「ふるさと地球を去る ー隕石怪獣ザゴラス登場ー」
『帰ってきたウルトラマン』制作第25話
1971年9月24日放送(第25話)
脚本 市川森一
監督 冨田義治
特殊技術 大木淳
隕石怪獣ザゴラス
身長 41m
体重 3万6千t
群馬県愛野村の地下にある有史以前にザゴラス星から落下した隕石の放射能で微生物が怪獣化したもの。
口から火を吐く。
ウルトラマンによって、ザゴラス星からの引力で空に舞い上がった愛野村に激突させられて倒された。
物語
愛野村に調査にやって来た郷と南隊員。
南隊員は自分が「じゃみっ子」とあだ名されて虐められていた過去を話す。
そして南隊員の前に「じゃみっ子」が……。
感想
「故郷の地球を去る」と思いきや実際は「故郷が地球を去る」と言うどんでん返しが見事。
南隊員の過去が明らかになる話で、『新世紀エヴァンゲリオン』で加持リョウジが言った「辛い事を知っている人間の方が、それだけ他人に優しく出来る。それは弱さとは違うからな」を思い出す話。
今回は気弱な少年の内に秘めた暴力を描いた話と言われている。だが、この話で重要なのは普段は気弱な少年が暴力を振るわなければいけなくなった事情であろう。「無茶ってものはね、逃げ場が無いくらい虐められ追い込まれた者にしか出来ないんだ。逃げ場があるうちは逃げ回れるからね」と言う南隊員の台詞の通り、暴力を振るわなければいけなくなる程に少年を追い詰めた周りが問題なのだ。
六助自身に全く非が無かったとは言えないが、そこまで六助を追い詰めたいじめっ子達や学校の先生に非が無かったとは絶対に言えない。人間としての尊厳をあそこまで傷付けられて爆発しない人間はいないだろう。
怪獣が倒されると「また起こらないかな」とマットガンを乱射する六助。それを見た南隊員はマットガンを取り上げて「もうよせ! もういいだろう……」と告げる。
ヒーロー作品やバトル作品を見せると子供が暴力的になると言う意見を聞く。確かにマットガンを手にした六助のように全く影響が無いとは言えないが、南隊員のように周りの大人がきちんと諭せば良いと思う。
最後に声を大にして言いたいのは、今回の話のラストシーンは六助がマットガンを乱射する場面ではなくて、南隊員が優しく微笑み、六助が南隊員や郷と一緒に手を振る場面であると言う事。そう、ハッピーエンドなのだ。