帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ふたりのムツミ隊員」

「ふたりのムツミ隊員 ー宇宙竜ドラゴドス登場ー
『ザ☆ウルトラマン』制作第15話
1979年9月12日放送(第24話)
脚本 吉川惣司
絵コンテ 奥田誠治
演出 古川順康

 

超進化宇宙人アルファ・ケンタウリ第1惑星人
身長 不定
体重 不定
宇宙における長い戦争が幕を閉じ、427の惑星への親善訪問の旅行中だった。
王女はどの惑星でも歓迎されていたが、かつては同盟国であった第5惑星が放った暗殺者に命を狙われて太陽系に避難する事になり、長い宇宙の旅と堅苦しい公式行事と暗殺者に狙われた事から一人で自由に遊びたい気持ちを抑えきれなくなって地球に逃亡してしまう。
第1惑星人は決まった姿を持たず、どんな星の生命体にも姿を変える事が出来て、地球では王女はムツミ隊員の、お守は山男の姿を借りた。
王女はムツミ隊員として地球での休日を楽しんだ後、地球での思い出を胸に宇宙船に戻り、再び旅立っていった。
因みに『セブン』の「必殺の0.1秒」に登場したペガ星人はアルファケンタウリ第13惑星の出身。

 

宇宙竜ドラゴドス
全長 425m
体重 22万6千t
アルファ・ケンタウリ第5惑星人がかつては同盟国だった第1惑星人の王女を暗殺する為に送り込んだ戦闘円盤。
円盤形態と怪獣形態とを持つ。口から炎を吐き、長い体で相手を拘束して動きを止め、尻尾の先の刃を回転させて全てを切り刻む。
王女をさらうが科学警備隊の援護を受けたジョーニアスのプラニウム光線で破壊された。
『セブン』の「魔の山へ飛べ」のナースを思わせる実写では難しいデザインで、これもアニメならでの怪獣と言える。
名前の由来は「ドラゴン」かな。

 

物語
真夜中に落下した隕石を調査する事になったムツミ隊員。
翌朝、基地に帰ったムツミ隊員の様子がおかしいと感じたヒカリは気晴らしにとデートに誘うが……。

 

感想
緊急出動で隊服に着替える間もなく私服で出撃する事になったムツミ隊員。むくれるムツミ隊員に向かってアキヤマキャップは緊急出動はそんなものだとなだめる。いやいや、着替えさせろよ。他の仕事ならともかく、科学警備隊の仕事は身の危険が多いから特別仕様の隊服が与えられているんだろう?

 

調査から帰ったムツミ隊員の様子がおかしいとソロバンで計算するピグ。何をどうやって答えを導き出したのか聞きたい。

 

そんなムツミ隊員をいきなりデートに誘うヒカリ。
何者かが本物と入れ替わった事に気付いての行動かと思いきや実は違っていて、ムツミ隊員の様子がおかしいのは事件が頻発して忙しさから気が滅入ったのだろうと気を利かせての事だった。
ムツミ隊員とデートをするのはヒカリが最適と皆が言っている事から二人の仲は公認となっていっているようだ。
この一連のデート場面はヒカリが偽ムツミに気付いているようにミスリードされているが、実は気付いておらず本物のムツミ隊員だと思って接していた事が分かるとヒカリの意外な一面が見えてくる。
女の子の部屋に躊躇いも無く入れるし、デートの時は終始リードしていたし、プールで溺れかけた偽ムツミをお姫様抱っこで抱え上げたりと朴念仁が多いウルトラシリーズの主人公の中では『T』の東光太郎と並んで女性の扱いに慣れている。

 

そんなヒカリと偽ムツミの前に現れた謎の山男。
偽ムツミをさらってヒカリの前をゴーカートで逃げる場面はおかしくて笑える。
遊園地にその格好は目立つだろうにと思っていたら、後にその辺りの説明がされていた。
山男の正体はアルファ・ケンタウリ第1惑星人のお守で偽ムツミの正体は第1惑星人の王女だったのだが、本物と偽者の違いに気付かず、本物のムツミ隊員を麻酔ガスで眠らせて、偽ムツミである王女にまたもや逃げられてしまうのは間抜けだった。変身を見抜く装置とか無いのか?

