帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「あかつき ~暁~」

episode5 あかつき ~暁~」
ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』第5話
2017年1月23日配信(第5話)
脚本 林壮太郞
監督 おかひでき

 

ウルトラマンコスモス
身長 47m
体重 4万2千t
フルムーンレクトでクグツ怪獣を浄化しようとするが失敗に終わる。
その後、戦神に変身する事を悩むアマテのところに行き、最終的にアマテの意思を尊重する事になる。

 

クグツベロクロン
身長 55m
体重 4万4440t
惑星カノンに送られる途中にコスモスと遭遇する。フルムーンレクトで一旦は落ち着くがベゼルブによって再びクグツが活性化される。
その後、惑星カノンの都市に向けて攻撃を開始する。

 

クグツバキシム
身長 65m
体重 7万8千t
惑星カノンに送られる途中にコスモスと遭遇する。フルムーンレクトで一旦は落ち着くがベゼルブによって再びクグツが活性化される。
その後、惑星カノンの都市に向けて攻撃を開始する。

 

宇宙悪魔ベゼルブ
身長 2m~50m
体重 400kg~4万t
惑星カノンへの攻撃の為にクグツベロクロンとクグツバキシムを用意し、自身も惑星カノンの都市に向けて侵攻する。

 

宇宙悪魔クイーンベゼルブ
身長 60m
体重 4万4千t
惑星カノンの王家に伝わる神話によると戦神とはきょうだいのような存在で戦神と出会うと世界が変化するとの事。

 

物語
サイキが惑星カノンへの総攻撃を始めようとする中、コスモスも惑星カノンへと向かう。
一方、戦神になる事を拒否して姿を消したアマテは逃げた先で祈りを捧げる民達の姿を見る。

 

感想
クグツベロクロンとクグツバキシムがゆっくりと宇宙空間を浮遊している場面が印象的。いつもだったら動いて叫んでいそうな場面なのだが、クグツで操られると必要な事以外は動かないようになるのかな。

 

コスモスのフルムーンレクトでクグツを一時的に抑える事に成功するが近くにベゼルブがいると再びクグツが活性化してしまい完全な浄化は出来なかった。
ルナモードで駄目なら何でもありなエクリプスモードを試してほしかったところ。と言うか、ここはフルムーンレクトではなくてコズミューム光線を使うべきだったと思う。アスカにアマテが戦神になるのを止めるのが先だと言われなければエクリプスモードにモードチェンジしてコズミューム光線を使う可能性もあったのかな。

 

アマテのモデルはおそらく天照大神だと思われる。惑星カノンも全体的に古代の日本を舞台にしたファンタジー作品っぽい感じに仕上がっている。
『オーブ』はTVシリーズでも八岐大蛇をモデルにしたマガオロチやマガタノオロチが登場しているが、『オリジンサーガ』では天照大神神武天皇の祖先と言う話があるので、おそらくアマテと惑星カノンは天皇と日本がイメージされているのだろう。そう考えると戦神と言う軍事力を行使するかどうかと言う話の意味も分かってくる。

 

サイキが「女王を差し出さないと総攻撃を仕掛ける」と言ったので、アマテは「自分を差し出すので攻撃はしないでほしい」と頼むが、サイキの目的はあくまで戦神なのでアマテの申し出を無視してしまう。平和だ何だと言っていたサイキだったが、それは嘘だった事が証明された。

 

アマテに巨人の力について尋ねられたムサシは「理想が現実に負けそうになった時、僕を支えてくれた」と説明し、アマテに「あなたが進む道は自分自身で決めるべきです。ただ、恐怖に怯えた心で決めないでください。怯えた心で下した決断は間違った未来を呼び込んでしまいます」と忠告する。
理想と現実と言うのは『コスモス』にあったテーマの一つ。ムサシの言動もちゃんと過去の作品を踏まえたものになっているのが嬉しい。

 

ジャグラー「クグツに打たれてやっと分かった。今まで俺は自分を自分の毒で縛っていた」、
ガイ「意に沿わないルールでもルールである以上はそれに従うって言うご立派」、
ジャグラー「下らない信念だ! クグツに意思を奪われているのと同じだ!」、
ガイ「難しいな……。よく分からねぇな!」、
ジャグラー「たまには難しい事も考えろ!」。
きらぼし ~煌星~」でもサイキがシンラに愛国心や忠誠心と言う毒に操られているのとクグツの毒に操られるのに何の違いがあると言っていたが、ジャグラーも今までの自分は意に沿わないルールでも従わなくてはいけないと言う信念と言う毒に操られていたと考えるようになった。シンラの場合は女王への忠誠心がある一方で独断で交渉相手の殺害を考えられるだけの柔軟性があったのだが、ジャグラーは色々と難しく考えてしまうタイプらしく、これまでの自分とこれからの自分について苦悩を深める事になってしまう。

 

