帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『ウルトラマンサーガ』

ウルトラマンサーガ』
2012年3月24日公開
脚本 長谷川圭一
監督 おかひでき
特技監督 三池敏夫

 

ウルトラマンダイナ
身長 55m
体重 4万5千t
ネオフロンティアスペースでグランスフィアによる滅亡の危機から人間の未来を守ってワームホールの彼方に消えた伝説の英雄。その後は様々な宇宙を旅して人々を救っていた。
フューチャーアースがバット星人によって危機に瀕している事を知ってチームUと共に子供達を守った。
コクーンの中に突入し石化しながらもハイパーゼットンの誕生を阻止し続け、タケルが見付けてアンナが届けたリーフラッシャーで復活するとゼロとコスモスと共にハイパーゼットンを戦い、最後はサーガとなって勝利を掴んだ。
戦いが終わった後はスーパーGUTSメンバーに自分とタイガの無事を伝え、また新たな旅へと出発した。

 

ウルトラマンコスモス
身長 47m
体重 4万2千t
コスモスペースでムサシと共にカオス大戦を終結に導いた慈愛の勇者。無闇に怪獣を倒さない斬新な考えを持つ。
ムサシとは分離していたが再び一体化してフューチャーアースに現れ、生死不明になったダイナや力を完全に発揮できないゼロの代わりに皆を守って戦った。
ゼロとダイナと共にハイパーゼットンと戦い、最後はサーガとなって勝利を掴んだ。
戦いが終わった後はコスモスペースに戻った。

 

ウルトラマンサーガ
身長 58m
体重 4万5千t
苦戦に陥っても決して諦めなかったタイガ、アスカ、ムサシの3人がサーガブレスで合体変身した。
サーガブレスによって解放されるサーガエフェクトと呼ばれる神秘の力で様々な光の技を繰り出す。
ハイパーゼットンと互角の戦いを繰り広げ、チームUの援護を受けて優勢に立つと最後はサーガマキシマムでバット星人ごとハイパーゼットンを倒した。

 

その他のウルトラマン
初代マン、セブン、ジャック、エース、レオの5人がバット星人の暗躍を調査していた。
ディレクターズカット版ではフューチャーアースに現れて、バット星人とハイパーゼットンが生み出した怪獣兵器と戦っている。

 

帝国機兵レギオノイド
身長 53m
体重 3万5千t
アナザースペースでベリアル帝国軍壊滅後も活動を続けていた残党。
圧倒的な物量でゼロに襲いかかるが、ゼロツインシュートによって全て倒された。

 

宇宙球体スフィア
身長 計測不能
体重 計測不能
ネオフロンティアスペースで地球人の宇宙進出を妨害していた謎の生命体。
グランスフィアが倒されてから15年振りに生き残りが姿を現してTPCの火星基地を襲撃したが、バット星人に捕獲されてハイパーゼットンの糧にされてしまった。
ディレクターズカット版ではバット星人とハイパーゼットンが怪獣兵器を生み出す際の核にされている。

 

遊星ジュランの怪獣達
リドリアス、ゴルメデ、モグルドン、エリガル、ボルギルスの群れが確認され、その他にミーニンの存在も確認されている。かつては人類やコスモスと激しく対立したカオスヘッダー0も今はムサシ達と一緒に怪獣を見守っている。

 

凶暴怪獣アーストロン
身長 60m
体重 2万5千t
バット星人によって怪獣墓場から連れ去られた怪獣。
地中を素早く移動し、頭にある巨大な角と口から吐くマグマ光線で敵を攻撃する。
フューチャーアースに現れるがダイナのソルジェント光線で倒された。

 

深海怪獣グビラ
身長 50m
体重 3万5千t
バット星人によって怪獣墓場から連れ去られた怪獣。
水中だけでなく地中でも素早く移動する事が出来、鼻先のドリルで敵を攻撃する。
フューチャーアースに現れて一度はコスモスのフルムーンレクトで大人しくなったがバット星人によって再び差し向けられる。再びフルムーンレクトで大人しくなるがバット星人によって処刑されてしまった。

 

古代怪獣ゴメス(S)
身長 40m
体重 4万t
バット星人によって怪獣墓場から連れ去られた怪獣。
フューチャーアースに現れてコスモスのフルムーンレクトで大人しくなったがバット星人によって処刑されてしまった。
因みに(S)はSpecialの略で突然変異で巨大化した1体限りの個体を指す分類名なので、『銀河伝説』や本作で再登場したゴメスは『大怪獣バトル』でガッツ星人が使っていた個体と言う事になる。死んで怪獣墓場に流れ着いた後も何度も利用されては殺されると言うのはかなり可哀相……。

 

宇宙恐竜ハイパーゼットン
コクーン時 身長 500m 体重 50万t
ギガント時 身長 300m 体重 30万t
イマーゴ時 身長 70m 体重 4万t
最初は繭コクーンの状態でバット星人が様々な宇宙から捕獲してきた怪獣やフューチャーアースの人々の絶望と恐怖心を糧に成長していった。コクーンの中に突入したダイナによって成長を妨害されていたが、スフィアを吸収した事で幼体ギガントへと覚醒した。
ゼロとコスモスを苦戦させるが、復活したダイナも加わった3人のウルトラマンの前に敗れる。しかし、バット星人の宇宙船と融合して完全体イマーゴへとパワーアップした。
ハイパーゼットンテレポートで敵の攻撃を避け、ハイパーゼットンバリヤーで敵の攻撃を防ぎ、ハイパーゼットンアブゾーブで敵の攻撃を撥ね返す事が出来る。さらに一兆度を越える暗黒火球を放ち、翼を展開する事で地上をマッハ33で飛行する。
バット星人のコントロールを受けてサーガと互角の戦いを繰り広げるが、チームUの援護で劣勢に追いやられると最後はサーガのサーガマキシマムでバット星人ごと倒された。

 

