「仲間と悪魔」
『ウルトラマンギンガS』第5話
2014年8月12日放送(『新列伝』第59話)
脚本 小林弘利
監督 石井良和
異次元超人巨大ヤプール(SD)
身長 14cm~50m
体重 150g~8万2千t
ダークスパークウォーズでルギエルが殆ど全てのウルトラマンや怪獣をスパークドールズ化した時にバキシムの中に潜んで意識の支配を逃れていた。ワンゼロがバキシムにモンスライブした際に目覚めるとワンゼロを追い出してモンスライブを強制解除させた。
その後、ゴウキの体を乗っ取り、ヒカルを異次元に閉じ込め、ショウを始末しようとしたが、近くにいた妊婦の危機を見たゴウキに意識を抑え込まれた。最終的にゴウキと分離し、バキシムを呼んでギンガとビクトリーに戦いを挑むが、ギンガストリウムのメタリウム光線で倒された。
その後、スパークドールズはどうなったのかは不明。
一角超獣バキシム(SD)
身長 14cm~65m
体重 150g~7万8千t
空を割って移動し、全身からミサイルを放って敵を攻撃する。
最初はワンゼロがモンスライブしていたが、中に眠っていたヤプールがワンゼロを追い出してモンスライブを強制解除させた。
ヤプールに呼ばれてギンガとビクトリーに戦いを挑むが、ビクトリーのビクトリウムシュートで倒された。
その後、スパークドールズがどうなったのかは不明。
物語
怪獣より強い超獣バキシムのスパークドールズを用意したエクセラーであったが、それをきっかけにヤプールが復活してしまう。
人間の脆さを突いてウルトラマンを倒そうとヤプールが暗躍を始めるが……。
感想
敗北続きで後が無くなったワンゼロ。
エクセラーも今のワンゼロではギンガ達には勝てないと分かっているのか通常の怪獣より戦闘に特化した作りになっている超獣をワンゼロに与えた。
しかし、バキシムにモンスライブして優勢に戦いを進めていたワンゼロのもとにいきなりヤプールが現れ、「機械の分際で私の道具を許可無く使うとはいい度胸だ」とワンゼロのモンスライブを強制解除してしまう。これにはさすがのエクセラーも驚き、ヤプールは「二手三手先を読むのはお前だけじゃない」と笑う。
どうやらヤプールはダークスパークウォーズの時にバキシムのスパークドールズの中に潜んでルギエルの支配から逃れたらしい。あの殆ど全てのウルトラマンと怪獣がスパークドールズ化された中でルギエルを出し抜いていたとはさすがヤプールと言ったところ。
この後もヤプールはギンガスパーク、ダークスパーク、ビクトリーランサー、チブルスパークと言ったアイテム無しでスパークドールズ化したバキシムを自身の支配下に置いている。さすがは超獣の製造者である。
ショウの正体をヒカルに問い詰める友也。
ショウがビクトリーなら同じウルトラマンであるヒカルは何か知っているはずとの事。
この場面、まるで彼女が彼氏の浮気を問い詰めているように見えて面白い。
ストリウムブレスの中にはウルトラ6兄弟の力が集結している。そしてヒカルの時でも装着されているので、ヒカルはギンガにウルトライブしなくても今回のウルトラバーリアのようにウルトラ6兄弟の能力を使う事が出来るようになった。
ビクトリーにウルトライブしなくてもモンスシューターで戦えるビクトリーランサーを持つショウに対し、ヒカルはギンガスパークでまず何かにウルトライブしなくては戦えなかったのだが、ストリウムブレスのおかげでウルトライブしていない状態でも戦えるようになった。
しかし、このストリウムブレスはかなり目立つデザインをしていて、アリサとゴウキに怪しまれて目覚まし時計と誤魔化す羽目になったり、今回もヤプールに目を付けられてヒカルがギンガであるとバレるきっかけになってしまったりしている。
エクセラーに向かって「ウルトラマンは強いが人間は脆い」と言い放ったヤプールはゴウキの体を乗っ取る。そしてヒカルを異次元に送ると警戒していないショウを始末しようとするが、近くにいた妊婦の危機を知ったゴウキに意識を抑えられてしまう。
ウルトラマンですら警戒するあのヤプールの意識を抑え込んだゴウキの強さに感服する。前回の「強さの意味」からゴウキは人間である自分達の戦力が劣っている事を気にしていたが、こういう肉体的には脆くても精神的な強さが巨悪を倒すと言う展開はカタルシスがある。
ヤプールは『A』の頃から人間の心の弱さに付け込んでいたが、その一方で人間の心の強さに幾度となく苦杯を嘗められてもいる。
ヤプール「人間ごときがヤプールに逆らうのか!」、
ゴウキ「人間を……舐めるなぁ!!」。
ギンガとヤプールが戦う中、異次元のゲートを通ってビクトリーとバキシムもやって来る。
ヒカル「敵を増やすな!」、
ショウ「仲間が増えたと思わないのか?」。
この時のヒカルとショウのやり取りが面白い。ここまでの話を見ているとショウもだいぶ丸くなったなぁと感じる。
電撃を発するウルトランス・エレキングテイルに対してウルトランス・グドンウィップは見た目的に威力が劣っている感じがする。『メビウス』の時のように超高速でムチを振るえばまた違った印象になったかなと思う。
実はヤプールと配下の超獣が一つの画面に収まって戦うのは今回が初めて。
前回でビクトリーもギンガの仲間となり、今回はギンガとビクトリーのタッグとヤプールと超獣のタッグが激突。仲間であるギンガとビクトリーは超獣を道具扱いしているヤプールに勝利する。
ヤプールは「仲間か。下らん! 次はお前達の絆など跡形も無く捻り潰してくれるわ」と捨て台詞を吐いて異次元に逃げようとするが、ヒカルは「お前に次なんか無え!」と言うとそのまま止めを刺す。
まさかあのヤプールがたった1話で退場するとは!
……と思ったら、さすがにヤプールはそう簡単には終わらなかったのだが、それはもう少し後のお話。
ギンガを倒せると豪語するヤプールに向かってエクセラーはお手並み拝見と見物を決め込み後半の戦いには参加しなかった。しかし、この戦いで人間の心を利用するのは効果的であると知ったのか、これまで力押しだったエクセラーは次回の「忘れ去られた過去」では地球を追放されたビクトリアンのヒヨリを利用するようになる。
悪魔に乗っ取られながらも妊婦を助ける為に逆に意識を抑え込もうとしてくるゴウキに向かってヤプールが尋ねる。
ヤプール「何故見も知らぬ人間を助ける?」、
ゴウキ「俺はその為に隊員になったんだ!」。
そしてヤプールとの戦いが終わり、無事に退院した妊婦に向かって今度はゴウキが尋ねる。
ゴウキ「こんな物騒な街で赤ちゃんを産むんですか?」、
妊婦「UPGの皆さんやあの巨人……ウルトラマン? 皆が必死になって守ってくれる。だから安心です」。
「ヒーローはどうして人々を守るのか?」と言うテーマは昔からあるが、結局のところ、「人間は困っている人や助けを求めている人を放っておく事は出来ない」に尽きるのではないかと思う。おそらくそれは生まれながらの悪魔であるヤプールには決して理解できないものなのだろう。
今回の話は小林弘利さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作となっている。