帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「僕の名前」

「僕の名前」
ウルトラマンジード』第12話
2017年9月23日放送(第12話)
脚本 安達寬高
監督 田口清隆

 

ベリアル融合獣ペダニウムゼットン
身長 65m
体重 5万4千t
伏井出ケイがウルトラカプセルとキングジョーとゼットンの怪獣カプセルで変身した姿。
ペダニウム・メテオ、ペダニウム・フレア、ゼットンストライカー、ペダニウムスパーク、デスト・レイバスター、PZウォールと様々な能力を駆使して戦う。
超高圧縮エネルギーの負荷により神経系と脳の一部が焼き切れ精神にダメージを受け、最後はマグニフィセントのビッグバスタウェイで倒された。

 

ウルトラマンベリアル
身長 55m
体重 6万t
異空間に潜んでいて、侵入してきたゼロを無数の触手で追い返した。
ゼロに異空間の出入り口を塞がれてしまうが、伏井出ケイの回収に成功する。

 

物語
リクは天文台の前に置かれていた手紙の差出人に会いに行く。
差出人の名前は朝倉錘。彼はリクの名付け親であった。

 

感想
「朝倉リク」の名付け親である朝倉錘が登場。
今回限りの登場であるが朝倉リクの物語において重要な位置を占めている人物。
因みに名前の由来はリクと同じくSF作家のアーサー・C・クラークからとなっている。

 

町長だった朝倉錘は天文台の前に置かれていた赤ん坊の名付け親になり戸籍を用意している。なので、遺伝子上の父親であるベリアルと実際にリクを作り出した伏井出ケイに続く「リクの父親」と言える。

 

当初は朝倉夫婦でリクを育てる予定だったのだが、錘の妻が事故で亡くなってしまい、リクは違う家に引き取られて育てられる事となった。
錘とリクは今まで一度も連絡を取っていなかった。リクが愛崎家に引き取られる以前の出来事は詳しく語られていないが、おそらく多くの人の手を渡る事になり、途中で錘にもリクの行方が分からなくなってしまったのだと思われる。(もし錘とモアの両親が知り合いだったら、モアの両親はリクに錘の事を教えているはず)
リクは寂しさや闇を垣間見せる事があるが、もし朝倉夫婦に育てられていたら違った人生を送っていた可能性がある。そう考えると、劇中では特に触れられていないが、錘の妻の死は本当に事故だったのか気になってくる。ひょっとしたら、リクに幸せな人生を送らせないようにする為の誰かの仕業だったのかも……。

 

千里眼で全てを見通す事が出来る朝倉錘はリクが欲しかったゲームを用意していた。
これは前回の「ジードアイデンティティー」を踏まえた展開だが、リクのもう一人の父親と言える伏井出ケイがジードの戦いをゲームのように扱っていたのとも繋げられていると思われる。
伏井出ケイは自分でゲームのシナリオを考えてリクを駒のように扱おうとしたが、錘はリクと同じ立場でゲームを楽しんだ。

 

前回の「ジードアイデンティティー」でリクは伏井出ケイによってウルトラマンジードとしてのアイデンティティーを崩されてしまったが、今回の話で朝倉錘によって朝倉リクとしてのアイデンティティーを確立する事が出来た。
「この大地にしっかりと足を付けて立つ。そして、どんな困難な状態にあっても絶対に再びまた立ち上がる」と言う願いを込めて付けられた「朝倉リク」と言う名前。これまで自分の人生に幸せをあまり感じてこられなかったリクはウルトラマンジードに変身して戦う事で自分の人生に意味や目的を付け加えようようとしていた。前回の話でウルトラマンジードとして戦う事の意味や目的は崩されてしまったが、今回の話でリクはようやく「朝倉リクと言う自分の人生」を前向きに受け止める事が出来るようになった。

 

朝倉錘がリクに「生きてほしい」と願ったのはリクがウルトラマンジードであるからではない。だが、朝倉錘のリクへの想いは「ウルトラマンへの願い」としてウルトラの父のウルトラカプセル起動へと繋がった。
ウルトラマンではない朝倉リクと言う人間」を救う場面でありながら同時に「朝倉リクはウルトラマンである」と言う動かせない部分も見せた事でウルトラマンとして生まれたリクの今後が少し想像できる話でもあった。

 

朝倉錘の能力は「千里眼」と「バリアー」で、一つのリトルスターで二つの能力が覚醒すると言うレアパターンとなった。

 

