「逆転! ゾフィ只今参上 ー異次元超人ヤプール登場ー」
『ウルトラマンA』制作第23話
1972年9月8日放送(第23話)
脚本 真船禎
監督 真船禎
特殊技術 高野宏一
異次元超人巨大ヤプール
身長 50m
体重 8万2千t
奇怪な老人を使って世界中の子供達を異次元に連れ去った。
異次元に乗り込んできたエースと勝負する為に全てのヤプールが合体し巨大化した。
多彩な光線技を持ち、空間そのものを操る。
エースのメタリウム光線に敗れると「地球の奴らめ覚えていろ。ヤプール死すとも超獣死なず。怨念となって必ずや復讐せん!」と言い残して爆発。その破片は助け出された子供達と一緒に地上に降り注いだ。
ゾフィ
身長 45m
体重 4万5千t
ウルトラの星からの指令を受けて夕子を異次元へと連れて行く。
「行け、夕子! 星司と共にヤプールをやっつけるのだ!」。
物語
世界中で奇怪な老人に連れられて子供達が消えていく事件が起きる。
ヤプールの地球の未来に対する挑戦が始まった。
「ヤプール人は恐ろしい奴だ。残忍な奴だ。地球を征服する為には手段を選ばない。何だってやるのだ。それがまさにヤプール人なのだ」。
感想
今回の話は真船監督が脚本も担当している。
過去にも飯島監督、野長瀬監督、樋口監督、実相寺監督がしているがペンネームを使わず脚本と監督のクレジットを同じ名前でするのは真船監督が初めて。
「お前は神を信じなさい。お前は俺を信じなさい。お前はお前を信じなさい」。
キリスト、釈迦、親鸞を引き合いに末世を説く老人。
「海は青いか? 違う! 海は真っ黄色だ。山は緑か? 違う! 山は真っ茶色だ。花は咲いたか? 違う! 花は死んでいる」。
子供達に従来とは違う価値観を植え付けようとする老人。そして真夏に降る雪。まるで安穏と日々を過ごす人々を挑発するかのようだ。
因みに老人が歌っているのはハナ肇とクレイジーキャッツの『学生節』の替え歌との事。
子供の時に人魂を見たと話をする夕子。星司の為に嘘を吐いたようには見えなかったので本当の話なのかもしれない。と言う事は夕子は子供の時から地球で暮らしていたと言う事なのかな。
「右に回りまーす。XYZ地点にはね、こっちの方が近道なんでーす」と明るく言う夕子が良い。
月夜に消えていく子供達。真っ暗な基地に響く奇怪な歌。子供達が消えて星になる。幻想と怪奇が入り交じったこの雰囲気こそ『A』の持ち味と言える。一種の狂気を孕んだこの独特な雰囲気は過去の作品にはあまり見られなかった。
『A』では単に街や建物が破壊されるのではなく、人間の心が襲われる。
子供達が消え、星司が半人半獣の老人に襲われた海岸。
花を持った子供達が星司の横をすり抜けて消えていった河原。
異次元は三途の川の向こう側にあるのだろうか?
隊長に姉の子で甥が2人いる事が判明する。
人間の未来である子供達を狙い始めたヤプール。
今回は街や建物を破壊しないが、それらを遥かに超える恐怖を人間に与えた。
子供がいなくなれば人間はやがて滅びる。そうでなくても、ある日突然、自分の子供を失った親達の心の傷は計り知れない。
遂に異次元突入の方法を発見したTAC。「メビウスの輪」を使った説明は正直言ってよく分からなかったが、実際に異次元に突入した人間がいないので仕方が無いかな。
梶隊員の「場合によっては……死にます」は緊迫感を一気に高めた。今回の梶隊員は竜隊長も信じられなかった星司の言葉を信じたりと見せ場が多かった。
星司は何の装備も付けずに異次元に送り込まれたが、異次元がどんな場所か分からなかったので、どのような装備を持たせて良いのか分からなかったのかもしれない。さすがにタックガンと特殊アダプターぐらいは持たせられていたと思うが。
そもそも今回は異次元突入が可能かどうかの実験で、星司帰還後に本格的な攻撃準備を進める予定だったのかもしれない。まぁ、結局はエースがヤプールを倒してくれたのでその必要は無かったが……。
異次元に突入した星司をどうやって帰還させるかだが、「鳩を返せ!」での鳩の帰巣本能のデータを使うつもりだったと考えられる。
ゾフィ登場! 最初から異次元に突入しろよと言いたくなるが、必要以上に人間に手を貸さないと言う決まりがあるのかもしれない。
それとも今回の件で初めてヤプールの居場所が分かったとか。
遂にヤプールとの直接対決。自分の本拠地だからかヤプールは意外と真っ向から戦った。エースとヤプールの一進一退の攻防は見応えあり。
「ヤプール死すとも超獣死なず。怨念となって必ずや復讐せん!」と言い残して爆発四散したヤプール。その破片は子供達と一緒に地上に降り注ぐ。
観念の存在であるヤプールが倒されるのはおかしいと言う意見もあるが、そもそも映像で表現された時点で既に観念の存在ではなくなっていたので、エースに倒されて怨念だけとなり、劇中に姿を現さずともその影が常にちらつく、今回の話以降のヤプールこそまさに観念の存在と言える。
「ウルトラマンエース、ありがとう。ウルトラマンエース、さようなら。今、子供達は地球に帰って来る。しかし、死んだ異次元人ヤプールの体は我々の知らない間に粉々になってやはり地球に舞い降りていたのだ。やがて地球に何が起こるのか、だーれも知らない……」。