帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「怪獣が出てきた日」

「怪獣が出てきた日」
ウルトラマンティガ』第5話
1996年10月5日放送(第5話)
脚本 小中千昭
監督 川崎郷太
特技監督 北浦嗣巳

 

ゾンビ怪獣シーリザー
身長 60m
体重 5万4千t
静岡県北川市の海岸に流れ着いたところを発見された。腐乱死体のような悪臭を撒き散らし、通過した後には高濃度の汚染物質が検出される。死後数時間経っていると思われたが、焼却の為にガッツウイング2号のアルチハンドで持ち上げられると腐った肉片が崩れ落ちて地上に落下し、その直後から活動を開始した。
生命反応は無いようだが感覚はあるようで炎や眩しい光を嫌う。細胞を吹き飛ばされても再生する。首を伸ばして攻撃してくる。ミサイルやガスタンクを体内に吸収してGUTSのあらゆる作戦を無効化させたが、ティガ・マルチタイプのゼペリオン光線を吸収した時に体内のガスタンクが誘爆して爆発消滅した。
名前の由来は「シー・リザード(海の蜥蜴)」から。

 

物語
怪獣が次々と現れるようになって数ヶ月が過ぎた。
そんな中、海岸に打ち上げられた巨大な腐乱死体を処理する事になったGUTSだったが腐乱死体が突然活動を開始する。

 

感想
怪獣に対して特別チームが次々と作戦を展開していく『初代マン』を思わせる王道な展開。だが、『報道特別番組 ゾンビ怪獣静岡進行!』と言うTV番組を使って対怪獣作戦を中継する事でこれまでとは一味違ったリアリティ溢れる話になっている。

 

途中に何度か挿まれる街頭インタビューの場面で『ティガ』世界における一般人の考えが分かる。TVを使って怪獣が日常となった世界を描くのは『パワード』でも使われた手法で平成的。
インタビューに答えた人々は「(シーリザーが現れたのは)東京じゃないんでしょ? だったら安心じゃない」、「だから防衛軍を解体すべきじゃなかったんだよ!」、「GUTSが何とかしてくれるんでしょう?」と見事に他人事。こう言う市民を嫌ったのが「蜃気楼の怪獣」に登場するタツムラ参謀なのかな。

 

報道特別番組に登場する怪獣災害アナリストの上田耕正。
『ティガ』の世界では第1話以前には怪獣は殆ど出ていなかったのに、もう専門家が登場するとは……。
因みに上田耕正は今回の話と同じ小中さんの脚本回である『マックス』の「怪獣は何故現れるのか」にも登場している。(演じている人は違うが)

 

シーリザーに対してあらゆる作戦が無効化されていくGUTS。ホリイは「今回はあちこちに補償問題が出るなぁ、きっと」と呟く。怪獣災害による被害はやはりTPCが負担する事になるのかな?
地元住民に怪獣の処理を急かされたりと『帰マン』のMATほどではないがTPCも色々大変である事が分かる話であった。

 

GUTSメットにはエアカーテンがある事が判明。ただし、シーリザーの悪臭には役に立たんとの事。
まだシャーロックもデ・ラ・ムも完成していないのでGUTSの移動は普通の車。ちょっと物足りない。
アルチハンドでシーリザーやガスタンクを釣り上げていくガッツウイング2号を見て『T』のZATを思い出す。

 

「了解」の場面は実相寺監督を意識した演出。
今回の話は怪獣に対して特別チームが次々と作戦を展開していくと言う『初代マン』の「空の贈り物」に近い作りになっている。

 

今回はGUTSの指揮官としてのムナカタを描いた話で、ムナカタリーダーは作戦を立案し実際に現場で作戦指揮を執り、イルマ隊長は基地に残って作戦遂行の為に上に掛け合うとムナカタリーダーとイルマ隊長の役割分担が明確化された。

 

アルチハンドのオペレーション訓練を修了させていたレナだが初めて実戦で使用するので緊張を隠せない。そこをダイゴに和ませてもらう。
その後、作戦に失敗してショックを受けながらも「大丈夫……!」と自分を落ち着かせたり、帰還命令にムッとしたり、ガスタンクを持ち上げる作戦が提案された時に決意の表情で「やらせてください!」とサワイ総監に進言したりと、今回はムナカタリーダーのドラマと共にレナのドラマも展開されていた。

 

ガッツウイングの中で人間大のティガに変身をするダイゴ。レナと同乗していたのだがバレなかったのかな……?
ダイゴがスパークレンスを胸の前で光らせるとスパークレンスの形がそのままティガの胸周りに変化している。

 

頑張りながらも結局はティガに助けられた形となったレナとムナカタリーダー。「あ、ウルトラマン」、「ウルトラマンティガ、か……」と言う言葉に二人のティガに対するちょっと複雑な感情が見える。

 

「ゾンビ怪獣」と言う肩書きを持つシーリザーは1977年に発見されたニューネッシーを思い出す姿で本当の腐乱死体のようで気持ち悪かった。
地上に落下して目覚める展開は『初代マン』の「怪獣殿下 前篇」を思い出すが、シーリザーはゾンビなので恐竜の生き残りだった『初代マン』のゴモラよりミイラだった『パワード』の「よみがえる巨獣」のゴモラの方が近いかな。
シーリザーが目覚めた理由は劇中では明かされていない。高濃度の汚染物質が検出された事が一つの鍵のような気がするが……。

 

今回のゲストである小野田は胡散臭さ大爆発な奴と思いきやジャーナリスト魂を持った人物だった。
「怪獣災害が頻発するこの日本の苦境の中で我々が一つ幸運と言えるのは優れた戦術家を要するGUTSが我々を守っていると言う事である。一市民として感謝を捧げたいと思う」。
当事者意識が無くて無責任だった街頭インタビューの人々や怪獣アナリストと違って、小野田は今の自分達は怪獣が存在する世界に暮らしていて、その暮らしはGUTSによって守られている事をちゃんと理解している。

 

「ムナカタは、酒が飲めなかった」。
メッチャ笑ったw

 

今回の話は早朝から始まって、昼を経て、そして夜と共に終わると時間経過を劇中に組み込んでいる。

 

今回の話は川崎郷太さんと北浦嗣巳さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。