触覚宇宙人バット星人
身長 250cm
体重 80kg
宇宙に死をもたらす神になると言う野望の実現の為、フューチャーアースを怪獣兵器の実験場に選んだ。
宇宙船でフューチャーアースの人々を消し去り、様々な宇宙から怪獣を連れ去り、それらを使ってハイパーゼットンを育てていった。
完全体イマーゴとなったハイパーゼットンと一体化してサーガと互角の戦いを繰り広げるが、最後は見下していた人間の底力をきっかけに敗北を喫する事となった。

 

怪獣兵器
バット星人が怪獣墓場から連れ去ったアントラー、キングパンドン、ブラックキング、ベロクロン、タイラントの5体をスフィア細胞で強化改造した。
ディレクターズカット版のみの登場となっている。

 

物語
廃墟と化した街。
その中で子供達と一緒に懸命に生き抜く女性達がいた。
そしてある日、彼女達は出会う。ウルトラマンと……。

 

感想
ウルトラマンシリーズ45周年記念作品の第2弾。
制作中に東日本大震災が発生したが震災後を生きる人々への応援作として作られる事となった。ラストシーンは必要あるのかどうか人それぞれ色々な考えがあると思うが、自分はあの時に作られた映画としてアリだと思っている。(自分が岩手県在住だからと言うのもあるんだろうけれど)

 

2012年に生誕15周年を迎える『ダイナ』と2011年に生誕10周年を迎えた『コスモス』の後日談的要素もある。世界観の異なるウルトラマン達の共演はこれまでにもあったが、本作を経てニュージェネレーションヒーローシリーズから本格的に取り組まれるようになっていった。

 

2010年に円谷プロ連結子会社化したフィールズは2011年に小学館クリエイティブとの共同出資で関連会社ヒーローズを設立し青年漫画雑誌『月刊ヒーローズ』を創刊。『鉄のラインバレル』を手掛けた原作・清水栄一さんと作画・下口智裕さんによる『初代マン』のその後が描かれた漫画『ULTRAMAN』が連載される事となった。
この『ヒーローズ』でAKB48とのコラボーレーションが行われる等、ウルトラシリーズAKB48の繋がりが生まれていった。(因みに『サーガ』が公開された翌年に脚本の長谷川さんはAKB48出演のドラマ『マジすか学園3』を担当する事になる)

 

エンディングの『Lost the way』を歌うDiVAはAKB48の音楽ユニットで初期メンバー4人はそのままチームUの主要キャラクターを演じている。
本作はメインキャラクターであるチームUをAKB48のメンバーが演じた事で良くも悪くも話題になった。売れている人をキャスティングして話題を作る事は商業作品の基本なので、あまりにも役に合っていなかったりレベルが低かったりしなければそこまで強く否定する事は無いと自分は考えている。

 

タイガ・ノゾム役にDAIGOさんがキャスティングされ、持ちネタの「うぃっしゅ!」から「フィニッシュ!」と言う決め言葉が作られた。因みに「フィニッシュ!」の決めポーズはセブンのエメリウム光線のポーズを参考にしているらしい。

 

バット星人の声を政治家だった東国原英夫さんが担当しているのだが、あまりにも声が加工されていて東国原さんだと言われないと分からないのが残念。

 

本作はウルトラシリーズで唯一の3D版が制作されている。
日本映画界では3D映画の制作は減少傾向にあるが、3Dだとミニチュア特撮の箱庭感をより強く味わえるので、個人的に日本特撮は3Dと相性が良い感じがする。

 

ゼロシリーズでは地球が舞台になっている唯一の作品で久し振りにミニチュア特撮が採用されている。
平成に入ってからデジタル化が進んだ特撮界であるが、本作が公開された2012年はアナログ特撮が見直された時期で、この年の夏には『館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』が開催されて大きな話題を呼んだ。その中で公開された『巨神兵 東京に現わる』には本作で特技監督を務めた三池敏夫さんが美術監督で参加している。
尚、ミニチュア特撮が復活した本作であるが、制作中に東日本大震災が発生した為、ビルの破壊シーンや瓦礫と言った表現はされなかったらしい。

 

今回戦う怪獣はアーストロン、グビラ、ゴメス、ハイパーゼットン、バット星人となっている。
アーストロンとハイパーゼットン&バット星人は『帰マン』の最初と最後の敵と言う組み合わせ。ゴメスとグビラはちょっとマニアックでウルトラシリーズが始まった1966年に登場した最初と最後の怪獣と言う組み合わせになっている。

 

チームUが操縦するUローダーはスタンドライブとホバードライブの二形態を持つ多目的ローダーマシン。
特筆すべきは人型稼働形態のスタンドライブでウルトラシリーズでは数少ない人型のメカとなっている。ヒーロー作品で人型メカと言えばスーパー戦隊があるが、Uローダーは全長5.4mと小型にする事でスーパー戦隊のメカとの差別化がされている。
ローダーはフューチャーアースで幅広く用いられているメカで元々は軍用だったが土木建築作業へと転用されたと言う設定。地球防衛隊とバット星人の戦いが続いていたら、いずれガンダムが作られていそうな感じだ。

 

チームUの危機に現れるダイナ。
殆どのウルトラマンは変身者が変身してウルトラマンが空から現れて着地すると言う流れなのだが、今回は変身者の姿が見えず、遠くから足音と地響きが近付いてきて、次いで街中にその巨体が現れると言う流れになっている。これはウルトラマンの演出としてはかなり異色で謎の存在と言う感じがよく出ていた。
ダイナとアーストロンの戦いは「本当にあのアスカなのか?」と思う程の無駄の無い戦いになっていて、アスカの成長が感じ取れる。

 

レギオノイドの残党と戦っていたゼロにアスカの声が届くがゼロの反応は「誰だ?」。
ゼロとダイナは『銀河伝説』で共闘しているが、言われてみればゼロとアスカが話をしている場面は無かった。おそらくゼロはダイナの姿は知っているがアスカの声は聞いた事が無かったのだろう。
ゼロにメッセージを伝えるアスカの喋り方は切迫感はあるものの全体的に落ち着いた雰囲気で『ダイナ』でのアスカ・カズマを思わせるものになっている。
アスカのメッセージにあった「地球」と言う言葉に反応したゼロはレギオノイドを一掃するとウルティメイトゼロになってフューチャーアースへと旅立った。

