「強さの意味」
『ウルトラマンギンガS』第4話
2014年8月5日放送(『新列伝』第58話)
脚本 武井彩
監督 石井良和
分身宇宙人ガッツ星人ボルスト(SD)
身長 14cm~40m
体重 150g~1万t
邪魔者であるギンガとビクトリーを始末する為にエクセラーが用意したエージェントだが今回は戦闘に参加しなかった。
岩石怪獣サドラ(SD)
身長 14cm~60m
体重 150g~2万4千t
霧を発生させて相手の視界を封じた後、腕を伸ばしてハサミで攻撃してくる。
最初はワンゼロがモンスライブし、ウルトランスが不調のビクトリーを追い詰めるが、ギンガストリウムのウルトラショットで倒された。
倒された後、スパークドールズはヒカルに回収され、グドンとの戦いでは今度はヒカルがウルトライブした。
最終的にスパークドールズはショウに預けられた。
地底怪獣グドン(SD)
身長 14cm~50m
体重 150g~2万5千t
ワンゼロがモンスライブした。
両腕の鞭でビクトリーを追い詰めるが、仲間の大切さを知ったショウのウルトランス・キングジョーランチャーで倒された。
戦いの後、スパークドールズはショウに預けられた。
物語
ヒカル、ギンガ、ウルトランスに使われるスパークドールズ。色々なものに助けられてばかりいると感じたショウは自分の強さに疑問を抱くようになる。
そんなショウにヒカルは仲間の大切さを説くが……。
感想
「兄貴は強くてかっこいいから傍にいたい」と言うレピの言葉に「あれで本当に強いと言えるのだろうか……」と悩むショウ。レッドキング、エレキング、キングジョーとビクトリウムを狙った敵の力を使っている事に疑問を持ち始めたのだ。
自分は悪の力を使っているとして思い悩むと言うのはウルトラシリーズでは珍しい展開。仮面ライダーシリーズだと仮面ライダーも怪人も同じ力を使っている事が多いのでこの手の悩みも何度か出てくるのだが、ウルトラシリーズではウルトラマンは光や秩序に属する存在で怪獣は闇や混沌に属する存在と明確に線が引かれている事が多い。しかし、ウルトライブやウルトランスと言った設定がある『ギンガ』と『ギンガS』はウルトラマンと怪獣の間に引かれていた線を消したと言うウルトラシリーズでは実は異色な世界観となっている。
因みにショウがスパークドールズを見つめる場面。偶然だと思うが、出てきた怪獣の名前に全て「キング」が付いていて、ちょっと「おっ!」となった。
念動力の練習をするレピ。
ビクトリアンは姿形は地上人と同じだが、地上人が科学技術を発達させたのに対してビクトリアンは自身に眠る念動力を発達させている。
この時はサラッと流した演出になっていたのであまり印象に残っていなかったが、この設定が最終回の「明日を懸けた戦い」でまさかのビクトリアン大活躍に繋がる。
サドラの出現にショウはウルトランスを行うがすぐに解除されてしまう。
そう言えば『ギンガ』の序盤ではヒカルの精神状態に呼応してギンガのスパークドールズがギンガスパークから出現すると言う展開があったが、ビクトリーランサーも使用者の精神状態によって能力や性能が左右されるのかもしれない。
キサラ女王にヒカルと話すよう言われたショウは再び地上へ向かい、自分に無くてヒカルにあるものとは何だ?とヒカルを問い詰める。
自分は真面目に戦っているし背負っているものもあるのに何故いつもヒカルやギンガに助けられるのか。誰かと一緒でないと戦えないのは真の強さとは言えないと訴えるショウにヒカルが答える。
「助け合ったり、色んな事を一緒に考え合っているうちに大事な仲間が出来て、そしてあいつらを、仲間を守りたいって思う気持ちが俺をドンドン強くしてくれた。仲間がいるから俺はここまで戦って来れたんだよ」。
ここで『ギンガ』時代の出来事が回想で流される。
