「石の神話」
『ウルトラマンティガ』第2話
1996年9月14日放送(第2話)
脚本 右田昌万
監督 松原信吾
特技監督 高野宏一
岩石怪獣ガクマ
身長 α・58m β・59m
体重 α・5万6千t β・5万8千t
西南諸島にある久良々島に棲む伝説の神獣。
採石場の作業員の話によると普段は石を食べているが人間がガクマの蓄えていた石を奪ったので人間を襲うようになったとの事。
先に現れた一本角のαがガッツウイング2号のデキサスビームで倒されると二本角のβが現れた。βは石化光線でティガの半身を石に変えるがティガ・パワータイプに反撃されて最後はデラシウム光流で倒された。
口から石化光線を吐く。βは石化光線の他に角や背中からスパークを発し、鋭い爪で襲い掛かる。
劇中では語られていないが、αが弟でβが兄となっているらしい。久々の兄弟怪獣。
物語
ウルトラマンの解析を進めるGUTS。
一方、久良々島で採石場の作業員が謎の怪獣によって石に変えられる事件が起きていた。
次々と現れる怪獣を前にサワイ総監はGUTSの再武装を決定する。
感想
TPCの一般隊員が登場。レギュラー以外の隊員が登場する事でTPCと言う組織を感じる事が出来る。これまでのシリーズでは一般隊員が登場する事は極めて珍しく、『セブン』や『80』以外ではどの作品も数えるくらいしかなかった。
久良々島に怪獣が出現した事を聞いたイルマ隊長はゴルザかと考える。他にもゴルザの行方を追っていたりと前回の展開を踏まえているのが嬉しい。
今回の話ではTPCのトップであるサワイ総監がわざわざ現地に赴くなど怪獣出現がまだ日常ではない事が分かる。
因みにゴルザはこれよりもっと後の視聴者もその存在を忘れかけた頃に思い出したかのように再登場している。
ガクマの存在に怯える作業員と、それをでっち上げだとする主任。
人間が餌となる石を掘り過ぎた事でガクマは怒って人間を襲ったと言う作業員に向かって主任が言い放った「他人事みたいに言うな! お前達だって人間だろ? 石を掘っているおかげで食っているんだろ?」は正論。今回はまだ第2話なのでGUTSの再武装やティガの説明等やらなければいけない事が多かった為、作業員も主任もこの後は登場せず、このテーマはこれ以上掘り下げられなかった。
作業員の話を信じれば人間が領域を必要以上に侵したのでガクマが現れたとなってしまい、倒されるガクマがちょっと可哀相になる。後の「うたかたの…」に通じるものがある。
前回の戦いの映像を使って、ウルトラマンが地球上では約3分間しか活動できない事、トリプルチェンジの各タイプの名前と特徴、さらに身長と体重まで説明してくれるヤズミ。
ウルトラマンの設定を劇中でキチンと説明してくれるのは希だが出来れば毎シリーズやってほしい。
再び現れるユザレのホログラム。決められた言葉だけでなくダイゴと会話も出来る事に驚く。ユザレによるとホログラムに人工知能が組み込まれているとの事。3000万年前の地球の文明って凄かったんだなぁ。
ユザレの説明でダイゴのDNAには古代英雄戦士の情報がプログラミングされていて、スパークレンスはダイゴがウルトラマンたる英雄の証である事が判明する。
ダイゴは前回のゴルザとメルバとの戦いを覚えていなかったが、前回は古代英雄戦士のDNAで無意識状態で戦っていたのだろうか。
高度な文明を築いた超古代人であるが、ある者は滅び、ある者は他の土地に向かったらしい。「あんなにたくさんのウルトラマンがいたのに超古代人を守る事は出来なかったのか?」と言うダイゴの質問にユザレは「ウルトラマンは人類の選択にまで干渉しない。何故なら彼らは光だから。でもダイゴは別。あなたは光であり、人である」と答える。
この「光であり人である」と言う言葉はダイゴだけでなくウルトラシリーズにおけるウルトラマンの在り方にも大きく関わっていく事になる。
ガッツウイングを変形させようと言うホリイの意見にカシムラ博士は難色を示しておニューのライドメカを作った方が良いと提案する。
確かにわざわざ変形させて武装を付けるよりは最初から武装を組み込んだ設計のライドメカを作った方が安全で確実だと思う。しかし、そんな事をしていたらガクマを倒すのには到底間に合わない。ここは同じ科学者で発明家でも現場に近いホリイと現場から離れているカシムラ博士の違いが出たと言える。
どちらにせよ、わずか数時間でガッツウイングに変形能力と武装を付けたカシムラ博士とホリイは凄い。レナの手伝いも役に立ったのかな。
因みにGUTSのメカデザインは水棲生物がモチーフになっているらしい。基地のダイブハンガーも海にあるし、最終決戦では海底から現れた遺跡を根城にするガタノゾーアが登場する等、『ティガ』は他の作品に比べて海のイメージが強いのかもしれない。
怪獣出現が続いたのを受けてサワイ総監はGUTSの再武装とTPC全支部の改革に着手する事を決める。
かつて全世界の武装を解いたサワイ総監にとって対怪獣用とは言え自ら再武装を決断するのは心苦しいものだったと思われる。
ガッツウイング2号のデキサスビームでガクマを倒す。
特別チームの新装備で怪獣を倒すのは珍しくて格好良かった。その後の「また怪獣にお目にかかりたいぐらいやー」と軽口を叩いたら2匹目のガクマが現れて逃げ回る事になるのは格好悪かったが……。
前半にあった作業員がガクマの角は1本か2本かで言い争っていたのが実はガクマは2匹いたと言う伏線だったのが上手い。
地下に潜む怪獣が実は2匹いたと言うのは『初代マン』の「地底への挑戦」に登場したゴルドンを思い出す。ガクマは他にも角が動くところが『初代マン』の「科特隊出撃せよ」に登場したネロンガのようだったり、『帰マン』の登場怪獣のように兄弟設定があったりと昭和怪獣を感じるところが多々ある。
ウルトラマンによってガクマが倒された後、ナハラ参謀は「武器は研究すればいくらでも強力になる。問題はそれを使いこなす人間が成長しなければいけない」と語る。
どんなに強力な道具でも人間が使いこなせなければ意味は無い。もしウルトラマンが現れなかったら皆は石にされていたと語るGUTS。これ以降、GUTSはウルトラマンを自分達を助けてくれる存在と考えるようになる。
ユザレに「ウルトラマンティガ」と呼ばれたダイゴは「違う! 俺は俺だ! ウルトラマンティガなんかじゃない!」と拒絶してスパークレンスを投げつけてしまう。
しかし、ヤズミにスパークレンスを拾われると慌てて取り返し、その後も怪獣によって皆が危機に陥ると、皆を助けられる唯一の手段としてスパークレンスを使ってウルトラマンに変身する事になる。
そして戦いの後、自ら巨人に「ウルトラマンティガ」と言う名前を付けたダイゴは今後は皆から「ウルトラマンティガ」と呼ばれる事になるのであった。
ムナカタリーダーがウルトラマンの事を「山のように大きいから「マウンテンガリバー」」と名付けようとしていたけれど、もしここで「マウンテンガリバー」と言う名前が採用されていたら、ダイゴやユザレはウルトラマンの事を今後どう呼んでいたのだろうか。
映画の『ゼアス』に続いて今度はTVシリーズで初めてCGが本格的に導入される事となった『ティガ』。CGが浮いている場面もあるが、新しい映像が生まれていく第一歩となった。