「決戦! 地中都市 ーダイゲルン登場ー」
『ウルトラマンダイナ』第4話
1997年9月27日放送(第4話)
脚本 右田昌万
監督 石井てるよし
特技監督 佐川和夫
肉食地底怪獣ダイゲルン
身長 60m
体重 8万t
青葉市の地下200mを移動して群発地震を引き起こしていた。
ナカジマが顎の骨格と唾液の分泌量から肉食と判断した。相当長い間、食い物にありついておらず、餌を探しに地上に出る途中にPWウェーブに引っ掛かってしまった。出力を上げたPWウェーブに刺激されて地上に出現するとPWウェーブ装置を破壊し食い物を求めて青葉市の人々を狙った。
口から炎を吐き、ダイナの右足を噛んでそのまま持ち上げる怪力を誇るが、ダイナ・ストロングタイプの気力を込めた攻撃を受けてグロッキーになり、バルカンスウィングで叩きつけられると爆発して消滅した。
物語
ジオフロンティアプロジェクトに並々ならぬ情熱を注ぐタチバナ社長。
しかし、PWウェーブの影響でダイゲルンが現れてしまう。
感想
前回までで基本設定やスーパーGUTSのキャラクター紹介が終わったので今回からバラエティ溢れる話が続く事になる。
今回登場したジオフロンティアプロジェクトはPWウェーブの波動でどんなに硬い岩も分解してパウダー状にし、分解された砂はホースで掃除機みたいに吸い込むと特別チームのドリル戦車とは違う現実味溢れる設定になっている。
タチバナ社長は「人類は地表の30%も活用していない」「地下を入れたら地球をまだ全然活用していない」「宇宙に目を向ける前にもっと地球に目を向けなければならない」「本当の地球フロンティアをしなければならない」と強く訴えるが記者の反応はイマイチ。宇宙時代と言う事でジオフロンティアプロジェクトはあまり理解されていないようだ。
『ダイナ』と言う作品としてはネオフロンティア=宇宙開拓とイメージが固定化されそうなところで宇宙以外にもフロンティアの題材は色々あるとしたのは大事であった。
タチバナ社長がスーパーGUTSの申し出を無視してジオフロンティアプロジェクトを進めたのは強引な展開で少し残念だが、タチバナ社長の事情を考えると色々と理解できそうなところもある。
TPCはネオフロンティアとして宇宙開拓を積極的に進めている。その事は「月に眠る覇王」でガッツディグを地球の地下開拓より先に月の研究に使ったり、「滅びの微笑(前編)」「滅びの微笑(後編)」でコスモネット開発を進める民間企業PWIにTPCの職員を派遣していながら同じ民間企業のジオフロント社にはそういう事が無かった事からも分かる。
ひょっとしたらタチバナ社長は今までもTPCによって何度かプロジェクトを妨害させられていたのかもしれない。ヒビキ隊長とかはそんな事しないだろうが、TPCと言う大きな組織になると利権を巡る裏の関係とかが色々あるのかもしれない。
ダイゲルンによって建物ごと地下に閉じ込められてしまったアスカ達。
ここで秘書が「蟻に生まれてくれば良かった」と言い出すのは唐突だった。タチバナ社長のプレス発表会あたりで蟻の話題を前もって振ってほしかった。
「蟻は巣を壊されても何度もまた巣を作る」「今度はタチバナ社長一人だけの夢ではなく、ジオフロンティアの良さを分かる人皆の夢として頑張れ」と語るアスカ。「何度失敗しても諦めるな」はアスカらしいが「自分一人ではなく皆の為に」はアスカとは思えない言葉。今までのリョウやヒビキ隊長の言葉が頭に残っていたのかな。
尚、「ツクヨの兵士」ではその後のジオフロント作業の様子がチラッと描かれている。
『ダイナ』のネオフロンティア関係の話に登場する怪獣は「人類が新たな領域に手を出した為に現れた不測の事態を象徴したもの」である事が多い。
今回のダイゲルンはPWウェーブの波動が生物に影響を及ぼしたと言う不測の事態を象徴したもので、ネオフロンティアの人類はその不測の事態をも乗り越えて夢を叶えようとする。だからアスカはダイゲルンに向かって「オイ! 一生懸命頑張ろうって言ってんだろ! どうしてこんな酷い仕打ちをするんだ! バカヤロー!」と叫ぶのだ。もし今回の話が「人類の科学が眠っていた生物を呼び寄せてしまった話」であったならアスカのこの言葉は出てこない。
『ダイナ』は科学の負の側面よりどんな困難にぶつかろうとも夢を追いかける人類を描いていくのである。
今回のアスカは頭上に現れた光を浴びて変身している。こういうところは『帰マン』の郷秀樹にかなり近い。
出来ればこの変身の前に建物に閉じ込められていたアスカがジオフロンティアプロジェクトを破壊していくダイゲルンを見る場面を入れてほしかった。そうすれば、先程のアスカのダイゲルンへの怒りがより分かりやすくなったと思う。
自分はCG肯定派だけれどダイナのストロングタイプが細身なのは残念だった。ここはスーツとあまり違いが無い体型にしてほしかった。