「深海の二人 ー古代怪獣ツインテール 高次元捕食体ボガール登場ー」
『ウルトラマンメビウス』第6話
2006年5月13日放送(第6話)
脚本 川上英幸
監督・特技監督 高野敏幸
古代怪獣ツインテール
身長 45m
体重 1万5千t
ボガールから発せられたエネルギーを受けて海底に眠っていた卵から孵った。
ドキュメントMATに34年前にも卵の状態で東京に出現してグドンに捕食された事が記録されている。
元々は海の怪獣で、テッペイによると海中だったらグドン相手にも勝っていたかもしれないとの事。
深海でメビウスを追い詰めるが、CREW GUYSに三半規管を破壊されたところをメビウスのメビュームシュートを受けて倒された。
高次元捕食体ボガール
身長 47m
体重 4万7千t
エネルギーを与えてツインテールを卵から孵らせ、そのツインテールを餌にメビウスを誘き出す。長い尻尾をメビウスに巻き付けて襲うが、ツルギの出現に撤退した。
その行動原理は「食」で、以前にもサドラを襲って捕食していた事が明らかになった。
これまでは「ボガールヒューマン」と言う人間態で暗躍していたが今回からは正体である怪獣の姿を現すようになる。
物語
ずば抜けた聴覚と集中力で抜群の射撃の腕を見せるマリナ。しかし、そのずば抜けた聴覚が逆にマリナの壁にもなっていた。
一方、謎の青い巨人ツルギと謎の捕食生命体ボガールの戦いは続き……。
感想
リュウとミライが砂浜で走った後に「ウルトラ5つの誓い」を叫ぶ場面は『帰マン』最終回の「ウルトラ5つの誓い」を思い出す。それを見たセリザワは少し複雑な表情を見せていたが、一瞬だけでも人格や記憶が戻ったのだろうか?
CREW GUYSは前回現れたサドラは全部で3匹だと思っていたが、実は最初に現れたサドラは後にボガールに捕食されていて、街に現れたサドラは2体目であった。これで「逆転のシュート」に登場したサドラは4体と言う事になる。一つの話に同種族の怪獣がこれだけ多く登場するのは珍しい。
マリナのずば抜けた聴覚にミライは感嘆するが、ジョージはその聴覚がマリナの弱点とも言えると指摘する。ここはアスリート同士だから分かる部分かもしれない。
ずば抜けた聴覚の為、マシンの様々な音が聞こえて恐怖心が生じてしまい、それがライディングの壁になっていたマリナ。何度も克服しようとしたが駄目で、クラッシュ経験は無いがタイムは伸びず、弟分達にも一気に抜かれてしまった。二輪ロードレース世界選手権参加と言う飛躍の影でタイムの伸び悩みと言う限界がマリナを追い詰めていたのだった。
ジョージが最初はサッカーチームに居場所が無いからCREW GUYSに入隊したと思わせて、後に子供の頃に憧れたウルトラマンを助ける為に入隊したとしたのに対し、マリナは義憤に駆られてCREW GUYSに入隊したと思わせて、実はライダーとして限界を感じていたのが理由の一つだったとされた。
『メビウス』終盤でCREW GUYSはテッペイは初代マン、コノミはセブン、ジョージはジャック、マリナはエースとの繋がりが出来る。この内、カプセル怪獣とマケット怪獣繋がりのコノミと流星キックと流星シュート繋がりのジョージは分かるが、テッペイとマリナは初代マンやエースとの繋がりが薄い。強引に繋げるなら、『A』の北斗星司が周りに「信じてください」と訴えていたのに対して、マリナは今回の話で周りを「信じろ」と指摘されると言った「信じる」と言う共通点があったと言える。
ジョージやマリナの発言にリュウがブチ切れるのは毎度お馴染みであるが今回は少しコミカルな味付けがされている。
ただ怒鳴るだけでは視聴者に不快感を与えるので、今回のようにマリナにビビったりミライに上手く使われる等して中和した方が良いと思う。
ガンスピーダーで深海へ。ここは歴代特別チームの流れを汲んだ新たな潜水メカが見たかった。
『メビウス』はウルトラシリーズの総決算を担った作品だが、CREW GUYSのメカ関連が弱かったのが残念。メカ描写はウルトラシリーズにとって一つの柱だったので頑張ってほしかった。
ガンスピーダーで海に行く事を頑なに拒否するジョージ。コノミに「ひょっとして、泳げないとか?」とツッコまれ、「海には海の掟がある」と訳の分からない事を述べる。
普段はオドオドしているコノミだが、今回はジョージに対して妙に強気。
エネルギーを与えてツインテールを卵から孵らせるボガールヒューマン。「深海で笑う女」と言うシチュエーションが実に不気味。
テッペイの説明によると、ツインテールは34年前にも卵の状態で東京に出現してグドンに捕食されたとの事。
『初代マン』は近未来、『セブン』は約20年後の未来、『帰マン』以降は放送された年が舞台になっているが、『メビウス』では過去の作品の時代設定を放送された年に統一している。
なので『メビウス』は2006年、『帰マン』は1971年が舞台なのだが、何故か「グドンとツインテールは2006年から34年前の1972年に出現した」となっている。
『帰マン』劇中と違って「グドンがツインテールを捕食した」となっているので、『帰マン』で描かれた話の他にグドンとツインテールが出現した事件があった可能性がある。
ツインテールを「元々は海の怪獣」として「海中で戦っていたらグドンにも勝っていたかもしれない」とした設定が面白い。過去の話で描かれたものを「エビの味がする」と言う有名な設定も合わせて上手く膨らませたと思う。
海中を泳ぐツインテールの姿は新鮮ながらも自然な感じで大変良かった。
ガンスピーダーでの深海の戦いでエンジンの悲鳴を聞いたマリナは退くように訴えるが、リュウは「今、この身を預けているマシンを信用しねぇでどうするんだよ! 信じて体を預けているから「集中」できるんじゃないか!」と返す。
実は色々な事を気にしてしまうマリナの壁を熱血馬鹿のリュウがぶち壊す展開が心地良い。
因みにリュウの台詞はセリザワ隊長からの受け売りらしい。これは後の「不死鳥の砦」に繋がる。
セリザワ初変身。硬質な感じの変身シーンが自分好み。
ナイトブレスにナイトブレードを差し込んで変身するのだが、二つのアイテムを合わせる変身はこの頃のウルトラシリーズでは珍しい。
前回の「逆転のシュート」では別々に出ていたセリザワとツルギが今回の変身シーンで一つに繋がり、ボガールヒューマンも怪獣の姿に変身して、その行動原理が「食」である事が明示された。
今回の話は高野監督のウルトラシリーズ監督最終作となっている。