帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『ウルトラマンゼアス』

ウルトラマンゼアス
1996年3月9日公開
脚本 長坂秀佳
監督・特技監督 中島信也

 

ウルトラマンゼアス(長谷川恵司 声・関口正晴
身長 60m
体重 5万4540t
Z95星雲ピカリの国から地球をキレイにする為にやって来た。
普段はMydoの見習い隊員・朝日勝人として掃除とスペシュッシュラ光線の練習に励んでいる。
ピカリブラッシャーで歯を磨き終えるとゼアスに変身できる。
当初は度が過ぎたキレイ好きで自分は少し汚れただけで何も出来なくなると思い込んでいた。ベンゼン星人曰く「哀れなるウルトラマン一族の落ちこぼれ」だが、透ちゃんと子供達を救う為、皆の声援を受けて潔癖症を克服し一人前のウルトラマンとなった。
身長60mとウルトラマンの中でもかなりの高身長。

 

慢性ガス過多症宇宙人ベンゼン星人(岡野弘之 声・鹿賀丈史
身長 2m~63m
体重 123kg~7万6千t
地球に眠る未知の金エネルギーを求めてやって来た。頭のあらゆる穴からガスが吹き出ている。
普段は悪神亜久馬と言う自称・非暴力的なジェントルマンとして勝人やMydoに嫌がらせをしている。
コッテンポッペを使って金エネルギーを得ていて、さらにゼアスのスペシュッシュラ光線を利用して宇宙的大爆発を起こして地球をスペシュシュラさせようと企むが失敗に終わる。
最後は自らゼアスと戦うがスーパーゼアスキックで宇宙の彼方にすっ飛ばされた。
独自の美意識を持っていて、それは最後に宇宙空間でゼアスに破壊されるコッテンポッペを見ても変わる事は無かった。
劇中では金エネルギーを得てパワーアップしていると語られているが、自身のガス中毒を治す為に金エネルギーを狙ったと言う設定もある。

 

吸金爆獣コッテンポッペ(三宅敏夫)
身長 71m
体重 9万7千t
ベンゼン星人に仕える怪獣で金エネルギーを手に入れてベンゼン星人に送っていた。
ミドリの計算では地中及び水に強く太陽及びに火に弱いとの事だが火を飲んで吐く事が出来る。
ゼアスのスペシュッシュラ光線に反応して宇宙的大爆発を起こすようにされていたらしいが、それでも文句一つ言わずにベンゼン星人に仕えていた。
ゼアスの機転でベンゼン星人と光線の相打ちになり、その後、ゼアスのキック連発でノックアウトされ、最後は宇宙空間に運ばれてスペシュッシュラ光線で破壊された。
「コッテンポッペ」とは透ちゃんが聞いた音がビードロに似ていたので命名されたもの。(ビードロの事を「ポッペン」と言う) 劇中では語られていないが本当の名前は「ゴルドルボムルス」と言うらしい。「ゴルドル」が「ゴールド(金)」で「ボムルス」が「ボム(爆弾)」と言う意味かな。

 

物語
各地で金が消失する事件が起きてMydoが調査を開始する。
Mydoの見習い隊員・朝日勝人は実はZ95星雲ピカリの国から地球をキレイにする為にやって来たウルトラマンゼアスであった。

 

感想
ウルトラマン生誕30周年記念映画 ウルトラマンワンダフルワールド』の1作として公開された作品。
出光興産をスポンサーにした「タイアップウルトラマン」で、ゼアスは出光のガソリン「出光ゼアス」、超宇宙防衛機構Mydoは出光のポイントカード「Mydoカード」、ベンゼン星人は車の排気ガスに含まれる物質「ベンゼン」から名付けられている。

 

冒頭で「ウルトラマン生誕30周年」として『ウルトラマンのうた』の合唱が始まって、金のウルトラマン像が登場して、子供達がウルトラマンの人形を持っていると言う過去にウルトラマンがいた世界なのか『ウルトラマン』と言う番組が作られている世界なのかよく分からない作りになっているが、本作は特別編みたいなところがあるのであまり気にしなくても良いのかもしれない。

 

ウルトラシリーズで初めてCGが本格的に導入された作品で今まで無かった映像が見られる。

 

