帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「地球の友人」

「地球の友人」
ウルトラマンタイガ』第21話
2019年11月23日放送(第21話)
脚本 小林弘利
監督 武居正能

 

幽霊怪人ゴース星人
身長 200cm
体重 70kg
サンドイッチマンで日銭を稼いでいた。
地球の言葉を話せないので他の人間の体を借りて意思を伝える。
小森と同じ革命闘士であったが地球人を傷付けるつもりは無くて今は行動を別にしている。
田崎に暴行され、パンドンを失う事になったが、それでも地球を愛する気持ちは変わらなかった。

 

双頭怪獣パンドン
身長 40m
体重 1万5千t
育ての親であるゴース星人が地球人に襲われたのを見て暴れ出した。
二つの口から火炎を吐く。
ゴース星人が田崎から解放されたのを見て暴れるのを止めるが、トレギアのトレラテムノーで切り裂かれて倒された。

 

物語
田崎修と言う若者がE.G.I.S.に試験採用される事になった。
田崎は自分の母が大怪我を負った原因である宇宙人に強い憎しみを抱いていて……。

 

感想
これまでのウルトラシリーズを見ていると『タイガ』の地球での宇宙人関係の話は「新しき世界のために」や「砂のお城」辺りが限界かなと思っていたので、宇宙人が操っていた怪獣の犠牲者が出たりCQが実用化されたりするところまで踏み込んだのは予想外であった。

 

地球で辛い目に遭った宇宙人・バット星人が復讐の為に怪獣ゼットンを持ち出し、そのゼットンの破壊活動で罪の無い地球人が被害に遭い、地球人・田崎修が母が大怪我を負った原因である宇宙人を憎むようになると言う負の連鎖。宇宙人問題を描く本作でこれを劇中でちゃんと取り上げたのが良かった。

 

今回の話は『T』の「ウルトラのクリスマスツリー」に『レオ』のトオルが家族を殺されて怪獣や宇宙人を憎むようになった話を合わせたような内容になっている。

 

宇宙人を退治したいと訴える田崎に向かって「E.G.I.S.は守るのが仕事」と返すカナ。
ウルトラシリーズに登場する特別チームの殆どが国際的な防衛組織に関係しているので「倒すのではなく守るのが仕事」と言うのは民間の警備会社であるE.G.I.S.だからこその台詞であった。

 

本作では宇宙人に関する問題は根底に差別意識があると言う描写があるが、宇宙人を憎む田崎を「髪にメッシュを入れていると言った外見によって彼自身も偏見の目で見られている」としたのが上手かった。偏見の目にさらされた人物が他の人物を偏見の目で見ないとは限らないのだ。

 

後輩が出来て先輩風を吹かすヒロユキ。
そう言えばウルトラシリーズで物語の途中から主人公の後輩が登場するのは『T』の上野隊員が初めてであった。

 

今回の話ではE.G.I.S.が外事X課と繋がりのある民間の警備会社と言う設定が上手く使われていた。これが地球防衛軍所属の組織だと田崎が入隊するまで時間がかかるし、ゴース星人を捕らえてその場で始末できる武器を手に入れられそうだし、そう言った武器やCQを無断で持ち出すのも難しかったと思う。

 

ゴース星人がサンドイッチマンをしていたのは2019年に公開された映画『ジョーカー』を思い出す。(公開時期を考えたら偶然なのだろうけれど、小森を始めとする革命闘士がやりたかった事って『ジョーカー』のクライマックスと同じだよね)

 

今回の霧崎は誠実で頼りになる青年の振りをして田崎を騙していた。
いつものねっとりとした喋り方とは違う好青年な喋り方を聞くと、霧崎は最初から敵として登場するのではなく、最初は好青年な味方で登場してヒロユキ達だけでなく視聴者も騙すと言う展開でも面白かったかなと思う。

 

「ジグソーパズル。あれは地球で一番素晴らしい発明だな。バラバラなピースが合わさると一つの絵が完成する。まさにこの宇宙を表す素晴らしい発明だ」。
ヒロユキ達への煽りも入っているのだが、それでも霧崎がここまで地球関係のものを褒めるのは意外であった。
因みに「絵」と言えば、「夕映えの戦士」で小田さんがパステルを持ち出して「正解が無いから何度でもやり直せる」とヒロユキについて語っていたのに対し、今回の話で霧崎はジグソーパズルを持ち出して「必ず一つの正解に辿り着く」事を素晴らしいと語っている。直接的ではないがヒロユキ達と霧崎の対比として興味深い。

 

相手を出身で判断して「ここの言葉で話せ」と怒鳴る田崎の場面は現実での外国人の問題を思わせる。『マックス』の「遙かなる友人」で宇宙人と外国人を重ね合わせていたが『タイガ』はそれを作品全体にまで広げた感じになっている。今の時代に合わせて宇宙人を描くとこうなると言う事かな。

 

ゴース星人によると「怪獣で威嚇するだけだったはずなのに仲間達は街を破壊した」との事。小森さんの背後には霧崎がいたので、ひょっとしたら霧崎が革命闘士達を過激化させていたのかもしれない。

 

