「奪われた星雲荘」
『ウルトラマンジード』第19話
2017年11月11日放送(第19話)
脚本 勝冶京子
監督 伊藤良一
ロボット怪獣メカゴモラ
身長 44m
体重 2万2千t
伏井出ケイが怪獣カプセルで召喚した「最強の器」で、これまでのジードの戦いを全て見てきたレムと言う「最高の頭脳」を得る事で「史上最強のメカゴモラ」となった。
しかし、正気を取り戻したレムに首が弱点である事を明かされるとロイヤルメガマスターに首を集中攻撃され最後はスペシウムフラッシャーで倒された。
物語
リク達は突然乗り込んできた伏井出ケイに星雲荘を乗っ取られてしまう。
星雲荘のシステムを奪われたレムは密かに用意していたボディに緊急避難する。
感想
レム主役回でレムの声を担当している三森すずこさんがレムの人間態を演じている。
「音声を元に地球人的肉体を形成してプログラムを移植した」と言う設定が上手かった。
冒頭にレムが作った小説が出てくる。実際は伏井出ケイが作ったものだったらしいが、話の後半でレムは小説の続きを自分で考えるようになる。
現実世界でも人工知能の発達は著しく、『ジード』放送の前年には「人工知能が書いた小説が『星新一賞』の1次審査を通過した」と言うニュースがあった。
いきなり星雲荘に乗り込む伏井出ケイ。
これまでジードは人間大に変身した事が無かったが今回の対応を見るとひょっとしたら変身できないのかもしれない。そうなると今回のように狭い室内で襲われたらリクは全く戦う事が出来ない。レムとライハがいて本当に良かった。
星雲荘にあった回復装置は『メロス』や『ウルトラマン物語』でも似たタイプの物があった。「布団を被って寝る事で体力が回復する」と言うのは宇宙全体で見ると少数派なのかもしれない。
伏井出ケイに消去されそうになったレムは密かに用意していたボディに緊急避難する。
人間態のレムはリク達に自分の証明をする為に「リクがベッドの下に隠しているものを言いましょうか?」と言い、それを聞いたリクは「間違い無い! レムだ!」と慌てて肯定する。でも、ペガやライハの反応を見るとリクの秘密ってもう全員にバレバレな感じがする。
レムの人間態を気に入った店長がずっと傍にいるのを見てレムは「この男は何故私を監視しているのでしょうか?」とリクに尋ねる。いや、さすがにもう名前くらい知っているであろうに「この男」って……。
因みに店長の名前は「久米ハルヲ」です。
レイトと石刈アリエの取材場面は石刈アリエの正体を知っていると滅茶苦茶笑える場面になっている。
メカゴモラの出現に気付いたゼロは変身しようとするが、石刈アリエはゼロが外したメガネをかけ直させる事で変身をキャンセルさせてしまう。しかし、ゼロはいざとなったらレイトの体を動かして強制変身できるはず。それが出来なかったと言う事は石刈アリエが何らかの力でゼロの変身を妨害していた可能性がある。
レギュラーの敵キャラ、いわゆる「ヴィラン」が登場するのがニュージェネレーションシリーズの特徴の一つとなっている。
ニュージェネのヴィランと言えば『オーブ』のジャグラー、『ジード』の伏井出ケイ、『R/B』の愛染マコト、『タイガ』の霧崎と男性のイメージがあるが、『ギンガS』のワンゼロ、『ジード』の石刈アリエ、『R/B』の美剣サキと女性のヴィランもいる。男性ヴィランが主人公に絡むのに対し女性ヴィランは主人公以外の人物との話が多く、男性ヴィランが物語の最初から出るのに対し女性ヴィランは物語の後半から出る事が多いので、男性ヴィランに比べると女性ヴィランはまだ印象が薄いところがあるのかもしれない。
こちらが素なのか、それとも色々あった事で性格が変わってしまったのか、復活後の伏井出ケイはとにかくテンションが高い。
前回の「夢を継ぐ者」で自分がベリアルの後継者になる事を宣言した伏井出ケイだが、今回の話を見ると「ベリアルの後継者になる」よりも「朝倉リクを苦しめて倒したい」の方が強いように見える。
「ずっと昔、僕には静かな世界があった。でも、ある日、街が炎に包まれた。全てを失った僕は暗闇の中で気が付いた。自分の力で運命は変えられない事を。そして、闇の支配者に全てを委ねた……」。
明言されてはいないがおそらくこれは伏井出ケイの過去なんだろうな。この後に伏井出ケイがリクに向かって「自分の世界が壊れていくのはどんな気分だ」とわざわざ「世界」を持ち出して話をしているし。
レムは小説の続きを「僕は暗闇の中で気が付いた。一人じゃない事に。僕には仲間がいたから。そして分かった。運命は変えられる。自分の力で」と変えた。これはリクの事なのだが、裏を返せば伏井出ケイには「仲間がいなかった」と言う事でもある。
今回の話はリクや視聴者から見たら「伏井出ケイが星雲荘を奪った」になるのだが、伏井出ケイから見たら「リクからネオ・ブリタニア号を取り戻した」となるのがミソ。クライマックスのレムの帰還もリクから見たら「伏井出ケイから取り戻した」になるのだが、伏井出ケイから見たら「リクが奪った」になる。
今回の話で伏井出ケイはエネルギーの位相を反転させるストルム器官を修復する。
ストルム星人はストルム器官を使って力を打ち消す事で攻撃を無効化するバリアーを張る事が出来る。「誓いの剣」でゼロが伏井出ケイのバリアーを見ただけでストルム星人だと見抜いたところを見ると、他の宇宙人が使うバリアーとはシステムが大きく異なるもののようだ。
途中から現れたもう一人のレムは伏井出ケイがプログラムしたものだと思われる。それを二重人格者が心の中でもう一人の自分と対話するような場面にした事で人工知能だったレムが人間のような心を手に入れている事が示されたようになった。
今回のメカゴモラは「機械少女が中に組み込まれている」「首が弱点」と言う事で『メカゴジラの逆襲』を思い出した。
戦いが終わって「レムは元の姿に戻ってしまった」と語るリク。
「戻ってしまった」と言う事はリクも人間態のレムの姿を気に入っていたと言う事で良いのかな。
「レム」はストルム語で「呪縛」と言う意味だと知ったレムはリクに名前の由来を尋ねる。それに対するリクの答えは『ドンシャイン』のヒロインである「レム姫」であった。まぁ、リクはストルム語なんて分からないからねぇ。
リクが人間態の姿を気に入っていた事と好きな作品のヒロインの名前を与えられている事でレムは一気に『ジード』のヒロインレースに入り込む事となった。
ラストシーンの「この時、誰も知らないところで本当の悪夢は静かに始まっていたんだ」と言うリクのナレーションで伏井出ケイではなくて石刈アリエに焦点が当てられている。思えばこの時点で伏線は仕込まれていたんだなぁ。