 

光の国では謎の宇宙船が様々な宇宙に現れては怪獣を連れ去っていると言う事件を調査していた。
ここでセブンとレオの師弟コンビの姿が見られる。特にダンとゲンの共演は『レオ』以来となる。メビウスやゼロには厳しい師匠のゲンだが、ダンとの場面ではちゃんとダンの弟子になっている。この辺りの真夏さんの演じ分けはさすが。
今回は敵がバット星人だったので、出来ればジャック(郷)をもっと目立たせてほしかった。

 

『ダイナ』最終回から15年の月日が経過したネオフロンティアスペース。
ヒビキ隊長はTPC総監に、コウダ副隊長は宇宙開発局の参謀に、リョウはスーパーGUTSの隊長に、カリヤは副隊長になっていて、ナカジマは科学班主任として時空移動の研究を行っていた。マイは登場していないが、訓練学校ZEROの教官としてタイガを見い出してスーパーGUTSに配属させたと言う設定になっている。
今回のリョウ達が所属しているスーパーGUTSは火星基地チームである「スーパーGUTSマーズ」と言うチーム。因みに『ダイナ』最終回が2020年で本作の時代設定は2035年。『ティガ』の『古代に甦る巨人』に登場したネオスーパーGUTSの結成は2027年となっている。

 

今ではアスカは人類滅亡の危機を救った男として歴史の教科書にも載っているほどの人物。アスカが消失した日は当初は「光の日」とされていたが、それも「アスカ記念日」に変えられている。
「記念日」に関しては『ダイナ』の「新たなる影」でアスカが父カズマが消失した日を「命日」ではなくて「記念日」にしていた事に由来しているのだろう。
ウルトラマンに変身した人間でここまで大きく扱われた存在はアスカ以外にいない。ただ、ここまで大きく扱われると様々な思惑が絡んでいそうでちょっと怖い。
それにしても、アスカは目立ちたがり屋だけどそれ以上に照れ屋なので、こんなに大きく扱われたら帰り辛くなっているんじゃないかなぁと言う気もする。

 

「アスカは全ての命を救ってはいない」として「世界は常に変化しているから過去を振り向いていたら進化できない」と言うタイガ。
変わった奴だが優秀だとして、スーパーGUTSのメンバーにはかつてのアスカに似ていると評されている。タイガは前を見ているようで実は過去に囚われていたと言う点も含めてアスカに似ているキャラクターであった。
火星基地を襲撃するスフィアと戦闘機のドッグファイトは『ダイナ』でもあったシチュエーション。両者を見比べると15年の年月による技術の進化が分かる。
リョウは「実戦で最も大事なのは必ず生きて戻る事よ」と告げるが、タイガはそのまま別の宇宙へ。これはかつてのアスカと似た展開。そして、タイガも戻って来る事は無かった。

 

ゼロとバット星人の戦闘機による空中戦は久し振りに都市上空を舞台にしたものとなった。『コスモス』辺りからCGや合成を駆使した空中戦が描かれるようになったが、その大半が何も無い空か海上を舞台にしたもので、眼下にビル街が見える状態での戦いは少ない。撮影が大変なのは分かるが、建物がある方が「空を飛んで戦っている」感がより出ると思う。

 

ゼロが撃ち落としたバット星人の戦闘機の一つが子供の所に。それを助けようとしてタイガは自分が乗っているガッツイーグルα号をバット星人の戦闘機にぶつける。
あのゼロですら「馬鹿な! なんて無茶な奴だ!」と言う行動。しかし、子供を助ける為に自分の身を犠牲にするタイガの勇気に感動したゼロはタイガと一体化する。
ゼロ「俺はゼロ! ウルトラマンゼロだ。子供を助けたお前の勇気に感動したぜ。これから俺達は一心同体だ!」、
タイガ「出てけ」、
ゼロ「そう、出てけ! え?」。
タイガの予想外の反応に思わずノリツッコミをしてしまうゼロ。ここからゼロの天然振りが表れるようになる。
銀河帝国』のランはゼロと一体化している時は意識が眠っていたので、ゼロとランのやり取りは一体化した時しか描かれなかったが、今回はゼロとタイガのやり取りが時にコミカルに時にシリアスに描かれている。
これまでゼロの描写は戦闘関連が殆どであったが、今回は食事のシーン等と言った日常描写も行われていて、ゼロと言うキャラクターが多面的に描かれる事となった。

 

自分と一体化したゼロに「何故勝手に俺の中に入った?」「俺はウルトラマンの力なんかいらない!」「今すぐ俺の体から出ていけ!」と告げるタイガ。
ウルトラシリーズウルトラマンとの一体化を拒否する人物が出てくるとは驚き。でも、まぁ、よく考えたら、意思の確認もしないでいきなり一体化したら拒否する人も出て来るよなぁ。むしろ、自分の中にいきなり宇宙人が入ったのに、それを受け入れた歴代主人公の懐が大きかったと言うべきか。
グビラの出現にゼロはウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを出してタイガに変身するよう迫る。
ゼロ「タイガ! これを装着して俺になれ! 俺と一緒に戦うんだ!」、
タイガ「ホイ」、
ゼロ「うそーん……」。
後の『列伝』や『新列伝』でのナビを見ても分かるが、意外とゼロは面白いリアクションを披露してくれる。

 

そこにコスモスが登場して怪獣を倒すと思ったタイガだったが、コスモスはフルムーンレクトでグビラを大人しくさせる。興奮していただけの怪獣を倒す必要は無いと言うムサシの意見をタイガは「斬新だね」と評する。
怪獣を倒さない展開は『初代マン』の頃からあったが、それを基本理念にした『コスモス』は『ダイナ』放送当時から見れば確かに「斬新」。
ゼロはコスモスとの面識は無いが噂を聞いた事があったらしい。どこから話を聞いたのか気になる。

 

