「暗黒の海のモンスターシップ」
『ウルトラマン80』制作第31話
1980年11月5日放送(第32話)
脚本 平野靖司
監督 外山徹
特撮監督 高野宏一
すくらっぷ幽霊船バラックシップ
全長 120m
体重 4万t
全てが最新鋭のコンピューターによって操縦されている無人の大型貨物船クイーンズ号は今から15年前にマゼラン海峡でコンピューターでも予測できなかった氷山と衝突して沈没した。
しかし、コンピューターは生きていて最終目的地である東京を目指す。その際、二度と氷山に負けない体を作ろうと積んでいた磁力合金NK合金を使って船を次々に吸収していき、やがてバラックシップとなった。
強力な磁力で周囲の機器を狂わし、吸収した戦艦の大砲で敵を迎撃する。
スペースマミーも撃沈させたが、80に空中から連続して光線を撃たれ、最後はサクシウム光線で完全に破壊された。
名前を直訳すると「仮構築された船」となるらしい。
肩書きが片仮名の「スクラップ」ではなくて平仮名の「すくらっぷ」になっているのが好き。
物語
海で船が次々と沈没する事件が起き、父が外国航路の船長であるアキラは父の身を心配するが猛はUGMがいるから大丈夫だと答える。
しかし、猛の目の前でアキラの父の船が襲われてしまった!
感想
今回からメインタイトルの後、オープニングの前にドラマの導入部分が入れられるようになった。
最初に見た時は「今回はオープニングは無しか!?」と驚いた。
これと似た事が『コスモス』でもあって、いきなりコスモスとカオスパラスタンの戦いが始まって、最初に見た時は録画時間を間違えたのかと思ってかなり焦った。(「テックブースター出動せよ(前編)」)
今回から児童編としてゲストの子供が毎回登場するようになる。
主人公と子供の交流は第2期ウルトラシリーズで最高の人気を誇る『T』の要素を組み込んだと言えるが、元々、『80』は学校を舞台に教師である猛と生徒の子供達の交流を描く作品だったので、学校の設定は無いが話の作り自体は原点回帰したと言える。
今回のゲストであるアキラは父の仕事の関係で船と海が好きで、猛に玩具の船を直してもらってから友達になったとされている。
別に子供と大人が友達になっても構わないが、猛には教師のイメージがあるので、友達とか兄妹とか説明されても違和感が生じてしまう。ゲストの子供を小学生ではなく中学生にして、猛が桜ヶ岡中学校の教師だった時の生徒と言う展開にする事も可能だったと思うのだが……。
船会社からの苦情を知らせに来るセラ広報員。
以前はUGMの作戦室に苦情の電話が直接来ていたが、さすがに精神的に辛かったか、その手の対応は広報がするようになったようだ。
アキラとの約束を果たせなかった猛は「嘘吐き! 矢的のバカヤロー! お前なんか大嫌いだ!」と非難される。子供に非難される主人公と言う展開は第2期ウルトラシリーズに近い。
それにしても被害者の関係者を簡単にUGMの作戦室に通すものかな?
今回の話はよくあるコンピューターの反乱。
バラックシップの中に侵入するとコードが襲ってきたり、人間よりプログラムの方が大事と言う話が出る等、この手の話ではお約束な展開が見られる。
猛とフジモリ隊員とアキラの父親がコードに捕らえられるが、アキラが落ちているライザーガンでコードを切断して3人を救出する。
ところでバラックシップに襲われた他の人々はどうしたのだろうか? 既に死んでしまったのだろうか? それともアキラの父親だけが逃げ遅れていて、他はバラックシップの中に取り込まれる前に船から脱出していたのだろうか?
バラックシップは『セブン』の「海底基地を追え」に登場したアイアンロックスを思い出す。
今回は掴み合っての格闘戦は不可能なので、飛び人形を使って80が空中から光線技を使うと言う珍しい戦いになっている。
ウルトラシリーズに限らず、バトル作品は続けていくに従ってパターンが出来てきて、やがて変化が無くなって飽きられると言う恐れがあるので、こういうパターン破りな戦闘を組み込む事は必要である。
アキラは父が航海に出ている時は一人で寂しかったが、父は遊覧船の船長に転職して毎日家に帰られるようになった。
UGMの格好良さを知ったアキラは「将来はUGMに入りたい」と言い、それを聞いたイケダ隊員は「その時は自分がキャップかチーフになっている」と答える。狙っていたのか……。
ところでアキラ君。UGMも外国航路の船長と同じく、なかなか家に帰れない仕事だと思うんだけど……。
今回の話用の次回予告からBGMがワンダバに変更されている。