「復活のルギエル」
『ウルトラマンギンガS』第14話
2014年12月9日放送(『新列伝』第76話)
脚本 小林雄次
監督 小中和哉
変身怪人ゼットン星人ベルメ(SD)
身長 14cm~2m
体重 150g~60kg
エクセラーのエージェントの一人で、ボルストを踏み台扱いし、ギンガとビクトリーを雑魚扱いすると言う自信の持ち主。
ハイパーゼットンにモンスライブしてビクトリウム・キャノンを有するライブベースを破壊しようとしたがギンガとビクトリーの連携の前に倒された。
その後、スパークドールズはエクセラーに回収された模様。
宇宙恐竜ハイパーゼットン(イマーゴ)(SD)
身長 14cm~70m
体重 150g~4万t
初代マンを倒したゼットンの強化体でベルメがモンスライブした。
テレポーテーションで相手を翻弄し、相手の攻撃を吸収して撥ね返す事が出来る。
ギンガを苦戦させるがビクトリーが加勢に現れた事で形勢が変わり、最後はギンガストリウムのコスモミラクル光線を受けて倒された。
その後、スパークドールズはヒカルに回収され、ショウに渡された。
超咆哮獣ビクトルギエル
身長 測定不能
体重 測定不能
エクセラーがルギエルの肉体を暴走したビクトリウム・キャノンのシステムごとライブベースと融合させて誕生させた。
宇宙最強の肉体ルギエルと宇宙最高の頭脳エクセラーが一つになった究極の生命体で、その強さはかつてのルギエルの比ではない。
物語
神山長官が解放したビクトリウム・キャノンの威力は人類だけでなくビクトリアンやエクセラーにも大きな衝撃を与え、事態を急変させる。
ヒカルと決別してライブベースに乗り込むショウと新たなエージェントを送り込むエクセラー。
そして遂に、奴が復活を遂げる……。
感想
陣野隊長によってUPG設立の秘密が明らかにされる。
こういう特別チーム設立に裏事情があったと言うのは実はウルトラシリーズでは珍しい。あの『ガイア』や『ネクサス』でも特別チーム設立は人類の脅威に対する備えであった。
UPGは当初はビクトリウムの調査と研究が目的で、雫が丘にライブベースが建設される事になったのも地下にビクトリウムが多く眠っている特殊な地域だったからとの事。しかし、ビクトリウムに途轍もないエネルギーが秘められている事が判明し、神山長官はそれを兵器利用するプロジェクトに着手したのであった。
大多数の人はビクトリウムの強大な力をコントロールする事が出来れば人類自らの手で敵に立ち向かう事が出来ると考えると言う陣野隊長の説明だが、ちょっと気になるところがある。時系列が合わないのだ。
まずはビクトリウム・キャノンのプロジェクトは巨大怪獣への対抗手段として立ち上げられたと言う話。ここで言う巨大怪獣とは何を想定していたのだろうか?
エクセラーは1年前から調査を開始していたが、実際に巨大怪獣を送り込んだのは『ギンガS』第1話からと考えられる。そうしないとギンガもビクトリーもいない状態でどうやって巨大怪獣を倒したのかと言う問題が出てくる。
『ギンガS』第1話以前に巨大怪獣が現れたのは『ギンガ』時代の事になるのだが、闇の支配者の力によってその存在は一般に知られる事が無く、おそらく一般人の目に触れたのはルギエルとゼットンくらいと考えられる。このルギエルとゼットンの2例だけでビクトリウム・キャノンのプロジェクトを進めるのはちょっと無理があるような気がする。
もう一つは陣野隊長の話を聞いた友也の「僕の研究が兵器利用されていたなんて」と言う発言。UPGでビクトリウムに関する研究は友也が行っていたので、そう言うのは分かるのだが、友也はどの時点でどこまでビクトリウムの事を解明していたのだろうか?