ヒカルは戦士ではなく普通の高校生だったので一人で戦うには限界があった。「きみの未来」でのルギエルとの最終決戦はタロウやそのタロウを復活させた多くの人々がいなければ勝利する事は絶対に出来なかった。そう言う経験があるからヒカルはこういう事を言えるようになったのだろう。
因みに自分一人で何でもやろうとする人物は『ギンガ』では友也がいた。「夢を懸けた戦い」で友也を相手にした時のヒカルは仲間の大切さよりも自分一人で何でも出来ると言う友也の自信過剰な部分を叩こうと言う気持ちが強かったように見える。友也とショウでは事情が微妙に異なると言うのもあるが、色々な経験を積んだヒカルの説得の仕方の違いを比べてみるのも面白い。
ヒカルがサッカーで遊んでいる子供達に声をかけるのだが、ここで相次ぐ怪獣出現の為に怪獣を怖がって外で遊ばなくなった子供達がいる事が語られている。
これは次の「仲間と悪魔」でも語られている。
それほど深く追及はされないのだが、ウルトラシリーズで一つの街で事件が立て続けに起きた時の人々の心理の変化が描かれる事は珍しく、面白い着眼点であった。
グドンの出現に再び変身するショウであったがまたもや苦戦。それを見たレピはスパークドールズを持って「兄貴の所に行かせてください」とキサラ女王に懇願。今まで勝手に地上に出ていたレピがここで初めて許可を貰って地上に出る事に。
そしてショウはUPGとヒカルの援護を受け、レピの思いが込められたスパークドールズを受け取って遂に気付く。
レピ「お願い! 兄貴を助けて!」、
ショウ「そうだ! 俺は一人で戦ってきたわけじゃなかった! 強さとは一人で作り上げるものではない。頼む! 俺に力を貸してくれ!」。
そしてビクトリーはウルトランス・キングジョーランチャーでグドンを倒すのだった。
アリサ「どういう事?」、
レピ「みんな仲間って事」。
一応は実力者であるボルストの事を持ち上げながらも影では見下しているエクセラー。ボルストに対抗意識を持つワンゼロに失敗したらもう後は無いと退路を断って送り出すが結果はまたもや敗北。
今回の話では仲間の大切さに気付けなかったショウが勝てずに苦労していたが、ワンゼロが何回戦ってもヒカル達に勝てないのも、今回のショウと同じく仲間と言うものを持っていないからだと思われる。仲間、それは全てをゲームの駒のように扱うエクセラーの所では永遠に手に入れられないものである。
シュナウザーに接続したチャージガンで攻撃するもグドンを倒す事は出来なかった。これはインペライザーにモンスライブしたチブロイドとグドンにモンスライブしたワンゼロの違いかな? いくらなんでもインペライザーがグドンより弱いとは思えない。
ヒカルが手に持っていたサドラのスパークドールズでとっさにウルトライブしたと言う展開が良かった。『ギンガS』になって怪獣関係はショウとビクトリーに集約されていたので、ここで『ギンガ』時代を思わせる怪獣へのウルトライブは初期設定の有効活用となった。サドラがちゃんとウルトラマンのように腕を掲げているポーズを取っているのが細かくて嬉しい。
「こいつらは敵じゃない。悪い奴に戦う為の道具として操られていただけなんだ。信じればきっと力を貸してくれる」。
ヒカルがこういう事を言えるのは「星の降る町」でヒカルがギンガと言うウルトラマンより先にブラックキングと言う怪獣にウルトライブしたから。ヒカルにとって怪獣の第一印象は「美鈴を守る事が出来る力」であったのだ。
実はこの「怪獣に対する第一印象が悪ではなかった」と言う主人公はウルトラシリーズでも珍しい。他には『コスモス』のムサシくらいであろうか? この独特な考え方が出来るのも『ギンガ』ならではと言える。
因みにショウにとってレッドキングやエレキングと言った怪獣達は「ビクトリウムを奪おうとする敵の戦力」だったので第一印象はすこぶる悪かった。まぁ、実はショウの考え方の方が従来のウルトラシリーズの主人公や登場人物に近いのだが。
この「主人公の考えの方が独特」で「主人公と対立している人物の考えの方がこれまでのシリーズに近い」と言う逆転現象が面白い。