帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「レオの命よ! キングの奇跡!」

恐怖の円盤生物シリーズ! レオの命よ! キングの奇跡! ー円盤生物 星人ブニョ ウルトラマンキング登場ー
ウルトラマンレオ』制作第50話
1975年3月21日放送(第50話)
脚本 石堂淑朗
監督 山際永三
特撮監督 矢島信男

 

ウルトラマンキング
身長 58m
体重 5万6千t
ブニョとブラック指令に八つ裂きにされたレオの前に現れる。「地球の人間が1人でもお前を欲している間は死ねない」として、キングビームでレオに新たなウルトラの命を与えて復活させた。
今回は2着目のウルトラマントを着用している。1着目は裏地が赤だったが2着目は青紫色になっている。

 

円盤生物星人ブニョ
身長 190cm~61m
体重 84kg~2万3千t
ブラックスターから地球にやって来た。人間形態を持つ唯一の円盤生物。
力は無いが知恵はあるとして、レオを騙してやると宣言。耳から出るアンテナでレオの正体がゲンである事を突き止める。
最初は腹痛を装ってゲンを狙うが宇宙人である事がバレて失敗。続いて、病院に泥棒が入ったと言う嘘の電話を入れて咲子さんを拉致し、咲子さんとの交換でゲンを捕らえ、宇宙光線で作られた決して切れる事が無い宇宙ロープで縛った。
ゲンはレオに変身しても巨大化できず、地下の処理室に連れて行かれ、零下100度で氷漬けにされてノコギリで八つ裂きにされてしまう。レオの死体を墓地に放置したブニョは巨大化し、口から出す火花で街を破壊する。
しかし、キングによってレオが復活。元々地球の重力には不慣れで体が重さに耐えられず全身から体液を漏らしていたが、シューティングビームを受けて体の溶解が一気に加速して、最後はレオキックで頭を蹴り飛ばされて完全に溶けてしまった。

 

物語
人間形態を持つ円盤生物ブニョは咲子さんを人質にゲンに投降するよう脅迫する。
一方、いずみはレオがいるから自分達はブラックスターに狙われているのではと考える。

 

感想
人間形態を持つ唯一の円盤生物であるブニョが登場。段々と人間を利用するようになった円盤生物であったが遂に円盤生物自身が人間の姿を持つようになった。
ブニョを演じた蟹江敬三さんは地球の重力には不慣れと言う設定でくにょくにょとした怪しい動きを見せてくれる。ゲン=レオをいたぶる姿もぶっ飛んでいて、円盤生物の中でも特に印象に残るキャラクターとなった。

 

ブラック指令はブニョの事をよく知らなかった。
冒頭のブラックスターとのやり取りを見ていると、ブラック指令にもブラックスターや円盤生物について知らない部分が色々とあるようだ。

 

危機に備えてトレーニングを続けていたゲン。一方のトオルは怠け癖や依存心が出始めている。
そう言えば、城南スポーツクラブはよく円盤生物に狙われなかったなぁ。

 

いずみの「レオについてどう思う?」と言う話に対して、トオルは普段はどこに隠れているのかを気にする。
トオルは後にレオの死体を発見した時も「小さくされて人間と同じになって殺されたんだ」と言っているので、どうやらトオル(やその他の人々)はレオは常に巨人でいると考えていて、普段は人間に変身していると言う考えは無いようだ。これならゲンが怪しまれないのも当然だろうか。

 

いずみがここで言いたかった事はレオの普段の居場所なんかではなく、ブラックスターは地球ではなくてレオを狙っているのではと言う事。
実際はトオルやあゆみが言うように、地球が欲しくて、まず邪魔なレオを狙っているのだが、いずみはあまりにレオを狙ってくるので、ブラックスターはレオに怨みか何かがあって地球に来ているのではないかと考えてしまう。
当ブログでは『レオ』前半の劇中で目的が語られていない宇宙人や怪獣をレオへの復讐を誓うマグマ星人が送り込んでいるのではと解釈したが、もしそうだとすると、いずみの言っている事もあながち的外れではない。

 

その後、咲子さんが人質に取られて、いずみはレオが近くにいるのでこの家が狙われたんだと訴える。この考えは当たっている。
咲子さんと交換でゲンが連れて行かれ、咲子さんはブニョはゲンを誘き出す為に自分を捕らえたのではないかと考え、あゆみはゲンがレオなのかと続ける。
しかし、いずみはそんなまさかと信じず、トオルもレオに間違えられてブニョに連れ去られたゲンは可哀相だと呟いている。
いずみとトオルは「さようならレオ! 太陽への出発」でもゲンの前でレオを非難しているが、それはゲンがレオだと知らず、ゲンもレオが近くにいる為に被害に遭った犠牲者だと思っていたからだ。しかし、悪意が無いだけに、いずみとトオルの発言はよけいにゲンを傷付ける事になる……。

