「あっ! タロウが食べられる! ーきさらぎ星人オニバンバ登場ー」
『ウルトラマンT』制作第44話
1974年2月1日放送(第44話)
脚本 田口成光
監督 真船禎
特殊技術 東条昭平
きさらぎ星人オニバンバ
身長 160cm~57m
体重 80kg~3万t
詳細は不明だが鬼と関係があるらしい宇宙人。やはり豆が苦手。
節分の日だけとは言え、仲間である鬼が人間に虐められるのが不愉快で、同じ宇宙人でありながら人間に味方して鬼を虐めるタロウを裏切り者と憎む。
普段は老婆の姿だが、鬼女の姿を経て、オニバンバと言う怪獣形態に変身する。
口から糸を吹き付けてこねる事で人間を豆の中に閉じ込める事が出来、光太郎を豆の中に閉じ込めて人間に食べさせようとしたが失敗し、オニバンバになってタロウと戦い、タロウが投げつけた豆を棍棒で打ち返そうとするが、やはり全ては打ち返せず退散した。最後に来年また来ると捨て台詞を吐くが……。
名前の由来は「鬼婆」かな。
物語
節分の日、各地で行われている豆まきを苦々しく見つめている老婆がいた。
老婆は鬼の仲間の宇宙人きさらぎ星人だったのだ!
感想
きさらぎ星人の老婆姿が怖すぎ!
鬼女やオニバンバに変身せず老婆のままでタロウと戦ってほしかったが、さすがにそれは無理か。
今回のテーマは「兄弟」で、兄には兄の、弟には弟の苦労があると言う話。
北島隊員が光太郎に向かって「お前は末っ子」と言ったのは違和感があった。確かにタロウは6人兄弟の末っ子だけれど光太郎は天涯孤独の身で兄はいないはず。『T』はタロウと光太郎の関係が整理されていないのがちょっと残念。
「鬼は人間の敵だろう」、「じゃあ、宇宙人だね」と言う子供達。
『T』は人間と怪獣の共存が語られる一方で宇宙人は絶対悪として片付けられてしまっているところがある。逆に次作『レオ』では人間と宇宙人の共存が語られる一方で今度は怪獣が単なる脅威として片付けられている。
光太郎と一郎が死んだと思って悲しみに暮れるZATと二郎。回想シーンまで入れて滅茶苦茶シリアスにしているのが逆におかしい。「僕を助けてくれた兄ちゃんのように強くなるんだ!」と豆を食べようとする二郎と「おーい、二郎! お前の気持ちは分かった分かった! お願いだから、この豆を食べるな!」と豆の中から呼びかける一郎の場面も真面目になればなるほど笑えてくる。
でも、豆を食べようとする二郎の絵はちょっと怖い。又、南原隊員は食べやすくなるよと自分のヘルメットに豆を入れさせたが、これもちょっと不衛生で気になった。
餅つきに塩漬けに今度は豆まき。この後にはダンスやらバレー対決なんてものもあり、初期ウルトラシリーズのファンがこれらの話を許せないのも分かる。自分も『セブン』や『帰マン』でこれらをされたらたまったものではない。ただし『T』なら、らしくて良いんじゃないかなと思う。同じウルトラシリーズと言っても作品ごとに色が違うわけなので。
タロウに敗れるも「畜生! 来年また来るから、それまで覚えていろー!」と捨て台詞を吐くオニバンバ。しかし、来年の節分の時期にはタロウもZATもいない。それどころか円盤生物の襲来でオニバンバどころの騒ぎではなくなっていた……。(まぁ、次郎を演じた新井つねひろさんは梅田トオルとして出演しているけれど)
今回の話は真船監督の『T』監督最終作となっている。又、東条(東條)監督が『T』に参加したのは前回と今回の2本のみとなっている。