帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「思い出の先生」

「思い出の先生 ー硫酸怪獣ホー 円盤生物ロベルガー二世登場ー
ウルトラマンメビウス』第41話
2007年1月27日放送(第41話)
脚本 川上英幸
監督 佐野智樹
特技監督 鈴木健二

 

ウルトラマン80
身長 50m
体重 4万4千t
地球に再び発生する可能性が出たマイナスエネルギーの調査中にロベルガー二世と遭遇し、メビウスと一緒に撃破する。
その後、マイナスエネルギーの怪獣であるホーの出現を受けて桜ヶ岡中学校に現れ、かつての教え子達からの言葉を受け、四半世紀前に教師を辞める事になった経緯を自分の口から伝えるべく再び矢的猛の姿になって教え子達の前に立った。
戦いではウルトラスパイラルビーム、ウルトラレイランス、サクシウム光線、バックルビームを使う。
四半世紀前の地球での活躍が認められてウルトラ兄弟の一人になっていた。

 

円盤生物ロベルガー二世
身長 55m
体重 1万9千t
以前に現れた個体とは頭部の角の数や体色が異なる。
マイナスエネルギーの調査をしていた80に発見され地球で戦う事になる。
強力破壊光弾で攻撃するも、メビウスのメビュームシュートと80のサクシウム光線を受けて倒された。
「二世」と言うのが昭和っぽくて懐かしい。
仲間達の想い」のロベルガーの着ぐるみを改造している。

 

硫酸怪獣ホー
身長 50m
体重 2万80t
目から硫酸の涙を撒き散らし、口から強力な硫酸光線を吐く。
GUYSの攻撃は全て擦り抜けるが、ウルトラマンの攻撃は当たる。
最初はメビウスと戦っていたが、80が現れると自らバックルビームを受けて成仏した。
以前の個体は失恋した少年の心とマイナスエネルギーが同調して出現し、今回の個体も廃校になる桜ヶ岡中学校のマイナスエネルギーによって出現したと考えられたが、80が現れた時の嬉しそうな反応やバックルビームを受けて笑顔で消えた姿から、桜ヶ岡中学校が80と生徒達を再会させたくて呼び出した怪獣だったのではないかと考えられるようになった。

 

物語
80から地球に再びマイナスエネルギーが発生する可能性が出ている事を告げられたミライは調査に向かう。
微弱なマイナスエネルギーが検知された桜ヶ岡中学校では矢的猛(=80)の教え子達が久し振りの再会を果たしていた。
そして、桜ヶ岡中学校が廃校になる前に1年E組のクラス会が開かれる事になるのだが……。

 

感想
『80』学園編の後日談。『80』の「先生の秘密」で矢的先生にとって教師として最初の試練であった登校拒否児童の塚本が教師になって、かつての矢的猛を思わせる言動をするのが感慨深い。
今回は『80』学園編の生徒が再登場していて、博士は大学で研究をし、落語は地元の信用金庫に就職し、ファッションは3人の子供の母親になり、スーパーは父親の店を継いでいる。又、『80』の「泣くな初恋怪獣」で失恋からホーを呼び寄せてしまった真一は若い奥さんをもらったらしい。他にも「宇宙の剣豪」や「ウルトラマンの重圧」に登場したオオシマ彗星は『80』の「星から来た少年」に登場した大島明男が見付けたと言う設定になっている。
昭和ウルトラシリーズの補完が多い『メビウス』でもレギュラーやゲストのその後がここまで語られているのは『80』のみである。

 

80は地球に再び発生する可能性が出たマイナスエネルギーの調査中にロベルガー二世を発見して、そのまま地球で戦う事になったらしい。
円盤生物と言えば『レオ』なので、ここは『80』の怪獣にしてほしかった。塚本絡みでギコギラー辺りが適任だったと思うが、これは着ぐるみとかの都合もあるんだろうな。

 

マイナスエネルギーは人間の心の暗い波動と言われていて邪悪な怪獣を呼び寄せていると言う説もあるが、まだ研究過程でハッキリとした結論は出ていないらしい。
再び怪獣頻出期に入った事が再びマイナスエネルギーが発生する事になった要因だと思われるが、エンペラ軍団が地球に邪悪な怪獣を集める為にボガールや時空波を使ってマイナスエネルギーが発生する環境を作っていったとも考えられる。

