『ウルトラマンUSA』
1989年4月28日公開
脚本 ジョン・エリック・シーワード(原案 円谷皐)
監督 日下部光雄
ウルトラマンスコット(声・古谷徹)
身長 82m
体重 6万4千t
M78星雲ウルトラの星からソーキンモンスターを追って地球にやって来たウルトラチームの一員で、アメリカ空軍のアクロバット飛行チーム「フライング・エンジェルス」のスコット・マスターソン大尉に宿って一心同体となった。
ウルトラエナジーボールを始めとする数々の攻撃技を持つ。
エネルギーが減ると額のビームランプが点滅する。
劇中では語られていないが、ウルトラチーム3人はM78星雲にある惑星アルタラの出身らしい。
ウルトラマンチャック(声・小川真司)
身長 79m
体重 6万8千t
同じくソーキンモンスターを追って地球にやって来たウルトラチームの一員でチャック・ギャビン大尉に宿った。
冷静に物事に対処し周りに指示を与える司令塔。
ウルトラバブルビームで怪獣を保護・封印する事が出来る。
ウルトラウーマンベス(声・鶴ひろみ)
身長 76m
体重 5万4千t
同じくソーキンモンスターを追って地球にやって来たウルトラチームの一員でベス・オブライエン中尉に宿った。
周囲の水を利用したウルトラスパウトと言う技が得意。
ウルトラシリーズで初めて「ウルトラウーマン」と名付けられたキャラクター。
ユリシーズ(声・田の中勇)
サムソン(声・大竹宏)
アンディ(声・山田恭子)
ウルトラフォースのサポートロボットで、ユリシーズは本名コンボットMF842号でレーザー兵器のプロフェッショナル、サムソンは本名コンボットBA666号で武装システムのオーソリティー、アンディは本名ユーティロイドZQ14582号でトランスポーテーションシステムの専門家となっている。本名が長いと言う事でユリシーズとサムソンはスコットが、アンディはベスがそれぞれ命名した。
3体とも非常に人間臭いコメディリリーフ。
アンディは様々な作戦を立てて役に立っていたが、ユリシーズとサムソンは……。
因みに3体の頭文字(Ulysses・Samson・Andy)を合わせると「U・S・A」となる。
植物怪獣グリンショックス
身長 約100m
体重 約3万t
M78星雲にある原因不明の爆発を起こした惑星ソーキンから隕石に乗って地球にやって来た。ルイジアナ州の森林地帯に落下した後、ニューオーリンズに出現した。
触手で獲物を捕らえて花弁の中にある溶解液で溶かしてしまう。攻撃を受けてもすぐに修復する事が出来る。
塩水に弱く、ベスに海に落とされた後、残しておいた触手から再生するもウルトラスパウトで海水を浴びせられて消滅した。
電磁怪獣ガルバラード
身長 約91.44m
体重 約9万1千t
同じく惑星ソーキンから隕石に乗って地球にやって来た。カリフォルニア州沿岸に落下した後、サンフランシスコに出現した。
メカニックな体から電流を放射する。
スコットに発電所に投げつけられるが本体を現して反撃する。
電磁球獣イーム
身長 152.4m
体重 2万7千t
ガルバラードの本体。
発電所の電気を吸収してスコットに反撃するが、ウルトラエナジーボール、ウルトラスライサー、グラニウム光線の連続攻撃を受けて倒された。
ひょうきん子怪獣ズーン
身長 約35.05m
体重 約3万5千t
同じく惑星ソーキンから隕石に乗って地球にやって来た。ユタ州の雪山に落下した後、スキー場に出現した。羽根で空を飛べる。
