドータス。
自分を抑圧する社会を破壊してくれる希望の存在は自分に抑圧を与える絶望の存在でもあった。おじいさんの言うとおり、史郎は怪獣に取り憑かれていたと言える。
ウルトラマンがエレドータスを倒すと史郎の足は治り、「さようなら、エレドータス」と怪獣に別れを告げる事が出来た。史郎はようやく一年前に父親が死んだ時からずっと続いていた足踏み状態から抜け出して、前へ一歩踏み出す事が出来るようになったのだった。

 

今回の話は山際永三さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。

 

 

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