帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ダーク・サイド」

EPISODE:1 ダーク・サイド」
ウルトラセブン誕生35周年“EVOLUTION”5部作』第1話
2002年6月21日発売
脚本 神戸一彦
監督 小原直樹
特技監督 高野敏幸

 

放浪宇宙人ペガッサ星人(2代目)
身長 2m
体重 120kg
かつて地球防衛軍のミサイル攻撃で消滅した宇宙都市ペガッサに住んでいた。
ほんの一握りがカプセルで脱出していたが後に地球でただ静かに住む場所が欲しいとする穏健派と地球人に復讐して地球を自分達の母星にしようとする侵略派とに分裂する。
穏健派リーダーは地球人の子供を引き取って育てていたが、侵略派は地球上のあらゆるエネルギーを吸収して一つの都市を他の次元に飛ばしてしまう程の力を持つ兵器としてのダーク・ゾーンを完成させる。最後はダーク・ゾーンを無力化する兵器を手にした穏健派リーダーの捨て身の行動によって侵略派の計画は阻止された。
知的生命体連合として地球防衛軍に入り込んでいたらしい。

 

円盤竜
身長 不明
体重 不明
ペガッサ星人のダーク・ゾーン消滅後に姿を現すが、すぐに姿を消す。

 

物語
オメガファイル開示後、平和的不可侵条約締結により地球は平和な日々を送っていた。
地球防衛軍の活動も縮小されていくが、ある日、新入隊員としてキサラギ・ユキが入隊する。
一方、ルミ隊員がペガッサ星人のダーク・ゾーンにさらわれて……。

 

感想
「かつて人類を守る為、地球の先住民族と戦った宇宙の戦士がいた。だが彼の勇気ある行動は宇宙の真理に反するものでもあった。全宇宙から断罪された彼はやがて遥か馬の首暗黒星雲の彼方に幽閉されてしまったのである」。
宇宙には多くの侵略者がいるのに侵略者の味方を一回しただけでそこまで糾弾されるものなのかと疑問に思うが、おそらく宇宙には侵略者の星より侵略をしない星の方がはるかに多いのであろう。
地球と知的生命体連合の間に平和的不可侵条約が締結されて地球の罪は許されたのでセブンの罪も許されても良さそうなのだがそれは無かったようだ。まぁ、知的生命体連合自体がかなり怪しい存在だからなぁ……。
ところで「セブンは幽閉された」となっている。「わたしは地球人」では自分から身を封じた感じだったが、その後に他の星々によってさらに幽閉されたのだろうか?

 

セブンが消えたと同時に知的生命体の連合を名乗る者達から地球人に対する平和的不可侵条約締結の申し入れが来る。こうして地球に対する星人の侵略行為はピタリと静まって地球防衛軍も戦力を縮小させる方向へと進む事となった。
ようやく願っていた平和が訪れたわけだがセブンが消えたと同時なのが怪しい。
星人の侵略行為が静まったのは知的生命体連合に侵略を行おうとする星が無かったからと考えられるが、裏を返すと、地球は知的生命体連合の管轄下になったので侵略の必要が無くなったとも考えられる。

 

カザモリがウルトラ警備隊を辞めたすぐ後にサトミも予備役になって今は誰も読んでいない童話作家となっていた。
空飛ぶ大鉄塊」で語られたようにサトミは父と辺見のおじちゃんの影響で物語に関心があった。フレンドシップ計画で地球防衛軍への反発が生まれ、地球が平和になったのを契機に自分の居場所を地球防衛軍から物語作りへと変えたのだろう。
この時既にサトミは『はるかなはるかな星の物語』を書き始めているが、サトミ自身はこの物語の登場人物のような存在は実際にはいないだろうと思ってる。ちょっと意外。
サトミの所にやって来たカザモリはサトミが書いた童話の最初の読者になると言う。聞き様によっては告白なのだが、この二人は恋人と言うより同志に近い感じがする。

 

今回のカザモリはかなり大人っぽくなっていて、ウルトラシリーズでは珍しい落ち着いた大人の主人公になっている。
カザモリはセブンが活躍していた時はカプセルの中に入っていたので事態について何も知らなかった。セブンと別れたカザモリはある喪失感を抱えていたが失ったものが何なのか自分でもよく分からなかった。
カザモリはカプセルの中で眠りながら今までとは違う情報を得ていたが、それをキチンと自分の中に取り入れられていないらしい。今回の『EVOLUTION5部作』はそんなカザモリが自分自身と向き合って自分が何者になったのかを探る物語となる。
因みに今回のカザモリはウルトラ警備隊員ではないので事件現場にいきなり現れる事が多い。『平成セブン』でのかつてのダンに近い雰囲気を今のカザモリが持つようになったのが色々と興味深い。

