帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「秘密基地へようこそ」

「秘密基地へようこそ」
ウルトラマンジード』第1話
2017年7月8日放送(第1話)
脚本 安達寬高
監督 坂本浩一

 

ウルトラマンヒカリ
身長 50m
体重 3万5千t
復活したベリアルとの戦いに終止符を打つ為にウルトラカプセルを開発する。

 

ウルトラマンキング
身長 58m
体重 5万6千t
ベリアルが使用した超時空消滅爆弾でサイドスペースが危機に陥った時に現れた。

 

その他のウルトラマン
ウルトラ兄弟を始め多くのウルトラマン達がベリアルと戦ったが超時空消滅爆弾による地球の崩壊を阻止する事が出来なかった。

 

ウルトラマンベリアル
身長 55m
体重 6万t
再び復活してギガバトルナイザーを手に入れウルトラマン達と戦う。
最後は超時空消滅爆弾を使って地球を崩壊させサイドスペースそのものを危機に陥らせた。

 

ベリアル融合獣スカルゴモラ
身長 57m
体重 5万9千t
星山市に突如出現して街を破壊していった巨大生物。
スカル超振動波を使ってジードと戦うがレッキングバーストで倒された。
謎の男が持つレッドキングゴモラのカプセルと関係しているようだが……。

 

物語
復活したベリアルが使用した超時空消滅爆弾によって地球が崩壊してしまう。
そして、表向きは普通ながらも裏では宇宙人と同居していた少年・朝倉リクの目の前に巨大生物が現れて街を破壊する。

 

感想
いきなり復活したベリアルが大暴れする衝撃のアバン。
ベリアルに倒された宇宙警備隊員は命を落としていそうだし、ウルティメイトゼロが敗北するし、最後はあれだけたくさんのウルトラマンがいながら地球が崩壊させられてしまうしとウルトラマン達の完全敗北であった。
漫画では割と全滅寸前になっている事があるウルトラマン達だが、映像作品でここまで完敗したのは『ウルトラ銀河伝説』くらいかな。

 

ベリアルとの戦いの劣勢を覆す為にヒカリはウルトラカプセルを開発する。
手の平に収まる程の大きさのカプセルにウルトラマン達の強大な力を宿らせたと言う凄いアイテム。(しかもシャイニングウルトラマンゼロの力と言う)
小さいアイテムにウルトラマン達の力を宿らせるのは『X』のサイバーカードや『オーブ』のウルトラフュージョンカードと同じなので、ひょっとしたらこれらのアイテムを研究して作られたシステムなのかもしれない。
ヒカリは『ファイトビクトリー』のナイトティンバーに続いてアイテムを開発している。科学者と言う設定は『メビウス』の頃からあったが実際に発明品が出る事でそのイメージがより強く定着した。

 

ベリアルとの戦いで傷付いたゼロを父親のセブンと師匠のレオとアストラが守っているのが良い。

 

現代の地球。「クライシス・インパクト」は隕石の落下が原因と思われていたがベリアルの写真が偶然発見された事で新説が提唱される事になる。
ウルトラマンもベリアルも都市伝説と思われていたが後にスカルゴモラと言う怪獣やジードと言うベリアルそっくりのウルトラマンが現れた事で都市伝説だと思われていた話が実は真実ではないかと思われるようになる。
クライシス・インパクトの新説を提唱したワイドショーのコメンテーターは世界崩壊の真実を解き明かすと言う作品の主人公になれそうな事をしたが、クライシス・インパクトの真相に気付いたからこそ本作の主人公であるジードを敵視するようになってしまう。

 

本作にはペガッサ星人のペガがレギュラーになっている。着ぐるみキャラがレギュラーになっているのは過去に『X』のグルマン博士がいる。人間だけが登場するよりこう言う着ぐるみキャラが登場する方が子供の注意を引くらしい。
ただ、漫画やアニメだと全て絵で表現されているので人間と人間ではないキャラが一緒に街にいても違和感はあまり無いのだが、実写だと人間と着ぐるみやCGのキャラが一緒に街にいると違和感と言うか着ぐるみやCGのキャラに異物感を感じる時がある。(その違和感や異物感をギャップとして笑いに変えたのが『ウルトラゾーン』や『怪獣散歩』)
その点、ペガはリクの影に入る事で姿を隠した状態ではあるが街にも出られるようになっている。

 

