帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「君がウルトラマンだ」

「君がウルトラマン ーいん石怪獣ゴグラン登場ー
『ザ☆ウルトラマン』制作第14話
1979年7月11日放送(第15話)
脚本 吉川惣司
絵コンテ 鳥海永行
演出 石田昌久

 

隕石怪獣ゴグラン
身長 幼虫・9cm~63m 成虫・109m
体重 幼虫・800g~5万5千t 成虫・5万3千t
隕石群に紛れて、植物の種に見える卵で星に飛来する。地球に降り注いだ一つが竹馬山にある植物研究所で放射能を当てられて巨大化した。
防衛軍との戦いで炎に包まれるが、さなぎの状態を経て成虫に成長する。羽ばたきと燐紛で街を破壊するが、最後はプラニウム光線で倒された。
かつて宇宙ステーションEGG3を襲ったが、ヒカリの活躍によって幼虫の状態で撃退されていた。

 

物語
ジョーニアスに変身して活躍していくのに比例して、ヒカリは自分自身の存在理由を見失いかけていく。
そんな中、ヒカリはかつて宇宙ステーションEGG3で遭遇したゴグランと再び戦う事になる。
果たして、ジョーニアスがヒカリを選んだ理由とは?

 

感想
地球防衛軍極東ゾーン科学警備隊員ヒカリ超一郎。彼が誰に言われるともなくトレーニングを始めたのはいつの頃からだろうか? 体を鍛え、常に健康を心掛けるようになったのは……。そう、彼がウルトラマンである事を自覚してからである」。
制作第1クールはウルトラシリーズの基本的な話をアニメで再現したと言う感じだったが、第2クールに入った今回の話から『ザ☆ウル』独自の視点が盛り込まれていくようになる。
それはこれまでのウルトラシリーズではあまり触れられてこなかった「人間とウルトラマンの関係」であった。

 

科学警備隊が過去の戦いを見返していると、ジョーニアスの正体が何者かと言う話題になる。
ピグが地球人ではないと言う計算を出すが、ムツミ隊員はもっと身近な存在ですぐ傍で見守ってくれているみたいと反論。
それを聞いていたアキヤマキャップはジョーニアスの正体を詮索するのはよそうと告げる。
「彼が我々の地球を愛していると言う事実。それで十分だ。我々は素晴らしい協力者を持っている。それだからこそ、我々は努力を怠らず、彼に恥じない行動を取るべきだ」。
ウルトラシリーズにおける人間とウルトラマンの理想的な関係を簡潔に述べた見事な台詞。
今回、アキヤマキャップが過去の戦いを見返させたのは科学警備隊にその意識を持たせる為であった。
段々と科学警備隊がジョーニアスを頼りにするようになってきていたので、それを戒める目的があったと思われる。
ところでアキヤマキャップはこの席にヒカリを呼んでいない。隊員個々の事情を優先させたか、それともヒカリとジョーニアスの関係に何か気付いていて、あえて呼ばなかったのだろうか?

 

細か~い部分だが、ピグの内部からコンロが外されている。やはり「科学警備隊へのチャレンジ!!」での勝手な改造は怒られたのかな?

 

皆がジョーニアスの戦いを見返していた時、ヒカリは一人でトレーニングに励んでいて、基地に戻った後も皆がジョーニアスの話をしている輪に加わらずに意味深な表情を浮かべると他の隊員との間に見えない溝を感じる。その後、皆がジョーニアスを讃えるのを聞いて嬉しく思う反面、言いようのない苛立ちを感じ、それをサンドバッグにぶつける。
マルメ隊員にヒカリがいなくてもジョーニアスがいれば大丈夫と言われた事で、ヒカリは「僕はウルトラマンだ。でもこれは誰にも言えない秘密なんだ。でも、僕自身はこれで良いのだろうか? ヒカリ超一郎としての僕は……」と苦悩する。
いくらジョーニアスとして活躍してもヒカリ自身が称賛される事は永久に無い。
自分はジョーニアスであるが、自分とジョーニアスは別個の人格なので、ジョーニアスが称賛されてもそれで自分は喜べない。一つの肉体に二つの精神を持つ二心同体がヒカリを苦しめる。
これは人間とウルトラマンが合体したタイプ全てにありうる事態だが、それを真正面から扱うのはこれまで無かった。

 

今回のマルメ隊員はヒカリの苦悩に気付かず、不用意な言動で追い詰めていく嫌な役回り。ゴグランとの戦闘中にヒカリが戦線離脱したのに怒るのは当然だが、それ以外の場面でヒカリの存在理由を否定していくのは同じチームの仲間としてどうかと思う。

 

ゴグランとの戦闘で防衛軍が出撃するが返り討ちに遭ってしまう。
通常の話でも戦車が登場するのが『ザ☆ウル』の良いところ。こういう部隊が出るかどうかで特別チームの組織力が見える。
バーディのカルテットがカッコイイ。

 