 

TVやラジオを使ったブニョの脅迫は不気味で恐ろしい雰囲気が出ていた。
ブニョは「レオは人類の味方だそうだからな。病人のいる所では戦えない。変身しない」と痛いところを突く。

 

ゲンがブニョに連れて行かれた地下室。壁にはブラック指令の服と同じマークがあるがブラック指令の秘密基地だろうか?
今まで円盤生物を呼ぶ以外はあまり動かなかったブラック指令だが、今回は専用の剣やノコギリを取り出して自らレオを解体している。解体する時の表情が実に悪役らしい。
まず剣でゲンを切ろうとするが、ゲンがレオに変身すると逆に剣の方が折れてしまった。しかし、剣を受けたレオの額にもヒビが入っている。人間大とは言え、レオの体にヒビを入れるとは凄い剣だ。

 

処理室に連れて行かれて零下100度で氷漬けにされてしまったレオ。「まぼろしの少女」でブリザードの零下100度の凍結ガスに耐えたが、さすがに長時間は耐えられなかったか。
レオがブニョにいたぶられる場面は見ていて辛い。ブニョの「長い間ご苦労だったな! まぁ、安らかに眠りたまえ!」と言う台詞は、レオだけでなく全てのウルトラマン達に向けて言っているような気がする。(『レオ』でウルトラシリーズは一旦終了するので)

 

トオル君、さようなら……。僕を地球に埋めてくれたまえ……。僕がいたばかりに地球の人々に迷惑をかけたのかもしれないけれど、僕は地球が好きだ……。人間が好きだ……。地球で永遠に眠りたいのだ……」。
解体されたレオのトオルへの遺言。これはレオの偽らざる気持ちであろう。
今回は殆ど戦う事無く敗れたレオ。宇宙ロープで縛られていた事もあるが、いつものレオならそれでも諦めずに戦ったと思う。やはり、いずみの言葉が心に重くのしかかっていたのだろうか。翌日、トオルが墓地で発見したバラバラに放置されたレオの死体はあまりにも無残だった。

 

レオの死を確認して「地球の諸君! レオは死んだ! 地球はもうブラックスターのものだ!」と高らかに勝利宣言するブラック指令。
逃げ惑う人々。壊される街。
死んだはずのレオの目から一粒の涙が流れ、落ち葉の上に零れた時、そこに映し出されていたのは伝説の存在キングの姿だった。

 

もはや何でもありで反則に近い存在キングのじーさん。
「レオよ。お前はまだ死ねない。地球の人間がたった1人でもお前を欲している間は死ねない! 辛くとも、まだ戦わなければいけないのだ!」と告げてレオ復活と言う奇跡を行う。
この時からレオのカラータイマーの音がレオのものから初代マンのものに変わっていて、レオはただ生き返ったのではなくてL77星の宇宙人から不滅の存在ウルトラマンへと生まれ変わった、名実共に真のウルトラマンになったと考える事が出来る。
それにしてもバラバラにされたレオの死体が動くのはちょっと怖い……。

 

復活してブニョを倒したレオ。
『心にウルトラマンレオ』(辰巳出版)ではレオがいつものように空の彼方に飛び去らなかった事を重要視している。
レオの帰るべき所は空の彼方ではない。ラストシーン、ゲンは美山家に向かって駆けていた。

 

「レオよ。お前はまだ死ねない。地球の人間がたった1人でもお前を欲している間は死ねない! 辛くとも、まだ戦わなければいけないのだ!」。
ウルトラマン。どんなに辛い状況に置かれようとも、自分を必要としている人が1人でもいるかぎり、その人の為に戦い続けなくてはならない。その為には死ぬ事さえ許されない存在。それがウルトラマン
考えてみたら、この世で最も可哀相な存在なのかもしれない……。

 

今回の話は石堂さんの『レオ』脚本最終作となっている。

 

「この後、ブラックスターはいよいよ最強最後の円盤生物ブラックエンドを地球に飛ばし、ウルトラマンレオに対する最後の戦いを開始しようとしていた。レオはどうなるのだろう? 地球はどうなるのだろう?」。

 

 

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