現在、ウルトラマンは50人近くいるが、その中でもゼアスの赤い顔は印象に残るデザインとなっている。

 

いまだ半人前のゼアスは皆に隠れてスペシュッシュラ光線の練習に励んでいたり、潔癖症で汚れた手を洗ったりとかなりユニークなキャラクターとなっている。
ふざけていると言う意見もあると思うが、短い時間で観客の印象に残るようにするにはこう言う強烈なキャラ付けは必要だと思う。又、こういう情けないヒーローが頑張るからこそ感動が生まれるとも言える。

 

そのゼアスに変身する朝日勝人は潔癖症でいつまで経ってもMydoの正式隊員にしてもらえず皆にバカにされていると言う設定。こういう情けない主人公はこれまでのウルトラシリーズにはあまりいなかった。ハヤタ隊員はサブリーダーだったし、新人だった郷秀樹達は高い能力であっという間にエースになっていた。
情けない主人公が実はヒーローだったと言う設定は『スーパーマン』等があるが、勝人はゼアスに変身しても情けないままなのがポイントとなっている。
因みに勝人を演じているのは当時のとんねるずのマネージャーだった関口正晴さん。本来は役者ではないので演技は下手なのだが新人で一生懸命な姿が勝人のキャラクターと合っていた。

 

超宇宙防衛機構Mydoは普段はガソリンスタンドにカモフラージュしていると言うウルトラシリーズでは異色の組織。
出光とのタイアップの為の設定であろうが、怪事件が起きる度に休みになるガソリンスタンドとは不便だなぁ。実は怪事件はあまり起きていなかったりするのかな。

 

そのMydoの隊員は、
とんねるず石橋貴明さんが演じる動きがオーバーでやたらと英語を連発する大河内神平隊長、
とんねるず木梨憲武さんが演じる奇妙な喋り方とポーズをとる小中井仏吉副隊長、
野球選手の大久保博元さんが演じる巨漢の射撃手・武村岩太、
新人の高岡由香さんが演じる心優しきパイロット・星見透、
当てになるのかならないのかイマイチよく分からないスーパーコンピューターのミドリ、
で構成されている。

 

ベンゼン星人を演じているのは鹿賀丈史さんで他の登場人物を全て食ってしまいかねんキャラクターを見せ付けてウルトラシリーズに登場する宇宙人の人間態の中でも印象に残る存在となった。
「破壊だ! 創造は単純作業だ! 破壊こそ芸術の極致!」、
「ワァーオゥ! 確認。確認こそ破壊の、原点!」、
「スロック……。見ぃーたーりー! カツッ! 汚しこそ……、全ての芸術は汚しから始まる! そして……、ショックッ! フンフフン♪」、
「まず汝の敵を……愛すべし。愛こそ破壊」、
「これは見上げたり。優しきナイト、まずは……ご挨拶!」。
独特のイントネーションによる台詞回しが楽しい。(文字に起こしにくいが)

 

本作は『初代マン』のレギュラー陣が友情出演している。
ムラマツキャップ役の小林昭二さんは釣り人役として出演。小林さんは1996年8月27日に亡くなられ、本作がウルトラシリーズにおける遺作となった。
他にイデ隊員役の二瓶正也さんが写真家役、アラシ隊員役の毒蝮三太夫さんがレポーター役、フジ隊員役の桜井浩子さんがゼアスのポスターから出撃するスカイフィッシュを何度も目撃するが証拠を掴めなくて悔しがる主婦役、ハヤタ隊員役の黒部進さんが懐中電灯をベーターカプセルのように掲げるガードマン役で出演している。

 

ここからは内容について。
幽霊船、ウルトラマン像、本栖湖の水、日本銀行の金塊が消え去ると言う怪事件が起き、調査を開始したMydoは地下に全ての怪事件ポイントを結ぶトンネルが出来ている事を知り、幽霊船は金塊を積んでいて、ウルトラマン像は金で出来ていて、本栖湖の地下には徳川埋蔵金が埋まっていたと全てに金が絡んでいる事を突き止める。あったのか、徳川埋蔵金……。

 

