帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「暗黒の支配者」

「暗黒の支配者 ーガタノゾーア ゾイガー登場ー
ウルトラマンティガ』第51話
1997年8月23日放送(第51話)
脚本 小中千昭長谷川圭一右田昌万
監督 村石宏實
特技監督 神澤信一

 

邪神ガタノゾーア
全高 200m
体重 20万t
浮上した南太平洋上の超古代都市に君臨する邪神。「闇の支配者」「世界を暗黒に塗り潰すもの」と呼ばれる。
口から吐く闇と電流、触手、巨大な鋏でティガを苦しめる。ティガ・マルチタイプのハンドスラッシュやティガ・パワータイプのデラシウム光流とゼペリオン光線も通じず、逆にティガを触手で捕らえて光線で倒し、光を失って石像に戻ったティガを海底に沈めた。
名前の由来はクトゥルー神話に登場する「ガタノトーア」から。ただし設定はクトゥルー神話に登場する「クトゥルー」のイメージの方が強い。

 

超古代尖兵怪獣ゾイガー
身長 55m
体重 4万8千t
空を恐怖で支配した「悪しき翼」。
世界各地を襲撃し、TPCアメリカのブルートルネード隊を全滅させた。

 

物語
世界各地を襲撃するゾイガー。闇に襲われるTPC基地。そして超古代都市に現れる邪神ガタノゾーア。滅びの闇が始まる……。

 

感想
もっと高く! ~Take Me Higher!~」の続き。

 

海の底から吹き出る闇が世界を覆い、ゾイガーが世界各地を襲撃する。
ウルトラシリーズでもここまで全世界が危機に陥る話は少ない。
やはり最終決戦はこのくらい規模が大きいものの方が盛り上がって好き。

 

何も破壊せずセキュリティも作動させずにTPC基地を陥落させていく闇。
ありえない現象にヤズミはパニックに陥りかけるが、ムナカタリーダーの声で落ち着きを取り戻す。「うたかたの…」からムナカタリーダーがヤズミを指導していく場面が何度か見られる。
シールドを閉じながら一人で闇と戦うムナカタリーダーの場面は死んでしまうのではないかとドキドキしてしまった。

 

物理的な力では止められない闇に対して遂にアートデッセイ号をノアの方舟とした退避が決断される。それを聞いたヨシオカ長官はTPC基地は自分の心血が注がれた船みたいなものだと言って一人で最後まで残ろうとする。軍人らしい格好良さであるがサワイ総監はそれを否定する。
「馬鹿野郎! 苦労などいつだって出来る! 生きてさえいればな」。
サワイ総監の言葉にヨシオカ長官は涙を堪えてTPC基地から避難する。
ヨシオカ「要らん事は言わんでいいぞ、サワイ」、
サワイ「……」。
長い付き合い故のやり取りが良い。「南の涯てまで」でも書いたが、こういう若者とは違ったドラマもやってほしいなと思う。

 

遂に現れた邪神ガタノゾーア。今までのウルトラ怪獣に無かった雰囲気が素晴らしい。まさにラスボスと言った感じ。
クトゥルー神話に登場する「ガタノトーア」は姿を見た者を石と化す存在でロイガー族と関係があるとなっている。
因みにクトゥルー神話の元となったハワード・フリップス・ラヴクラフトの誕生日は今回の話の放送日に近い8月20日となっている。

 

超古代怪獣についてだが、「眠りの乙女」や「永遠の命」を見ると地球生物が闇に触れて怪獣化したものだと思われる。
自分はガクマやジョバリエも超古代怪獣で、肉体に無数の孔を持つゴルザ、メルバ、ガルラ、ギジェラ、ゾイガーは闇の影響を強く受けた怪獣達だったのではないかと考えている。
闇はどこから来たのかだが、地球や人間の中にある闇が吹き出たのかもしれない。

 

