帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「蜃気楼の怪獣」

「蜃気楼の怪獣 ーファルドン登場ー
ウルトラマンティガ』第38話
1997年5月24日放送(第38話)
脚本 大西信介
監督・特技監督 川崎郷太

 

蜃気楼怪獣ファルドン
身長 55m
体重 5万7千t
タツムラ参謀率いる情報局が流した偽の情報……と思いきや実在した幻の怪獣。
ポイントG14地区に現れ、背中から発する特殊な陽炎で幻を作り出す。実体と幻影を入れ替える事が出来る。顔から光線を発する。
ティガ・スカイタイプでも補足しきれなかったがイルマ隊長の決死の突撃で実体が明らかになり、ランバルト光弾で倒された。

 

奇獣デスモン
身長 40m
体重 1万5千t
1ヶ月程前に現れた怪獣でTYPE-Oに分類される。
ティガの力を借りずGUTSだけで倒した。複数いたらしい。
劇中では語られていないが、サカサクラゲがアンドロポフ星系から飛来した宇宙細菌に感染した事で突然変異を起こし、さらにマキシマの超微粒子を浴びて巨大化、高濃度の酸素を撒き散らすようになったと言う設定になっている。
名前の由来は「デス・モンスター」かな。

 

物語
怪獣が出現した時の群衆の行動をもっと統制したいと考えるタツムラ参謀は情報局とGUTSを使って偽の怪獣情報を広めて群衆の反応を調べようとする。
部下にも真実を隠した計画に苦悩するイルマ隊長はやがて真実を打ち明けようとするが……。

 

感想
半年前にヨーロッパから赴任してきて若くして情報局の実権を握ったタツムラ参謀はティガと言う訳の分からない存在に頼るからGUTSは駄目で、TPCもGUTSも軍事組織としてあまりに中途半端だといきなり苦言を呈する。
劇中では悪役となったタツムラ参謀だが、その考えには同意できるところがある。TPCもGUTSもティガの正体を掴んでいない以上、ティガに頼りきりでは駄目だろう。もちろん、GUTSはデスモンを倒していたりとかなり強くて頑張ってもいるが、ティガがいつまでも助けてくれるとは限らないので、その時への備えは必要だと思う。

 

タツムラ参謀はGUTSが苦戦する原因は怪獣よりもパニックに陥って指示に従った統制の取れた行動が出来ない群衆にあると考え、怪獣に対する群衆の反応を調べる為に偽の怪獣情報を流す事にする。
『帰マン』等で一般市民が街を破壊する怪獣や宇宙人よりも街を守れない特別チームを非難する展開があるが、今回は防衛組織が一般市民を非難する展開となった。ここは昭和のウルトラシリーズに比べて防衛組織を取り上げるようになった『ティガ』ならではと言う感じがする。
ところで怪獣出現時に群衆に統制の取れた行動を取ってほしいのなら避難訓練をやった方が良いと思うのだが。

 

GUTSは今回の怪獣騒ぎはわざわざ調査するまでもないとするが、目撃者が一人ではなく1ヶ月も話が続いているのであれば調査した方が良いと思う。
調査は住民の不安を煽る恐れがあると言うが、怪獣はいなかったとする調査結果をキチンと発表した方が住民の不安は鎮められると思う。

 

今回は「蜃気楼」と言うキーワードから『帰マン』の「富士に立つ怪獣」や『80』の「がんばれ! クワガタ越冬隊」を思い出すが、実際は『A』でよくあった怪獣を見たと言っても信じてくれない話の変型となっている。ファルドンが生物と言うより霊的な性質が強いのも『A』後期の超獣に通じるものがある。

 

「やりすぎた」として参謀室から引っ越す事になったタツムラ参謀。
タツムラ参謀はファルドンが偶然現れた事で自分の計画は失敗してしまったと語るが、イルマ隊長はファルドンの出現は偶然とは思えないと返す。
イルマ「怪獣は、誰かの心が生み出すとは思わない?」、
タツムラ「誰かって、誰?」、
イルマ「誰と言う事ではなくて、人の心の弱さが……」、
タツムラ「だとしたら、この戦いは永遠に続くのかね? ……困ったもんだ」。
今回は「うたかたの…」でも取り上げられた「怪獣は何故現れるのか?」と言う問題に一つの答えを示した話となっている。
元々は『80』用の脚本だったらしく、人間の心が怪獣を生み出しているのではないかと言うマイナスエネルギーを思わせる内容となっている。『ティガ』のこれまでの話でも電磁波を止められない人間の弱さがガゾートと言う怪獣を生み出してはいるが、今回のファルドンはそれよりももっと精神的なオカルトチックな設定となっている。この流れはこの後も続き、「悪魔の審判」では物理的な光で復活したティガが「輝けるものたちへ」では光になった人間と合体して復活すると言うオカルトチックな展開になっている。

 

イルマ隊長は「私は皆を……裏切った」としてガッツウイングでファルドンに特攻を仕掛け、事件解決後に進退伺を出すが、サワイ総監に「こんな事で信頼関係が崩れるチームじゃない。自分が作り上げたチームを信じろ」と返される。
躊躇いがちに司令室に戻るイルマ隊長をムナカタリーダーは「待っていました」と迎え、それを受けてイルマ隊長は「ただいま」と司令室に入っていく。
どうもイルマ隊長は何でもかんでも自分の胸の中にしまいこんでしまうタイプのようだ。部下にも秘密だと命じられてもムナカタリーダーには相談しても良かったかもしれない。

 

ダイゴが季節外れの花粉症になっていたが、これは長野さんが花粉症だったのを劇中にも取り入れたとの事。

 

冒頭に出てくるファルドンを目撃する3人組は言われないと意外と気付かなかった。

 

発進時のアナウンスがメチャクチャ笑える。
アナウンスを使った笑いはもっとやっても良いかも。

 

墜落コンビが墜落した時の「また!?」は爆笑モノ。

 

今回の話は大西伸介さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作となっている。