早く一人前になりたいとゼアスは密かにスペシュッシュラ光線の練習に励む。
スペシュッシュラ光線があらぬ方向に行ってしまうのも笑えるが岩に反射してしまうのも笑える。どんな成分になっているんだ。
練習は勝人の時も続き、鏡に向かってスペシュッシュラ光線のポーズを取る。スペシウム光線のポーズを真似るが鏡で練習したので左右が逆になっていると言うのが細かい。
自動販売機の前でスペシュッシュラ光線のポーズを取ると何故かジュースがタダで出てくると言うのが自分のツボにはまった。

 

ゼアスの看板から出撃するスカイフィッシュ。さり気に凄い技術だ。時空間を捻じ曲げられる技術が無いと無理っぽいぞ。
Mydoはミドリの計算に従ってコッテンポッペを火で弱らせようとするが、火を飲んだコッテンポッペに逆に火を吐かれてしまいあえなく敗北。この時の「火を飲んだ!?」「火を吐いた!?」と驚くMydo隊員が面白い。
ところでMydoの隊員服でスカイフィッシュに乗って撃墜されたのに帰って来た時はガソリンスタンドの制服がボロボロになっていたのは何故だ?

 

まだ見習い隊員の勝人を透ちゃんがスカイフィッシュに乗せる。
夜空を静かに飛ぶスカイフィッシュの場面はコマーシャルに使われていたBGMの雰囲気も合っていて『ゼアス』の中でも名場面となっている。
その後の勝人と透ちゃんの「どきっ」の場面が初々しくて良かった。

 

透ちゃんと子供達がベンゼン星人にさらわれてしまうが、ゼアスに変身できない勝人はまだ汚れが落ちていないからだと落ち込む。そこで「そんなの気のせいです。そんなの自分に負けているだけです。私、ちょっとの汚れくらい平気な男の人が好きです」と言う透ちゃんの言葉が甦り、奮起した勝人は遂にゼアスに変身する。
この場面を見ると、ピカリブラッシャーで歯を磨き終えるとゼアスに変身できると言う設定は実はあまり意味が無くて実際は勝人の精神状態が大きく関わっているようだ。

 

ミドリによって突きとめられたベンゼン星人がゼアスのスペシュッシュラ光線を利用して宇宙的大爆発を起こして地球を破壊しようとしている計画をMydoが知らせ、それを知ったゼアスは格闘技で勝負しようとするが、ベンゼン星人はバリアーを張って汚れた海を広げる事でゼアスにスペシュッシュラ光線を撃たせようとする。
透ちゃんや子供達の危機に遂に意を決したゼアスはゆうっくりと恐る恐る汚れた海に足を踏み入れる。が、足を滑らせて汚れた海の底に沈んでしまう。
苦しむ勝人の姿が見えた透ちゃんはフルートを聴くと勇気が湧いてくると言う勝人の言葉を思い出してフルートを吹き始め、子供達とMydoは「シュワッチ! シュワッチ! 頑張れ、ゼアス!」と声援を送る。
もう駄目かと思われた瞬間……ゼアス復活!
主題歌をバックにコッテンポッペを追い詰め、加勢したベンゼン星人との戦いにも見事勝利! この逆転劇はカタルシスがあった。
ところで透ちゃんはゼアスが勝人である事に気付いているんだろうなぁ。

 

ゼアスはコッテンポッペを宇宙空間に運ぶとスペシュッシュラ光線で破壊する。
それを見たベンゼン星人は「破壊……。美しきフィナーレ……。さすがだ、ウルトラマンゼアス。青き地球よ、永遠なれ……」と呟いて宇宙の彼方に消えていった。
そして戦いが終わった後、汚れを気にしなくなって一人前になった勝人の姿があったのであった。

 

主題歌はとんねるずが歌う『シュワッチ! ウルトラマンゼアス』。

 

『ゼアス』はウルトラシリーズ初のオリジナル劇場作品である。(『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』や『USA』は日本で公開される前に海外で公開・放送されていた)
出光とのタイアップや豪華ゲストの出演と色々な話題を集めた作品で、これ以降、ウルトラシリーズは年に一回は劇場作品が公開されるようになった。

 

本作は長坂さんのウルトラシリーズ脚本最終作となっている。

 

CMディレクターである中島信也さんはウルトラシリーズは今回のみの参加となっている。

 

蘇れ! ウルトラマン』『ウルトラマンカンパニー』が同時上映された。

 

 

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