「これがウルトラの星だ!! 第2部 ー凶悪星人バデル族登場ー」
『ザ☆ウルトラマン』制作第20話
1979年8月15日放送(第20話)
脚本 吉川惣司
絵コンテ 小田経堂
演出 辻勝之
凶悪星人バデル族
身長 268cm
体重 631kg
爬虫類から進化した種族。ウルトラ人とは根本的に異なる存在でコミュニケーションすら取れない。
ウルトラ人が宇宙の穴に隠していたウルトラマインドを取り出して乗り移りの能力を得て地球に精神寄生体を送り込んだ。
死と破壊の機械星・バデルスターで8000の惑星と2000の種を滅ぼし、遂にU40に総攻撃を仕掛ける。
物語
激戦の末に命を落としたヒカリはウルトラの星U40へと運ばれて蘇生手術を受ける。
蘇ったヒカリが目にしたものは神話と科学、過去と未来が融合した世界であった。
感想
「これがウルトラの星だ!! 第1部」の続き。
ワープ航法で200万光年の距離を超えてU40に辿り着くウルトラ人の円盤。
映像作品において、人間がウルトラの星にやって来た事は少ない。又、意識を失っている時にウルトラマンと同化する為に一時的に運ばれたと言うのが殆どで、今回のように意識をしっかりと持って、色々な場所を見て回り、住人と会話まで交わしたヒカリの事例は長い歴史を誇るウルトラシリーズの中でも他に例を見ない特筆すべき出来事であった。
地球の基準では死亡でもU40の基準ではまだ死んでいなかったヒカリは謎の装置で蘇生手術を受けて意識を取り戻す。
精神寄生体による怪獣は倒せないが死者は生き返らせる事が出来るU40の科学力は『セブン』を中心に描かれた「破壊する科学力だけ発達させてきた地球」と対になっている気がする。
目を覚ましたヒカリはいきなり真横にいたアミアの存在に驚く。
ウルトラシリーズではウルトラの母に続いて登場した女性ウルトラ人のアミア。
快活でちょっとからかう感じの女の子でムツミ隊員に比べてやや子供っぽい部分がある。いきなりヒカリと腕を組んだり手を握ったりとかなり積極的。「ふたりのムツミ隊員」に登場したアルファ=ケンタウリ第1惑星人の王女にキャラが似ているかも。一部のウルトラ人に「様」付けされているし。
驚くヒカリの前にテレポーテーションを使ってエレクとロトも姿を現す。
ウルトラ人は地球人と変わりのない姿でギリシア神話を思わせる格好をしていた。
ロトの漕ぐ小舟に乗せられたヒカリがもっと科学的なものを想像していたと感想を述べると、エレクとロトが笑顔で説明する。
エレク「超高層ビルやベルトウェイ、無重力バスなんかが一杯詰まったドーム都市。君はそんな未来都市を想像していたらしいね。歩くのも船に乗るのもそれが一番の贅沢だからさ。そう、一番人間らしい事だ。人間は生き物なんだからね。雨に打たれたり、暑さ寒さを感じたりするのが自然なんだ」、
ロト「ヒカリ、君だって自分の体をロボットにしたくはないだろう」。
二人の説明にヒカリは納得して緑溢れるU40を眺める。
後でU40は地下に工場や建築物を移し、そこにはヒカリが想像していたような超科学都市のドームも存在している事が判明する。U40は「神話と科学」や「過去と未来」と言った一見すると相反する二つを融合させた世界となっていた。
因みにM78星雲シリーズのウルトラの星でもギリシア神話風の過去と超科学都市の現在が描かれていたので、U40はM78星雲シリーズのウルトラの星の過去と現在を一つに融合させた世界と見る事も出来る。
アミア達に連れられたヒカリは大賢者と会い、そこで自分と同化していたウルトラ人の名前がジョーニアスである事を知る。
今までは単に「ウルトラマン」と呼ばれていて、この世界で唯一のウルトラマンとして扱われていたが、この話で「ジョーニアス」と言う個人名が明かされ、ウルトラマンは一人ではなくて複数存在すると示された。これはジョーニアス以外のウルトラマンが登場する事を意味している。
バデル族の戦艦が空間ジャンプを用いた奇襲攻撃を仕掛け、それに対抗して自動防衛タワーが自然の風景を突き破って現れて迎撃を行う。緑溢れる美しい星があっという間に醜い戦場へと化していく。