そこにやって来たアンナは誰がコスモスだったのかと質問。それを聞いたタイガは「こっち」とムサシを指差し、ムサシは「え?」と戸惑う。
今でこそヒーローの正体が最初の方でバレてもおかしくは無くなったが、『コスモス』の頃はまだクライマックスまで正体はバレないと言うのが普通だった。
因みにタイガは「アスカ記念日」と言ったウルトラマンの正体がアスカだと公になっている世界で育っているので、ヒーローの正体がバレる事に対してそれほど抵抗は無いように見える。

 

バット星人はフューチャーアースを実験場に選ぶと、生物を次々に消し去って限られた人だけを残し、その人々から絶望と恐怖心を絞り出していった。この限られた場所で限られた人々からマイナスエネルギーを搾取するやり方は『ギンガ』のダークルギエルに近いものがある。
人々に絶望と恐怖心を与える為か、バット星人はゼットンの存在等も既に明かしている。このバット星人とゼットンの存在や情報がある中で戦いが始まるのは『帰マン』の「ウルトラ5つの誓い」と同じパターン。因みに『初代マン』の「さらばウルトラマン」ではゼットン星人は最後まで謎の宇宙人のままでゼットンは最後までその存在を隠されていた。

 

バット星人によってグビラとゴメスが出現。ムサシがコスモスに変身するが1対2で苦戦を強いられる。
ゼロ「数は問題じゃない! 大切なのは心の目で敵を捉える事だ。そうだ。タイガ、お前なら出来る! お前なら……ホイ」。
話を聞いていたタイガが目を閉じた隙を狙って強制的にウルトラゼロアイを装着させるゼロ。これは一心同体タイプだから出来るギャグ演出。
「待たせたな!」とカッコ良く現れるゼロだったが、タイガが一緒に戦う事を拒否した為に中途半端な大きさに……。小さい体で苦戦し、自分に協力しないタイガと一体化した事を「ウルトラマンゼロ、一生の不覚だ!」と嘆くゼロ。この時の事がよほど印象に残っているのか、後の『ゼロファイト』の「新たなる力」でも自分の体が小さくなった時にテンパっていた。でも、なんだかんだ言いつつもこの大きさで戦えるゼロはやっぱり凄い。
この時のゼロは身長5m程。『ティガ』の『古代に甦る巨人』や『ネクサス』でも中途半端な大きさに変身する事があったが、演出が変わればこうも雰囲気が変わるものかと驚く。

 

コスモスはフルムーンレクトでグビラとゴメスを大人しくさせるが、バット星人はグビラとゴメスを木端微塵に粉砕してしまう。
夕焼けを背にガックリと崩れ落ちるコスモスの姿はかつて「強さと力」や「操り怪獣」でエリガルやネルドラント・メカレーターを救えなかった時を思い出させる。

 

かつてチームUや子供達と一緒に過ごしていたアスカ。
アスカを演じたつるの剛士さんがギターを弾けるので、劇中でもアスカがギターを弾きながら『君だけを守りたい』を歌う場面が作られた。『ダイナ』放送当時から名曲との評価があり、劇中でも効果的に使われていた歌であったが、まさかここまで大きな歌になるとは思わなかった。
つるのさんは現在ではイクメンとして取り上げられる事も多くなり、劇中でも子供達と触れ合うアスカの姿が父親の姿に見える。『ダイナ』では常に父親カズマを追いかけていたアスカが15年の時の経て自身も父親のイメージを持つようになったと言うのがキャラクターのテーマにも合致していて良かった。
因みにムサシも『THE FIRST CONTACT』では父親との関係に悩んでいたが本作では自身が父親になっていて、ゼロも『銀河伝説』や『銀河帝国』では父親セブンとの微妙な関係があったりと、本作の男性キャラはどこかしら父との話がある。

 

誰も彼もアスカが好きな事に不満を述べるタイガにリーサは「タイガは……嫌いなの?」と尋ねる。
「ダイナの事は恨んではいないけれど、ずっと独りぼっちで生きてきて今更ウルトラマンに頼りたくない」と言うタイガ。この展開は『T』の「ウルトラのクリスマスツリー」を思い出す。又、怪獣に親を殺され、その怒りが親を助けてくれなかったウルトラマンの方に向かうのは同じ『T』の「さらばタロウよ! ウルトラの母よ!」を思い出す。

 

ムサシとコスモスは『THE FINAL BATTLE』で分離したが、バット星人が開拓惑星ジュランに現れたので再び一体化したと言う設定になっている。
子供達に開拓惑星ジュランの話を聞かせるムサシ。
「ジュランではね、色んな命が支え合って生きているんだよ。たくさんの怪獣達とカオスヘッダー、かつては人間の敵だった彼らとも今は一緒に生きている」。
ムサシが雰囲気そのままで落ち着いて頼りがいのある夢を持った大人に成長しているのが嬉しい。それにしても、まさか本当に怪獣と人間が仲良く暮らす世界を作るとは思わなかった。『コスモス』の第1話を見た時には想像も出来なかったが、今のムサシを見たら出来そうな気がしてくる。
そしてカオスヘッダーの再登場にも驚いた。最近のヒーロー作品は敵キャラの再登場が多くなったが、かつてのラスボスと和解して一緒に暮らしていると言うのは『コスモス』だから出来る事。
因みに遊星ジュランは『THE BLUE PLANET』でスコーピスの襲撃を受けた際に軌道が変化して現在は太陽系内に留まっていると言う設定になっているらしい。
ムサシはアヤノと結婚してソラと言う一人息子が生まれたと言う設定。因みにムサシを演じた杉浦太陽さんにも子供がいて、長女の名前は希空(のあ)、長男の名前は青空(せいあ)、さらに本作の公開から約1年後の2013年3月21日には次男が生まれて昊空(そら)と言う名前が付けられている。

 

ゼットンの目覚めを記念する祝砲としてバット星人はハイパーゼットンで暗黒火球を放ち、チームUと子供達が住むベースキャンプを破壊する。
終盤の危機で基地が破壊されるのはウルトラシリーズのお約束だが、今回は単なる基地じゃなくて子供達の暮らしていた場所でもあったので悲壮感がより強くなっている。

 

