帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ようこそ! 地球へ 後編 さらば! バルタン星人」

「ようこそ! 地球へ 後編 さらば! バルタン星人 ー子供の超科学星人タイニーバルタン 超科学星人ダークバルタン登場ー
ウルトラマンマックス』第34話
2006年2月18日放送(第34話)
脚本 千束北男
監督 飯島敏宏
特技監督 菊地雄一

 

子供の超科学星人タイニーバルタン
身長 ミクロ~150cm
体重 0.1g~55kg
水の結晶体を使って他の子供達と力を合わせてマックスのエネルギーを回復させた。
最後はバルタン星の古代遺跡から発掘された銅鐸を鳴らす事で戦いを終わらせ、元の姿に戻ったダークバルタンと一緒に宇宙に帰って行った。

 

超科学星人ダークバルタン
身長 ミクロ~51m(超巨大化時・357m)
体重 0.1g~3万9千t(超巨大化時・27万3千t)
分身やスペルゲン反射鏡と言った新たな能力を見せてマックスと互角の戦いを繰り広げる。
タイニーバルタンがバルタン星から持って来た銅鐸の音を聞いて戦意を失い、ダテ博士が発明したメタモルフォーザーで元の姿に戻ると、最後はタイニーバルタンと一緒に宇宙に帰って行った。

 

物語
ダークバルタンに敗れてしまったマックス。
タイニーバルタンはマックスを復活させる為に行動を開始する。
そしてマックスとダークバルタンによる大戦争の幕が切って落とされた!

 

感想
ようこそ! 地球へ 前編 バルタン星の科学」の続き。

 

今回のバルタン星人は元々は地球人と同じような姿形をしていたが愚かな核戦争で環境が破壊されたので姿を変えて進化しなければ生き残れなかったと言う設定になっている。
これはバルタン星人を地球人が誤った道を進んだ場合の未来の姿とした為。同じ飯島監督作品である『Q倶楽部』のケムール人も似た設定になっていた。

 

タイニーバルタンが生き残ればクローン技術で無数の穏健派バルタンが生き残る事になるので過激派バルタンは血眼になってタイニーバルタンを探している。
これが理由でタイニーバルタンはあまり大っぴらな行動に出られなかったらしいが、全編通じてダークバルタンがタイニーバルタンを狙っているような描写は無かった。と言うか、タイニーバルタンがダークバルタンの存在を終始気にしていたのに対し、ダークバルタンはタイニーバルタンの存在を無視しているかの如く地球侵略のみを進めていた。
実は二人が絡んだのは銅鐸の場面以降だけとなっている。出来れば全編に亘って穏健派と過激派の対立を描いてほしかった。

 

ヒジカタ隊長の指導を受けてのコバ隊員の愛の力によるエリー復活劇。
この話を見るに、エリーがコバ隊員に好意を寄せている事をコバ隊員以外の全員が気付いているがコバ隊員本人だけは気付いていなかったようだ。
前回の仲間発言や今回のヒジカタ隊長の指導を受けながらのエリーへの接し方を見ると、ひょっとしたら、コバ隊員はエリーに対する恋愛感情が無いか、あっても自分自身では気付いていなかったと思える。だが今回の「コバ・ケンジロウの名前は既に「好き」と言うファイルにある」と言うエリーの発言からコバ隊員もエリーの事を意識するようになる。
因みにエリーには人間に似た「感情回路」と言うものがあるらしい。そんなキカイダーみたいなものがあったのか。

 

カイトはマックスに変身する為のエネルギーが尽きてしまうが、タイニーバルタンが作り出した結晶体を子供達が掲げる事によって、その結晶体からエネルギーを貰ってマックスに変身する。
正体がバレた!?と見ていて驚いたが、ここは前回と同じく『マックス』はオムニバス形式だからと言う事で納得する。
皆から力を分け与えられての特別な変身は見ていて素直に盛り上がる。

 