おとなしくて臆病な性格の為、人間に害を及ぼさないと判断したチャックによって国家警備隊の攻撃から守られ、ウルトラバブルビームで保護されながらアンドロメダ星雲のM11惑星に送られた。
ベイビィ=モンスターウィロン
身長 約40cm
体重 約5kg
同じく惑星ソーキンから隕石に乗って地球にやって来た。ニューメキシコ州の荒野に落下した後、異星生物研究所で様々な実験を受ける事になる。
小型でかわいらしい姿だったが……。
超変身怪獣キングマイラ
身長 約40cm~無限
体重 約5kg~無限
ウィロンが成長を開始した姿。90分ごとに2倍の大きさに巨大化していき、より凶悪な姿に変身していく。計算によると、わずか数日で地球より巨大になるらしい。
触手を含めた全ての口から火炎を吐き、テレポーテーションでアメリカ軍を翻弄し、ウルトラチームを一時退却に追い込むが、最後はウルトラチームによって太陽に放り投げられて消滅した。
物語
スコット、チャック、ベスの「フライング・エンジェルス」はアクロバット飛行中に謎の光と遭遇する。
地上勤務となったスコット達は謎の老人ウォルター・フリーマンからウルトラチームの話を聞き「ウルトラフォース」に所属する事になる。
感想
円谷プロとアメリカのアニメ制作会社ハンナ・バーベラ・プロダクションによる日米共同制作で、1987年10月12日にアメリカで『ULTRAMAN THE ADVENTURE BEGINS』としてTV放送された。
元々はアメリカでのTVシリーズ化を見据えたパイロット版だったが、TVシリーズ化は実現せず、1989年に日本で『ウルトラマン大会』の1作として公開される事となった。しかし、ウルトラシリーズの海外進出はその後も『G』や『パワード』と続く事となる。
過去のシリーズとは世界観が異なっているらしい。まぁアメリカ初だからね。
本作以降のウルトラシリーズは過去のシリーズとの繋がりが薄くなり、それぞれが独立した世界観を持つようになっていった。そういう意味では原題通りに「ウルトラマンの新たな冒険の始まり」となった作品だと言える。
アニメ作品だがウルトラチーム3人は後のネオス初登場時のスチール撮影やウルトラマン全員集合の映画等でスーツ姿を見せている。
アクロバット飛行中に謎の光によって墜落してしまったスコット達。後にこの光はウルトラチームによるものだと判明する。
説明によるとウルトラチームがスコット達に宿る事で命を救ったらしいが、謎の光が無かったらスコット達が死にかける事も無かった気がする……。
ウルトラチームとの遭遇を覚えていなかったスコット達はクーパー将軍に事情を説明できず、墜落の責任を取ってしばらく地上勤務となる。しかし、謎の老人ウォルター・フリーマンからウルトラチームの話を聞き、ウルトラフォースに所属する事になる。
ウルトラフォースはフリーマンが勤めているゴルフ場地下とラシュモア山内部に秘密基地を持つ組織で、人間の科学力では作れないであろうユリシーズ、サムソン、アンディのロボトリオUSAやウルトラチームにエネルギーを供給できるマザーシップ等、M78星雲の科学力が関わっている事は明らか。
クーパー将軍の態度からアメリカ軍も関わっていそうだが、国家警備隊がその存在を把握していないところを見ると、クーパー将軍とフリーマンのみが関わっている可能性がある。(出撃の度にラシュモア山の歴代大統領の巨大彫刻が移動しても誰もウルトラフォースの居場所を知らないのは不自然だが……)
ところでフリーマンは一体何者なのだろうか?
