帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『ウルトラ超伝説』(漫画版)

『ウルトラ超伝説』(漫画版)
『てれびくん』でグラビア版と同時展開された漫画版。グラビア版とTV版が終了した第3部からは漫画版独自の展開となった。
作者は第3期ウルトラシリーズの漫画や『メロス』のキャラクターデザインを手掛けている居村眞二さん。

 

ウルトラ兄弟物語 ウルトラ超伝説』
1981年5月号から1982年3月号まで連載された。
80がウルトラの国に帰還した後の地球をエースキラーが襲撃。ゾフィからユリアンまでのウルトラ10戦士がやって来るが苦戦を強いられ、ゾフィがブラックホールに追放されてしまう。
再びエースキラーが地球に現れた時、ウルトラの父が語った伝説の強化服コスモテクターを身に付けた謎の戦士メロスが現れてエースキラーを倒す。

 

続いてマグマ星人3人衆によって今度はセブンがブラックホールに追放されてしまうが、それと入れ替わりにアンドロメロスⅡことウルフが現れる。

 

グア軍団の侵略軍団長ジュダは全宇宙を支配する為に月の裏側に侵略基地を建設。ウルフがジュダに捕まる中、メロスはウルトラの父が加わったウルトラ戦士達と一緒にグア軍団の侵略基地を破壊。ジュダとの最終決戦でメロスの正体がゾフィである事が判明し、さらに消息不明だったセブンも救援に駆けつける。そしてゾフィはアンドロの力でパワーアップした超M78光線でジュダを倒すのであった。

 

戦いが終わった後、ゾフィがアンドロ族からコスモテクターを与えられた事、ウルフがアンドロ族だった事、セブンがアンドロ族に救出されていた事が明かされる。

 

第1部の内容は内山まもるさんの漫画『ザ・ウルトラマン』の「ジャッカル対ウルトラ兄弟」に似ているが、「ジャッカル対ウルトラ兄弟」ではメロスの正体がすぐに明かされて、話の後半はメロスとゾフィを中心にした友情物語になったのに対し、本作はメロスやウルフの正体を最後まで伏せて謎解きを重視していると言う違いがある。

 

因みに本作ではゾフィの必殺技は「M78光線」になっている。

 

 

『ウルトラ超伝説 アンドロ超戦士』
1982年4月号から1983年3月号まで連載された。
ゾフィは自分をブラックホールから救出してコスモテクターを与えてくれた真のメロスとウルフをウルトラの国に招いて光の戦士の勲章ウルトラクロスを贈る。
その頃、「宇宙が割れる」と言う事件が起き、ウルトラの父は空間移動能力に優れるアンドロ族に協力を要請。真のメロスとウルフに続いて第3のコスモ戦士マルスが加わったアンドロ警備隊は調査を始める。

 

宇宙が割れる事件の真相は真のジュダが使う怪獣戦艦の特殊装備ブラックホール砲によるものだった。メロス達は立ち寄ったエープ星でアンドロ族の祖先が残したアンドロ艇を手に入れ、アンドロ艇の隠された機能によってマルスは超巨大化して怪獣戦艦を倒す。

 

一方、地球の南極にある氷の神殿にコスモテクター以上の最終兵器が隠されている事を知ったモルドは妹ギナを地球に派遣。そこに謎の少女・美雪ケイが出現する。ケイの正体は最終兵器を守るアンドロ族フロルであった。マルス達はフロルやゾフィ達と協力してモルド、ギナ、ジュダを倒すが、3人は合体して正体であるグアの姿を現す。

 

最終兵器の正体は超巨大化が出来るアンドロ族だけが身に付ける事が出来るグラン・テクターであった。マルスは超巨大化してグラン・テクターとアンドロ艇を身に付けてグアを倒すのであった。

 

第2部では新たな主人公としてマルスが大活躍。
又、フロルの人間態である美雪ケイが登場してマルスと仄かなラブロマンスを演じている。
TV版と漫画版では各キャラクターの設定や関係が異なっていて、特にフロルのキャラクターの違いにはちょっと戸惑ってしまう。

 

 

『アンドロ超戦士』1984年1月号から3月号までは『ウルトラ超伝説 アンドロ超戦士』
1983年4月号から1984年3月号まで連載された。
かつてグア軍団によってサイボーグに改造されたメカバルタンはグアが倒されると謎の協力者によって復活し、仲間達と共にバルタン軍団を結成して宇宙を支配しようと行動を開始する。地球でフロルの弟トランから黄道の剣を与えられたマルスは死闘の末にメカバルタンを倒す。

 

メカバルタンを復活させたのは邪悪生命体イドで、いくつもの星のエネルギーを吸収して巨大になっていったイドはグアに代わって宇宙の帝王になる為に地球を狙う。地球の危機に地球の代理人と言うべき存在アズアースが出現してメロス達にイドを倒す為に必要な「三種の神器」について説明するが、アズアースはイドに敗れて吸収され地球も消滅してしまう。

 

三種の神器の一つであるグラン・テクターはグアとの戦いでブラックホールの中で消滅したと思われていたが、実は過去の宇宙(別の宇宙)に出現して、自分を星の核にして地球を誕生させていた。
地球が消滅する寸前に地球の中心でグラン・テクターを見付けたメロス達はアンドロ艇、グラン・テクター、黄道の剣と言う三つの神器を揃えてロボット戦士を出現させると、トランが真のアンドロ超戦士に覚醒してロボット戦士と一体化し、イドを倒すのであった。 

 

第3部から時間移動が取り上げられるようになり、以後、話の展開がかなり複雑で難解になっていった。

 

今回は地球が消滅したのにも驚いたが地球の代理人アズアースの登場にもかなり驚かされた。ウルトラシリーズでも「ガイア理論」が取り上げられる事があるが、ここまでストレートに地球の意思を出した作品は他に無い。