ムサシはコスモスに変身するが暗黒火球全てを迎撃する事は出来ず、ベースキャンプは火の海に……。
タイガはゼロと一体化して向上した身体能力を生かして子供達を助けるが、その最中に過去のトラウマがフラッシュバックしてパニックを起こしてしまう。
タイガ「ウルトラマーン! 早く! 早く!」、
ゼロ「しっかりしろ! 今はお前がウルトラマンだろ!」。
ゼロはウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを出すが、タイガはそれを装着する事が出来なかった。
そしてバット星人の攻撃が終わり、ゼロとタイガは焼け野原となったベースキャンプに呆然と立ち尽くす……。
ゼロ「タイガ……お前……情けなくないのか? こんなに事になって……、お前、悔しくないのか?」、
タイガ「これが……本当の俺だー!」。
ウルトラマンの力に頼りたくないと言っていたタイガだったが、実際はまだウルトラマンと言う存在に依存していた。
『T』を始めとする第2期ウルトラシリーズでは子供達の中にあるヒーローへの依存を断ち切る為に最終回では子供達とヒーローの別れが描かれていたが、もし『T』の健一君や『レオ』のトオルが最終回での光太郎やゲンとの話が無くてタロウやレオに依存したまま大人になったら、この時のタイガのようになっていたのかもしれない。
最終的にタイガは「今は自分がウルトラマンだ」と言う事実を受け入れ、かつては誰かに守られる存在だった自分が今度は誰かを守る存在になる事でウルトラマンへの依存を乗り越える事が出来た。これは最後にウルトラマンであるタロウの存在を消し去る事で光太郎や健一君のタロウへの依存を無くした『T』の最終回と違っている。ここは「ヒーローは永遠にはいない」とする昔と「生まれる前からヒーローがいて今後もずっとヒーローがいるだろう」とする現在の違いとも言える。

 

自分の弱さを露呈させたタイガはチームUのUローダーに貼られている地球防衛隊のマークが剥がれかけている事に気付く。地球防衛隊のマークを剥がすとそこには「山田工業」と言う文字が……。
本物の地球防衛隊はバット星人によって消し去られ、生き残りはミサトただ一人。そこに子供達が助けを求めて来た時、民間人だったアンナが「私達は地球防衛隊。もう大丈夫よ」と子供達を受け入れた。そしてアンナの嘘は皆の嘘となり、皆は子供達を守る為に今まで戦ってきたのだった。
「でも、自分達はやはり偽物で何も守れなかった」と嘆くサワにタイガは「違うよ。あんたらは……立派だ」と告げる。遂にタイガは覚悟を決めた。
皆が心配する中、タイガは笑顔でチームUと子供達に語りかける。
「大丈夫。アスカは不死身だ! 伝説の英雄だからな。必ずあいつを連れ戻してやる! 俺達を、ウルトラマンを信じろ! さぁ、行こうぜ、ゼロ!」。
そしてタイガは自分の意思でウルトラゼロアイを装着。遂に完全な大きさでゼロが降臨する。
「さぁ、勝ちに行こうぜ!」。

 

「チームU」と言うネーミングはAKB48のチームネームの法則に則ったもの。「ウルトラマン」の「U」かと思いきや実は「嘘」の「U」だったと言う引っ掛けが上手い。民間人が力を合わせて頑張っていると言う設定は防衛組織に所属しているタイガやゼロを奮い立たせる効果があった。
個人的に『G』のUMAが好きなので、チームUのメンバーがそれぞれ制服をアレンジしているのが良かった。
全員女性だったのはAKB48のメンバーをキャスティングするからと言うのが理由なのだろうが、この展開で男性メンバーが入ったら色々とややこしい事になるので全員女性で良かったと思う。

 

チームUのメンバー紹介。
アンナは本名・尾崎安奈でチームUのリーダーを務める22歳。
大型建築用のローダー操作業員で搭乗するUローダーも特別なチューナップが行われている。
姐御肌と言うか男前な性格は演じる秋元さんのキャラクターを反映したものかな。

ミサトは本名・放生ミサトでチームUの副リーダーを務める22歳。
地球防衛隊特殊部隊の予備隊員で、メンバーの中で唯一の地球防衛隊関係者として作戦参謀を務めている。
メンバーの中で一人だけ地球防衛隊の制服を正規の形で着用していると言う設定があるが、それ以外で「唯一の地球防衛隊関係者」と言う設定が使われなかった感じでやや惜しいキャラクター。

サワは本名・高山咲和子で20歳。
バイク便のライダーで、アンナとは元暴走族仲間でアンナの事を「頭」と呼んでいる。
ミサトに対しては唯一の正規隊員である事に対するコンプレックスとアンナのナンバー2の位置を巡るライバルと言う感じでやたらと突っかかっていた印象。
喋る機会が多かったので印象に残るキャラクターであった。

リーサは本名・尾崎理沙で18歳。アンナの妹。
看護学校生で皆のケアに努めていた。
劇中では『君だけを守りたい』をギターで弾く場面が印象的。アスカの事が好きだったのかなと言う雰囲気があった。タイガに関してはアスカの事もあって色々とこれからありそうな感じ。

ノンコは本名・赤星野乃子で19歳。
整備士の家で育ち、Uローダーの整備を担当している。チームUのメカニックシスターズの一人。
冒頭でレーダーのメモリを間違えてアーストロン接近を見逃すと言う「こいつらは大丈夫なのか?」と観客全員に開始早々不安を与えた人物。
演じる増田有華さんが大阪出身で関西弁を話す事からノンコも関西弁キャラとなった。サワと仲が良くてよく一緒にいた。

マオミは本名・大澄マオミで19歳。
ロボット研究所TBRY社に勤めていて、ノンコとは工業高校時代からの友人。チームUのメカニックシスターズの一人。
実家が保育園だったので子供達の面倒も見ていた。チームU結成の場面では現在とはかなり違った一面を見せていて結構驚く。

