帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「血を吸う花は少女の精」

「血を吸う花は少女の精 ー蔦怪獣バサラ登場ー
ウルトラマンT』制作第11話
1973年6月15日放送(第11話)
脚本 木戸愛楽
監督 山際永三
特殊技術 大平隆

 

蔦怪獣バサラ
身長 60m
体重 4万t
捨てられて死んだ子供達を供養する為に作られた捨て子塚から現れた。蔦を伸ばして人間の血を吸い尽くす。北島隊員の推理によると、元は吸血植物で土葬された子供達の死体を養分としていて、今度は地上の人間を襲い始めたとの事。
ストリウム光線で倒されるが怨念は残って捨て子塚がある寺を滅ぼした。
赤ん坊の泣き声で鳴く怨み花。
東京の崩れる日」のアリンドウの着ぐるみを改造している。

 

物語
夜な夜な起こる吸血事件。その調査中に光太郎は花を持つかなえと言う少女と出会う。
かなえは親に捨てられた孤児院からお金持ちの家に里子に出されていたのだが……。

 

感想
過去にもライブキング、トンダイル、デッパラス等が妖怪的な演出をされていたが今回のバサラは完全に妖怪と言える存在であった。これ以降、『T』怪獣は妖怪系が増えていく事になる。

 

警察には手に負えない事件なのでZATに応援要請が来る。北島隊員は不満たらたらであったが、荒垣副隊長は「たまには警察に応援してやらんとな」と一言。色々と大変らしい。
今回は犯人のかなえの境遇を考えたら『怪奇大作戦』とも言える話だった。

 

さおりさんがサークルの合宿に行っているので森山隊員が白鳥家に泊まり込みで家事を手伝ってくれる事に。これはただの同僚の行動だろうか? ひょっとして、光太郎に気がある?

 

健一君と森山隊員を襲うバサラの蔦。なんと酔っ払いに切られる!
酔っ払いと言えば普通は怪獣の犠牲者になるものなのだが、強いぞ、酔っ払い!

 

今回は取り上げるのが難しい捨て子の話。
上野隊員は「大体、近頃の女ときたら自分の都合しか考えないんだから!」と物凄い暴言を吐く。子供を育てるのは母親だけではないのだから、これは女性隊員達に「男こそズルイ」と言われても仕方が無い。
森山隊員が「子供を捨てたくて捨てる人はいないわよ」と言ったように様々な要因で子供と泣く泣く別れなければならなかった親だっているだろう。最後に光太郎が言ったように、これは一家族だけの問題ではなくて世の中全体の問題なのだ。しかし、問題を世の中(社会)のせいにしてしまうと一人一人の当事者意識が薄れてしまう恐れもあって、やはり難しい。(例えば「少年犯罪の防止は社会全体で取り組まないといけない」と言われても、その言葉が自分に向けて発せられていると考える人は意外と少ないと思う)

 

かなえは北島隊員が言うように「大人に利用された可哀相な子供」と言える。しかし、バサラの花の秘密を知っていながら笑顔でその花を親子に配るかなえの姿は哀しさを覚えるが決して許される行為ではない。『レオ』の「かなしみのさすらい怪獣」にあるが「寂しいからと言って、悲しいからと言って、何をしても良いなんてない」のだ。
ところで、かなえはどの時点でバサラの花の秘密を知ったのだろうか? もし最初から知っていたとしたら、光太郎や健一君に親切にしてもらいながら笑顔で健一君に花をあげる場面が物凄く怖くなる。

 

今回のタロウはバサラと言う怪獣を倒す事は出来たが、かなえの心を救う事は出来なかった。逆にバサラの方こそ、かなえの心を救ってくれる存在だったのかもしれない……。

 

「憎んでたんじゃないのかな……、自分を捨てたお母さんを。いや、お母さんにそうさせた世の中と言った方がいいかもしれない……」。
『T』は「親子」をテーマとした作品で、光太郎と母親、タロウとウルトラの母、各話の怪獣やゲストと様々な親子愛を描いている。しかし、全ての親子がそのような愛に恵まれているとは限らないし、愛があってもどうにもならない問題もある。今回はそこを取り上げた『T』では異色な、でも、なくてはならない話であった。

 

今回の話は1974年3月に「東宝チャンピオンまつり」として『ゴジラ対メカゴジラ』等と同時上映で劇場公開された。娯楽作品が揃った『T』でこの話が選ばれたのが驚き。

 

 

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