 

第3部にはウルトラマン達の登場が無いが、地球消滅の危機にウルトラマン達が動かなかったのは今までの事を考えると不自然。後の話を考えるとキングとトランだけでも会わせてほしかったな。

 

今回登場したバルタン軍団にはセミ人間も参加している。これは『Q』の「ガラモンの逆襲」に登場したセミ人間の着ぐるみが『初代マン』の「侵略者を撃て」に登場したバルタン星人へと改造された事からと考えられる。

 

 

『ウルトラ超伝説』
1984年4月号から1985年3月号まで連載された。
古代ウルトラの国を舞台にトランとその父プロメテウスが登場し、ウルトラ族の誕生、ウルトラマン達と地球人の関係、アンドロ艇とコスモテクターとグランテクターの開発秘話等が明かされる。

 

なんと2502年に地球はウルトラの国へ親善大使を送るべく宇宙船アース号でM78星雲まで行けるほどに科学が発達していた。
アース号にハヤタ隊員が初代マンに変身する瞬間の映像が収められている他、フロルこと美雪ケイが地球人達と一緒に行動していた事から未来の地球人はウルトラマン達の秘密や力を殆ど理解していると考えられる。
現在の地球人はまだ宇宙人の仲間に入っておらず、ウルトラマン達との関係も守る守られるものであるが、この頃には活動範囲を宇宙にまで広げ、ウルトラマン達とも対等に近い関係になっている可能性がある。

 

そして本作最大の衝撃は2502年の未来で時間の裂け目に落ちたアース号は200万年前の過去の宇宙に流され、そこで辿り着いたM78星雲のある星で生活する事になり、ウルトラマン達と会える為の目印として巨大なタワーを建設したと言う話。このタワーが後のウルトラタワーになる事から、未来の地球人が過去にタイムスリップして、その地球人の子孫が進化したのがウルトラ族と言う事が判明する。

 

これまでの作品ではウルトラマン達は地球人と違って人格が完成されていると言う描写が多かったが、本作ではウルトラ族と地球人の繋がりを示す為か、ウルトラ族も地球人と同じように虐めや迫害を行うと言うなかなか衝撃的な場面がある。

 

怪獣軍団を率いる宇宙の帝王ボアであったが、プロメテウスとトランの親子に負けたところをジュダの裏切りにあって倒される。ボアに代わって宇宙の帝王になろうとするジュダはプロメテウスと同じウルトラマンの力を身に付けるが、プロメテウスの黄道の剣とジュダのバット・キャリバーの衝突で生じたエネルギーによって、プロメテウスとトランの親子や怪獣軍団の基地と共に空間のねじれの中に消滅した。
ボアはロボットのような外見であったが誰が作ったのかは謎のままとなった。ジュダやボアの発言を聞くにボアより上の存在はいないようなので、製作者は既にこの世にはいないと思われる。
因みに第1部に登場したジュダの影武者はロボットであったが、ひょっとしたら、ボアの技術を応用して作られたのかもしれない。

 

トランの友達ピコは間近で見続けた戦いを「ウルトラの超伝説」として語り継ぐ。そのピコこそ後のキングであった。

 

壮大なスケールで語られるウルトラの国の秘密は読み応え十分。児童誌でここまで出来るのかと衝撃を受ける。
ただし、今回の話とこれまで語られた話とでいくつか矛盾がある。パラレルワールドか、度重なる時間移動や次元の崩壊によってタイムパラドックスが起きたのか……?(ただし、本作では描かれていないが今回の話の後にグアとの戦いがあるはずなので、矛盾点はそこで解消されている可能性がある)

 

 

『ウルトラ超伝説 すすめ! タロウ』
1985年4月号から1986年3月号まで連載された。
コスモミラクル光線でグランドキングを倒したタロウだったが宇宙竜巻に巻き込まれて記憶を失ってしまう。別の世界に飛ばされたタロウはバルタン星人達との戦いで次第に記憶を取り戻していく。

 

一方、タロウを導く謎の戦士スペース・ナイトの正体はタロウと同じく別の宇宙に飛ばされていたトランの成長した姿であった。復活したジュダは未来の地球人が過去の宇宙に飛ばされた時にバラバラに分かれた12個のライフ・ポッドのメモリー・バンクを全て手に入れて時間と空間を操作して宇宙を作り変える事で「神」になろうとするが、トランはタロウのコスモミラクル光線で生じた宇宙竜巻を使ってジュダを道連れに時空の彼方へと消えてしまうのであった。

 

第5部では第4部に登場したライフ・ポッドの行方について語られている。
精神の力を数十倍に高める学習システムの発明等、ウルトラの国も含めて破滅的な未来がそこかしこに暗示されてる。

 

第4部では2502年にブラックホール砲で宇宙を割った犯人は謎のままであったが、今回の話を見ると、ライフ・ポッドを狙うジュダの仕業だった可能性がある。

 

第2部を見ると、グアが本体で、モルド、ギナ、ジュダはグアから分かれた存在のように思えるが、第4部や今回の話ではジュダが単独で行動している事から、本体はジュダで、元はボアの配下に過ぎなかったジュダが力を手に入れてパワーアップしたのがグアで、そのグアから新たにモルド、ギナ、ジュダと言う3つの人格が作り出されたように思える。

 

第5部は久し振りにウルトラマン達が登場しているのが嬉しいが、逆にかつての主人公であったメロス達が登場しなくなったのは残念だった。

 

漫画版は5年にも及ぶ長期連載となった。(居村さんのウルトラ漫画はこの後もしばらく続いたらしい)
漫画専門雑誌でもここまでの長期連載は難しい。それを『てれびくん』で出来たと言うのが驚き。