ウルトラの星を舞台にした戦争は『帰マン』の最終回「ウルトラ5つの誓い」や内山まもるさんの漫画を思わせる。
バデル族の襲撃にエレクとロトはウルトラマンに変身。
驚くヒカリにアミアはここでは誰もがウルトラマンなのだと説明し、ヒカリを地下にある体験ドームに連れて行ってウルトラ人の歴史を教える。
10億年前の宇宙の中心部でウルトラ人は全宇宙に子孫を増やす為の大実験を行っていた。それは人間の持つ力の素晴らしさや元々持っている知恵を気付かせるのを目的に、色々な星に辿り着くと一切の機械や道具を使わずに新しい文明を作ると言うものであった。
全滅した星もあったが、中には元々住んでいた人と一緒になった星もあり、地球もその一つだった。そしてヒカリはウルトラ人とネアンデルタール人の出会い、地球文明の誕生を見る。
しかし、宇宙に住むのは人間の形をしたヒューマノイドだけではなく、爬虫類から進化したバデル族と言う種族も存在していた。
ウルトラ人とは根本的に違い、コミュニケーションすら取れないバデル族の侵略によって、ウルトラ人は次々に滅ぼされていくが、今から100万年前、ウルトラ人の祖先が作った、物質であって物質ではない命の素・ウルトラマインドによって、ウルトラ人はウルトラヒューマノイドに進化してバデル族の侵略を食い止めるのだった。
そしてアミアは自分のウルトラヒューマノイドの姿をヒカリに見せ、精神を集中して体の分子構造を変えた、どちらも本当の姿でウルトラ人なら誰でも出来るが、巨大化できるのは特に強いウルトラ人に限られていると説明する。
ウルトラ人と言えども皆がずば抜けた能力を持っているわけではないようだ。これはM78星雲シリーズのウルトラの星も同じで、ウルトラ兄弟のように強いウルトラマンもいれば戦闘能力が無い一般市民もいる。
ジョーニアスはメディカルルームでまだ生死の境を彷徨っていた。地球でエネルギーを使い果たしたのが原因だと聞かされたヒカリは警告を無視して戦った自分を責める。
地球を襲った精神寄生体の乗り移りはウルトラ人と地球人の関係に似ていたと言うヒカリの説明を聞いて、ウルトラ人はバデル族が宇宙の穴に隠していたウルトラマインドを取り出して乗り移りの能力を得て地球に精神寄生体を送り込んだと推測する。
そこにバデルスターを使ったバデル族の総攻撃が始まり、大賢者はウルトラ人を集めて大演説を行う。
「決戦の時が来た。我々の敗北はU40の敗北に留まらない。全宇宙もいずれ同じ運命を辿る! この戦いは全宇宙の支配権を賭けた最も重要な戦闘となる。諸君! 全力を尽くそう」。
そしてジョーニアスを欠いたウルトラ7戦士が出撃し、宇宙を舞台にウルトラ人とバデル族の大戦争の幕が切って落とされる!
U40の最高指導者である大賢者は最高の科学者にして最高の哲学者で地球では王や大統領に位置する存在との事。おそらく立派な人物なのだろうが、全宇宙に活動範囲を広げているウルトラ人の思想、政治、軍を一人で統括しているのはやや不安が残る。
「バデル族との決戦は全宇宙の支配権を賭けたものになる」と演説しているが、この発言はウルトラ人が全宇宙を支配下に置こうとしているとも考えられる。
様々な星に入植し、ジョーニアスのように他の星の平和を守る為にウルトラマンを派遣するその姿は「世界の警察」を名乗っていたアメリカを思わせる。U40は「世界の警察」ならぬ「宇宙の警察」になろうとしているのだろうか……?
ウルトラマンと在日米軍の共通性は昔から語られていたが、これまでの作品ではやや曖昧にされていた。それを『ザ☆ウル』は細かい設定をはっきりと語った事で白日の下で明確にしてしまったと言える。
なんと今回の話は地球の場面が無くて、主人公であるジョーニアスもシルエットで登場するだけでちゃんとした出番は無かった。そのおかげで今まであまり語られていなかったウルトラマンやウルトラの星について色々と描く時間が用意出来た。
実写ウルトラシリーズでは予算や技術の関係で描き切れなかったウルトラの星を今回はアニメの技術を駆使して描き切っている。『ザ☆ウル』と言うアニメのウルトラ作品が誕生して良かったと思う話であった。
と言う事で次回「これがウルトラの星だ!! 第3部」に続きます。