帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ウルトラマン夕陽に死す」

ウルトラマン夕陽に死す ー用心棒怪獣ブラックキング登場ー
帰ってきたウルトラマン』制作第37話
1971年12月17日放送(第37話)
脚本 上原正三
監督 冨田義治
特殊技術 大木淳

 

暗殺宇宙人ナックル星人
身長 2m~43m
体重 250kg~2万t
宇宙電波研究所を秘密基地にしている。
シーゴラスとベムスターを使ってウルトラマンの能力を研究し、さらに坂田さんとアキちゃんを殺害して郷の動揺を誘うと、怒りに身を任せたウルトラマンをブラックキングと二人がかりで倒した。

 

用心棒怪獣ブラックキング
身長 65m
体重 6万t
ナックル星人の切り札でウルトラマンの技を破れるように訓練されている。
口から白い煙や赤い光線を吐く。
スペシウム光線やウルトラブレスレットも通じない強豪で、ナックル星人と二人がかりでウルトラマンを倒した。
劇中では語られていないが「レッドキングの兄」と言う設定もある。

 

竜巻怪獣シーゴラス(再生)
身長 62m
体重 5万2千t
ナックル星人に再生されたのだが以前に現れたシーゴラスなのかな? 角を折られたのが致命傷になったのかも。
今回も竜巻怪獣なのに津波を起こす。
今回はスペシウム光線で角を折られている。

 

宇宙大怪獣ベムスター(再生)
身長 46m
体重 6万1千t
ウルトラマンの能力を研究する為にナックル星人に再生された。
前回と同じく今回もウルトラブレスレットで倒される。

 

物語
ウルトラマン抹殺を企むナックル星人は坂田さんとアキちゃんを殺害して郷の動揺を誘う。
怒りに身を任せたウルトラマンはナックル星人の罠にはまって敗れ去ってしまう。

 

感想
帰ってきたウルトラマン』事実上のクライマックスと言える話。何と言っても、ウルトラシリーズで初めてレギュラーキャラクターが死んでしまうのが衝撃的。

 

ウルトラ特攻大作戦」にも登場した坂田さん発案のスタビライザーがマットビハイクルに取り付けられる事になった。結局、坂田さんの夢であった流星2号は完成しなかったが、坂田さんの心は残せたと言える。

 

「久し振りだな、アキちゃんのコーヒー飲むの」、
「それだけお見限りって事よ。近頃冷たいんだから」。
久し振りの郷とアキちゃんの会話。アキちゃんが登場するのは第27話の「この一発で地獄へ行け!」以来となる。
郷はアキちゃんに正月にスキーに連れて行く事を約束するが、それが果たされる事は無かった。

 

郷の壊れた腕時計を直しに行くアキちゃん。
店員に郷の事を「背はスラッと高くてハンサムで、優しくて思いやりがあって、忙しいのが玉に瑕、でも、とっても素敵な人」と説明するが、その情報でどういう時計を紹介しろと言うんだ? 店員さんも困っているぞ。でも、アキちゃんらしい。
この直後に郷とアキちゃんの時間が永遠に止まってしまう事を考えると、この幸せそうな場面は見ていて逆に辛くなってくる。

 

脅威の液化火薬サターンZ。一滴でタンカーを爆破させる、ニトログリセリン6000倍の威力、タバコの箱ほどの量で富士山を吹き飛ばせると物騒な事この上ない。これを使って中央連山を無くしてダムを建設すれば日本はますます豊かになると言うのはいかにも当時の発想と言える。今だったら自然破壊との批判を受けそう。

 

ナックル星人が再生したシーゴラスとベムスターとの連戦。
流用シーンなので途中にウルトラマンがウルトラブレスレットを付けていない場面があるがツッコんではいけない。
他にもシーゴラスとの戦いではカラータイマーが赤く点滅しているのに次のベムスターとの戦いでは青に戻っている。おそらくこれは「怪獣チャンネル」でビーコンと戦った時にも使ったウルトラブレスレットのエネルギー回復機能であろう。ここで一度使ってしまったので、直後のナックル星人とブラックキングとの戦いではウルトラマンはエネルギーを回復させる事が出来なかったのかもしれない。

 

坂田さんとアキちゃんの死は殺害されるシーンを直接描いているのでかなりショッキング。さすがにやりすぎなのではと思う。
二人の死によって郷の心は嵐の海のように荒れ狂う。この後に怪獣出現の連絡を受けて決意の表情で病室を出る郷は見ていて震える程に格好良い。

 

病院の屋上から飛び降り自殺をして変身する郷。
タッコング大逆襲」で慢心した為にウルトラマンに変身を拒否されたように、怒りで荒れ狂っている今の心理状態ではウルトラマンは変身を許可してくれないと郷は考えたのかもしれない。
だが、屋上から飛び降りてしまえば、ウルトラマンが力を貸してくれなければ郷は地面に叩き付けられて死んでしまう。これは郷からウルトラマンへの捨て身の頼みであった。
しかし、今のウルトラマンの精神は郷とかなり近くなっていて、郷と同じようにウルトラマンも坂田さんとアキちゃんの復讐を誓っていた。
あまりにも人間臭いウルトラマンの行動はヒーローとしては失格かもしれないが感情移入しやすい存在になったと言える。

 

ウルトラマンは人間と同じ情操を持っている。郷秀樹は人間であって人間でなく、宇宙人であって宇宙人でもない。不思議な奴だ」とはナックル星人の言葉。
果たして、ウルトラマンと郷は人間なのか宇宙人なのか?
おそらく答えは「両方さ。貴様のような宇宙の掟を破る奴と戦う為に生まれてきたのだ」であろう。

 

ナックル星人とブラックキングとの戦いはサブタイトルの通りに夕陽をバックにした悲壮感溢れるものとなった。ここまで夕陽の似合うウルトラマンは他にいない。
因みに宇宙人と怪獣がタッグを組んでウルトラマンと戦うのは今回の話が初めて。
丘隊員が顔を伏せた時、見ているこちらもウルトラマンの敗北を悟ってしまった。

 

卑劣極まりないナックル星人だが、本気でウルトラマンを倒して地球を侵略するのならここまでするべきであろう。悪役としてはウルトラシリーズでもトップクラスと言える。人間態を演じた成瀬昌彦さんの演技も素晴らしかった。

 

アキちゃん役の榊原るみさんが『気になる嫁さん』の主役に選ばれた為にスケジュールの確保が困難になり、今回の話で坂田兄妹が退場する事になった。
因みに『気になる嫁さん』の榊原さんの役名であった「坪内めぐみ」は榊原さんの娘さんである松下恵さんの名前の由来となっていて、これが『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』で松下さんが演じた郷秀樹と坂田アキの娘である「郷メグ」の名前に繋がっている。

 

アキちゃんの死は賛否両論あると思う。当時もそういう声があったのか、『ウルトラマンT』の白鳥さおりの時は役者を代えてそのまま登場させる事となった。

 

ウルトラマンは我々ナックル星人の手で葬った。ウルトラマンは死んだ!」。
果たしてウルトラマンはナックル星人に勝つ事が出来るのだろうか!?
と言う事で次回「ウルトラの星光る時」に続きます。

 

 

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