「切り拓く力」
『ウルトラマンギンガS』第1話
2014年7月15日放送(『新列伝』第55話)
脚本 小林雄次
監督 坂本浩一
EXレッドキング(SD)
身長 14cm~49m
体重 150g~2万4千t
ワンゼロがモンスライブしていて、フレイムロードで相手を攻撃する。
シェパードンを倒すがギンガのギンガクロスシュートで倒された。
戦いの後、スパークドールズはショウに回収された。
物語
世界一の冒険家を目指して旅の途中であったヒカルはメキシコで触れたビクトリウムから様々なイメージを感じ取り、再び日本へ。
その頃、UPGの基地ライブベースが建設中の雫が丘に新たな怪獣が現れ、さらに謎の巨人ウルトラマンビクトリーが姿を現す。
そんな中、ヒカルの想いを受けてギンガが再び地球へ!
感想
『ウルトラ銀河伝説』以降は『仮面ライダーフォーゼ』や『獣電戦隊キョウリュウジャー』と言った東映ヒーロー作品を多く手掛けていた坂本監督がウルトラシリーズに復帰。これで坂本監督はウルトラ、ライダー、戦隊と言う日本三大ヒーローのTVシリーズ全てを担当した監督となった。(過去には矢島信男監督と小林義明監督が達成している)
ビクトリーとシェパードンが戦うイメージ映像。
新ウルトラマンと新怪獣の戦いは見ていてワクワクするものがあるが、最終回まで見てから見返すと、どういった経緯でこの戦いが起きたのか気になる。
おそらくヒヨリの一族が地球を追放された時の映像なのだろうが、どうしてビクトリーとシェパードンが戦う事になったのか等、色々と謎の多い映像であった。
世界一の冒険家を目指して、地球にあるまだ人間の知らない謎を解き明かす事を目標に冒険を続けていたヒカルはビクトリウムに触れて様々なイメージを読み取る事になる。
メキシコにビクトリウムが現れたと言う事はエクセラーは雫が丘以外でもビクトリウムの採取を行っていたと言う事なのかな?
因みにヒカルがビクトリウムに触れたメキシコのユカタン半島はマヤ遺跡がある場所である。
ビクトリアンの命の源であるビクトリウムが奪われようとしている事を察知したキサラ女王は古来より受け継がれし力であるビクトリーランサーをショウに授ける。
ギンガが「宇宙」と「未来」がキーワードだったのに対し、ビクトリーは「地底」と「過去」をキーワードにしている。
『ギンガ』の世界では現代では前作の事件以外で地球に怪獣は現れていなかったと言う設定なので、UPGは出来たばかりの組織で装備もまだ十分とは言えず基地であるライブベースも建設中と言う珍しい設定となった。
UPGの初戦。遂に訓練の成果が試される時が来たと言うもシェパードン相手にダメージを与える事が出来なかった。この場面で陣野隊長はハーブティーを飲みながら戦況を見ている。ハーブティーには気持ちを落ち着ける効果があるらしいので、表向きは落ち着いているように見える神野隊長だが実はUPG初の実戦に心乱れていたのかもしれない。
ギンガに変身できないヒカルは特殊車両シュナウザーに乗ってシェパードンの注意を自分に引き付けようとする。
これは『ギンガ』の「奪われたギンガスパーク」でギンガに変身できなかったので生身でザラガスの注意を引き付けようとしたのと同じ。
このウルトラマンに変身しなくても自分に出来る事をしようと言うヒカルの行動はかつてタロウが一体化していた東光太郎を思わせるものがある。
アリサは「自分達はプロだ」とヒカルを注意するが、戦闘経験の無いUPGより実際に何度も怪獣と遭遇して戦ってきたヒカルの方が対怪獣のプロだったりする。
『T』の「ウルトラの母は太陽のように」でZATの朝日奈隊長が人間でありながら怪獣を追い返した光太郎の勇敢さを見込んだように、陣野隊長もヒカルを勇敢な青年としてその行方を探すよう隊員に指示を出す。
ヒカルはお腹が鳴ったショウに「ブイチョコウェハース」を渡す。
先にお菓子のタイアップがあって脚本が決まったのかと思いきや実は脚本のアイデアを受けて後に商品化が決定したと言う経緯がある。
ヒカル「俺は世界中を旅して色んな国の色んな人と触れ合ってきた。遠く離れた地球の裏側だって、この空で繋がっている。スゲェと思わねぇか? 皆、同じ空の下で暮らしている仲間なんだぜ」、
ショウ「お前には分かるまい! 空を知らずに生きてきた俺達の気持ちが!」。
突っぱねるショウの心を開く為にヒカルは「同じ空の下の仲間」と言う話をしたのだろう。これは最初は降星町と言う小さな街からスタートして、やがてメキシコにまで冒険の範囲を広げて色々な人と出会ってきたヒカルだからこその言葉。しかし、このヒカルの言葉も空を知らない地底人のショウには響かないものであった。
そして、これまでは同じ人間と触れ合ってきたヒカルはここからは地底人のビクトリアンやアンドロイドのワンゼロと言った人間以外の存在と触れ合う事となる。
チブロイドは東映ヒーロー作品に登場する戦闘員の位置で、これまた東映作品を思わせる人間大アクションが思う存分見られる。
ワンゼロがモンスライブに使用するチブルスパークはエクセラーがダークスパークの破片とスパークドールズの一部を手に入れて開発したと言う設定。
エクセラー自身の正体は語られていないが、肩書きに(SD)と書かれているので彼も元はスパークドールズだった可能性がある。ルギエルの事を「グランドマスター」と呼んでいたので、かつてのバルキー星人達のようにエクセラーもルギエルによってスパークドールズから解放されたエージェントだったのかもしれない。