ヒナは本名・浜松ヒナで18歳。
元は服飾の専門学校に通っていた。高所恐怖症でUローダーに乗れない為、通信オペレートを担当している。
冒頭で通信機を通して世界に助けを求めるメッセージを発信していて、このメッセージをアスカが受け取ったらしいと言う実は結構重要な人物。
以上の他にもチームUのメンバーには『ウルトラマンサーガ超全集』に詳し過ぎる程の設定が紹介されている。又、同じ『超全集』には『アンナの日記 過ぎ去りし遠い日』と言うゼロがアンナの書き残していた日記を読むと言う形でチームU結成からダイナがハイパーゼットンに戦いを挑むまでの様子が語られている。

 

ハイパーゼットンに挑むゼロとコスモス。
岩場の戦いはオープン撮影であるが、巨大感が無くてウルトラシリーズの戦闘場面としてはイマイチ。
コスモスはフルムーンフラッシャーでハイパーゼットンの左肩の発光部分を破壊するが、ギガンティスクローの反撃を受けてそのまま岩の下敷きに……。
実は本作でコスモスは活躍しているようでかなりやられている。ダイナがクライマックスまで出ず、ゼロも完全な状態で戦うのはクライマックスまで待たねばならず、敵のバット星人とハイパーゼットンも最終決戦まで倒す事が出来ないと言う展開なので、常に戦えるコスモスが割を食ってしまった感じ。

 

タケルが何度も家出したのはダイナが石化する瞬間に変身道具のリーフラッシャーが落ちたのを見たから。
そのリーフラッシャーを見付けて届ける事でダイナが復活するわけなのだが、どうしてタケルはその事を黙っていたのだろうか? ショックで喋れなくなったのは分かるが、それでも9歳なのだから筆談は出来たと思う。
タケルが事情を説明したけれどアンナ達が危険だとしてハイパーゼットンの所に行かせてくれなかったので家出して一人で行く事になったと言うのなら分かるが、実際はタケルは何も説明しないで家出を繰り返すだけで皆を混乱させて迷惑をかけていた。
ダイナ復活の可能性があるのならチームUだって立ち上がっただろうし、ゼロやコスモスと言う新たなウルトラマンが来たのなら全てを話してゼロ達にハイパーゼットンを食い止めてもらっている間にリーフラッシャーを探すと言う事も出来たはずだが、タケルは何も説明しないでいきなりハイパーゼットンとの戦いに割り込んで驚いたゼロを窮地に立たせる等、ずっと皆の足を引っ張ってしまっていた。

 

一度は諦めかけたタケルだったがアスカの声を聞いて遂にリーフラッシャーを掘り出す。そこにUローダーに乗ってアンナも来て、かつてはダイナの敗北を見て怖くて逃げ出したが今度は逃げないとタケルに伝える。
「お姉ちゃんはあの時怖くなって逃げた。でも、もう逃げない! これをお姉ちゃんに届けさせて」。
タケルからリーフラッシャーを受け取ったアンナはUローダーに乗ってハイパーゼットンの妨害を受けながらもダイナの所に向かい、ゼロの援護も受けて遂にリーフラッシャーをダイナに渡す。
「アスカ! 皆、あなたを待ってる! 目覚めてー!!」。
アンナの乗ったUローダーが墜落し、ゼロもハイパーゼットンの前に絶体絶命。そこに復活したダイナが駆けつける!
ダイナはダイナチャージングでコスモスにエネルギーを分け与えて、ここにダイナ、ゼロ、コスモスと言う3人のウルトラマンが集結した。
ダイナ復活と共につるのさんの歌う『君だけを守りたい』が流れるのが鳥肌モノ!
ハイパーゼットンに敗れたダイナは石化していたが、これは『ティガ』の「暗黒の支配者」でティガがガタノゾーアに敗れて石化したのと関係があるのだろうか? 又、復活したダイナが一瞬だけ全身が金色に発光したところは『ティガ』の「輝けるものたちへ」でグリッターティガが誕生した瞬間を思わせる。そう言えば、敵の内部に捕らわれたダイナが救出されると言う展開もティガが再登場した『光の星の戦士たち』を思わせる展開であった。

 

ダイナにエネルギーを分け与えられてコスモスが戦線復帰するが、ここでコスモスがモードチェンジしなかったのが納得できない。
ダイナはフラッシュタイプが一番バランス良く戦えると言う事で分かるが、コスモスはルナモードは敵を倒さないモードとなっている。実際はルナモードでも戦えるのだが、やはり強敵相手にはコロナモードかエクリプスモードになってほしかった。
モードチェンジしなかった理由として、当初の予定ではハイパーゼットンの中にカオスヘッダー0が捕らわれていたがカットされたと言う話があるが、その場面がカットされたのなら話もそれに合わせて調整してほしかった。
この他に今までウルトラシリーズを見ていなかった人はウルトラマンがモードチェンジして姿が変わったら混乱すると言う話もあるが、この映画に登場するウルトラマンはゼロ、ダイナ、コスモス、サーガ、ウルトラ兄弟となっている。
このうち、ウルトラ兄弟は冒頭の光の国の場面で人間態と共に出演しているだけなので、コスモスがクライマックスでモードチェンジしたからと言ってウルトラ兄弟と間違える事は無いだろう。
サーガはゼロ、ダイナ、コスモスの3人が合体して誕生したウルトラマンなので、コスモスとサーガを間違える事も無い。
ダイナは冒頭で戦った後はクライマックスまで出番が無い。
ゼロに関しては前半はコスモスとゼロは交互に戦って両者が同時に出ないようにされていたし、両者が一緒に戦う場面ではゼロをチビトラマンにしてコスモスと簡単に区別が付くようにされていた。
この構成で1時間近く見てきて、コスモスがルナモードからコロナモードやエクリプスモードにモードチェンジしたら他のウルトラマンと区別が付かなくなると言う事は無いと自分は思う。

 

