帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「怪獣使いの遺産」

怪獣使いの遺産 ー巨大魚怪獣ゾアムルチ 宇宙調査員メイツ星人ビオ登場ー
ウルトラマンメビウス』第32話
2006年11月11日放送(第32話)
脚本 朱川湊人
監督・特技監督 八木毅

 

宇宙調査員メイツ星人ビオ
身長 210cm
体重 68kg
ゾアムルチを積んだ宇宙船で地球にやって来た。
地球人と友好を結ぶのが目的で侵略の意思は無いと表明するが、実はビオは父親を地球人に殺害されていて、賠償として地球の大陸部の20%を割譲しろと迫ってきた。
リュウに撃たれた事で地球人に対する怒りと憎しみを爆発させ宇宙船を使って街を破壊し、ミライがメビウスに変身するとゾアムルチを覚醒させた。
その後、みやま保育園の園長から父親と一緒に暮らしていた良と言う地球人の少年の話を聞き、地球人をもう一度信じようとするが憎しみを止める事が出来ず、メビウスにゾアムルチを倒してくれるよう頼む。
戦いが終わった後、父が地球に残した「愛情」と言う遺産が花を咲かせるのを見届けたら地球人と握手を交わす事を約束して帰って行った。

 

巨大魚怪獣ゾアムルチ
身長 48m
体重 1万t
メイツ星人の宇宙船に冬眠状態で積まれていた。地球人の武器であるメビウスに対抗する為の処置と説明される。
ビオの脳波と同調していて、ビオの怒りと憎しみがある限り破壊を続ける。
口から青白い光線を吐いて街を破壊するが、最後はビオの頼みを聞いたメビウスのメビュームシュートで倒された。
劇中では語られていないが、10年前に地球怪獣のムルチをメイツ星人が捕獲して強化改造を加えたものらしい。

 

物語
かつて、穴を掘り続ける一人の少年がいた。
かつて、その少年と一緒に暮らしていた男がいた。
その男の正体は宇宙人。
そして現在……。

 

感想
今回は「怪獣使いと少年」を意識した演出があり、『メビウス』全話の中でも異質な雰囲気になっている。

 

今回のリュウは謎の宇宙船について強引に地球に侵入してきた上に怪獣まで積んでいるから侵略目的に決まっていると訴えるなど全体的に攻撃的。「運命の出逢い」で宇宙から襲来した敵に旧CREW GUYSを全滅させられているので過剰に反応するのは仕方が無いかもしれない。

 

「怪獣で武装している奴の言う事は信用出来ない」と言うトリヤマ補佐官に対してサコミズ隊長は「自分達も武装している」と返す。ここでサコミズ隊長が言っている「武装」とはGUYSの装備の事だと思われるが、後にメイツ星人は「地球人が怪獣を武器と思っているように、自分から見たらメビウスも地球人の武器である」と話している。
他の作品ではウルトラマンは地球人に自分の正体を隠して少し離れたスタンスを取っているのだが、メビウスは自分の正体を明かした上でCREW GUYSと行動を共にしているので、メビウスと地球人が同じスタンスに立って攻撃の意思を示すと他の星に思われるのも納得できる。現にミライはビオの姿を見るなり銃を構えた。これは宇宙警備隊員としての行動と言うより地球の特別チームGUYS隊員としての行動だった。

 

ビオによると、今から30年程前に一人のメイツ星人が気象観測の為に地球を訪れたが大気汚染が予想値を遥かに超えていたので深刻な病に侵され、隠していた宇宙船を起動する力すら失ってしまったので、地球人に変身して身を潜めながら体力を取り戻そうとしたが、一部の地球人が恐怖に駆られてそのメイツ星人を殺害してしまったとの事。
無断で地球に入った非は認めるが殺されるほどの何をしたと言うのだと訴えるビオ。これはビオの言い分が正しい。
ビオはこれを地球とメイツ星の問題だとしてメビウスに介入しないよう求め、ミライも平和的に解決するのなら自分は手を出さないと答える。しかし、そこに駆け付けたリュウがビオに向けて発砲してしまった為、話し合いの場が設けられる前に交渉は決裂してしまう。

