「ウルトラの星へ!! 第1部 ー女戦士の情報ー」
『ザ☆ウルトラマン』制作第47話
1980年3月5日放送(第47話)
脚本 吉川惣司
絵コンテ 白土武
演出 又野弘道
物語
タイターン基地から発進したヘラー軍団の艦隊が世界各地を襲撃。
地球に再びやって来たアミアはウルトラ艦隊とウルトリアの共同戦線でタイターン基地を攻撃する事を提案するが、地球防衛軍はU40との関係を絶って自らの保身に走ろうとする。
感想
冒頭、悪夢にうなされるヒカリ。
最終章は悪夢にうなされる主人公から始まるのは『セブン』以来の伝統。
眠れないヒカリはモニターで土星近辺を観察し、ただならぬ感じからヘラー軍団の前線基地は土星にあるのではと推測する。
その後、アミアから土星の衛星タイターンにヘラー軍団の前線基地がある事を聞かされたゴンドウキャップはヒカリがヘラー軍団の基地を感じ取っていたと推測する。
ヘラー軍団艦隊による全都市破壊攻撃。
出撃した地球防衛軍も返り討ちに遭ってしまい、他のウルトラシリーズに比べて被害が大きい『ザ☆ウル』の中でも特に大きな被害がもたらされた。
科学警備隊と地球防衛軍は不時着した一機のヘラー軍団宇宙船を包囲するが、中から出て来たヘラー兵士は爆弾を抱えて相手ごと自爆すると言う恐るべき抵抗を見せる。
元は同じウルトラ人でもジョーニアス達は永遠に近い命を手に入れた事で逆に命を大切にしようとしたのに対し、同じく永遠の命を手に入れようとしたヘラー軍団は逆に個々の命を道具として使い捨てるようになった。この思考の違いはどこで生じたのだろう?
不時着したヘラー軍団の宇宙船の中にはアミアが潜入していた。
あの後、アミアはヘラー軍団に潜入して情報収集を行い、自分が潜入した宇宙船を爆破させて不時着させる事でヘラー軍団の厳重な監視をくぐり抜けて地球人と接触したのだった。相変わらず、やる事が凄い。
ヒカリがタイターン基地の事を知っていたのかどうか気になったゴンドウキャップは話を聞こうとするが、ヒカリは部屋におらず外でアミアと会っていた。
テレポーテーションって結構なエネルギーを使う能力だったと思うが、アミアはヒカリと会う為にテレポーテーションで部屋から外に出てくる。愛の力か?
「ヒカリ……、会いたかった」とヒカリに駆け寄るアミア。しつこいようだが、兄さんにも一言で良いから声をかけてあげて。
アミアの話からエレクとロトも無事で今はヘラー軍団への総攻撃の準備をしている事、大賢者だけ消息不明になっている事が判明する。
『ザ☆ウル』にはムツミ隊員とアミアの二人のヒロインがいるが、ヒカリの接し方から、出番は少なくても後半のヒロインはアミアだったと思われる。
アミアは好きなキャラなのだが、その為にムツミ隊員の活躍が減って「ウルトラマンとして苦悩する地球人ヒカリを理解していく地球人ムツミ」と言う構図が弱くなってしまったのは残念。
アミアはウルトリアがあっても次々に襲いかかって来るヘラー軍団の艦隊を相手に地球は守りきれないとし、こちらから打って出てタイターン基地を叩くべきだと主張する。しかし、もはやウルトリアは桜田長官の意志だけで動かせる存在ではなくなっていて、世界防衛軍会議が召集される事になる。
各ゾーンの幹部はウルトリアを宇宙に出したら地球を守れなくなる、地球防衛についてはU40の事は外して考えるべきだと主張。その後もせっかく手に入れたウルトリアのような頼もしい力は手放せないと言ってたりする。
元々ウルトリアはU40から借り受けた物だったのにと思うし、ウルトリア1機でヘラー軍団の艦隊を防ぎきれるとは思えないし、ジョーニアスがいなければ地球を守れない状況でU40との関係を悪化させてどうするつもりなんだ?と思う。