ゴグランの脅威を前にヒカリは戦線離脱してジョーニアスに変身しようとするが躊躇してしまう。
ジョーニアス「ヒカリ」、
ヒカリ「その声は……?」、
ジョーニアス「私だ。君の心の中に在って、常に君と行動を共にしている私だ」、
ヒカリ「ウルトラマン!」、
ジョーニアス「何故止める? 何故ウルトラマンとなって戦わない?」、
ヒカリ「僕は確かにあなたの力で戦う事が出来る。しかし……」、
ジョーニアス「しかし?」、
ヒカリ「僕は人間として戦ってみたいんだ。ヒカリ超一郎として!」。
再びバーディに乗って戦線復帰するヒカリだったが、その間にマルメ隊員が負傷し、ガスタンクが破壊されて辺り一帯火の海に。その後、ヒカリは肝心な時にいなくなるとマルメ隊員に糾弾されてしまう。
ウルトラマンに変身している間は人間として戦えないと言うのはウルトラシリーズのお約束だが、今回はそれをお約束として流さず、問題提起を行った。
特にヒカリの場合は怪獣の攻撃を受けて不時着してから変身するのではなくて本当に肝心な時に物陰に隠れているので、事情を知らないマルメ隊員が逃げたと怒るのも無理は無い。

 

ジョーニアスに変身するのを躊躇った為に被害を拡大させてしまった事に落ち込むヒカリをムツミ隊員が慰めに来る。
「あなただって一生懸命やっているのはこの私が一番よく知っているわ」と言う言葉はチームの仲間以上の意味合いが含まれているように感じる。
これ以外でも今回のムツミ隊員は色々とヒカリの事を気にかけていて、二人の関係を単なるチームの同僚から一つ上に上げようと言うスタッフの狙いが見える。
ムツミ隊員の優しさにヒカリはジョーニアスとの関係を言いかけてしまうが、ゴグランが活動を再開させたのも重なって、何とか踏みとどまる。
このやり取りによって、ムツミ隊員は単なる紅一点として作品に華やかさをもたらす存在ではなく、ジョーニアスとの関係に苦悩するヒカリにとって重要な位置を占める存在となる。

 

さなぎの状態を経て成虫となったゴグランは羽ばたきの風圧で街を破壊していく。モスラを思い出すが、予算と時間の関係で実写TV作品では大掛かりな操演は難しい事を考えると、アニメかCGでなければ出せないタイプの怪獣と言える。

 

スーパーマードックですら危ういゴグランの羽ばたきの中、ヒカリはバーディで単独出撃する。無茶な行動を怒るマルメ隊員だったが、ムツミ隊員はマルメ隊員がきつい事を言って追い詰めるからと非難する。
バーディのヒカリは「くそ! 早くウルトラマンになりたい!」と焦る気持ちを漏らす。今度は人間として戦う事を最初から放棄してジョーニアスの力のみを当てにしてしまっている。その結果、撃墜されて脱出に失敗。全身の骨を折り、ビームフラッシャーを手放してジョーニアスに変身できなくなると言う絶体絶命の危機に陥ってしまう。

 

スーパーマードックとゴグランの戦いを見上げながら、ジョーニアスに変身できないヒカリ。
ジョーニアス「ヒカリ、気を確かに持て」、
ヒカリ「ウルトラマン!」、
ジョーニアス「頑張るのだ。君自身が駄目になったら、私とて力を発揮できない」、
ヒカリ「でも、駄目なんです。僕はやっぱりただの人間だ」、
ジョーニアス「ヒカリ、君は何故私に選ばれたのだと思う? 君のような若者は数多くいる。その中でも私が特別に君を選んだ理由を考えた事があるか?」。
自分が選ばれた理由が分からないヒカリに向かって、ジョーニアスは宇宙ステーションEGG3にゴグランの最初の一匹が侵入した時の事を思い出せと告げる。
隕石群の衝突でEGG3が破損し、ヒカリも宇宙服の酸素残量が減少して呼吸困難に苦しむが、ゴグランの幼虫がEGG3のシャッターを喰い破ろうとしているのを見て、自分の命よりまず大勢の職員の命を救おうとゴグランの幼虫を倒す。それをジョーニアスは見ていたのだった。
かつて呼吸困難の中でゴグランを倒した過去と全身骨折の中でビームフラッシャーを手にしようとする現在とが重なる。
ジョーニアス「頑張れ! 君は可能性の限界を超えられる!」。
そして人間の限界を超えたかつてのヒカリはゴグランの幼虫を倒して大勢の職員を救い、現在のヒカリもまたビームフラッシャーを手にとってジョーニアスに変身し、ゴグランを倒して科学警備隊の仲間達を救うのであった。

 

今日のジョーニアスはかなり強いが、おそらくヒカリの精神状態が反映されているのだと思われる。一方でヒカリは全身を骨折していたがジョーニアスにそのような影響は見られなかった。
ヒカリとジョーニアスは精神は繋がっているが肉体は切れていると言う関係なのかもしれない。(それとも精神力で肉体的な負傷を何とか克服した?)

 

戦いが終わって、マルメ隊員はヒカリに謝る。
全身を骨折していたヒカリだったが何故か驚異的に回復していた。これはジョーニアスの能力か?
ムツミ隊員はヒカリの超回復を気にするが、それには触れず、EGG3がゴグランに襲われた時の話を聞きたいと言う。しかし、ヒカリは何も言わずに再びトレーニングに出るのだった。
「自分の手柄を誇りたいのは誰しも無理の無い事だ。だが、ウルトラマンになる人間はそうであってはならない。ヒカリ! 私は君を選んだ事を誇りに思う。心から……」。
ジョーニアスがヒカリを選んだ事を誇りに思い、それがヒカリ自身の誇りの回復に繋がる展開が上手い。
ジョーニアスが自分を選んだ理由が人間としての心の在り方だったと知ったヒカリは自分の為すべき事を一つ理解したのだった。

 

 

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