ウルトラチームが地球に到着する以前に既に異変を察知していたし、ウルトラチームが地球に来てからわずか数日であの巨大基地を作ったとはとても考えられない。
もしかしたら、ソーキンモンスターがやって来る以前からM78星雲と交流があったのかもしれない。
ウルトラフォース設立にM78星雲のウルトラマン達が関わっているかどうかは明言されていないが、そう言えば同じアニメ作品である『ザ☆ウル』は科学警備隊の結成にU40のウルトラマン達の意思が関わっていて、後半にはウルトリアと言うU40によって作られた装備を人間達が使うようになっていた。
ここでウルトラフォース3人の紹介を。
スコットは軽い性格でベス曰く「子供みたい」な奴。
チャックは35歳で、ウルトラマンに変身する人間は若者が多い中では珍しい存在。
ベスは負けん気が強く、女性のウルトラマンでは初めて単独で怪獣を倒している。
3人は最初は命の危機に瀕しないとウルトラマンに変身できなかったが、二回目以降は自分の意思で変身できるようになっている。
これまでのウルトラシリーズは特別チームの隊員達がウルトラマンの正体を知らないので実は特別チームのドラマとウルトラマンのドラマが別々になっている事が多い。例えば、事件を起こした怪獣を倒すと言う目的は一緒でも、特別チームはそれを人間の側から、ウルトラマンは宇宙人の側から見る事がある。
しかし、ウルトラフォースは隊員全員をウルトラマンにする事で特別チームとウルトラマンのドラマを一つに纏める事が出来た。その為か、映画一本でウルトラマン3人の誕生、植物系とメカ系と獣系の怪獣を出す、怪獣を倒す話と怪獣を保護する話と保護した怪獣に裏切られる話を描く、主人公とヒロインの恋愛物語と色々な要素を破綻させずに盛り込む事に成功している。
ニューオーリンズにソーキンモンスターのグリンショックスが出現し、ウルトラフォースが初出撃する事になる。
しかし、サンフランシスコにもガルバラードが出現してスコットが向かう事になり、残ったベスは危機に陥るもウルトラウーマンに変身し、アンディの助言を受けてウルトラスパウトでグリンショックスを倒す。
一方のスコットも危機に陥ってウルトラマンに変身すると、ガルバラードの電流攻撃に苦しむが駆けつけたアンディの機転で逆転し、連続攻撃でガルバラード、そして本体のイームを倒す。
この2ヶ所で怪獣と戦うと言うのはウルトラマンが複数いる本作ならではの展開だった。
人間に戻ったスコットはTVクルーにウルトラチームの事を聞かれて困ってしまう。
そこに異星生物研究所のスーザン・ランド博士が現れ、ウルトラフォースが異星の生物を殺してしまったので自分達の研究が10年は遅れたと抗議し、アメリカ大統領にウルトラフォースの逮捕状を請求する。
でもスコットが言ったように怪獣に街が破壊されていく中でそんな事を言われても……である。
スーザンの事が気になったスコットは異星生物研究所に向かう。
「怪獣は倒さなければならない」と言うスコットにスーザンは「その前に話し合おうとしたのか」と問い詰め、スコットはこの次は戦う前にまず話し合う事を約束する。
そこに今度はユタ州にズーンが出現。スコットはチャックとベスに事情を話すが、チャックは人命を危うくするものは何があっても倒さねばならんと答える。
ウルトラフォースの出撃を受けて国家警備隊は共に怪獣を倒そうとズーンを攻撃する。
怯えて反撃しないズーンを見たチャックは助けるわけにはいかないが無抵抗のものを殺すわけにもいかないと考え、ウルトラマンに変身してウルトラバブルビームでズーンを保護すると、アンディにズーンが住めそうな惑星を調べさせ、見付けたアンドロメダ星雲のM11惑星に送る事にする。
しかし、それを見た国家警備隊はウルトラフォースとウルトラチームは怪獣の味方になったとしてミサイルで攻撃してしまう。何か事情があるとか考えないのか?
ニューメキシコ州に落下した隕石からウィロンを捕らえた異星生物研究所は様々な実験を施す。しかし、それは動物虐待に近いもので、見かねたスーザンはウィロンを保護して独自にコミュニケーションをとっていく。
しかし、ウィロンはかわいい姿をしているが凶悪な性格の持ち主だった。部屋を出たスーザンに向かって呟いた「スーザン……」は悪意のこもった声でかなり怖い。
そしてウィロンは巨大化しキングマイラになってニューヨークを破壊していく。
責任を感じたスーザンは実験に使っていたニューラルインターフェザーでキングマイラを攻撃。
ニューラルインターフェザーは生物の精神に入り込んで相手を麻痺させると言うもので一時的にキングマイラの動きを止める事に成功するが、やはり危機に陥ってしまう。
そこにウルトラフォースとウルトラチームが出現!
