「親星子星一番星 ー怪獣クイントータス キングトータス ミニトータス登場ー」
『ウルトラマンT』制作第5話
1973年5月4日放送(第5話)
脚本 上原正三
監督 吉野安雄
特殊技術 鈴木清
ウルトラセブン
身長 40m
体重 3万5千t
トータス親子と戦う事が出来ず対応に苦慮するタロウの前に現れ、トータス親子をウルトラの星に連れて行った。
裏設定ではセブンはトータス親子をアニマル星(カプセル怪獣アギラの出身地)に連れて行ったとなっているらしい。
大亀怪獣クイントータス
身長 56m
体重 3万7千t
卵を食べた人間達への復讐を遂げ、ZATのバスケット作戦で残された卵と一緒にオロン島に帰る。しかし、地球警備隊の攻撃を受け、最後の卵を口の中に入れて守るが自身は頭に傷を受けて狂ってしまう。
苦しみながら街を破壊し、最後はストリウム光線で倒されてしまう。その後、亡骸はウルトラの星に連れて行かれた。
大亀怪獣キングトータス
身長 60m
体重 4万t
地球警備隊の攻撃からクイントータスと卵を守ろうとするが出来ず、クイントータスがタロウに倒されたのを知るとミニトータスと一緒にタロウに復讐を始める。
その後、クイントータスとミニトータスと一緒にウルトラの星に旅立った。
大亀怪獣ミニトータス
身長 42m
体重 2万t
クイントータスが守った最後の卵から孵った。キングトータスの光線を受けて急成長すると母親の仇であるタロウに復讐を始める。
その後、セブンにウルトラの星に連れて行かれて、そこで親子3匹平和に暮らしているらしい。
物語
卵を食べた人間達への復讐を遂げたトータス夫婦をZATはオロン島に帰す事にする。しかし、地球警備隊のスミス長官はオロン島は人間の領土であるとしてトータス夫婦を攻撃する。
感想
「大海亀怪獣東京を襲う!」の続き。
前回の「大海亀怪獣東京を襲う!」で復讐に燃えるキングトータスがさくら丸を襲ったのは西イリアン諸島であった。イリアンと言えば『Q』の「五郎とゴロー」や『帰マン』の「津波怪獣の恐怖 東京大ピンチ!」「二大怪獣の恐怖 東京大龍巻」にも登場していて、どちらも人間の都合で怪獣の運命が翻弄される話であった。
過去の話では怪獣達は日本にいられなくてもイリアンに帰れば静かに生きる事が出来ると言う救いがまだあったのだが、今回は帰る場所であるオロン島が無くなってしまい、光太郎が言うようにトータス親子が住める場所はもう地球上のどこにも無くなってしまった。
そこでセブンが登場してトータス親子をウルトラの星に連れて行く事で事態は解決する。一見、安易な解決方法に見えるが、これはウルトラの星では怪獣でも悪意が無い存在を殺す事はしない、共存している事を示している。それはトータス親子のようにウルトラの星出身ではないものに対してもである。
それに比べて地球は人間以外の存在を認めず、悪意の無い存在でも畜生として殺そうとする。たとえそれが同じ地球で生まれ育ったものだとしてもだ。今回の話のラストは救いがあるように見えて実は現在の地球に対する痛烈な批判であるのだ。
地球警備隊のスミス長官はウルトラシリーズでは珍しく外国人であったが、それは今回の問題は日本だけでなくて他の国も含めた地球全体に当てはまる事を示しているのかもしれない。
今回提示された「人間と怪獣は共存出来るのか?」と言う話はやがて『T』のテーマの一つとなる。
トータス親子の処遇について話し合いが行われる中、鮫島参謀は「どうせ相手は畜生だ」と言い、それに対して朝日奈隊長は「畜生だって子を想う親心に変わりはありません」と返す。「大海亀怪獣東京を襲う!」でも黒崎がクイントータスの捕獲に躊躇する部下に向かって「相手は畜生なんだ」と言っていたが、やはり怪獣はそういう風に見られているんだな。
正面切ってスミス長官と鮫島参謀に反対した朝日奈隊長。『帰マン』のMATなら解散をちらつかせられそうだ。
朝日奈隊長が現場にいない事が多いのは、こう言う上層部を説得しているからであろうか?(本当は朝日奈隊長役の名古屋章さんのスケジュールの問題だが)
それにしても『T』は怪獣の感情表現が上手い。
オロン島でキングトータスがクイントータスと卵を必死に守ろうとする場面は見ていて思わず涙が出てしまう。
昭和のウルトラシリーズではウルトラマン達の中で最多のゲスト出演を誇るセブン。今回はトータス親子を連れて行く所がカプセル怪獣の出身地だったのでセブン登場は納得。
前にウルトラマン達とギリシア神話の関係について書いたが、ギリシア神話の英雄達も危機に陥ると神々が助けに来て、その英雄や神々は殆どが最高神ゼウスの子供となっているので、ウルトラ兄弟と同じく兄弟が助けに来たと言う事が出来る。
脚本の上原さん、監督の吉野さん、特殊技術の鈴木清さんの3人が『T』に参加したは今回の前後編のみ。
監督の吉野さんは今回の話がウルトラシリーズ監督最終作となっている。
鈴木さんは昭和ウルトラシリーズでは撮影を担当し、平成ウルトラシリーズではプロデューサーとして多くの映画を担当している。