神山長官はビクトリウム・キャノンのプロジェクトの為にアリサをUPGに推薦したと言っている。つまり、その時点で既にビクトリウムは兵器利用できると言うデータが揃っていた事になる。アリサの入隊時期は不明だが、そんな昔に友也が研究をそこまで進めていたとはちょっと考えにくい。
友也は世界各地で起きた水晶体の消失事件からビクトリウムの研究を始めているので、『ギンガS』第1話のちょっと前辺りからビクトリウムの研究を始めたと考えられる。そうなると、実は友也が研究を始めるもっと前から既に国際防衛機構はビクトリウムは兵器利用できると言うデータを有していてUPG設立を進めていたと考える事が出来る。
そう思って『ギンガS』序盤の陣野隊長の言動を見返したら実はいくつか嘘や演技が含まれていた事になる。ヒカル達の知らないUPGや国際防衛機構の中でかなりドロドロしたやり取りがあったのかもしれない。
地上人がビクトリウムを兵器利用している事を知ったショウは激怒し、ヒカルやUPGとは一緒に戦えないと言って単身でライブベースに乗り込む。
「発動! マグネウェーブ作戦」ではワンゼロが侵入したが、今度はショウがライブベースに侵入する事となった。
ショウは自分はビクトリアンだと名乗って神山長官にビクトリウムの使用を止めろと詰め寄るが、神山長官はまずビクトリアンが何なのかが分からない。ここはこれまでヒカルがビクトリアンの説明をしてこなかったツケが来たと言える。なにせ神山長官はビクトリウムを使用すればビクトリアンや地球が犠牲になる事すら知らないのだ。
神山長官視点だと今回のショウの登場は『A』の「ウルトラ6番目の弟」で「地上人のせいで地底人が迷惑している!」といきなり訴えてきたアングラモンみたいな感じだったと思われる。
部下に銃を下げさせ、それを見たショウがビクトリーランサーを下げた瞬間を見極めて隣にいた部下の銃を奪ってショウを撃つ神山長官の手際が良過ぎる。
アリサもだったが、神山長官も実戦経験があるように手馴れていた。怪獣や侵略者が殆ど現れなかったこの世界で何を相手に戦っていたのだろうか……?
ビクトリウムの兵器利用に怒ったショウがライブベースに乗り込むのだが、キサラ女王がショウを止めるタイミングが最悪すぎる。せめてライブベースに乗り込んだ瞬間に説得していれば、ショウが捕まってシェパードンのクリスタルスパークドールズが奪われる事も無かったのに……。
倒したショウからシェパードンのクリスタルスパークドールズを手に入れた神山長官はそれを装置に入れる。シェパードンが通常のビクトリウムの何十倍のエネルギーを秘めていた事でビクトリウム・キャノンのエネルギー充填に時間がかかると言う問題が解決された。こうしてビクトリウムを巡る争いが地上人とビクトリアンとエクセラーの間で勃発。「忘れ去られた過去」で語られた太古の昔に起きた争いが再現される事となった。
「ボルスト君は僕が華麗に活躍する為の踏み台に過ぎなかったのさ☆」と言って登場したゼットン星人ベルメ。その派手な服はどこで買った!? 相変わらず、ギンガシリーズのエージェントはキャラが濃い……。
とは言え、ベルメはボルストのように何話も出るわけではないし、ムエルテやジェイスのように特別な話が用意されているわけでもなく、実はハイパーゼットンにモンスライブして今回1話きりで倒されると言うチブロイドが代わりでも良いような出番だったりする。なので思い切ったキャラ付けをして印象に残るようにしたのは良い判断だったと思う。
ハイパーゼットンを見た神山長官は「返り討ちにしてやる」とビクトリウム・キャノンの準備を進める。神山長官はハイパーゼットンの事を知らないので仕方が無いが、全国のどれだけの視聴者が「あんたの方が返り討ちに遭うよ」とツッコんだ事か……。
ビクトリウム・キャノンに気付いたベルメはギンガを背後から羽交い絞めにしてビクトリウム・キャノンの的にしようとする。それを見た神山長官はギンガごとハイパーゼットンを倒そうとするが、これ、撃たれた瞬間にハイパーゼットンはテレポーテーションで逃げる事が出来るよな……。そしてギンガだけが倒された後にハイパーゼットンがライブベースの真上から攻撃してきたら神山長官は完全に詰んでいたよな……。
陣野隊長達がライブベースに突入し、アリサも神山長官に反旗を翻し、皆でショウを連れて脱出する事に。