スコットがスーザンを救出するが、その時の仕草でスーザンはウルトラチームの正体を知る。ウルトラマンは変身前と変身後の仕草が同じになる事があまり無かったので、このパターンの正体バレは新しい。
ところでスコット達とウルトラチームの関係はどうなっているのだろうか?
見る限り、ウルトラマンに変身した後もスコット達の人格が反映されているようだ。
スコット達にウルトラフォースやソーキンモンスターに関する知識が無いところを見ると、ウルトラチームから記憶を与えられてはいないようだ。(その割に初めて変身した時に驚かず普通に技を使っていたのはおかしいが)
スコット達と出会う前のウルトラチームの人格や記憶は一体どこに行ってしまったのだろうか?
キングマイラのテレポーテーションに翻弄されてアメリカ軍は全滅。
ウルトラチームもエネルギー切れになってしまい、マザーシップに一時的にエネルギーを供給された後、宇宙空間に出て太陽エネルギーを完全に蓄える。
スーザンもマザーシップに乗るが、いつの間にかスーザンが全体の指揮を執っているのが面白い。
マザーシップの設備でニューラルインターフェザーの信号が増幅されてキングマイラの動きが鈍るが、ウルトラチームが同時に撃ったグラニウム光線をテレポーテーションでなんとか避ける。しかし、ベスのウルトラスパウトを受け、チャックのウルトラバブルビームに封印され、そのままウルトラチームによって宇宙へ運ばれる。
キングマイラは途中で切断していた尻尾を使ってウルトラバブルビームから脱出して最後の抵抗を試みるが、エネルギーを全開にしたウルトラチームに太陽に放り投げられて遂に消滅するのであった。
キングマイラとの戦いは夕焼けから夜へと変わっていくニューヨークの街並みが美しく、途中にあった自由の女神像の近くでの戦いは思わず唸った。ウルトラマンや怪獣の巨大感も上手く出せていたと思う。
戦いが終わった後、「また会えるわよね?」と言うスーザンの言葉をスコットは無視してしまう。理由を尋ねるチャックとベスにスコットは「任務が終わったらウルトラチームはM78星雲に帰ってしまう。そうなったら自分達はどうなる?」と答える。しかし、ウルトラフォースのフリーマン司令官は「今回の任務は無事に終わったが、まだ君達の力が必要だ」と告げる。こうしてまだ地球にいられる事を知ったスコットはスーザンに会いに行くのであった。
これまでのウルトラシリーズのヒロインは『初代マン』のフジ隊員や『セブン』のアンヌ隊員のような特別チームに所属している女性と『帰マン』のアキちゃんや『T』のさおりさんのような一般人の女性の2パターンがあったが、本作に登場したスーザンは「特別チームに所属していないが、主人公とは怪獣事件で知り合う」と言う新しいパターンであった。
どうやらウルトラチームが分離するとスコット達は死んでしまうようだ。
過去にも『初代マン』のハヤタ隊員や『帰マン』の郷秀樹等が命の危機をウルトラマンとの合体で助かっているが、ウルトラマンが分離したらどうなるのかと言う言及がされたのは『初代マン』の最終回「さらばウルトラマン」くらいであった。
ウルトラチームとスコット達は命を共有している事が判明するが、やはり人格と記憶の問題が残る。元々はTVシリーズ化を視野に入れていたので、後でその部分は明かすつもりだったのかもしれない。フリーマン司令官の秘密と合わせて、いつかその部分を説明してほしいものだ。
本作は序盤のスコット達がウルトラフォースに招かれる陰謀めいた展開やスコットとスーザンの物語等、ウルトラシリーズと言うよりアメリカ作品の雰囲気が強く出ている。
アメリカ作品では最後は主人公とヒロインのキスシーンでめでたく終わる事が多く本作も最後はキスシーンで終わっている。誰と誰のキスシーンかは、ここまでの展開を見れば分かると思うので、あえて書きません。
主題歌は石原慎一さんの『時の中を走りぬけて』。
『キッズ』、『初代マン』の「恐怖のルート87」、『A』の「大蟻超獣対ウルトラ兄弟」が同時上映された。