 

ウルトラ警備隊はカザモリとサトミがいなくなった事でTVスペシャルの時と同じ4人編成に戻っている。
第3期ウルトラ警備隊は6年近く隊員の入れ替えが無かった。やたらと不要論や縮小論が出ていたので補充等が難しかったのかもしれない。
セットを壊してしまった為か司令室が変わってしまって寂しい。

 

『EVOLUTION5部作』の最重要人物であるユキ隊員。
ウルトラ警備隊の「新入(しんにゅう)隊員」なのだが実はウルトラ警備隊に「侵入(しんにゅう)した隊員」でもあったのが面白い。
今回の話でユキ隊員が加わってサトミ隊員が復帰した事でウルトラ警備隊は半分の3人が女性隊員となった。ウルトラシリーズの特別チームで半数が女性と言う構成はかなり珍しい。

 

現れたペガッサ星人に向けてユキ隊員はすぐさま銃を撃つがそれを知ったシマ隊員は注意する。ここは「イノセント」でミツコを撃ったシマ隊員をユキ隊員が糾弾したのと対になっている。

 

かつて自分が育った場所にやって来たユキはサユリ先生と再会する。この時のユキは素直でカワイイ。「イノセント」でもユキは老人に優しかったが、それはサユリ先生との関係があったからなのかもしれない。
かくれんぼをする子供達やオルゴールの音や子供の時の写真がユキの過去を形成するが、まさかこの時のオルゴールが物語の重要な鍵になるとは予想外であった。

 

ペガッサ星人のダーク・ゾーンにルミ隊員がさらわれた事を知ったサイジョウ参謀は住民の避難を提案し、宇宙からの怪しげな通信一本で宇宙は平和だと思い込むなんて平和ボケしているとして、5年間侵略事件が起きていなかったと言うシラガネ隊長に向かって星人は卑怯で深く静かに侵略の準備を行っていたに違いないと告げる。
サイジョウ参謀の考え方はかつてのカジ参謀と同じ。そう言えば、外見もカジ参謀に似ているような気がする。同じ強硬派でもカジ参謀がウルトラ警備隊の敵側だったのに対してサイジョウ参謀は味方側になっている。似たような考えを持っていても状況によって立場や人間関係が変わるのが面白い。

 

サイジョウ参謀の住民避難の提案に対してイナガキ参謀はそこまで過敏になる事は無いと答える。
イナガキ参謀は『最終章6部作』で保安部を使ってオメガファイルの秘密を守っていた人物だったがオメガファイル開示後も地球防衛軍の重要ポストに残っていた。カジ参謀がおそらく参謀の地位を失った事を考えるとかなり意外。裏で知的生命体連合と繋がったおかげだろうか?

 

私服で新聞を読みながら謎の男と密会をするイナガキ参謀。
ペガッサ星人が一枚岩ではない事を知り内情を探るが謎の男は全て把握しているとして答えない。
イナガキ「こちらは君達を信頼して大きな賭けに出ているんだ」、
謎の男「地球の平和の為に正しい選択をしたと納得する日が来る」、
イナガキ「そう願いたいね」。
駆け引きが少ないウルトラシリーズでは珍しいやり取りで結構好きな場面。

 

ウルトラ警備隊はダーク・ゾーンの発生場所を調査しようとするがサイジョウ参謀の部下が現場を封鎖していて近付けない。
ルミ隊員がさらわれたのを受けてサトミ隊員がウルトラ警備隊に復帰。サトミ隊員はユキ隊員とコンビを組んで現場に入り込むがサトミ隊員もダーク・ゾーンにさらわれてしまう。
サイジョウ参謀の部下はユキ隊員を射殺しようとするが、そこにカザモリがやって来るとサイジョウ参謀の部下はペガッサ星人の正体を現して戦いはやめようと告げる。
ペガッサ星人はペガッサ市を滅ぼされた自分達には償いとして地球を自分達のものにする権利があると言い、カザモリなら自分達の気持ちが分かるだろうと語りかけるがカザモリには何の事だが分からなかった。
カザモリの反応に驚くペガッサ星人を背後から撃つサイジョウ参謀。展開的にペガッサ星人の口を塞いだようにも見えて、イナガキ参謀も怪しいがサイジョウ参謀もなかなか怪しい。

 

