「狙われない街 ー対話宇宙人メトロン星人再登場ー」
『ウルトラマンマックス』第24話
2005年12月10日放送(第24話)
脚本 小林雄次
監督 実相寺昭雄
特技監督 菊地雄一
対話宇宙人メトロン星人
身長 2m~50m
体重 120kg~1万8千t
40年前に北川町で事件を起こした後、怪獣倉庫に潜伏して地球を見守ってきた。
便利なツールを手に入れた事でどんどん退化していく人類はいずれ滅びると告げ、マックスであるカイトに別れの挨拶をすると迎えの宇宙船と共に夕焼けの中に消え、地球から去って行った。
物語
北川町で人間がいきなり暴れる事件が続発した。
地元警察と協力して捜査する事になったカイト達。
果たして事件の真相は?
感想
『マックス』は他のウルトラシリーズとは世界が繋がっていないので、エレキングやレッドキングと言った伝説怪獣も過去の作品とは無関係な存在となっている。
しかし、今回のメトロン星人は『セブン』に登場したあのメトロン星人が再登場したもので、話も『セブン』の「狙われた街」の後日談となっている。
まさか『マックス』の中で『セブン』の映像が使われるとは思わなくて驚いた。
今回は『セブン』の後日談なので『平成セブン』については特に触れられていない。(『平成セブン』の「地球星人の大地」では「北川市」になっていたのに今回の話では「北川町」になっている)
楢崎「あんたら、怪獣退治が仕事だろう? 人間の事件は専門外じゃないのか?」、
カイト「はい。でもこの世には現代科学では解明できない事件が山ほどあります」、
ミズキ「そう言う事件には怪獣や宇宙人のような恐ろしい存在が絡んでいる可能性も否定できませんからね」、
楢崎「なぁ……。怪獣や宇宙人よりも恐ろしいものを知っているか? ……人間だよ」。
「人間が一番恐ろしい存在」と言うのは『初代マン』と『セブン』の次に制作された『怪奇大作戦』に通じるものがある。今回の「特別チームと警察が協力して事件を追う」と言う構図も『初代マン』や『セブン』より『怪奇』に近い。
因みに暴れ出した人間を調査したのは「P.S.R.I警察科学研究所」であった。
さらに余談だが、堀内正美さん演じる研究員の名前は「松永要二郎」で前作『ネクサス』の松永管理官の弟と言う事になっている。
メトロン星人が携帯電話に向けて発信した特殊電波によって人間の前頭葉は委縮して善悪の判断が付かなくなり、人間らしい思考が不可能となり、言葉を失い、無気力無関心無感動な空っぽな人間になってしまう。
しかし、メトロン星人は自分はもうこの地球もこの街も狙わない、今のウルトラマンであるマックスに挨拶して帰ろうと思っている。40年間潜伏して見守ってきた結果、便利なツールを手に入れた人類はどんどん退化している。新しい道具で脳が委縮している人類は放っておいてもいずれ滅びる、今回の自分はその退化の速度を速めようと力を貸しただけだと説明する。
ここで興味深いのがメトロン星人が地球を「見守ってきた」と語っている事。本当に侵略するつもりだったら「見守る」ではなく「監視」や「調査」と言う言葉を選んでいるだろう。
メトロン星人の目的だが「人類の退化の速度を速めてみた」と「今のウルトラマンであるマックスに挨拶をしに来た」を合わせて考えると、マックスであるカイトに人類の滅びの未来を見せる事で、人類とその人類を物好きに守るウルトラマンに警告をしたと思われる。滅びの未来を実際に見せる事で人類が危機感を抱いて変わる事を期待したのかもしれない。
メトロン星人の目的が何だったのかは推測するしかないが、人類は最終回の「つかみとれ! 未来」で滅びの危機を乗り越えて希望溢れる未来を掴み取っている。
今回のテーマの一つに「コミュニケーションの変化」がある。
昔はタバコを差し出し、それを受け取る事で一つのコミュニケーションが作られていた。昔の刑事ドラマではそこから情報収集が行われていたが、今は「自分は吸えないんで」の一言で拒絶されて終わってしまう。
タバコの代わりにメトロン星人が目を付けたのは携帯電話。タバコを直接やり取りする距離から携帯電話を介しての距離へと人間関係は大きく変化した。
とは言え、一概に携帯電話が駄目でタバコが良いと言う話ではない。例えば、タバコの煙は他人に不快感とプレッシャーを与えるもので、昔の刑事ドラマでも取り調べ中にタバコの煙を容疑者に向けて吹いてプレッシャーをかける場面がよく見られた。
この頃は携帯電話からアンテナが無くなるなんて思ってもいなかったなぁ。
空き地の土管に『初代マン』の「恐怖の宇宙線」のガヴァドンの絵が描かれている。
今回は『セブン』の後日談的要素があるからか、カイト=マックスとして話が進んでいる。
メトロン星人の話に反論出来ないからか今回のカイトはやや感情的。
メトロン星人とジャンケンをする時に見せた邪悪な表情は普段のカイトでは見られないものだった。
メトロン星人が潜伏していた場所は円谷プロダクションの怪獣倉庫。
ドアを閉めるシーボーズ等、懐かしい怪獣の着ぐるみが見られる。
40年前の戦いで真っ二つにされたメトロン星人を怪獣倉庫の着ぐるみ職人が治す(直す)と言う展開がカオスでシュール。
因みに怪獣倉庫は2008年に閉鎖された。一つの時代の終わりを感じる。
「でも、悪い奴じゃないと思うんだ。ただ……、この街が変わっちまった事に怒りを募らせているだけじゃないのか?」とメトロン星人をフォローする楢崎。
確かに今回の事件はそうだったが、メトロン星人は元々地球侵略を企む宇宙人だった。年を取って丸くなって妙にキャラが立ったが元々は悪い奴だったと思う。
川を挟んでマックスが平成の都会を背にして、メトロン星人が昭和の街並みに目を向ける構図が秀逸!
カイト「あの人の言う通りだ。奴は……、この星に見切りをつけて、故郷の星へ帰って行ったんだ」、
ミズキ「でも、○×△□……」。
ミズキ隊員は何と言ったのだろう? 人類の可能性や希望溢れる未来に関する台詞だったのは想像に難くないが、あえてそれをぶった切った事で物凄く印象に残るラストシーンとなった。
今回の話は2006年に亡くなられた実相寺監督のウルトラシリーズ監督最終作となっている。
それを頭に入れて今回の話を見ると、『セブン』の頃のメトロン星人が再登場して今のウルトラマンに別れの挨拶をすると言う内容は色々と考えてしまうものがある。