 

ドキュメントMATの補足説明にはメイツ星人が地球人の少年と暮らしていた小屋に地域住民が大挙して押し寄せ同行していた警官が発砲したと記述されていた。
機密情報扱いかと思ったら普通にドキュメントMATに記録されていて驚いた。だが、これは「宇宙人を殺害する事を悪と見なさない」と言う現在の地球人の考え方が見えてくると言える。
テッペイは「いきなり目の前に宇宙人が現れたら怖がる。目の前の宇宙人が良いか悪いか見た目では分からない」とメイツ星人を殺害した人々の気持ちに理解を示す。「ファントンの落し物」でテッペイはファントン星人と友好関係を築いたが、あくまでそれは彼個人の話であって地球人全体で考えると宇宙人と友好関係を築くには大きな問題がある。

 

「こんな野蛮な連中とまともな話し合いなど出来るか」と激怒したビオは宇宙船で街を破壊し、フェニックスネストに向けて映像を送る。
「地球人の諸君。我々は改めて命を奪われた同胞の賠償を要求する。地球の大陸部の20%を我らに割譲せよ」。
本作は「怪獣使いと少年」の後日談なのだが、「怪獣使いと少年」が家族や地域と言った小さいコミュニティの話だったのに対し、本作は地球とメイツ星の国家間の問題と言う大きいコミュニティの話になっている。ビオ自身は殺された父親の復讐から始まって、良少年と会った少女(園長)との出会いで終わると言う小さいコミュニティの話を引き継いでいるのだが、それとメイツ星の代表や地球人に対する賠償要求と言った大きいコミュニティの話がどうにも上手く噛み合っていない。
ビオにはメイツ星の代表と言う肩書きを背負わせず、あくまで個人的な思いで行動させた方が話がすっきりしたと思う。メイツ星は父親を殺された人物を交渉の代表に選ぶのが怪しいし、そもそも、いつの間にか地球に来て怪獣を捕獲していたと言う時点でかなり怪しい。怒りや憎しみと言った感情が大きく絡んだ問題に国家と言う大きなコミュニティが関わると問題がさらに泥沼化してしまう恐れがある。

 

サコミズ隊長は「とにかく歩み寄ってみなければ何も始まらない」「怖いからこそ、勇気を持って話し合う事が大切。話し合ってお互いを知ろうとしなければ」と短絡的な行動を戒めていたが、ビオが街を破壊した事を受け、「30数年前の出来事は二度と起こってはならない悲劇です。無知と恐れの生み出した不幸な事件と言えるでしょう。我々は自らの過ちを知り、改めなければなりません。ですが、今、危機にさらされている人々を守る事がGUYSの使命である事にも変わりありません」と苦渋の決断を下す。

 

負傷したビオは地球人に変身して身を潜めるが、そこにピクニックに来ていたみやま保育園の皆が通りがかる。ビオが緑の血を流していた事で宇宙人の正体がバレるが、子供達は宇宙人でも怪我をしたら痛いとハンカチを差し出す。
う~ん……。自分も子供は清く正しく育ってほしいとは思うのだが、この流れでこの場面で子供にこういう言動をさせるのはあざとさを感じる。「怪獣使いと少年」のパン屋のお姉さんに当たる場面なのだろうが、パン屋のお姉さんは単なる良い人ではなくて職業意識的なものも含んでいたと思う。それを子供は純真無垢で優しくて良い存在であると言う場面に当てはめるのは何かズレを感じる。
又、メイツ星人が良少年に残した愛情と言う遺産が園長を通じて子供達へと託された結果だとして、正しく育てられた子供達と「怪獣使いと少年」のいじめっ子達を対比させる事も出来るが、そうなると園長の描写が弱いのが気になる。大人の育て方によって子供達の考え方が変わり最終的には世の中が変わっていくと言う本作の結論に繋がる部分なのでもっと力を入れて描写してほしかった。

