帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「新しいヒーローの誕生!!」

「新しいヒーローの誕生!! ー冷凍怪獣シーグラ登場ー
『ザ☆ウルトラマン』制作第1話
1979年4月4日放送(第1話)
脚本 阿部桂一
絵コンテ 鳥海永行
演出 石田昌久

 

冷凍怪獣シーグラ
身長 73m
体重 6万2千t
南極から赤道を越えて東京湾までやって来た氷山の中から現れた。口から冷凍ガスを吐いて周りを自分の棲みやすい環境に変える。
全部で4体いたが、うち2体がジョーニアスを倒そうとして間違って自分達を凍結させてしまい、残り2体はコンビプレーでジョーニアスを苦戦させるも最後はプラニウム光線で倒された。

 

物語
地球各地に謎の光と文字が現れ、調査の為に科学警備隊が結成される。
ヒカリ超一郎は地球に向かう途中でウルトラマンと出会い、地球に危機が迫っている事を知らされる。

 

感想
オープニングの映像はシルエットとメカ描写を組み合わせたもので歴代オープニングをまとめた感じになっている。その一方で背景に宇宙や地球を登場させると言うアニメだからこその部分もある。
オープニング曲もエンディング曲も作詞・阿久悠、作曲・宮内國郎、歌・ささきいさおと言う豪華な組み合わせになっている。作詞家と歌手の組み合わせが『宇宙戦艦ヤマト』と同じだが、本作はそれ以外にも当時の松本零士作品の影響を感じるところがある。(ヒカリ超一郎役の富山敬さんとジョーニアス役の伊武雅之さんの組み合わせも『ヤマト』を意識したとの事。古代進デスラー総統を主人公二人に割り振ると言う発想が凄い)
因みに劇伴の第1回録音は宮内さんの担当で追加録音は冬木透さんの担当となっていて、こちらも主題歌と同じく豪華な組み合わせになっている。

 

地球各地に現れた謎の光と文字を調査する為に地球防衛軍内に設置された科学警備隊。
極東ゾーンではアキヤマ隊員がキャップを引き受ける条件としてメンバーを自分に決めさせてほしいとし、さらに極東ゾーン直属の最新鋭機であるスーパーマードックも要望する。
自分の要望を押し通して上層部を折れさせる押しの強さは無茶な上層部に苦汁を嘗めさせられていた第2期ウルトラシリーズの後だと実に痛快。
このように特別チームが設立されるまでの流れを描いた作品は少なく、本作以外だと『A』と『USA』ぐらいである。(あとはチーム設立でなくメンバー入れ替えであるが『メビウス』辺りか)

 

マルメ隊員は以前からアキヤマキャップを慕っている感じ。自分は優秀なエリートではないが科学警備隊に選ばれたいと強く訴えて隊員第1号となる。
トベ隊員はスーパーマードックを設計した優秀な科学者。声優は二瓶正也さんで『初代マン』のイデ隊員と同じ科学担当となっている。
ムツミ隊員は医療班からアキヤマキャップによって引き抜かれた。謎の光や文字に強い関心を持っていて多くのデータを集めていたのが理由らしい。美人だからと鼻の下をのばすマルメ隊員に向かって「ありがとう。でも女だからと言って私を特別扱いしないでください」とビシッと返すのがカッコイイ。
「科学警備隊」と言う名前は『初代マン』の科特隊と『セブン』のウルトラ警備隊を合わせたもので、隊員のキャラクターは科特隊、隊服はウルトラ警備隊をモデルしていると思われる。

 

情報を担当するピグは地球防衛軍に100体近くいるロボットの第1号でマルメ隊員とも知り合いとなっている。人間と友好的な存在と言う部分は『初代マン』のピグモンが、ロボットの部分は『Q』のガラモンがモデルになっている感じかな。科学技術が発達している特別チームだが、ロボットが登場したのはピグの他には『80』最終回の「あっ! キリンも象も氷になった!!」のアンドロイド・エミと『マックス』のエリーくらいで意外と少ない。
情報分析と言う最も重要な役の為、ピグはかなり活躍する。今回もピグは謎の巨人の名前が「ウルトラマン」である事を突き止め、この作品における「ウルトラマン」の名付け親になっている。
ピグと一緒にいる猿のモンキを見ていると『母をたずねて三千里』を思い出す。

 

宇宙ステーションEGG3から科学警備隊に入隊する為に1年振りに地球に帰って来たヒカリ。
ウルトラシリーズの主人公は他の部署との係わりが意外と薄いので、EGG3を旅立つ時に他の隊員達と会話を交わした場面は短いながらも印象に残った。
逆に地球に到着したヒカリと科学警備隊の出会いの場面はカットされてしまっている。出会いの場面があると各キャラクターの人物像や人間関係等が分かりやすくなるのでカットされたのは残念だった。

 

ロケットで地球に向かう途中、謎の赤い光に遭遇したヒカリは不思議な空間で太陽を背にしたジョーニアスと出会う。
ヒカリ「お前は誰だ?」、
ジョーニアス「私はウルトラマン」、
ヒカリ「ウルトラマン?」、
ジョーニアス「我々は地球の危機を知らせる為に第一種接近・光で、第二種接近・ウルトラ文字で危機を警告した。その結果、科学警備隊が結成された。そこで第三種接近として私が地球に向かう。だがこの姿では地球上にいる事は出来ない。君の体を借りる。宇宙全体の平和の為、私は君の体を借りて地球へ行く」。
ここまで詳しく説明してくれるウルトラマンは実は少ない。でも、ここまで説明しておきながらヒカリの返事を聞かず勝手に同化しちゃったりする。
主人公が最初から防衛軍に所属していると言う設定やウルトラマンと出会う場面は『初代マン』の「ウルトラ作戦第一号」をイメージしていると思われる。
歴代主人公は生死の境を彷徨っている時にウルトラマンと遭遇しているが、本作はまだ危機に陥っていない状態で遭遇している。これは他のウルトラマンと違って危機が表面化する前から準備を進めていたジョーニアスらしいと言える。
尚、当ブログのレビューでは「ジョーニアス」と表記しているが、劇中では第1話時点では単に「ウルトラマン」と呼ばれている。下の名前を呼ばないで「ウルトラマン」とだけ呼ぶのは当初の予定では初代マンと同一人物の設定だった『帰マン』に続いて二例目で、この後は海外作品である『G』や『パワード』を除くと『ネクサス』まで無い。