超古代に一体何が起きたのか。
超古代人が超古代怪獣に襲われた時、ウルトラマン達とガーディーが遥か彼方の星雲から地球にやって来た。おそらくこの時に地球での活動に備えて石像も一緒に持って来たと思われる。それでも地球上で24時間ずっとは活動できないので人間と一心同体になったり人間に変身したりして、中には人間と結ばれて子供が生まれた者もいた。
ギジェラの件でウルトラマン達は石像を残して地球から離れ、超古代文明はギジェラとガタノゾーアによって滅びてしまう。しかし、生き残った者もいて、彼らは現在の人類の祖先となった。
そして21世紀になって超古代怪獣が再び出現し、ウルトラマンと人間との間に生まれた子供を祖先に持つダイゴが石像に宿って『ティガ』の物語が始まった。
劇中から考えるに、こんな感じかな。

 

ドルファー202で超古代遺跡を探査しようとしたホリイとシンジョウはガタノゾーアの出現で身動きが取れなくなってしまう。
地底戦車ほどではないが潜航艇も危機に陥る事が多い。

 

闇に襲われたTPC基地でアートデッセイ号による避難が行われる中、ダイゴは一人戦う事を決意する。それをレナが止めようとし、事情を察知したイルマ隊長も残る。
ダイゴ「僕は……一人で行きます」、
レナ「ダメ!」、
イルマ「最初にウルトラマンをこの目で見た時、私は神に出会えたと思っていた。人類を正しい方向に導いてくれる存在だと……。でも違うのよね。それが段々分かってきたの。ウルトラマンは光であり……人なのね」、
レナ「隊長……」、
イルマ「だから、あなたは! 勝ち目の無い相手に向かっていく義務なんて無いのよ! 分かっているでしょう!」、
ダイゴ「勝ち目が無いなんて……、分かりませんよ」、
イルマ「そうね……。私も運命なんて信じない事にしたの。必ず勝って! 人として!」、
レナ「そんな……!? ダイゴー!!」、
ダイゴ「レナ! 皆を基地から救い出すのが仕事だろう?」、
イルマ「いいわね! 必ず勝って! ウルトラマンティガ!!」。
スパークレンスを取り出すダイゴ。闇に覆われる中、眩い光が発せられた。
昭和のウルトラシリーズウルトラマンが宇宙人で宇宙警備隊等に所属しているので今回の話のようにウルトラマンに変身する人間に向かって「勝ち目の無い相手に向かう義務は無い」と言う展開は見られなかった。
平成三部作は意外と他のウルトラシリーズには無い設定やテーマがあるが「主人公達がウルトラマンとして戦うのは義務や使命ではない」もその一つ。確かにダイゴやアスカや我夢は特別チームの隊員なので人々を守る為に戦う義務や使命があるのだが、それはあくまで「人間として」の義務や使命であって、彼らの「ウルトラマンとして」の戦いは義務でも使命でもなく彼ら個人の決断となっている。

 

闇の中にダイゴを残してアートデッセイ号を発進させるレナ達。
レナ「隊長も知っていたんですか?」、
イルマ「力を信じるのよ」、
レナ「え?」、
イルマ「ティガの力だけじゃなく、私達自身の力を信じるのよ、レナ!」。
レナと同じくダイゴとティガの関係を知っていたイルマ隊長。
レナがダイゴを見て、そこからティガとの関係に気付いたのに対して、イルマ隊長はティガを見て、そこからダイゴとの関係に気付いていくのが二人の違いを表していて上手かった。

 

全世界に中継される超古代都市でのティガとガタノゾーアの戦い。大人達は諦めるが子供達はティガに声援を送る。しかし、ガタノゾーアにはティガのあらゆる攻撃が通じず、遂にティガのカラータイマーが点滅を始める。そしてガタノゾーアの光線がティガの体を貫いた。
「ダイゴー!!」。
思わずダイゴの名前を叫ぶレナ。これによってアートデッセイ号のブリッジにいる皆にティガの正体が知られてしまう。
光を失ったティガは石像に戻り、ガタノゾーアによって海底に沈められてしまう。
「負けない……! ティガは……負けないわ」。
エンディングではティガと怪獣達との戦いがまるで走馬灯のように流された。
と言う事で次回「輝けるものたちへ」に続きます。