お礼に何でもお望みのものを見通してあげると朝倉錘がリクに尋ねる場面がある。
錘「知りたい事ある? あの女の子の事かな?」、
リク「ライハの事は別に……」、
錘「ライハなんて言っとらんよ」。
モアと違ってリクとライハはお互いの事を男女として意識する場面があまり無いので、このやり取りはリクの本心が垣間見える貴重な場面となった。

 

マグニフィセントはゼロとウルトラの父の力を融合させたもの。ベリアルのライバルであるゼロとウルトラの父の力をベリアルの息子であるジードが手にすると言うのはなんとも皮肉だ。
ゼロの力が入っているがデザインは角の印象が強くてゼロっぽさはあまり感じない。(実は角はゼロスラッガーがモデルになっているのだが) こうして見ると、やはりウルトラの父の角は凄いアイデアだったんだなと改めて思う。戦い方も落ち着いた感じはゼロと言うよりウルトラの父の方かな。
因みに「マグニフィセント」は「崇高な」と言う意味がある。

 

怪獣出現を伝える防災アナウンスが落ち着いてしっかりとした喋り方である事から怪獣出現が既に日常になっている事が分かる。

 

これまでの伏井出ケイは落ち着いていて常に奥の手を隠し持っているような雰囲気だったのだが、今回の話からは感情を剥き出しにして全てをさらけ出す場面が多くなる。
ジャグラー、愛染マコト、霧崎も計画が失敗して感情を爆発させる場面があるが、伏井出ケイは特にその落差が激しかった。

 

ペダニウムゼットンは超高圧縮エネルギーの負荷により神経系や脳の一部が焼き切れてしまう。自己修復できたようだが強大な力は精神に負荷をかけ続け、伏井出ケイは段々とおかしくなっていき自分の本音を隠さなくなっていく。
「ベリアル様ぁ! あのような子供に何が出来ましょう! 作られた道具がぁ! 創造主に刃向かうと言うのかぁ! あぁ、跪けぇ!地を舐めろ額を擦り付けて許しを請え! 終わる時が来たのだぁ! 貴様の首をベリアル様への手土産とする!」。
相手を罵倒するにしても色々な言葉を使ってくるところがさすが小説家。

 

ケイ「貴様の価値はベリアル様の遺伝子を持っている事ぉ! それ以上の何ものでもない模造品だぁ!」、
リク「模造品なんかじゃない! 僕はリク! 朝倉リク! それが僕の名前だぁ!」、
ケイ「貴様の人生に価値など無ぁい。お前と言う肉片に生命を与えたのはこの私だぞ! 産声を上げる瞬間にすり潰す事も出来たんだぁ!」、
リク「あなたには分からないんだ! 人の幸せがぁ! 僕には! 仲間がいる! 帰る場所も! 僕は僕の人生を生きている! 誰にも価値が無いなんて言わせない!」、
ケイ「貴様が価値あると信じている全てのものは屑だ! 薄っぺらいお前にはお似合いだがなぁ!」、
リク「……可哀相な人だ」、
ケイ「何だと!?」、
リク「あなたには何も無い。空っぽだ」。
ヒーローとヴィランが真正面から言葉をぶつけ殴り合う場面は問答無用に盛り上がる!
さて、このやり取りだが、リクが自分と言う存在を認め自信を持って主張しているのに対し、伏井出ケイはリクを否定するばかりで自分と言う存在について一言も話していない。それに気付いたリクは伏井出ケイの事を「何もない空っぽな可哀相な人」と見抜いたのであろう。

 

戦いが終わった後、ゲーム雑誌を読んで家事を真面目にしないリクを見てライハは「あなたは自分探しを終えました。でも、成長していません。とても残念です」と言ってリクが読んでいたゲーム雑誌を斬ってしまう。しかし、リクは全く動じる事が無く、逆にいつものやり取りに安心感を抱いていた。
成長したのは良いのだが、そう言う方面に成長したら駄目だよ。そのままだと居候する事になった家で半裸で彷徨き夕飯にピザを要望するような風来坊になっちゃうよ。

 

ベリアルが潜んでいた異空間に入るもベリアル本人を見付ける事が出来なかったゼロはとりあえず異空間の出入り口を塞いで地球に帰還する事に。
その後、ベリアルは戦いに敗れた伏井出ケイを回収する。
「案ずるな、ストルム星人。俺はお前の傍にいる。だから今は眠れ。体内に宿った悪魔を育てる為に」。
名前を付ける事付けられる事の大切さを描いた話でベリアルが伏井出ケイの名前を呼ばない事でベリアルが伏井出ケイの事をどのように扱っているのかが分かる。

 

 

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