リクについてのペガの発言だが、平和な日常の時は「リクは自分を地球人だと思い込んでいる」と「リクは普通の人ではない」と言う話をしているのに、実際に怪獣が現れてリクが戦おうとすると「リクが怪獣と戦うなんて無理だ」と「リクは普通の人だ」と言い出すのが面白い。
日常の時は非日常の可能性を語り、実際に非日常になると日常を失わないようにしようとする。

 

スカルゴモラは下半身にボリュームがあるレッドキングと上半身にボリュームがあるゴモラが融合しているので体全体がボリュームのあるデザインになっている。
レッドキングゴモラの融合で名前を「レッドゴモラ」や「キングゴモラ」ではなくレッドキングの肩書きの「どくろ怪獣」から「スカルゴモラ」にしたセンスが素晴らしい。

 

前作『オーブ』のSSPは元々は事件とは無関係なのに怪獣事件が起こると自らその中に飛び込んでいったのに対し、今回のリクとペガは実は怪獣事件の関係者だったのだが、その事を知らず遠く離れた場所から怪獣の破壊活動を眺めると真逆になっている。

 

怪獣の侵攻状況をマスコミが常にレポートしたり、人々の避難が慌てて駆け出すのではなく力無く歩いて行く感じなのは『シン・ゴジラ』を思わせる。

 

リクがあまり暗さを表に出さない事もあって全体的にあっさり流されているのだが、リクの引っ越し先が見付からない、家を壊されて友達に宿を頼むが断られる、赤ん坊の時に天文台で保護された、とウルトラシリーズではちょっと重めな人間関係がちょいちょい挟まれている。

 

主人公が特別チームに所属しない『ジード』はウルトラシリーズでは異色の設定に見えるが、本作に登場する星雲荘は「地下に秘密の基地がある」だし、エレベーターで現場に直行するのも「戦闘機や専用車に乗って現場に向かう」だし、ジードライザーに触れていれば会話が可能なのも「通信機」だしと組織レベルから個人レベルへと変わってはいるが従来の特別チームにあったものは今回も踏襲されている。

 

ウルトラシリーズの主人公は特別な背景を持っている事は少ない。精神的には立派だったり前向きだったりとウルトラマンに選ばれる理由はあるのだが肉体的にウルトラマンはこの人物でなければいけないと言う作品は少ない。(『ティガ』のダイゴや『ギンガ』のヒカルは古代英雄戦士や選ばれし者と言う設定があったがどちらも作品の最後まで見たら絶対にダイゴやヒカルでなければいけないと言うわけではなかった事が分かる)
しかしジードは「Bの因子」を持っているリク以外に変身できる人物はいない。ライザーとカプセルを渡す時にレムが「これはあなたの運命です」とリクに告げていたが、まさに決められた宿命であった。

 

リクはウルトラマンの遺伝子を受け継いでいる。この設定で思い出すのはやはり漫画の『ULTRAMAN』であろう。『ULTRAMAN』は従来のウルトラシリーズとは色々と違っていて「漫画ならではのウルトラマンだなぁ」と思っていたのだが、そう言う設定を実写作品でもするようになるとは時代の変化を感じる。

 

レムが使う球型の偵察機の名前は「ユートム」。
『セブン』の「地底GO! GO! GO!」に登場したユートムを思い出すが名前の由来はそこからだろうか。あちらも地底関係だし。

 

名前が無いとやりづらいと言う事でリクは報告管理システムに「レム」と言う名前を付ける。
レムはこの名前を「REport Management」の略だと解釈したが実際は『爆裂戦記ドンシャイン』のレム姫が由来であった。
当然、ペガはレムの名前の由来を知っている。ここでリクが好きだったヒーロー作品のヒロインの名前を出した事でペガはリクが「ヒーローになりたい。なれるチャンスがやって来た」と考えている事に気付く。だから、リクは街を破壊する巨大生物と戦うと言えたのだと。
しかし、リクが変身したのは明日への希望となるヒーローではなく宇宙を荒らし回ったベリアルと瓜二つの姿であった。

 

ライザーを使用する事でリクは本来の姿に戻り力を行使する事が出来ると言う設定。なので、フュージョンライズする時にリクはウルトラマンの姿になってから初代マンとベリアルと融合している。リクのウルトラマンの姿はベリアルのアーリースタイルと全く同じだがカラータイマーの形だけ違っている。

 

