帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「幻の母は怪獣使い!」

「幻の母は怪獣使い! ーおうむ怪獣エレジア登場ー」
ウルトラマンT』制作第42話
1974年1月18日放送(第42話)
脚本 大原清秀
監督 深沢清澄
特殊技術 高橋勝

 

アンドロイド聖子
身長 158cm
体重 80kg
居眠り運転のトラックに轢かれて死亡した聖子をモデルに夫の信吾が独学のロボット工学を駆使して10年かけて完成させたアンドロイド。結婚当時をイメージして薔薇の花を持った純白のウェディングドレス姿になっていて、信吾の涙がエンゲージリングに零れた時に活動を開始した。
信吾の車を憎む気持ちが乗り移ってしまい、生前に飼っていたオウムのエレジアを怪獣として蘇らせて車を次々に破壊していった。
最後は迷いを振り切った息子のタツオに撃たれて破壊される。その亡骸と魂はタロウのリライブ光線で昇天して星になると宇宙を航行する宇宙船の道標となった。

 

おうむ怪獣エレジア
身長 62m
体重 2万7千t
聖子が生前に飼っていたオウムで、聖子が交通事故で死亡すると餌を食べなくなって後を追うように死んでしまった。
アンドロイド聖子によって稲妻のエネルギーを受けて怪獣として蘇った。車を憎み、国際モーターショーを襲撃する。口から炎を吐く。
アンドロイド聖子が破壊された事で動揺したところをストリウム光線で倒されると辺りには羽が降り注いだ。

 

物語
光太郎の中学校時代の後輩である島田が帰って来た。
島田の母親は10年前に交通事故で死んでしまい、島田の父親はそれから人が変わってしまった。
実は島田の父親である信吾は独学のロボット工学を駆使して妻の聖子をアンドロイドとして蘇らせようとしていた。

 

感想
独学のロボット工学を駆使して10年もの歳月をかけてアンドロイドを完成させた信吾の執念は物凄い。信吾の聖子への愛は本物だったのだろう。でなければ、エンゲージリングに零れた信吾の涙でアンドロイド聖子が活動を開始すると言う奇跡は起きない。
しかし、アンドロイド聖子は信吾の意思に反して車を次々に破壊していく。信吾自身に車への憎しみがあったのは事実だが、それでも実際に車を破壊して人を殺すほどではなかったはず。どうしてこのような事態になってしまったのか……?

 

信吾の時間は聖子が交通事故で死んだ日から止まった。いや、事故の日の前の結婚式当時にまで戻ってしまった。それはアンドロイド聖子の姿が結婚当時をイメージしたウェディングドレス姿だった事からも明らか。
結果的に信吾はあの交通事故だけでなく、聖子と二人で築いてきた結婚生活そのものまで消し去ってしまった事になる。信吾は全てを最初からやり直したかったのかもしれないが、それでは今実際に生きている二人の子供は一体どうなるのか? 信吾はアンドロイド聖子の存在を二人の子供に隠していたが、聖子に執着するあまり、今実際に生きている二人の子供の存在が見えなくなっていた可能性がある。

 

アンドロイド聖子は子供のタツオによく聞かせた子守唄を歌う。自分は信吾の妻であるだけでなくタツオとトモユキの母親でもある。それら全てを含めたのが本物の自分なのだと言いたかったのかもしれない。
タツオがアンドロイド聖子に銃を構えた時、かなりの時間があったにも関わらず、アンドロイド聖子に避ける素振りは全く無く、逆にかりそめの存在である自分の破壊してほしいと願っているようであった。しかし、タツオは母親の姿を撃つ事が出来なかった。
その後、アンドロイド聖子はエレジアを使って子供であるトモユキを殺そうとする。この時、信吾は子供の名を叫び、タツオは遂に銃の引き金を引く。ひょっとしたら、アンドロイド聖子は最初からトモユキを殺すつもりは無く、信吾とタツオに自分は本物の聖子ではなくてかりそめの存在であると知らせたかったのかもしれない。
「父さん。これで良いんだ。これは悪魔の魂を持ったロボットだったんだ……」、
「しかし、可哀相な事をしたなぁ……」。

 

全てが終わった後、タロウのリライブ光線でアンドロイド聖子の亡骸と魂は昇天して星になると、宇宙と言う海原を航行する宇宙船が迷わない為の道標となった。それは船で海を航行するタツオが迷わないよう道標としている灯台の灯りと同じであった。
今回の話は元々は西田隊員が再登場する予定だったらしい。と言う事は宇宙の道標となったアンドロイド聖子は宇宙ステーションで働く西田隊員を見守る存在になったのだろうなぁ。(因みに今回の特殊技術を担当している高橋監督は西田隊員役の三ツ木清隆さんが主役を務めた『光速エスパー』でも特撮監督を務めている)

 

「交通事故で死んだ人間」や「鳥怪獣が車に復讐する」と言う点が『初代マン』の「恐怖のルート87」と同じなので何かと比較される話だが、実際に見るとヒドラの位置に当たるエレジアよりムトウ・アキラの位置に当たるアンドロイド聖子の方に焦点が当てられている。

 

今回はタロウとエレジアの戦いを除いたら『怪奇大作戦』として成立しそうな雰囲気の話であった。
ところで光太郎はロボット製造装置を以前に見た事があると言っているがZATで研究されているのかな? 特別チームがロボットの製造を進めていると言う話は『80』の「あっ! キリンも象も氷になった!!」でアンドロイド・エミが登場するのに繋がるかもしれない。

 

今回の話に登場するのはアンドロイドであるが、どちらかと言うと「反魂の術」の感じが強い。どんなに死んだ人間の事を想っていても、人間に人間を生き返らせる事は不可能なのだろうか?

 

今回の話は大原さんのウルトラシリーズ脚本最終作、深沢監督の『T』監督最終作、高橋監督のウルトラシリーズ監督最終作となっている。
この後、大原さんは東映不思議コメディシリーズ等を手掛け、高橋監督は監督だけでなくプロデューサーとしても数多くの作品を手掛けている。