3人のウルトラマンにバット星人は苛立ちと疑問をぶつける。
バット星人「ウルトラマン! 何故貴様らは邪魔をする? 何故人間に寄り添う? 人間、つまらない生き物……」、
ゼロ「別に理由なんてねーよ! ずっと昔からそうやって来た! ただ、それだけの事だ!」。
そしてゼロはダイナとコスモスのパワーを受けてファイナルウルティメイトゼロ・トリニティを発射しハイパーゼットンを倒すのだった。
ファイナルウルティメイトゼロ・トリニティはウルトラマン3人分のエネルギーがあるからか『銀河帝国』でカイザーベリアルを倒した時より威力が増していると言う設定。前回にあった発射までの時間が長いと言う欠点も解消されている。
ゼロ「お前が人間の価値を語るなんざ、2万年早いぜ!」。
『君だけを守りたい』が流れる中での盛り上がり方がハンパなかった!
ゼロの言葉は45周年と言う長い歴史を積み重ねて来たウルトラシリーズだからこその台詞。実際はゼロはそんなに人間と一緒にいた事は無いのだが、これは同時期に放送されていた『列伝』でゼロが歴代ウルトラマンと人間の関係を見ていたと言うのが影響しているのかもしれない。
因みにゼロが生まれた時代が不明なので推測になるが、『セブン』時代にゼロは生まれていなかったとすると、ゼロが生まれるずっと昔からウルトラマンは人間に寄り添っていたと言う事になる。

 

ハイパーゼットンを倒したかと思いきや、バット星人が言うには今倒したのは幼体に過ぎないとして、ギガントとバット星人の宇宙船が合体して完全体であるイマーゴが誕生する。
「私は遂に全ての宇宙に死をもたらす神となったのだ!」。
「命は誕生した時から必ず消滅すると言われている。そうだ。全てのものは滅び去るのだ」。
ゼットンこそ宇宙を支配する法則。滅亡そのものなのだ。その力で宇宙の全ての命を根絶やしにし、私が全宇宙の神として君臨してやる。さぁ、恐怖と絶望の前にひれ伏しろ」。
服従すれば命の保証はしてくれる征服より厄介な「根絶やし」と言うバット星人の野望。
それにしても最初に『帰マン』のバット星人が再登場すると聞いた時は驚いたが、その後に『帰マン』の時と全く変わったデザインを見た時もこれまた驚いた。時の流れって凄い。あのバット星人がここまで格好良い悪役になるのだから。

 

イマーゴとなったハイパーゼットンを見て「何が完全体だ! さっきよりまるで迫力不足だぜ!」と叫ぶゼロ。何と言う敗北フラグ……。
ウルトラシリーズの劇場版の敵は『ダイナ』の時から最後は巨大化すると言うのが定番になっていたが、ハイパーゼットンは段々小さくなっていくと言う逆の展開であった。このパターンで有名なのは『ドラゴンボール』のフリーザ。すっきりした最終形態が姿を現した時の衝撃は今でも忘れない。

 

ハイパーゼットンテレポートによる高速戦闘は既にウルトラシリーズの伝統芸と言った感じ。さり気に分身までしていて驚いた。
ハイパーゼットンは瞬間移動で敵の攻撃を避け、近距離の肉弾攻撃はバリヤーで防ぎ、遠距離からの光線は吸収して撥ね返すと鉄壁の防御を誇る。
ところでゼロ、ダイナ、コスモスの3人が同時に光線を放っていたが、いつの間にかウルトラマンの光線同時発射は敗北フラグになってしまった感じがする。

 

ハイパーゼットンの前に3人のウルトラマンも敗北し、アンナも心肺停止に陥る。
タイガ「結局、俺は何も守れないのかよー!」。
しかし、歴戦の戦士であるアスカとムサシはまだ諦めていない。
アスカ「まだだ。まだ終わりじゃない。限界を超えた時、初めて見えるものがある。掴み取れる力が……」、
ムサシ「立つんだ、タイガ! 僕らはまだ……守れるんだ!」。
アスカの言葉はかつて父カズマから受けたもの。あの時はまだ若者だったアスカが父親の言葉を言える存在になったんだなぁ……。
アスカとムサシの言葉にタイガは再び立ち上がる。
「本当の戦いはこれからだ!」。
その想いに応えるかのようにタイガのウルティメイトブレスレットがサーガブレスに変形。3人のウルトラマンが合体した新たなウルトラマン、サーガが誕生する。そしてウルトラマンの復活と共にアンナも息を吹き返すのであった。
アンナ「あのウルトラマンは絶対に負けない!」。
サーガのデザインはこれまでのウルトラマンと違っていながらもちゃんとウルトラマンに見える絶妙なデザイン。『コスモス』の『THE FINAL BATTLE』でコスモスとジャスティスが合体してレジェンドが誕生したが、設定も含めてあの流れをさらに突き詰めた感じ。キャラクターデザインを担当した後藤正行さんによると、目と口のラインを残せば体はどう変えてもウルトラマンになるらしい。
サーガは光が象徴的にウルトラマンになると言うコンセプトらしく、発光するクリスタルが体の内部にあると言う今までに無いデザインとなった。この発光するクリスタルを持つウルトラマンと言うデザインは次のギンガへと引き継がれていく。
サーガの声はゼロの声を担当している宮野真守さん。ウルティメイトブレスレットがサーガブレスに変形しているし、サーガはゼロが中心の存在のようだ。
それにしてもサーガの掛け声が「サーガ!」だったのは結構驚いた。

 

サーガが誕生してもハイパーゼットンとは圧倒的な戦力差と言うのは無くて互角の戦いが繰り広げられる。自分は新フォームや新ヒーローが誕生したら圧倒的な強さで敵を倒してほしい派なので、サーガが誕生したらハイパーゼットンに圧勝してほしかったのだが、それだと本作のテーマと合致しない。
冷静に考えたらサーガと互角の戦いを繰り広げるハイパーゼットンが凄い。純粋な戦闘力で考えたらウルトラ怪獣最強候補に名前が挙がる強さであった。
一進一退の攻防に決着を付けるきっかけを作ったのは地球防衛隊チームUと言う人間の存在。常に人間を見下していたバット星人は最後にその人間に文字通り足をすくわれる事となった。
アンナ「私ら皆、ウルトラマンの力を信じている! だから、今度はアンタが私らを信じてくれ! ウルトラマーン!!」、
アスカ「信じているよ、ずっと昔から。聞こえるか? ムサシ、タイガ!」、
ムサシ「聞こえる。皆の声が!」、
タイガ「行こうぜ! 皆で生き抜いていこうぜ!」。
チームUの援護で優勢に立ったサーガはパンチにキックと一気にハイパーゼットンを宇宙まで押し上げ、サーガマキシマムでバット星人ごとハイパーゼットンを倒すのだった。