『X』の「星空の声」では高さを使って巨人ウルトラマンへの変身を描写していたが今回は建物も道路も砂で作ったみたいに柔らかく感じると力の強さを使って巨人ウルトラマンへの変身を描写している。

 

今回は池を舞台に戦っていて数年ぶりにプールを使った撮影がされている。
今回が「水」、前作『オーブ』が「風」、前々作『X』が「火」と作品ごとに第1話の特撮が違っているのが凄い。
ただ、贅沢を言うなら『レオ』の「セブンが死ぬ時! 東京は沈没する!」「大沈没! 日本列島最後の日」で最初は戦いに地球人を巻き込んでいたレオが最後は怪獣を海に誘き出して戦えるようになったと言うように「水」を使った戦いをドラマに絡めてほしかった。『オーブ』も『X』も「風」や「火」はマガバッサーやデマーガの設定に絡んだ演出だったのに対し今回は「水のある場所で戦った」以上の意味が無かったのは残念。

 

『X』や『オーブ』の第1話がデマーガやマガバッサーの描写に力が入れられていたのに対し本作はスカルゴモラに関する描写は必要最低限に抑えられていて、その代わりに『X』や『オーブ』の第1話ではウルトラマンに関する事が殆ど語られていなかったのに対し本作はレムを使ってかなり細かいところまで説明がされている。

 

プリミティブは黒が入って禍々しさを感じさせるデザインになっているが、色自体は銀、赤、黒の三色で意外と大人しい。
特徴的なのはやはり目で、ウルトラマンは昔からマンタイプとセブンタイプの目が使われていたがベリアルはその二つとは大きく異なる目の形となっていた。おそらくベリアルが主人公のウルトラマンではなく敵キャラだったから可能だったデザインだと思われる。そしてジードはベリアルの息子だったので主人公のウルトラマンでありながらベリアルと同じように他のウルトラマン達とは大きく異なる目の形となった。
因みに「プリミティブ」は「原始的な、素朴な、幼稚な、基本的な構造や要素」と言う意味がある。

 

活動限界時間が3分なのは昔からの定番なのだが一度変身してから次に変身できるまでの冷却時間が設定されているのは斬新だった。
実はヒーロー作品で変身に制限がある事は意外と少なく、『T』の「ウルトラの国大爆発5秒前!」ではなんとタロウは4回も変身している。
それなら何度もウルトラマンに変身して戦えば良いと言う話が出てきてしまうが、それに対して昭和のウルトラシリーズでは「人間の自立心を失わせない為に変身はギリギリまで待つ」と言う話があった。宇宙警備隊員ではなく地球で育ったリクではそういう話は出来ないが、そこで一度変身したら次に変身できるまで20時間を要すると言う制限を設けて変身を乱発させないようにしたのは上手かった。

 

ジードの初登場は夜中の街にヌッと現れる不穏なものとなった。その後のレッキングバーストもウルトラマンぽくない荒々しい必殺技で、怪獣を倒しても子供は無邪気に喜ぶが大人はジードにベリアルの姿を重ねて戸惑うと光り輝くイメージがあったこれまでのウルトラマンとは大きく異なるデビュー戦となった。
翌朝、リクが街頭ニュースで変身した自分の姿を見て戸惑い、レムが「彼の父親はベリアル。ウルトラマンベリアルです」と告げて次回に続く流れはウルトラシリーズ第1話の中でも最高クラスの衝撃的な幕切れであった。

 

ジード』の登場人物はSF作品に因んだネーミングとなっている。過去の作品でもいくつか法則に則ったネーミングはあったが、作品の大部分を法則に則ってネーミングする事はこれまで無かった。
朝倉リク(SF作家のアーサー・C・クラークから)
久米ハルヲ(SF作家のハル・クレメントから)
レム(SF作家のスタニスワフ・レムから)

 

今回の話は乙一さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作となっている。乙一さんはシリーズ構成は「乙一」のままで、各話の脚本は本名の「安達寬高」でクレジットされている。

 

ウルトラシリーズは『ネクサス』の『シークレットファイル』から本編終了後に解説のミニコーナーが付けられるようになり本作も『ウルトラカプセルナビ』と言う解説コーナーがある。又、それとは別にYou Tubeのウルトラチャンネルで『ペガの『ウルトラマンジード アクションファイル』』と言う解説コーナーが配信された。


ペガの『ウルトラマンジード アクションファイル』第1回 「リクのフュージョンライズ」のポーズ

 

 

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