「影を継ぐもの ーイーヴィルティガ ガーディー登場ー」
『ウルトラマンティガ』第44話
1997年7月5日放送(第44話)
脚本 小中千昭
監督・特技監督 村石宏實
イーヴィルティガ
身長 54m
体重 4万4千t
マサキが発見した超古代遺跡にあった石像。
ダイゴから奪ったスパークレンスを使って自身を光にしたマサキが石像に宿る事で復活した。
光に包まれた巨人は熊本に現れると予め用意していた音声をサイテックネットワークで流して人類に道を指し示そうとしたが、マサキの心が巨人の力に負けてしまうと光を失って巨人は暴走してしまい、イーヴィルビームやイーヴィルショットで街を破壊していった。
自分を止めにやって来たガーディーを倒してしまうが、怒りに震えるティガ・マルチタイプのゼペリオン光線で倒され、光となって消えた。
名前の意味は「悪のティガ」。
超古代狛犬怪獣ガーディー
身長 52m
体重 4万8千t
超古代の遺伝子を持つ子犬が光となって超古代遺跡にあった狛犬の石像に宿った存在。
ダイゴによると、マサキが宿った巨人の友達で、間違った心を持ってしまった主人を止めようとしたとの事。涙の訴えも空しくイーヴィルティガに倒されてしまう。その後、亡骸はティガによって宇宙に運ばれた。子犬も死んでしまったと思われたが……。
胸にウルトラマンと同じくカラータイマーがある。
名前の由来は「ガーディアン」かな。
物語
ダイゴからスパークレンスを奪ったマサキは光となって超古代遺跡の石像に宿る。
光の巨人となったマサキは人類に道を指し示そうとするが、心が力に負けて暴走してしまう。
一方、ダイゴは人間として自分がやらねばならない事をしようと立ち上がる。
感想
「地の鮫」の続き。
今回登場するイーヴィルティガは宇宙人の変身やロボットではない闇のウルトラマンとして後のウルトラシリーズに大きな影響を与える事となった。
ダイゴと同じルーツの遺伝子を持っている事からマサキも超古代人の末裔である事が分かる。
よく考えたら超古代人の末裔がダイゴ一人だけではなかったのは当然であった。
簡単に説明すれば、ダイゴに子供が二人いたら超古代人の末裔が二人増える事になる。末裔がいるので超古代人は滅んだと言っても何人かは生き残っていたのであろう。3000万年もの年月があれば超古代人の末裔もかなりの数になっていると思われる。
マサキによると、スパークレンスはダイゴの体を光の粒子に変換するシステムらしい。しかし、誰でも光に変えられるのかと言うとそうではないらしく、マサキはスパークレンスに光遺伝子コンバーターを加えて光になっている。
おそらくスパークレンスはティガ専用のシステムで、マサキが発見した石像にはまた別のシステムが必要だったと思われる。マサキがそれを発見できなかった理由だが、ダイゴが何かに導かれてティガのピラミッドを発見したのに対してマサキはゲオザークを使って超古代遺跡を発見している。つまりマサキは導かれていないのだ。
同じ超古代人の末裔でありながらダイゴがティガに導かれたのに対してマサキが導かれなかったのは何故か?
ここで登場するのが「古代英雄戦士」と言う言葉。
「眠りの乙女」でデシモ星系人がダイゴの事を「光の英雄戦士」と呼んでいる事から古代英雄戦士とは古代ウルトラマンの事だと考えられる。
超古代でティガになっていた人物の末裔がダイゴで、ダイゴは自分の祖先と同じティガに導かれた。一方のマサキは超古代人の末裔であっても古代英雄戦士の末裔ではなかったのだろう。そう考えると、マサキが発見した石像に本来宿るべきだった古代英雄戦士の末裔がいる事になるが……。
マサキ「言っただろう? 君だけが特別な存在なんかじゃないんだってね」、
ダイゴ「そうだ。僕は特別な人間なんかじゃない……。だけど、僕は自分の出来る事をする。この星と、この星の仲間達を……皆と一緒に守る!」、
マサキ「皆? 皆はウルトラマンを神だと思っているんだよ? いいのかよ、そんな情けない意識でいてさぁ」、
ダイゴ「情けないだと?」、
マサキ「君は光の力に頼っているだけだ。人類の進化を強制的に導くのがウルトラマンの使命さ!」、
ダイゴ「……」。
ダイゴは目の前にある事件一つ一つに取り掛かっていく。ダイゴにとってウルトラマンの力とは、レナがガッツウイングを操縦し、ホリイが発明をし、シンジョウがGUTSハイパーを撃ち、ヤズミが分析をするのと同じものなのだろう。一方のマサキはウルトラマンの力を人類の存在そのものを変えられるほどの特別な力だと考えている。
ダイゴはどんなに頭が良くて光の力を解明できてもマサキはウルトラマンにはなれないと告げるが、それを聞いたマサキはダイゴはやはり自分が特別な人間だと思っていると返す。