 

科学警備隊結成がジョーニアス達の意思だった事が明らかになる。多くのウルトラマンが人類の歴史に深く関わらないようにしている中、これは非常に珍しい事例である。
ジョーニアスは怪獣出現を予知して危機を警告したとの事だが、「見えたぞ! まぼろしの怪獣が…」のザローム等、既に怪獣が何体か出現しているので、怪獣出現率が異常に高くなった事を知らせたのだと思われる。

 

スーパーマードックは空はもちろん水中も平気と言う万能機。
発進シーンは実写特撮に比べると絵の弱さを感じるが、今まで無かったアングルの絵があって巨大感は出ていた。
シーグラの動きを止める為にレーザーバリヤーを使用。昭和の特別チームでレーザーバリヤーが登場するとは驚いた。これもアニメの力かな。

 

南極からやって来た氷山を調べる事になったヒカリとマルメ隊員はマイナス5度で寒いと震えている。どうやら科学警備隊の隊服は他の特別チームのような防寒仕様にはなっていないようだ。

 

氷山を割ってシーグラ登場!
なのだが巨大感と重量感が無い。線の書き込みとかもあるのだろうがそれ以上に見せ方が悪かった。
たとえば真横から描いた場面が多かったが、巨大感を出すのなら下から見上げる構図を取り入れたり、手前に建築物を置いて対比させたりと、いくらでも方法はあったはず。他にも画面の中に怪獣の全体像を全て入れ込んでいるのも怪獣を小さく見せてしまう事になっている。ここ画面に入りきれないほど大きく描いてほしかった。
実写からアニメに切り替わって、それまで使われていた技術や方法が継承されなかったのが残念。

 

シーグラに撃墜されたヒカリだったが、ビームフラッシャーを額に当ててジョーニアスに変身する。
変身してから巨大化するのはセブン方式で後に80の変身にも引き継がれている。
ヒカリとジョーニアスの一体感の表現にアニメの強みを感じる。

 

本作は初のアニメ作品と言う事でそれまでのシリーズとは世界観が一新されていて、ウルトラマンを初めて見る事となった科学警備隊はジョーニアスを見て「何だあれは!?」「敵が増えた!」と発言。その後、怪獣と戦うジョーニアスを見て味方らしいと判断している。これは後の『G』や『パワード』等でも見られたる展開。
本作は過去にウルトラマンが現れていないと言う設定なので、『初代マン』のようにウルトラマンを謎めいた宇宙人として描く事が出来ている。

 

ウルトラマンのエネルギーは地球上では急激に消耗する。エネルギーが残り少なくなると胸のカラータイマーが青から黄色、そして赤に変わる。さらに赤の点滅が始まって30秒経つとウルトラマンは二度と立ち上がれなくなるのだ」。
信号機の配色からも青から赤に変わる途中に黄色を挟むのは納得。元々、初代マンも企画の時点では青から黄色を経て赤に変わる設定だったわけだし。
因みにナレーションでは語られていないが、ジョーニアスの活動時間は他のウルトラマンよりも長い4分間となっている。
必殺のプラニウム光線はそれまでのウルトラマンの必殺光線とは違ったオリジナリティがあって良かった。

 

最初はジョーニアスとの出会いを半信半疑だったヒカリだが、自分が星型のペンダントを持っていた事でまさかと思い、シーグラに撃墜された時にジョーニアスに変身した事で遂に自分の身に降りかかった事実を受け入れる事となる。
ヒカリ「夢ではなかったんだ。俺の体の中にウルトラマンがいるんだ」、
ジョーニアス「ヒカリ、君の中に私がいる。だが、この事は君と私二人だけの秘密だ」。
同化の相手として選ばれた理由はいずれ分かるとジョーニアスに告げられたヒカリ。
科学警備隊はジョーニアスが正義の宇宙人で謎の光や文字で自分達に危機を警告してくれたと解釈する。
「それはヒカリ超一郎にとって思いがけぬ事であった。しかし、静かに迫る夕闇の中に輝く一番星を見ながら、この平和を守らねばと新しい決意を深く心に刻むのであった」。
エンディングナレーションが妙に小説っぽくヒカリの心情を説明していたのがなんかおかしかった。
そう言えばジョーニアスに選ばれた理由と同じく、ヒカリが科学警備隊に選ばれた理由の説明が無かったな。

 

地球各地に現れるウルトラ文字、宇宙ステーションEGG3の周りに広がる宇宙空間、凍らされる東京湾、大勢の人間や複数登場する怪獣等、実写では予算等の関係で難しかったところを今回アニメの力で見事映像化している。

 

脚本の阿部桂一さんは『ザ☆ウル』は今回のみの登板。
円谷作品では他に『猿の軍団』『恐竜探検隊ボーンフリー』『恐竜大戦争アイゼンボーグ』等を手掛けている。

 

 

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