「青春の星 ふたりの星 ー大蝉超獣ゼミストラー登場ー」
『ウルトラマンA』制作第20話
1972年8月18日放送(第20話)
脚本 田口成光
監督 筧正典
特殊技術 佐川和夫
大蝉超獣ゼミストラー
身長 63m
体重 5万6千t
山を割ってド派手に登場した。
口から炎を吐く。念力で船を空中に飛ばす。
メタリウム光線で炎上した。
宇宙怪獣と蝉の合体生物。
名前の由来は「蝉」かな。
物語
星司はパトロール中に船が空を飛ぶのを目撃するが誰にも信用されない。
星司は休暇を利用してその船を調べに行く。船には篠田一郎と名乗る青年がいて……。
感想
今回の話の舞台となったスカンジナビア号は2006年に建造国のスウェーデンに向けて曳航中に沈没して現在は海の底で眠っている。
今回はタイアップ話なのだが、そのせいか色々と説明不足な部分があったのが残念。
今回のゲストである篠田一郎を演じているのは『T』で東光太郎を演じる事になる篠田三郎さん。東光太郎と全く同じキャラクターなのが面白い。
北極星から現れるスカンジナビア号、北極星と自分の名前を重ね合わせる北斗星司、そしてスカンジナビア号の元の名前であるステラ・ポラリスと星に関する言葉が色々と出てきて幻想的な話。
出来ればスカンジナビア号が空を飛ぶ場面を全て夜にして星空を背景にしてくれたらもっと幻想的になったと思う。
スカンジナビア号が鎖に繋がれたのも星司がTACに入隊した(つまりエースになった)のも今から3年前の事。
物語が始まって既に3年が経過していた事に驚くが、これは今回のみの設定で他の話にまで広げる必要は無いのかもしれない。
大学を飛び出した篠田は「自由だ! 解放だ! 皆、勝手な事ばかりやりやがって。真実なんてどこにもありゃしない。……一体、何を信じたら良いんだ、俺達は」と吐き捨てる。
篠田は学生運動に参加していたが、やがて学生運動に失望し、その後、鎖に繋がれたスカンジナビア号を見て、スカンジナビア号が動く瞬間は真実だと思ったらしい。
言っては悪いが、篠田は学生運動が自分の思い通りにいかなかったので嫌になって逃げ出した。しかし、スカンジナビア号は自分の思い通りに出来るかもしれないと思って留まったように見える。実際、篠田はスカンジナビア号に自分の旗を掲げて、これは自分の船だと王様気取りであった。
異常無し無事平穏だとTACに報告する星司を篠田は笑うが、その篠田の今の生活は無事平穏そのもの。嫌な事は何も無い自由気ままな生活であった。
それがヤプールと超獣の出現によって壊される事で遂に篠田は行動を起こし、スカンジナビア号は鎖から解き放たれるのであった。
最後に篠田が言ったように待っていても船は動かない、自分で動かそうとしなければいけない。
今までの篠田は自分で行動しているようで実は何もしておらず、スカンジナビア号を自分の手で動かすと言っていながら動く日をただ待っているだけであった。
篠田は大学に戻ると言う。おそらく今度は逃げずに立ち向かっていく事だろう。
今回のヤプールはどうしてスカンジナビア号を空に飛ばしたのだろうか?
考えられるとしたら、ゼミストラーの能力訓練であろうか。訓練が終了していたらエースを空に飛ばす事も出来たのかもしれない。
そう考えると、今回のヤプールは訓練を終えていない超獣を戦わせなければいけなかったとなり、今まで常に先手を打っていたのに今回は完全に後手に回ってしまったと言える。