ここでダイゴは「間違った心で光になってはいけない」と言っている。石像には本来宿るべき古代英雄戦士の末裔がいるかもしれないが、別に古代英雄戦士の末裔でなくても石像に宿る事は可能だと思われる。ダイゴがマサキに告げたのはそういう末裔とかの資格ではなく心の資格であった。
ダイゴと違ってマサキはウルトラマンの力を制御する事が出来ず、ウルトラマンではなくイーヴィル、紛い物、ニセモノになってしまった。それはマサキの心がダイゴより弱かったからであろう。ウルトラマンになるのに必要なのは超古代人の末裔とかの出自ではなく強大な力を制御できる強い心であった。
マサキとタンゴ博士が計画していたのはアークの砂を再合成して巨人像のレプリカを作ると言う「ウルトラマンの量産化」であった。
マサキは「人類などと言う矮小な存在から進化する」と言って光の巨人になるとリヒャルト・ワーグナーの『タンホイザー』をバックに高らかに宣言する。
「私は進化した人類だ。愚かしい旧人類は私に導かれる事だけが生き残れる道だ。見よ! 私の神々しい姿を! 私は神に近付いたのだ。私に続くのだ!」。
確かに人類全員がウルトラマンに進化すれば怪獣に滅ぼされる事は無くなるかもしれない。実際、昭和のシリーズに登場したウルトラマン達は普通の人間が人工太陽プラズマスパークやウルトラマインドで進化した存在だった。
しかし、人類は昔から火や科学と言った力を手にしてきた。新たにウルトラマンの力を手に入れたとしても人類の意識が変わらなければ様々な問題を解決出来ず結局は滅びの危機にさらされてしまうのではないだろうか。
マサキはウルトラマンの力を得たが意識を変える事が出来ず、ウルトラマンの力を制御できず暴走してしまう。その姿はかつて火や科学の力を手に入れながら制御できず自らを滅亡の危機に追いやってしまった愚かしい旧人類と何ら変わっていなかった。
人類の影を継いだマサキ。サワイ総監が言うように皮肉な姿であった。
タンゴ博士は「超古代人はウルトラマンがいたのに滅亡してしまった」「ウルトラマンは何もしてくれなかった」として人類を導く存在を自分達で生み出そうとした。
昭和のウルトラシリーズでも『T』の健一君や『レオ』のトオルがウルトラマンに依存してしまう展開があったが、『ティガ』ではそれを一個人の話ではなく人類全体の話として語る感じになっている。
マサキが仕掛けた電磁バリアーで傷付いた子犬が光となって狛犬の石像に宿る。
ガーディーはカラータイマーがあるのでティガ達と同じ星雲からやって来たと思われる。「ウルトラワン」と言ったところかな。
ウルトラマンの仲間である怪獣が出ると言う展開が面白い。こうして見ると、やはり『セブン』のカプセル怪獣は素晴らしいアイデアだったんだなと思う。
そう言えば、ティガもイーヴィルティガも超古代の記憶があまり無かったがガーディーは自分とイーヴィルティガの関係をしっかりと覚えていた。ひょっとして、超古代の意思を一番受け継いでいたのはガーディーだったのかもしれない。
ダイゴは自分はただの無力な人間だったのかと自信を失うが、ガーディーがイーヴィルティガを止めようとしているのを見て人間として出来る事をやろうと決意し、自分の力でスパークレンスを取り返す。
最初からウルトラマンの力を当てにするのではなく、まず人間として出来る事をすると言うのは過去から受け継がれてきたウルトラシリーズの精神。
ところで、ここでイルマ隊長はダイゴがティガである事に確信を得たのではないだろうか。
イーヴィルティガが石像に人間が宿って目覚めた存在ならティガも人間が宿っていると考えるのが普通。「光を継ぐもの」での状況を考えると、その可能性は一人しかいなくなる。(でも、ムナカタリーダー達は最後まで気が付かなかったんだよなぁ)
ガーディーを倒されたティガの怒りがよく出ていた。
動かない仮面なのに表情があるようであった。
ティガとイーヴィルティガの戦いは一進一退の攻防で、光線激突やティガが倒れたと思いきや最後はイーヴィルティガが倒れる等、ライバル対決のお約束が盛り込まれていて盛り上がった。
過去の作品と違う『ティガ』の特徴の一つとして「ウルトラマン自身の意思が無い」が挙げられる。
過去のウルトラマン達は宇宙人として意思があるのだが、ティガは残されたウルトラマンの力をダイゴが使っている形になっているので今回のような「人間が力を制御できなかったウルトラマン」と言う話が作る事が出来た。
戦いが終わってタンゴ博士は逮捕されマサキは苦しみながら担架で運ばれていく。
この時点では二人の暴走が止まっただけなので「輝けるものたちへ」で二人の再生が描かれたのが良かった。
最後に子犬が横切ったのを見て思わず「良かった」と声が出た。