帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「運命の再会! ダンとアンヌ」

日本名作民話シリーズ! 運命の再会! ダンとアンヌ 狐がくれた子より ー超能力星人ウリンガ登場ー
ウルトラマンレオ』制作第29話
1974年10月25日放送(第29話)
脚本 阿井文瓶
監督 山本正孝
特撮監督 矢島信男

 

超能力星人ウリンガ
身長 130cm~60m
体重 70kg~3万9千t
最初は赤い服を着た少年「ウリー」として登場。鼻をこする癖がある。ダンのウルトラ念力と同等の念力を持つ。アンヌらしき女性をママと呼んで慕う。
念力を多用していくうちに体色が銀色に変わって念力の強さも増していき、最後は巨大な宇宙人の姿になった。
体に生えている角を武器とし、念力でレオを持ち上げる事が出来る。しかし、念力を使う前に心の準備をする必要があり、その隙を突いたレオに接近戦に持ち込まれた。
ウリンガが無理をして小さくなっているその窮屈さに耐えかねて暴れている事を知ったレオはウルトラマントでウリンガのエネルギーを抑えてウリーの姿に戻した。
アンヌらしき女性によると宇宙人の捨て子だったらしい。
その後、ウリーとアンヌらしき女性はレオによって宇宙に帰されたらしい。

 

物語
下町に少年の宇宙人が現れ、調査に赴いたダンはそこでアンヌらしき女性と出会う。
ダンはアンヌとの再会に喜ぶが、その女性は自分はアンヌではないと言う。

 

感想
おそらく『レオ』で一番解釈が難しい話。
今回は『狐がくれた子』がモデルとなっているが、そういう題名の民話は無く、安倍晴明の両親となった人間の男と狐の女の話である『信太妻』と1971年に公開された勝新太郎さん主演映画の『狐のくれた赤ん坊』がモデルになっていると言う説がある。『信太妻』の人間と狐の夫婦を男女逆にすれば宇宙人ダンと地球人アンヌになるので、内容は『信太妻』が、題名は『狐のくれた赤ん坊』がモデルになっているのかなと思う。
どちらにせよ、今回は他の「日本名作民話シリーズ」と違って、始めにダンとアンヌの再会があって、後から使えそうな民話を繋ぎ合わせたように見える。

 

『レオ』で『セブン』の設定を明確に受け継いでいる唯一の話で、『セブン』最終回の「史上最大の侵略 後編」での告白シーンも入れられている。
結局のところ、女性はアンヌだったのか違ったのか、真実が明かされる事は無かった。ただし、女性の反応を見ていると赤の他人とはとても思えないので、やはりアンヌだと考えるのが妥当であろう。

 

ウリーはアンヌの子供なのか違うのか。
アンヌは「私の子じゃないんです。宇宙人の捨て子だったんです」と語っている。
アンヌはウルトラ警備隊に務めていたので宇宙人の捨て子と出会う可能性は高く、性格から考えても捨て子を放っておけなかったと言うのは納得。又、ウリーをダンと重ね合わせていたと考える事も可能だろう。

 

仮にウリーがアンヌの子供だったと考えれば父親は誰なのか?
これはもうダン以外に考えられない。
ウリーはダンと同じく念力の使い手だった。又、ウリンガとセブンのデザインも似ていると言えば似ていると言える。
実際のところはどうだったかはともかく、劇中ではアンヌを妻=母として、父親のダンと息子のウリーの葛藤と言う図式を取っている。

 

何故アンヌはあれほどダンを拒んだのか。それはダンがMACの隊長だったからだ。
ウルトラ警備隊の時代からMACまで、特別チームの殆どが宇宙人を「地球人の敵」と認識していた。『レオ』では初期の宇宙人達の残虐非道な行為によって状況は悪化していて、大多数の地球人は宇宙人を排除すべしと考えるようになった。レギュラーのトオルでさえ、ウリーが宇宙人かもしれないと怪しんだら百子さんの反対も押し切ってウリーをMACに突き出そうとしていた。
MACの隊長であるダンと、宇宙人ウリーのママであるアンヌとの間に出来てしまった溝は広くて深い。

 

アンヌが初めて現れた時にナレーションはアンヌをウルトラ警備隊時代の同僚だと紹介しているが、今回のアンヌは終始和服を着ていて、ウルトラ警備隊の制服を着る事は無かった。
アンヌは宇宙人を倒すウルトラ警備隊の隊員としてではなくて、宇宙人ウリーのママとして生きていた。
一方のダンもアンヌと再び会う時はMACの制服を着ず私服で会いに行っている。これは宇宙人を倒すMACの隊長としてではなくて、一人の男として会いに行ったと言う意味であろう。
しかし、そこにMACからの通信が入り、ダンはMACの隊長として出動しなければならなくなってしまう。

 

その後、遊園地で遊んでいるウリーを宇宙人として倒そうとするゲンやMACをダンは体を張って止め、ウルトラ念力と言うウリーと同じ宇宙人としての能力を使うが、段々強力になっていくウリーに比べてダンの能力は弱まっていた。
溶けたウルトラアイ。ダンにはもはや同じ宇宙人としてウリーを止める事は出来なかった。『セブン』時代から地球人に憧れ、地球人になりたいと願っていたダン。しかし、宇宙人の能力を失い、地球人として生きる事によって、逆に出来なくなった事が生まれてしまった。

 

最後にアンヌは「私はアンヌじゃありません。隊長さん。私はあの子をあなたのような立派な人に育てたいと思っていたんです」と語った。
アンヌはダンの事を一度も「ダン」と呼ばず、「MACの隊長」と呼んだ。そしてダンのもとから離れると、宇宙人の能力を制御できず地球人として生きていけなくなったウリーの所へと向かった。
レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時」で、セブンの能力を失い、地球人として生きていく事を誓ったダンは「俺はもはやセブンではない」と語る。そして宇宙人ウリーのママとなったアンヌは「私はアンヌじゃありません」と語った。
最初にダンは宇宙人として地球人のアンヌと出会い、最後にアンヌは宇宙人の母として地球人のダンと別れたのだった。

 

さて、この話にはもう一つ、「全てはダンが見た白昼夢だった」と言う解釈も出来る。
アンヌらしき女性と出会った後、ダンはどこだか分からない草原にいた。ここでダンはアンヌらしき女性に「ママ」と言って抱きつくウリーを見る。
今回の話は、かつての青春と苦い再会を果たしたダンが、その青春を取り戻そうと奮闘する話と見る事が出来る。
しかし、時間が巻き戻る事は無い。ダンにとって青春の象徴だったアンヌは、今のダンにとって現実の象徴であるレオによって、手の届かない所に行ってしまった。
あの異常なほど古臭い下町は『Q』風に言うならアンバランス・ゾーンへの入り口だったと言え、ダンはそのアンバランス・ゾーンに迷い込んでしまったのだ。

 

今回はダンとアンヌの会話から色々な事が分かる。
ダンがまた地球に住む事になって真っ先にアンヌを捜していた事。
ここでの会話から、かつての仲間、ウルトラ警備隊の隊員達の存在が見え隠れする。皆、どうしているのかな?

 

今回、白川隊員が出なかったのは残念だったかも?

 

今回は解釈が難しい話と書いたが、『ウルトラ銀河伝説』でセブンの息子であるゼロが登場してからはさらに解釈が難しくなってしまった。今回登場したウリンガとゼロを同一人物とする解釈もあるようだけど……。

 

「あれはアンヌだったのか、それとも別人だったのか、永久に確かめる術は無くなってしまった……」。

 

 

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