 

桜ヶ岡中学校も隣町の学校と統廃合されて無くなる事に。そんな桜ヶ岡中学校に先月から赴任してきた塚本はかつての落語とスーパーと再会。そこから中学校時代の思い出話が始まり、1年E組時代にほんの数ヶ月だけ担任だった矢的先生の話へと繋がっていく。
塚本は「矢的先生はウルトラマンだった」と言っているが、これは確証があったのではなく何となく感じていた事。しかし、塚本の矢的先生は80だった発言、新聞で報じられる27年振りに地球に現れた80、そして桜ヶ岡中学校の廃校と壊される前に開かれる事になったクラス会。これら懐かしき思い出が全て一緒くたになり、塚本だけでなく落語とスーパーも80は矢的先生だとしてクラス会への参加を呼び掛けるようになる。

 

塚本は元UGM隊員の子供から矢的先生が教師をやりながらUGMの隊員としても働いていた事を聞いていた。
そう言えば、矢的先生がUGM隊員でもある事は校長先生以外には秘密の事であった。
塚本の話に出てくる元UGM隊員が誰なのか気になる。喋りそうなのはイケダ隊員あたりかな?(後期のUGM隊員が矢的猛は教師とUGM隊員の二足のわらじを履いていた事を知っていたのかどうか微妙ではあるが。もし知らなかったら、対象は前期隊員に絞られるのだが……)

 

80がウルトラマンとしてだけでなく教師としても慕われていた事を知ったミライは1年E組のクラス会に参加してほしいと80に頼むが断られてしまう。
戸惑うミライに80は答える。
「元々は地球へはマイナスエネルギーの調査の為に訪れた。そして人間と触れ合ううちに人間の持つ限りの無い可能性を感じた。しかし、人間はその可能性を間違った方向に向きかねない事も分かった。そして私は考えたのだ。「教育」と言う見地からマイナスエネルギーの発生を抑えられるのではないかと。私は勉強を重ね、思春期と言われる不安定な時期の中学生の教師になった。しかし、マイナスエネルギーの発生を食い止める事は出来なかった。私は次々に現れる怪獣に立ち向かう為、教師である事を捨てねばならなかったのだ。遠く離れたとは言え、私の心には常に彼らがいる。メビウス、君の口から伝えてほしい。矢的猛が謝っていたと……」。
ウルトラシリーズでは路線変更が行われた作品がいくつかあるが、その殆どが劇中である程度の説明やフォローをしていた。しかし、『80』の学園編は何の説明もフォローも無く突然終了してしまっている。第1話のサブタイトルが「ウルトラマン先生」となっているように「教師」は『80』にとって最も重要な要素だっただけにこの路線変更はとても残念であったが、四半世紀を経て、遂にそれについて説明とフォローがされる事となった。

 

80に「自分の代わりに謝ってほしい」と頼まれたミライだが、矢的先生に想いを告げる生徒達の姿を見て迷ってしまう。
80と生徒の間で板挟みになって困るミライをサコミズ隊長が諭す。
「出会い、別れ、喜び、悲しみ……。人間って面倒くさい生き物なんだ。でもね、時が来れば、それが思い出と言うものに変わる。その思い出が何も無い事が一番人間にとって悲しい事かな」。
80と生徒について語っているのかと思うがどこかズレた感じにも聞こえる。実はこの台詞はサコミズ隊長自身について語っていると考えれば合点が行く。次の「旧友の来訪」で明かされるが、サコミズ隊長は怪獣頻出期の頃は宇宙を飛び回っていて地球とは違う時間の流れにいた。つまり、サコミズ隊長には思い出が無いのだ。

 

80出現を知らせた新聞の日付が「2007年(平成19年)」となっていて、次の「旧友の来訪」でタケナカ最高議長がCREW GUYSの事を「入隊して1年にも満たない」と言っているので、『メビウス』の時代設定が2006年から2007年と言う放送当時を舞台にしている事が分かる。
ただ、ここで困るのが80出現を知らせた新聞に書かれている内容で、80出現を「27年振り」としている。80は1981年に地球を去っているので「26年振り」になるはずなのだが……。
因みに『メビウス』第1話の「運命の出逢い」(2006年)ではディノゾールはマーゴドン以来25年振りの怪獣となっている。80は「あっ! キリンも象も氷になった!!」ではマーゴドンと戦っていないので、「80最大のピンチ! 変身! 女ウルトラマン」でのプラズマ・マイナズマとの戦いを1980年の出来事だとすれば辻褄は合うが、さすがにそれは無理があるような……。
う~ん……。まさか『メビウス』の劇中年表がこんなに無茶苦茶だったとは思わなかった。どうしてこうなったのだろう?