ここはよくある特別チームと上層部の意見が衝突する展開なのだが、あまりに上層部が無思慮なのが残念だった。ただ、力を手に入れた時に自分の為にだけ使うのか他人の為にも使えるのかと言う話はウルトラマインドに関するヘラーとU40の考え方の違いにも繋がっていきそうだ。
ここで残念なのはアキヤマ前キャップが登場しない事。
「地球最大の危機!!」で各地の防衛軍を統一し、真に地球防衛軍としての戦いが必要な時に来ているので、怪獣との戦いに最も実績のあるアキヤマ前キャップが最高司令部の怪獣作戦担当になったと言う設定なのだから、この会議に出ているべき。
地球防衛軍は自己保身を考える者達ばかりではないところを見せてほしかった。
ここでアキヤマ前キャップが上層部相手に地球人とウルトラマンの関係を訴えかければ、今回の話は世紀を跨いだ今日でも語り継がれる名作になっていたと思う。
「言うな! 何を思っているか知らんが、それは胸にしまっとけ。……俺はそうしているんだ」。
前回の「よみがえれムツミ」を受け、ヒカリが肝心な時にいなくなる事について、ムツミ隊員が意見を述べようとするのをゴンドウキャップは慌てて止める。
皆が思ってはいる事でも自分の心の中だけに留めておけばそれは単なる勘で済むが、口に出してしまうとそれに対して何らかの答えを出さなければいけなくなってしまう。
再び襲来するヘラー軍団の艦隊を前にウルトリアが出撃。ゴンドウキャップは宇宙で決着を付けるとして地球圏を脱出。
戦いの中でスペースバーディに乗っていたヒカリとアミアが敵艦隊に囚われてしまうが、ゴンドウキャップはヒカリ達を助ける術は無いとしながらも、内心では自分の勘が当たっていたらヒカリ達は自力で脱出できるはずと確信を持っていた。
実際、囚われたヒカリは冷凍保存されそうになる寸前に変身し、アミアを連れて脱出に成功する。
一応はバーディも宇宙戦が可能らしいが宇宙専用メカ・スペースバーディが登場している。ウルトリアの解析も進んでいるだろうから、その技術を応用した従来より宇宙戦に適応した機種だと思われる。
またもや巨大化したジョーニアスによって破壊される宇宙船。
実写だと人間大の敵と巨大なウルトラマンを一つの画面に収めるのは大変だがアニメでは描けるので、巨大ジョーニアスが人間大の宇宙人が乗っている宇宙船を巨大な拳でぶち壊す!と言う展開が何度かある。
戦闘終了後、最高会議はタイターン基地への攻撃を否決し、ウルトリアを地球の専守防衛に運用するとしたが、ゴンドウキャップは「そうですか。実はこちらも決めたところです。防衛軍の決定に関わらず、我々はタイターン基地に向かうとね。メインエンジン! フルパワー発進! 目標、タイターン基地!」と堂々と宣言する。
それを聞いた各ゾーンの幹部はゴンドウキャップを解任するが、ゴンドウキャップは意に介さず、ウルトリアはタイターン基地に向けて出発した。
その後、地球での戦いがどうなったかは語られていないが、ここは桜田長官やアキヤマ前キャップが奮起して誇りある戦いを展開したと信じたい。
今回は特別チームが上層部の指揮を離れて独自に行動を起こすと言うウルトラシリーズでも例を見ない話となった。
内山まもるさんが漫画『ザ・ウルトラマン』で「ウルトラマンが艦隊戦を行う」や「侵略されたウルトラの星を奪還する」と言った話を描いているので、スタッフがどこまで意識したかは分からないが、『ザ☆ウルトラマン』はまさに『ザ・ウルトラマン』をアニメにした作品と言えるかもしれない。
いよいよ最終章突入!
と言う事で次回「ウルトラの星へ!! 第2部 ー前線基地撃滅ー」に続きます。