 

今回の話でフォローし辛いのがリュウの言動。
握手しようと手を差し伸ばしたビオをミライを攻撃しようとしていると勘違いして撃ったのは、これまでの宇宙人関係の話を振り返ると仕方が無い部分があるとは思う。
しかし、その後にメイツ星人の事情を聞き、サコミズ隊長の「お互いに武器を捨ててもう一度話し合おうと説得するんだ」との指示に「G・I・G」と答えていながら常に銃を構えた状態でビオに接し、ビオを説得すればゾアムルチを止められる可能性があるのにミライに向かって「何をやっている? 街が大変な事になっているんだぞ!」とメビウスに変身してゾアムルチを倒すよう促す。
メビウスは必ず勝ってくれるさ」と言っているが、それは自分の責任で暴れるゾアムルチをメビウスに倒させると言う「自分の尻拭いをウルトラマンにさせる」と言う事である。

 

これは地球とメイツ星の問題で自分はどうすれば良いのかと悩むミライ。
この苦悩は『セブン』の「ノンマルトの使者」で地球人とノンマルトの間に立たされたモロボシ・ダンに通じるものがある。因みにダンは自分一人で考えて地球人に加勢する事を決めている。

 

ビオが危惧した通り、メビウスは宇宙警備隊員としてではなく、地球の特別チームGUYS隊員として、ウルトラマンの力を振るってしまった。
今回ばかりはミライにリュウの言う事を聞いてほしくなかった。せめてリュウ以外の人物、サコミズ隊長やコノミの頼みだったらまだ良かったのだが……。ここはウルトラマンと特別チームの間に隠し事が無いと言う『メビウス』後半の構図の問題点が出てしまったと言える。

 

30数年前に地球人に殺害されたメイツ星人はビオの父親だった。これは「怪獣使いと少年」でメイツ星人が良少年と疑似親子の関係を築いた理由付けとして納得できる。
ゾアムルチはビオの脳波と同調していてビオの怒りと憎しみがある限り破壊を続ける。これは「怪獣使いと少年」で郷秀樹がムルチの破壊活動を見て「まるで金山さんの怒りが乗り移ったようだ……」と語ったのを拾った設定だと思われる。

 

ビオとリュウの話を聞いていたみやま保育園の園長は「会いたかった」と感激する。
いや、この流れでこの会話でこの戦いの状況で、どうしてこんな呑気な感じで出てこれるんだ?
かつて良少年と会っていた園長はメイツ星人と良少年の関係から違う星の人間同士でも心を通わせる事が出来るのだと感銘を受け、それを伝えたくて保育園の園長になったのだった。
「あなたのお父様が地球人の少年に残した「愛情」と言う遺産は私の園の子供達がしっかり受け継いでいます。この子達が大きくなる頃、この星はきっと今より優しくなっているでしょう」。
今回はリュウが話の中心になっていたが、これをコノミ中心の話にすれば、これまでの話でコノミが宇宙人メビウスの心情を思って発言した一連の台詞の根本の説明になるし、園長とCREW GUYSをもっと自然に絡められただろうし、リュウがビオを撃ってコノミが説得する流れなら全体の違和感も少なくなったと思う。

 

「俺が言えた義理じゃねぇのは分かっている。けど、もういっぺんだけ、地球人を信じてみてくれねぇか?」と銃を収めて説得するリュウ
最初は間違ったリュウが考えを改めていくのは分かる。しかし、劇中ではその部分が描けていたとは思えない。実はリュウの心変わりの部分が直接描かれていないのだ。サコミズ隊長か園長の話を聞く事で考えを改めるリュウの場面が一つでもあれば……。

 