 

80やホーの出現では一つ一つの効果音やBGMが懐かしくて感動する。
学校の風景を差し込みながらホーが涙を撒き散らして戦うのは反則過ぎる。こちらの目からも硫酸の涙が零れてしまう。
メビウスではなく80に倒される事になって嬉しそうなホーが可愛い。
最後にバックルビームを浴びたホーは笑顔で消えていく。まるで満足して成仏したかのようであった。
ウルトラマンはドラマとは無関係な存在で最後に怪獣を倒す為だけに存在していると言われる事があるが、今回はそれを逆手にとって、ウルトラマンが怪獣を倒す為の存在だと言うのなら怪獣を作り出す事で最後にウルトラマンを登場させる事が出来ると言うドラマになっている。

 

ホーの対処に手を焼くメビウス。その時、ホーは何かを感じ取って大空を見上げた。
博士「あ、あれは!?」、
ファッション「ウルトラマン」、
真一「80!」、
スーパー「俺達の」、
落語「ウルトラマンだ!」。
塚本「矢的先生……。矢的先生!」。
「俺達のウルトラマンだ」はウルトラシリーズでも屈指の名言。長年に亘って作品が作り続けられ多くの人が見てきたウルトラシリーズだからこそ生まれた台詞と言える。

 

ホーを成仏させた80に塚本が「矢的先生!」と呼びかける。その言葉に振り返った80を見て矢的先生だと確信した生徒達は先生への感謝を述べていく。
塚本「先生! 先生に憧れて、僕は教師になりました!」、
ファッション「私は結婚して三人の子供のお母さんです!」、
落語「僕は地元の信用金庫に就職しました!」、
博士「大学で研究する日々を送っています!」、
スーパー「親父のスーパー継いで頑張っているぜー!」、
そして広げられる「矢的先生 思い出をありがとう」と言う垂れ幕。
塚本「皆、先生には感謝しています。本当にありがとうございました!」。
自分はこういう年月を経ての再会シチュエーションに滅茶苦茶弱いので今回の話は号泣した。ドラマは作り物なので「数十年振りの再会」と言う設定はいくらでも作れるし、それでも感動するドラマは生まれるものなのだが、今回は「実際に『80』の学園編から四半世紀の時が経っている」と言うのが大きかったと思う。歴史を積み上げてきたウルトラシリーズだからこそ出来た話と言える。

 

昭和ウルトラシリーズの世界観を復活させた『メビウス』でもウルトラマン以外の人間が再登場したのは今回の桜ヶ岡中学校の生徒と後のタケナカ参謀だけであった。ここは漫画やアニメのように絵を描いてキャラクターを再登場させる事が出来ない、役者が演じる実写作品の難しいところと言える。(実際、今回の話で桜ヶ岡中学校の卒業生を演じた人は『80』当時の役者とは別人である)

 

大空に消えていった80を見送る桜ヶ岡中学校の生徒達をじっと見つめるミライ。その横に矢的猛がやって来る。
「教え子達に逆に教えられてしまったな。感謝しているのは私の方だ。彼らと共に過ごせた時間は私にとってもかけがえのない思い出だからな。メビウス、私は自分の言葉で謝ってみるよ。大切な私の生徒達だから」。
そう告げて矢的先生はかつての教え子達の所へ……。
四半世紀の時を経て再会した矢的先生と生徒達を見たミライはある結論に達する。
ホーは桜ヶ岡中学校が呼び出したのだが、それは自分が壊される悲しみからではなく、矢的先生と生徒を会わせたかったから。ウルトラマンである80を再び呼び出す為に自らマイナスエネルギーの怪獣となったのだ。
目の前で起きた奇跡にミライは思い出の強さを実感するのだった。

 

今回は『メビウス&ウルトラ兄弟』や「故郷のない男」と違って矢的猛の変身シーンは無い。しかし、今回の話で大事なのは「ウルトラマン80が矢的先生になる」なので、変身シーンは無くて良かったと自分は考える。