どうしてここでシェパードンのクリスタルスパークドールズを回収しなかったのだろう? そのまま神山長官がハイパーゼットンに羽交い絞めにされているギンガに向けてビクトリウム・キャノンを撃っていたら終わりだった。実際、撃とうとしたし。
シェパードンが抵抗した事で神山長官の狙撃は失敗するが、それをアリサ達が予想していたとは思えない。後の展開を見るにここでシェパードンのクリスタルスパークドールズを回収してはいけなかったのは分かるけれど、もう少し自然な流れにしてほしかった。
神山長官とアリサの話はかつてのエクセラーとワンゼロの話に通じるところがいくつかある。エクセラーほどではないが神山長官も自分の目的の為に周りに犠牲を強いるところがあった。ライブベースの地下にあるビクトリウム・プラントが爆発すると知った神山長官はすがるように「おい、何とかしてくれ、ウルトラマン」とギンガに頼むが、この普段は傲慢でありながら窮地に立たさせると途端に情けなくなるのもエクセラーを思い出させる。
神山長官がギンガに助けを求める場面は兵器を信奉していた人物がヒーローに助けを求めると言う大事な場面なのでもっと気合いの入った演出にしてほしかった。
個人的に「主人公達とは異なる考えを持つ人物は無能で性格も悪い」と言う描き方は好きではない。
神山長官の発言には一理あるところもあったのに、終始、ヒカル達が正しくてそれに反する神山長官は間違っていると言う描写になっていたので、冷静に見るとおかしい部分が多々あった。
アリサとUPGによって助け出されたショウはギンガに変身して戦っているヒカルとの思い出を振り返り、手にしたビクトリーランサーを見て、「この力は傷付け合う為にあるものじゃない。かけがえのない仲間の為、その命を守る為にあるんだ!」と叫ぶ。
最初はビクトリウムを奪う敵を倒す為に戦い、仲間は要らないとしてヒカルとも衝突したショウの物語の決着点とも言える場面。
ギンガストリウムになってスペシウム光線を撃つヒカルだったが、案の定、ハイパーゼットンに吸収されて撥ね返されてしまう。タロウ、ヒカルにゼットンの能力を教えてあげてよ……。
ハイパーゼットンの高速戦闘はさすがに映画の『サーガ』に比べると見劣りする部分があるが、あの戦いをTVシリーズで再現しようとしているのが分かる。
そしてビクトリーが加勢に来たのを見たタロウがヒカルに呼び掛ける。
「今だ! ウルトラ兄弟の力を使え! ウルトラ兄弟の力が一つになった最強の技がある。仲間達と共に成長を遂げた今のお前ならその技を使えるはずだ!」。
ここに『ウルトラマン物語』以来30年振りにコスモミラクル光線が登場! そう言えば2014年は『ウルトラマン物語』公開30周年であった。
ストリウムブレスはウルトラ6重合体している状態、つまりスーパーウルトラマン状態なのでコスモミラクル光線が使用できるのは当然。設定を考えるに最初からコスモミラクル光線を撃てたと思えるが、そこはヒカル達の精神的な成長を待っていたのだと思われる。
ハイパーゼットンのような「攻撃を吸収して撥ね返す敵」には吸収しきれないほどのエネルギーを送り込むと言うのが定番だが、コスモミラクル光線のエネルギー量なら納得。
ベルメを送り込んだエクセラーは機は熟したと言って月面に埋まっていたルギエルの肉体を掘り出すと地球へと送り込む。体育座りで大気圏突入するルギエルがシュールだw
ルギエルのエネルギーとシェパードンのエネルギーが反響してライブベースは人間の制御下から離れ、エクセラーはチブロイドを率いてライブベースを占拠する。「まったく、制御できない力を兵器にするとは人類とは愚かな生き物ですね。宇宙最高の頭脳であるこの私がもっと有効に使って差し上げましょう」と語るエクセラー。殆どの視聴者は予想していた事だが、後にこの言葉は大きなブーメランとなってエクセラーに返って来る事になる。
「我がグランドマスターよ! あなたの最強の肉体、この私が頂戴しました」。
そう言ってエクセラーはルギエルの肉体を暴走するビクトリウム・キャノンのシステムもろともライブベースと融合させてビクトルギエルを誕生させる。
ウルトランスやギンガストリウムやファイブキングと言ったように色々なものが「合体」する『ギンガS』であったが、遂に人類の兵器と侵略者が合体して最強の敵が誕生してしまった。
特別チームの基地が最終決戦で危機に陥るのはウルトラシリーズのお約束であるが、さすがに基地がラスボスになると言うのは前代未聞であった。