今回のバルタン星人は「お茶の子さいさい」と言った言い回しを多用していて、『80』の「バルタン星人の限りなきチャレンジ魂」に登場したバルタン星人を思い出す。一体、どこでそんな言葉を覚えたのか……。
もっとも、今回はミズキ隊員も「案ずるより産むが易し」とか言っているので、特に『80』のバルタン星人を意識したものではないかもしれない。

 

マックスとダークバルタンの戦いは分身した両者による大混戦が凄まじいインパクトを残した。
仮面ライダーオーズ』で分身するガタキリバの撮影には物凄い予算がかかると言う話があったが、この話には一体どれだけのお金がかかったのだろう……。

 

今回もタイニーバルタンの行動が不可解である。
まず、ダークバルタンに見付かるから箒に乗って移動できないと言っていながら箒に乗って移動している。
又、ダークバルタンを倒せる道具としてバルタン星に銅鐸を取りに戻るが、それならバルタン星にいる時に使えよと言いたくなる。
他にもバルタン星人の中でも銅鐸の使い方を知る人はいなくなったとなっているが、それならどうしてタイニーバルタンは使い方を知っているのかと言う疑問が出てくる。
銅鐸を持って来たのに、すぐに使わず、まずカイトをマックスに変身させてダークバルタンと戦わせたのも不可解。時間稼ぎが必要な状況には見えなかったので、最初から銅鐸を使えば良かったのではないだろうか……?
そして、終わってみるとタイニーバルタンは地球人に助力を請うている割には殆ど説明せず結局は自分一人で解決してしまっている。(実は今回の話は勉がいなくても成り立つ展開になっている)

 

銅鐸は伏線無しにいきなり出てきて事態を全て解決すると言うかなり問題のあるものであった。
地球の古代とバルタン星の古代が似たような文化を築いていたと言うのは興味深いものであったが、それならタイニーバルタンが地球の古代文化を知る展開を入れてほしかった。

 

戦いが終わったところでいきなりダテ博士が登場して「こんな事もあろうかと用意していたメタモルフォーザー」でダークバルタンを人間の姿に戻してしまう。
メタモルフォーザーは何でも元に戻してしまう「魔法」の新発明と言う事だが、この後にタイニーバルタンとダークバルタンは人間の姿ではなくバルタン星人の姿で宇宙に帰っている。戻したのではなかったのか……?(宇宙空間を移動する為に人間の姿からバルタン星人の姿に変身したのかな)
ウルトラマンの科学を超えるバルタン星人の科学をさらに地球人の科学が超えると言う構図は面白かったが登場が唐突過ぎた。

 

今回はそれぞれの話が繋がっておらず、個人的な意見を述べるなら、ウルトラシリーズで最も話がまとまっていない回であった。
特撮シーンは『マックス』の中でも群を抜いて好きなんだが……。

 

ダークバルタンの主張を聞いたトミオカ長官とヨシナガ教授は地球人が経済優先の科学力で地球を台無しにして地球のゴミを月に捨てたり火星に移住しようとする事は地球人のツケを他の星に押し付けている事だと考え、このような事をしていたら地球は全宇宙から敵視されると危惧する。
しかし、「正義は強き者にある」とするダークバルタンの主張に対しては「戦いを仕掛ける者にはいかなる正義も無い」と地球人への弾劾は受け入れながらもダークバルタンの戦いそのものは肯定しなかった。
そしてタイニーバルタンによって戦いが終わり、マックスがダークバルタンに止めを刺さなかった事を見て、それぞれの星がそれぞれの平和を保つ事こそが宇宙の正義であると言う結論に至る。ヒジカタ隊長も言っているが、この結論は宇宙だけでなく地球の中でも適用されるものである。

 

全てが終わり、宇宙に帰るバルタン星人を見送る勉。
それを見た警察官は地球はもう大丈夫だと確信するが、その足下には不法投棄の数々が……。
この辺りは「狙われない街」とはまた違った突き放した感を感じる。

 

今回の話は2021年に亡くなられた飯島監督のウルトラシリーズ最終作となっている。

 

 

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  • メディア: DVD