自分の部下がペガッサ星人と入れ替わっていた事を驚くサイジョウ参謀に向かってカザモリはたとえどんな身近にいる者も軽々しく信じてはいけないと忠告する。
これは今回の話のこの後の展開だけではなく次の「パーフェクト・ワールド」にも繋がっていて、この言葉が引き金となってサイジョウ参謀は地球防衛軍の内部に星人の手引きをしている存在がいると考えてイナガキ参謀を怪しむようになる。
この時点でのカザモリはまだ人々は信じ合えないと考えているようだ。ヒーロー作品の主人公としては結構異色な考え方である。

 

サイジョウ参謀は去っていくカザモリに向かって何者かと尋ねる。
5年前までウルトラ警備隊員だったカザモリを知らないとは、ひょっとしてサイジョウ参謀が地球防衛軍に入隊したのはつい最近の事なのだろうか?
そう考えると実はカジ参謀以上のスピード出世を果たしている可能性がある。フレンドシップ計画とオメガファイルの件で多くの人物が地球防衛軍を去ったようなので、その中で急速に頭角を現してきたのかもしれない。

 

今回の話は『セブン』の「ダーク・ゾーン」の後日談になっていてペガッサ星人の生き残りが登場している。
なんとか生き延びながらも今度は地球人への対応の違いから身内で争い殺し合う事になってしまったのが哀しい。

 

虐待されたり育児放棄された地球人の子供達を引き取って育てていたサユリ先生の正体はペガッサ星人の穏健派リーダーであった。
サトミ隊員は自分の子供ですら虐待する地球人がいるのに、どうして異なる星の子供を育てられるのかと疑問を口にする。それに対してサユリ先生はペガッサ市爆発の時に自分の子供を死なせてしまった事を明かし、子供を想う母親の気持ちは宇宙共通だと答える。後に侵略派も言っていたが、地球人のせいで自分の子供が死んだのに、その地球人の子供に愛を注げるとは凄い。
サトミ隊員はサユリ先生の話を聞いて『はるかなはるかな星の物語』は単なる夢物語に終わらないかもと思ったのかもしれない。

 

サユリ先生が星人だと知ったユキは銃を向けて「いつか地球を侵略する為に私達を騙していたのか!」と詰め寄るが今までの展開からこの発言が本心ではない事は明らか。
ユキ隊員の怒りにサトミ隊員は「サユリ先生があなたを愛し、愛しんで育ててくれた事まで否定するつもり?」と説得する。そういうサトミ隊員も「わたしは地球人」でカザモリが星人と知った時に今回のユキ隊員と同じ事をしていた。自分が経験したからこそ言える言葉なのだろう。

 

この事態になっても地球防衛軍から出動命令はかからない。
カザモリの話を聞いたサイジョウ参謀はペガッサ星人の手が入り込んでいた事を知り、今の希望はウルトラ警備隊だけだとシラガネ隊長に敬礼する。
この時の敬礼を返すシラガネ隊長が相変わらず渋い。

 

サユリ先生に呼ばれたカザモリはダーク・ゾーンを無力化させる兵器に必要な装置を地球防衛軍から奪取する。
心に声が聞こえてきた理由すら分からない自分をなぜ選んだのかと言うカザモリの言葉にサユリ先生は驚き、自分の事をもっとよく知りたければ馬の首暗黒星雲の牢獄に繋がれているあなたの分身の声を聞くといいと告げる。

 

ダーク・ゾーンを無力化させようとするサユリ先生。
「ユキちゃん達のおかげで地球でもたくさん良い思い出が出来たわ」と言う言葉を聞いて思わず抱きつくユキ。「先生は私が独りぼっちじゃない事を教えてくれた。その事を皆にも教えてください」。
しかし、子供達の声を背にサユリ先生はダーク・ゾーンに突入し地球上からダーク・ゾーンを消すのであった。ヒーロー作品でこの年齢の女性による特攻は珍しい。
事件解決後、ユキ隊員は「大丈夫。サユリ先生が教えてくれた。信じる者達がいれば、どんな事があっても乗り越えられるって」と答える。この時にユキ隊員を慰めたのがサトミ隊員。その為かユキ隊員はサトミ隊員をかつてのサユリ先生のように慕うようになる。
ユキ隊員は今までイナガキ参謀と裏で繋がって情報を流していたが、それを捨ててウルトラ警備隊の真の仲間となっていくのであった。

 

ある観測所で馬の首暗黒星雲からのミュー粒子が異常に増えている事が突き止められる。実はそのミュー粒子はセブンのビームランプから発せられたものであった。
今回はセブンの戦闘場面が無いと言う思い切った話になっている。元々、『EVOLUTION5部作』はセブンがいなくなった地球でのウルトラ警備隊の活躍を描く予定だったらしい。