革命闘士の仲間だったゴース星人のパンドンが現れた事に小森さんと水野さんはどう思ったのだろうか。もう小森さんとゴース星人は連絡を取っていないようだが今回現れたパンドンと地底ミサイルがゴース星人の物だと言う事は分かっていたと思うので。

 

「お前もウルトラマンだろ!」と言うタイガの言葉を「あぁ」の一言で流すトレギア。『ゼロファイト』の「輝きのゼロ」でベリアルは「お前だってウルトラマンだろ!」と言うゼロの言葉に動揺したが、それはベリアルの中に「ウルトラマン=正義」と言う決まりがあったからだと思われる。しかし、トレギアにはそう言う決まりは無い。
今回の話は「宇宙人だから悪だと決めつけてはいけない」と言う話をしていながら主人公のタイガがトレギアに向かって「ウルトラマンだから正義であるべきと決めつけている」のが面白い。
『タイガ』では「出身で善悪は決められない」として「地球人でも宇宙人でも悪人がいれば善人もいる」、「善人であるタイガやヒロユキも悪に堕ちる可能性がある」と言う話をしていた。そうなると「ウルトラマンであるから善」と言う決めつけにも疑問を呈しなければいけなくなる。トレギアはそのテーマを体現しているのだ。

 

霧崎の「世界を構成する四大元素を知っているか?」と言う質問にフーマが「火・水・風・土」と答える。
四大元素はO-50出身であるオーブやロッソ&ブルの能力に関係しているので同じO-50出身のフーマが答えるのは納得。

 

五番目の元素として「エーテル」が登場。
エーテルは霧崎によると「一つの星を構成する最も重要な元素」で、タイタスによると「星の魂」との事。
エーテルをビーコンにして何かを地球に呼び寄せる霧崎。この展開は『R/B』のルーゴサイトを思い出すが、そう言えばあの事件もトレギアが諸悪の根源だった。
いきなり霧崎が「四大元素」や「エーテル」を言い出したのには驚いたが、警備会社であるE.G.I.S.は他の作品に登場する特別チームと違ってこういう事を調べる必要が無いので、こう言う特殊な用語は霧崎が言わないと誰も言わないんだよね。

 

これまでのウルトラシリーズで「ウルトラマンがいるから怪獣や侵略者が地球に現れるのではないか?」と言う話が何度かあったが、まさに『タイガ』は「トレギアと言うウルトラマンがいるから地球で怪獣や宇宙人絡みの事件が次々と起こるようになった」となっている。

 

無力で善良な存在に描かれている今回のゴース星人だが実は地球に地底ミサイルを持ち込んでいた。今はもう地球人を傷付けるつもりは無いらしいが、そんな彼もかつては地底ミサイルを使って地球で破壊活動を行うつもりがあったのだろうか?(小森さんと行動を共にしていた時には既に破壊活動をするつもりは無かったそうなので、それ以前?)
自分に襲いかかってきてパンドンの死の原因になった田崎をゴース星人が責めなかったのは彼にも恐ろしい兵器を持っていたと言う後ろめたさがあったからなのかもしれない。
今回は地球人の田崎が加害者で宇宙人のゴース星人が被害者になっているが、事件の始まりであるゼットンの襲撃では地球人が被害者で宇宙人が加害者になっている。又、田崎に襲われたゴース星人がパンドンや地底ミサイルを持ち出して反撃していたら再び多くの罪の無い地球人が被害者になっていた可能性があった。このように今回は誰もが被害者にも加害者にもなり得ると言う話になっていた。

 

今回登場した田崎は自分の母親が怪我を負った原因である宇宙人を憎むが最後はちゃんと相手の話を聞いて謝る事が出来た。エリートで優等生が多いウルトラシリーズの隊員で「外見で偏見にあった」と言う設定も異色で一話限りのゲストでは勿体ないキャラクターであった。まだまだ描ける部分がある人物だったので再登場してほしかった。

 

今回の話は小林さんの現時点でのウルトラシリーズ脚本最終作となっている。

 

 

 

 


【監督コメント付】『ウルトラマンタイガ』次回予告 第21話「地球の友人」"ULTRAMAN TAIGA" episode21 Preview + Director interview !!

 

 

「風と花」前編
『トライスクワッド ボイスドラマ』第21回
文芸 池田遼
演出 足木淳一郎

 

イリアとバルトは『メビウス』に登場したソリチュランなのかな?
ソリチュラは『80』に登場したゾラと親戚の可能性があるので、イリアとバルトもゾラやソリチュラと親戚のような関係なのかもしれない。
因みにソリチュラの名前の由来は「孤独」と言う意味の「solitude」からとなっている。

 

今回は他にもフーマがイリアに語った話に登場する怪獣がマニアックなチョイスになっていて思わずニヤリとしてしまう。


【ウルトラマンタイガ】『トライスクワッド ボイスドラマ』第21回「風と花 前編」-公式配信- "Tri-Squad Voice Drama" episode 21

 

 

ウルトラマンタイガ Blu-ray BOX II

ウルトラマンタイガ Blu-ray BOX II

  • 発売日: 2020/02/27
  • メディア: Blu-ray