 

自由を求めて宇宙船を脱出した王女。
気持ちは分かるが、宇宙船が暗殺者に追われている最中に一人だけ脱出してしまうと、家来を見捨てて一人だけ助かろうとしたように見えてしまう。襲われていると言う非常事態でなければ脱出できなかったのだろうが。

 

偽ムツミだった王女はお守を騙し、本物のムツミ隊員を装って再びヒカリを連れ出す。
短い期間で地球に慣れて演技が上手くなっているのに驚き。決まった姿を持たず、辿り着いた先々で姿を変えている事から、そう言った学習能力に秀でているのだと思われる。
王女は本物のムツミ隊員を装ってヒカリから王女の印象を聞き出し、ヒカリに「やんちゃでお転婆だけどとても素直で可愛い人」と言われると哀しげな眼でヒカリに抱きつく。
「ヒカリ隊員。あなたって優しい人ね。あの街も空も雲も緑も、そして優しいあなたも皆、素晴らしい思い出になるわ。一生忘れる事の出来ない懐かしい思い出に」。
目の前にいるムツミ隊員が実は王女だった事に気付くヒカリ。そして二人は手を繋いで帰路に就く。
一時の安らぎを得た王女がヒカリに感謝を述べる場面なのだが、外見がムツミ隊員なので、ヒカリとムツミ隊員の場面にも見える。因みに今回の王女は忙しい職務から逃避しており、これは科学警備隊の皆がムツミ隊員の異変の原因を忙しい職務と推測したのと重なる。ただし、実際のムツミ隊員は忙しい職務に気が滅入ってはいなかった。これはヒカリと言う心安らげる存在が身近にいたからとも考えられる。

 

王女の存在を知ったアルファ・ケンタウリ第5惑星人が地球にドラゴドスを送り込んできたのを知ったお守はスーパーマードックでは勝てないと忠告するが、それを聞いたアキヤマキャップは「今はただ王女様を救う為、全力を尽くすだけです」と反論。地球の守り人たる自尊心を傷付けられてちょっと怒ったようだ。そしてドラゴドスとの戦いではジョーニアスを援護して勝利に貢献した。伊達に今まで戦ってはいない。

 

戦いが終わり、空に去っていくジョーニアスを意味深に見送る王女。どうやらヒカリとジョーニアスの関係に気付いたようだ。
その後、しばらくムツミ隊員の姿を残しておきたいと申し出ているが、これはヒカリとの思い出を留めておきたいからであろう。
王女の気持ちは分かるが、本物のムツミ隊員としては面白くないようで、王女が宇宙船に帰った後、王女様とのデートは楽しかったんでしょうねとヒカリに嫌味を言っている。
その質問に「楽しかった」と返したヒカリはムツミ隊員がムキになったのを見て、「最高だったな。だって僕はてっきり君とばかり思っていたからね。今度は本物の君とデートだ」と続ける。
なんて凄い切り返しなんだ……! この言葉にムツミ隊員は気を良くするが、この台詞を王女が聞いていたらまた一悶着起きそうな……。
とりあえず、今回の話での最大の衝撃は「ヒカリは女性の扱いが上手い」だった。

 

今回の話は『ローマの休日』を下敷きにしたらしいがイマイチだった。
30分弱しか時間が無いのだから、偽ムツミと山男のミスリードは外して、ヒカリと王女と本物のムツミ隊員の話に絞ってほしかった。
又、『ローマの休日』は逃げ出した王女と特ダネを求める記者がお互いの身分を偽りながらも真実の愛を築いていく物語だったので(なので真実の口の場面で二人の手は噛み切られない、二人の愛は真実だと言うのが成り立つ)、王女がムツミ隊員の姿を借りているのなら、ヒカリがジョーニアスとの関係を隠している事と対比させてほしかった。上手くやれば、「君がウルトラマンだ」でヒカリがムツミ隊員に自分とジョーニアスの関係を話そうとしたのにも繋げられただろうし。
そう言えば『ローマの休日』は「逆シンデレラ」の要素もあるので(12時を過ぎたらシンデレラが姫から一般人に戻るのに対して、『ローマの休日』のアンは一般人から王女に戻る)、それをウルトラマンの時間制限と繋げる手もあったかも?

 

 

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