『ギンガS』では怪獣にライブするのは主にエクセラー側となっていて、対するヒカルとギンガは今回はウルトラマン関係にライブする事が多い。
そしてショウとビクトリーは「ウルトランス」と言うウルトラマンに怪獣の部位を合わせたハイブリット型となっている。
ショウはヒカルに向かって「お前は言ったよな、皆、同じ空の下で暮らす仲間だと。だが、俺はお前達とは違う!」と宣言してビクトリーにウルトライブする。
ウルトラマンへの変身シーンは数あれど、変身バンクで自分からウルトラマンの中に飛び込んでいくパターンはこれまでに無いもので斬新だった。
謎の多いビクトリーであるが、彼が普段はビクトリーランサーの中でスパークドールズの状態で眠っていると言うのも結構な謎である。ギンガやタロウの知らないところでダークスパークウォーズに参加していて、その後、時空を超えて数万年前の地底世界に辿り着いたのかな。ビクトリーランサーはチブルスパークみたいに地底人の誰かが開発に成功した物なのかもしれない。
因みにショウはヒカルに向かって「自分は同じ空の下で暮らす仲間ではない」と言ったが、変身したビクトリーが「空をバックに立っている」ところに、いずれビクトリーがギンガと仲間になる事が示されているようで興味深い。
ビクトリーのデザインやカラーは今までのウルトラマンとはちょっと違った感じになっていて新鮮だった。今回は『ギンガ』の続編で主人公もギンガが続投しているのだが、銀と赤と言うオーソドックスなデザインとカラーのギンガが主人公としているので、ビクトリーは頭部のデザインや黒を多くしたカラーと言った今までとは違う事が出来たのかなと思う。
ビクトリーはカラータイマーの形もVになっている。この名前とカラータイマーの形を合わせるのはエックスやオーブやゼットにも引き継がれた。
ビクトリーはギンガに比べて足技が多いイメージ。足から光線系の技が出ると言うのは今までに無いスタイルで驚いた。
ビクトリーの目的はあくまでビクトリウムを守る事なので、その荒々しい戦いの巻き添えで地上人であるアリサ達が岩の下敷きになってしまう。それを見たヒカルはギンガスパークを取り出して叫ぶ。
「ギンガ……! お前なんだろう? 俺をこの街に呼んだのは。未来は変えられる! そう教えてくれたのはお前じゃないか! 頼む! もう一度俺と戦ってくれ! 俺に、切り拓く力を!」。
そのヒカルの想いにギンガスパークが呼応し、ヒカルは遂にギンガに再び変身する。
陣野「あれは……!? 降星町に現れたと言う巨人……!」、
友也「そうです! 彼の名はウルトラマンギンガ!」。
やはり『ウルトラマンギンガの歌』は名曲!
ギンガはアリサ達を助け、EXレッドキングに立ち向かう!
手前に建物や草木を配置したり、見上げる構図を多用したり、人間と巨人を同じ画面に収めたりと従来のウルトラシリーズの演出を使って巨大感を出す一方で、ギンガが飛び出してEXレッドキングを押し出して岩山をぶち抜いていくと言うアニメや漫画のような大胆な演出も取り入れられている。これまでのウルトラシリーズには無いスピード感とハッタリ感があって新時代のウルトラ作品と言うのを強く印象付けた。
ただ、EXレッドキングに勝利して爆炎をバックにポーズを決めるギンガのように巨大感が無い場面がちらほら見えたのが気になった。
EXレッドキングを倒してスパークドールズを回収しようとしたヒカルだったが、ビクトリウムスラッシュを受けた隙にショウに奪われてしまう。
そしてショウはビクトリーランサーでEXレッドキングのスパークドールズをリードするとウルトランス・EXレッドキングナックルを披露。ギンガはウルトラマンのビクトリーと怪獣のEXレッドキングを同時に相手する事になるのだった。
『ギンガ』第1話にブラックキングが登場し、今回の『ギンガS』第1話にはEXレッドキングが登場した。
レッドキングとブラックキングには兄弟やブラックキングはレッドキングを改造した姿と言った裏設定がある。
坂本監督らしく、これまでのウルトラシリーズに比べてアクションが大幅に増えている。これまでのウルトラシリーズでは言葉による説明が多かったのだが、今回はそれらを極力減らしてアクション多目の常に何かが動いている展開となった。
坂本監督は生身アクションが多く、時には変身前のアクションが多すぎて不評を買う事もあるが、ウルトラシリーズだとウルトラマンに変身していられる時間が限られているので生身アクションを多くして変身はここぞと言う時まで取っておくとする事で物語上の不自然さを解消する事が出来る。又、変身できない特別チームの隊員を活躍させるのに生身アクションは最適であった。
生身アクションが多いと「この強さなら変身する必要が無いのでは?」となる恐れがあるが、ウルトラシリーズの場合はどんなに変身前が強くても40m級の怪獣と戦うにはウルトラマンに変身しなくてはいけないので、生身アクションで人間大の宇宙人と戦い、変身巨大化して巨大怪獣と戦うと言う使い分けも出来る。
全体的にテンポが良くて、アクション主体だったので動きがあって派手で楽しめた第1話であったが、その一方でこれまでのウルトラシリーズに比べて人間関係のドラマが薄めであった。
例えば、前作『ギンガ』の第1話「星の降る町」では主人公4人と大人3人の設定と性格とそれぞれの人間関係を描き、そこからヒカル達幼馴染み4人の関係を言葉だけでなく雰囲気でも描写していたのだが、今回の『ギンガS』ではそこまで踏み込んだ人間関係の描写はされていなかった。この辺りは好き嫌いが分かれるかもしれない。