 

バット星人とハイパーゼットンが倒された事で消し去られていた人々も帰って来て子供達に笑顔が戻った。
その光景を見て「やっと終わったな」と話すアスカに「いや、これから始まるんすよ、先輩」と答えるタイガ。
タイガはようやく特別チームの先輩としてウルトラマンに変身する先輩としてアスカを受け入れる事が出来たのだった。

 

リョウ「生きてる。タイガは必ず……」。
別の宇宙へと連れ去られたタイガの生存を祈るスーパーGUTS。そこにアスカの声が聞こえてくる。
アスカ「その通りだ。皆、心配するな。タイガはちゃんと生きてるぜ。あいつも、未来に向かって進んでいる。人には誰も前に進む力がある。皆、また一緒にこの空を飛ぼう」、
リョウ「アスカ、私達もいつか必ずあなたに追いつく」、
アスカ「待ってるぜ」。
そしてアスカは光の中に消え、また別の宇宙へと旅立っていった。
当初の予定ではアスカがスーパーGUTSの所に帰還する展開だったらしいが、つるのさんの要望でまだ帰還しない事となった。
かつてアスカ・カズマが新たな世界に旅立ち、それを追ってアスカが別の宇宙に旅立ち、さらにそれをスーパーGUTSを始めとする人類が追いかけて……と常に前に進もうとする『ダイナ』のテーマを考えたら、アスカが元の場所に帰還するよりスーパーGUTSがアスカを目指す方が良い。
ただアスカもタイガもだが、心配している人がいるんだから戻れるのなら一度は帰れば良いのに……と言う気持ちは正直言ってある。
カズマとアスカの関係は常にアスカ側の視点で描かれていたので、カズマの生死が不明でカズマがアスカの所に帰れるかどうかも不明だったので気にはならなかったが、今回はアスカやタイガの視点で描いているので、二人の生存も二人がその気になればスーパーGUTSの所に戻れる事も分かってしまい、それならどうして帰らない?と言う疑問が生じてしまった。この辺りはもう少し上手く処理してほしかったなと思う。

 

『ダイナ』最終回でのアスカの扱いであるが、これは小中監督の存在を外して考えるのは難しい。
『ダイナ』は小中監督の意見が強く出ている作品だが、『ダイナ』の最終回は『パーマン』の漫画版を意識しているとの話がある。(漫画版『パーマン』の最終回ではパーマンは仲間と別れて宇宙に旅立っている。そしてその数年後が『ドラえもん』で描かれているのだが、ヒロインが大人になってもパーマンはまだ地球に帰っていない)
又、小中監督は子供の頃からキリスト教の教義に触れていて、『ダイナ』の最終回も魂の問題として見てほしいとも言っている。ひょっとしたら、殉教したと言うイメージもあって、アスカは元の人間の世界に帰らないのかもしれない。(「アスカ記念日」も殉教として考えると納得できるものがある)

 

脚本の長谷川さんは『ティガ』の『THE FINAL ODYSSEY』でダイゴの帰りを教会で待つレナのように「戦いに赴く男を見送り、その帰りを待つ女」と言う話を多く書いている。
『ダイナ』の最終回でもグランスフィアとの戦いに赴くアスカをリョウが「行ってらっしゃい」と言って見送っているので、それを受けてアスカが「ただいま」をして、リョウが「お帰り」をするのが当然の流れとなる。なので、長谷川さんは今回の脚本でアスカが帰ってくる場面を書いたのだと考えられる。(実際、長谷川さんの考えかどうかは分からないが、『ダイナ』の最終回でアスカが帰って来てリョウが「お帰りなさい」と言う場面を入れた方が良いと言う話があったらしい)

 

ネオフロンティアスペースには戻らず、フューチャーアースの海岸を歩くタイガ。
ゼロ「タイガ、これがお前が決めた答えなのか?」、
タイガ「俺はここで生きる。この世界の未来が見たいんだ」。
別の宇宙で生きる決意をするのはアスカに近いが、ここは光の国を旅立ってアナザースペースで活躍するようになったゼロと同じと考えた方が分かり易い。劇中にはそのような描写は無いが、タイガはアスカの他にゼロの影響も受けて自分の新たな生き方を決めたようだ。
そこを車に乗ったアンナとリーサに呼び止められる。これは『ダイナ』のファーストエピソードである「新たなる光(後編)」のラストと同じ展開。かつてのアスカのように、タイガの物語はここから始まるのであった。

 

アスカやタイガと違ってムサシはコスモスペースの家族の所に帰っている。
これは家族を持っているかどうかの違いかな。

 

「さらばタイガ。さらば、素晴らしい人間達」。
危機を乗り越え、夜の闇に人の光が灯っていくのを見届け、ゼロは「フィニッシュ!」で地球を去るのだった。
尚、『超全集』に収録されている『アンナの日記 過ぎ去りし遠い日』でフューチャーアースのその後がチラッとだけだが出ている。詳しい時代設定は不明だが、悠久の時を生きるウルトラマンの孤独さが垣間見える一遍となっている。

 

本作にはカットされた場面が多数あり、ウルトラ兄弟と怪獣兵器の戦闘が『列伝』の第39話「超決戦! ウルトラヒーロー!!」で紹介された他、そのウルトラ兄弟と怪獣兵器の戦闘シーンを加えたディレクターズカット版が2013年12月7日にイベント上映され、後に『新列伝』等で分割放送されている。
又、カットされた場面ではないが『てれびくん』の付録DVDでは『ゼロ&ウルトラ兄弟 飛び出す! 激バトル!!』としてハイパーゼットンの基となったゼットンや怪獣兵器バードンが登場してゼロとゾフィーが力を合わせてこれと戦っている。

 

「E.D.F地球防衛隊 Closed」。

 

 

ウルトラマンサーガ超全集

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