ところで気になるのがビオが良少年を知らなかった事。
園長によると、良少年はいつの間にか姿が見えなくなり、病気で亡くなったとも長い旅に出たとも言われたがハッキリした事は分からないとなっている。
良少年はメイツ星に行って握手をするのが夢だったが、ビオが良少年を知らなかった事から「良少年は宇宙船を掘り出せなくて諦めた」「掘り出す前に死亡した」「掘り出せたが地球を飛び立てなかった」「飛び立てたがメイツ星に辿り着けなかった」「メイツ星に辿り着いたが捕らえられてその存在が知られないように処理された」といずれにせよ良少年の願いは叶えられなかった事になる。
怪獣使いと少年」は良少年のその後を描かなかったので、ひょっとしたら、良少年は地球を飛び立ってメイツ星に辿り着き、そこでは幸せになれたかもしれないと想像できる余地があったのだが、本作はその余地を無くしてしまい、結果、良少年に対する希望が完全に絶たれる事になってしまった。

 

園長から父親と良少年の話を聞き、地球人をもう一度信じてみようと思ったが、すぐに憎しみを止められないと言うビオの絶叫が印象的。この理屈と感情の違いが面白い。
自分では憎しみを止められなかったビオはメビウスに自分の憎しみを消してくれと頼む。個人的にはここでミライがメビウスに変身するのが良かったと思う。

 

雨が上がり、晴れた空にかかっている虹を見たビオは「美しい」と感嘆する。
リュウが手を差し出すが、ビオは自分の傷口に縛られた子供達のハンカチを見て、握手は父の遺産が花を咲かせたのを見届けてからと言って帰って行く。
今回、ビオは緑の血を流しはしたが、メイツ星人としての姿は一部の人間にしか見せていない。いつか、メイツ星人の姿で地球人と握手する日が来るのだろうか?

 

メビウス』は昭和ウルトラシリーズと世界観が繋がっていて過去の話の後日談も色々と作られた。個人的に「思い出の先生」が作られて本当に嬉しかった。
ただ、どんな話でも後日談を作れば良いと言うものではない。『セブン』の「ノンマルトの使者」や『帰マン』の「怪獣使いと少年」のような賛否両論あった話は取扱いに注意しなければいけない。
今回は園長の回想場面にあったように良少年のキャラクターが「怪獣使いと少年」とは随分と異なっている。良少年はメイツ星人に言われた「いつかメイツ星人と地球人が手を取り合って仲良くできる日」が必ず来る事を信じて楽しそうに穴を掘り続け、宇宙船を掘り出す理由も地球人として一足先にメイツ星人と握手をする為となっている。メイツ星人が良少年に「いつかメイツ星人と地球人が手を取り合って仲良くできる日が必ず来る」と言っていたのは納得できるが、あの事件を経た後、良少年は地球人にそこまでの希望を抱いていたのだろうかと言う疑問が出てくる。今回は「怪獣使いと少年」の後日談でありながら、「怪獣使いと少年」を見た後だと違和感を覚える内容になってしまったのが残念。
ただ、現実に対する絶望と不条理とやり切れなさに満ちた「怪獣使いと少年」と言う話に対し、それでもメイツ星人と良少年の間には絆と未来に対する希望が生まれていたと言う着眼点は良かったと思う。
尚、『メビウス』以降も昭和ウルトラシリーズの後日談は作られているが、パラレルワールドマルチバースの設定を使う事で「過去の話と直接繋がっているようにも繋がっていないようにも見える」と言う作り方に変わってきている。

 

今回の話の脚本を担当したのは朱川湊人さん。
朱川さんの本職は小説家で、2005年に直木賞を受賞しているので放送当時は直木賞受賞作家が「怪獣使いと少年」の後日談を書くと言う事で話題になった。
朱川さんは後に『アンデレスホリゾント』と言う『メビウス』の小説を執筆していて、今回の「怪獣使いの遺産」も小説オリジナルの展開で書かれている。

 

最後に今回の話は第33話にしてほしかった。
偶然とは言え、ベムスター登場が第18話、ヤプール復活が第24話になっているので。