ガイとジャグラーが手合わせをするが、最後にガイはジャグラー相手に手を抜いてしまう。
かつては地球人相手にも負ける事があったアスカが今では人間大のベゼルブ相手に優勢に戦えるようになる等、ウルトラマンの力を使いこなせるようになれば普通の人間以上のスピードで強くなっていくようだ。
ガイがジャグラー相手に手を抜いた事に気付いたアスカは「信頼しているなら本気で打ち込めるはずだ。相棒を余計に傷付けるだけだぞ」と注意する。先程の手合わせを見るとガイは余裕があるので手を抜いたと言うより今の自分の強さに驚いて思わず手を抜いてしまったと言う感じがする。
ここでガイがジャグラーに本気で打ち込めず適当に誤魔化して逃げてしまった事で二人の間に溝が出来てしまった。そして「信頼しているなら本気で打ち込めるはずだ」と言う言葉を念頭に入れて「さすらいの太陽」を見ると、ジャグラーの「俺と一緒に撃て! ウルトラマンオーブ!」と言う言葉を聞いたガイがウルトラフュージョンカードの全ウルトラマンの光線&オーブスプリームカリバー&オリジウム光線と言うとんでもない火力を撃てた理由が分かる。

 

アマテはライゴウに王族のみが知る神話を教える。
実は命の木が宇宙に広げるのは新しい命ではなく知恵であった。知恵の実を育む木は同時に守る者の戦神と滅ぼす者のベゼルブを生み落としていた。
これで命の木の種がベゼルブのクグツを解毒できる理由が分かった。
アマテは闇のクイーンベゼルブと光の戦神が出会ったら世界が変わると考え、これまで戦神に変身してベゼルブと戦う事を拒否していたのだった。
アマテが戦いから逃げていた理由が分かったのだが、今は戦神とクイーンベゼルブの接触による世界の変化よりも先にサイキのクグツ怪獣によって惑星カノンが危機に陥っているので、アマテの話を聞いたライゴウは「神話や予言ではなく現実に目を」と告げる。
アマテは戦神に変身してクイーンベゼルブと接触したら世界が変化してしまうし、変身しなかったら惑星カノンがクグツ怪獣に襲われるし、話し合いをしようにもサイキは最初から話し合うつもりは無いしと完全に詰みになってしまっている。
ライゴウはこれまで「神話の再現を」と言っていたのだが今回は「神話ではなくて現実に目を」と言っている。ライゴウの目的は戦神を使っての惑星カノンの防衛なので、最初に言っていた「神話の再現」は方便であったのだろう。それを今度はアマテが神話を使って戦神への変身を拒否したので、これまで方便で使っていた神話を捨て、今、敵に襲われていると言う現実を理由に使ってアマテを戦神に変身させる事にしたと思われる。
それにしても命の木や戦神とクイーンベゼルブの設定は『エヴァンゲリオン』好きな自分には使徒サードインパクトを思い出すなぁ。

 

戦神に変身する事を決意したアマテに向かってムサシは「光は闇を突き抜けた先にしかありません。あなたが思い描く未来があるのなら、どんなに遠くても、その光を、光だけを! 真っ直ぐ見つめていてください」と告げる。
今回の話でムサシとアマテは強大な巨人の力について言葉を交わしているのだが、どうにもいまいち噛み合っていないところがある。と言うのもムサシは確固たる夢があって、その夢を叶える為に光を掴んでウルトラマンになったのに対し、アマテは望まずに戦神の力を得て、その力を行使する事で避けたい未来を招いてしまうと考えていた。同じ強大な巨人の力と言ってもムサシとアマテとでは状況が違いすぎた。

 

状況はともかく、アマテ自身が戦神に変身する事を決めた以上、それを強く否定する事はクグツの毒で他者の意思を奪うサイキと同じになる。
光の国のウルトラマン達は宇宙警備隊と言う強大な力があるので他の星に深く干渉する事を避けている。光の国のウルトラマンと交流はあるが宇宙警備隊には属していないアスカやムサシにはそう言う制限は無いと思われたが、強大な力を持つ者として自分の中で線引きを行っているようだ。ただ、後の展開を見ると、それはジャグラーが言っていた「自分を自分の毒で縛っていた」状態だったのかもしれない。

 

オリジン・ザ・ファーストは待ち伏せしていたベゼルブをオーブブーメランで一掃し、残ったベゼルブも光を使った体術で圧倒する。
前回もバリアーを使っていたが、コツを掴んだのか一気に技が豊富になった。

 

戦士の頂で光を掴むまではジャグラーの方がガイより強かったのだが、ガイがオーブになってからは力関係が逆転し、最初の方こそジャグラーのサポートを受けながら戦っていたガイが今ではジャグラーのサポート無しで怪獣を倒せるようになった。
詳しい時間経過は分からないが、ひょっとしたらここまでわずか一日の出来事である可能性がある。昨日までは自分より下だった相手が今日は自分を遙かに超える存在になっていた。後にジャグラーは闇の力を使うになるが、光に選ばれなかったジャグラーがガイと肩を並べ超えるには闇に手を出すしか無かったのかもしれない。

 

アマテが戦神になる儀式の場面は盛り上がる演出であった。
その後のクグツ怪獣の攻撃を光の壁で防ぐ場面を見ると、なるほどこれは惑星カノンの人々が最後の希望とするのが分かる神々しさであった。
ただ、ムサシの言葉で言うと今回の変身は「怯えた心で下した決断」なんだよね。『オリジンサーガ』は全体的に「良くない決断や行動」が続く展開となっている。